中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
最初に左下の“カテゴリー”を選んで,クリックして下さい.

湧き上がる霧と泥濘の丹沢:塔ノ岳(今年8回目)

2010年02月25日 23時36分20秒 | 丹沢の山旅
                  <堀山の尾根からの富士山>

      湧き上がる霧と泥濘の丹沢:塔ノ岳(今年8回目)
              (単独山行)
          2010年2月25日(木)

■霧の中の1番バス

 このところ暖かくて,天気が良い日が続いている.ところが,この好天気も今日がピークで,明日から次第に天気が悪くなるという予報である.早朝,3時30分頃目が覚めた私は,
 「丹沢へ行くのならば,今日しかない.んじゃぁ~,行くか」
と安易に意思決定する,すぐに登山仕様の着物を着込んでしまう.すると妙なもので,それまで寝床の中で,散々,
 「行く,行かない,・・」
を何回となく繰り返してきたのに,これまた不思議である.
 一時より随分と朝が早くなった.冬至の頃は,渋沢に到着する頃,やっと辺りが明るくなってきたものだが,今日は東海道本線で平塚を過ぎる頃,もう東の空が明るくなっている.
 小田原から小田急電車に乗り換える.地面の温度が高いのだろうか.大地からもうもうと霧が湧き上がっている.上空は晴れ渡っているのに,地面に近いところは霧が立ちこめている.美しい情景である.
 渋沢発大倉行1番バスに乗り合わせた登山客は,7~8名.ご常連は韋駄天組のTさん他,計2人.
 お二人とも,バスが大倉に到着すると同時に,そそくさと出発する.
 いつもモタモタする私は,お二人から7~8分ほど遅れて,7時06分に大倉を出発する.

■どうも身体が重い
 歩き出して,今日は,何となく身体が重いような気がする.どうやら,体調が本調子ではなさそうである.こんなときは,特に歩き出しが要注意である.私は幾分歩行速度を落として歩き始める.
 足下は良く乾いていて歩きやすいが,それにしても,何という暖かさだろう.
 あまりに暖かいので,今日の私はクイックドライの半袖の上に,化繊の長袖シャツ1枚を重ね着しているだけだが,それでも暑いくらいである.
 7時42分に見晴山荘を通過する.そして,大倉尾根最初の長い急坂に差し掛かる.休日になると,この坂を登る登山客が列になって見えるが,今日は,私の前後に誰も居ない.風も音も全くなく,静まりかえっている.
 修行不足の私は,いくらマイペースで歩こうとしても,前後に登山客が居ると,すぐに「抜いてやろう」「抜かれてたまるか」という感情が沸いてくる.この感情を理性で押し殺して,登り続けるのは,正直なところ,かなりの自制心が必要である.今日のように,前後に全く人が居ないとなると,自制することなしに,自分の経済速度で登り続けることができる.その意味で大変気楽である.

            <朝日が眩しい散策路:一本松手前> 

■ありゃ! デジカメが・・・
 一本松を過ぎる辺りから,だんだんと身体も順応してくる.
 やがて,駒止茶屋手前の長い階段に差し掛かる.今度は逆に階段登りが楽になる.かなり調子よく階段を上りきって,8時11分に駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから1時間05分経過している.体調が良くて,気温が最適ならば,58分ほどで登れたところだが,まあ,今の私の体力では,こんなところだろう.
 路面は次第に泥が深くなる.溶け始めたシャーベットのような状態が続く.
 やがて,堀山の尾根,富士山が良く見える場所に到着する.私はデジカメを取り出して,写真を撮ろうとする.ところが,デジカメの液晶画面に,
 「メモリーカードがありません」
という表示が出て,せっかくの写真が記録できない.そういえば,昨夜,デジカメからSDカードを抜いたまま,元へ戻すのを忘れていた.
 「ガッデム! アジャパー・・・! サノブアビッチ・・・!」
 私は地団駄を踏んで悔しがるが,忘れたものは仕方がない.こうなったら,携帯電話のカメラで撮影するしかない.
 いざ,携帯電話で撮影するとなると,結構段取りが焦れったい.携帯の蓋を開けて,カメラ機能を呼び出してから,撮影する手順に,まあそれほど時間がかかるわけではないが,それでも,写真を撮るたびに,歩くリズムが阻害される.それに,明るいところでは,液晶画面がほとんど見えない.仕方がないので,レンズが撮影したい対象の方を向いているかを確かめるだけで,適当にシャッターを押す.

■萱場平を通過
 8時47分,萱場平を通過する.辺り一面が田んぼのように泥でグチャグチャになっているが,最近完成した木道のお陰で,泥に煩わされることなしに通過する.
 引き続き急な坂道を,案外快調に登り続ける.もう少しで岩稜を抜けて,後7分の階段に差し掛かる頃,下山してくる若い男性とすれ違う.すれ違いざまに,
 「FHさんですか・・?」
と声をかけられる.
 私は何方なのか思い出せない.そこで,
 「どなたしたでしょうか・・?」
と質問する.すると,
 「・・山頂付近に,少し雪が残っていますが,アイゼンなしで歩けますよ・・」
という答えが返ってくる.たぶん,私の質問した「どなたでした・・」が「どうでした・・」に聞き取れたのだろう.
 「まあ・・・いいか」
で,お別れする.

■あと7分坂を登る
 あと7分坂は,6分で通過する.結構,体調は正常に戻っているようである.花立山荘からさらに続く急坂を登って,9時16分に花立山山頂を通過する.山麓が湧き上がる霧で,視界は少し茫洋としているが,晴れているので,富士山や南アルプスが良く見えている.
 辺りの風景を,携帯電話のカメラ機能で撮影しようと試みるが,明るい野外なので,液晶画面が全く見えない.カメラ機能が立ち上がっているのかもハッキリとは分からない.
 「ええ~ぃ・・もうどうでもいいや・・」
と自暴自棄になって,写真が撮れたことにする(後で撮れていないことが分かった).

■泥濘と残雪の坂道
 花立山を通過する頃から,路面は一段と泥濘がひどくなる.風も少し出てくる.
 9時22分,金冷シを通過する.さらに泥濘がひどくなり,足を取られながら田圃の中を歩くような状態になる.どんなに注意しても,一歩ごとにグシャ,グシャ,・・と泥に足を取られそうになる.
 やがて泥道が終わって,最初の長い階段に差し掛かる.階段の日陰部分に吹き溜まりがあって,まだ階段が埋まるほどの雪が残っている.4本爪アイゼンをはきたくなる程度の残雪である.金冷シから最初の階段を登りきる頃,韋駄天組の最初の方とすれ違う.ご尊顔は良く存じ上げているが名前は分からない.
 「相変わらずお速いですね・・・」
と挨拶する.
 「いや,いや,それほどでも・・・」
と言いながら,彼はニッコリする.
 少し下り坂になり,小さな広場を通過する.辺りは逃げ場のない泥んこになっている.靴がくるぶし辺りまで泥だらけになるのを観念してそろそろと歩く.グニャグニャする地面の感触が,私の山行気分を萎えさえる.
 山頂直下の階段に差し掛かる.つい先日,きれいな樹氷を見たのが嘘のように,辺りにはほとんど残雪はない.風が強まってきたものの,辺りの様子はすっかり陽春である.
 山頂から韋駄天のTさんが降りてくる.Tさんが私に話しかける.
 「風が強まりましたね・・」
 「その後,足の調子は如何ですか・・?」
 「登りは良いんですが,下りはまだ痛みがあるんです」
 「お大事に・・」

                   <塔ノ岳山頂からの富士山>

■尊仏山荘のミー君
 9時36分,塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は,丁度2時間30分.歩き出しで自重したこと,途中,泥濘と残雪の悪路があったこと,携帯電話で写真を撮り続けたために,かなりのロスタイムがあったことなどを考慮すれば,まあ,まあ,というところか.
 大倉尾根の累積登坂高度は1,269m.所要時間が2時間30分,つまり2.50時間と言うことは,
  1,269m÷2.50h=507.6m/h
ということになる.リュックの重さが約7キログラム.平均登坂速度が,わずかながら500m/hを超えているので,まあ,まあ,良しとするか.
 山頂には誰も居ない.雪もほとんど残っていない.やや強い風が吹いているので,いくら気温が高くても寒い.携帯電話で,一応,辺りの風景写真を撮るが,本当に撮れているかどうか分からない.
 とにかく尊仏山荘に入る.小屋番はネコのOさん.
 山荘の温度計では,山頂の気温はプラス4.4℃.
 「昨日辺りから,気温はずっとプラス,最低気温もプラス1.1℃でしたよ・・・雪はドンドン融けちゃいましたよ・・・」
 300円也のお茶を所望する.一息入れたところで,Oさんにネコを呼んでもらう.
 「お~~いぃ・・・ミーや,降りておいで・・・」
と言いながら,ビニール袋を揉んでガサガサと音を立てる.
 すると2階から,ミー君が顔を出し,コトコトと階段を降りてくる.そして,水の入ったバケツに頭を突っ込んで,ピシャピシャと水を飲む.Oさんが,ポンポンとネコの頭をなでるような,たたくような仕草をする.ネコはOさんのなすがままに,身を任せている.
 私もネコの頭や背中をなでる.柔らかで感触がよい.ネコは迷惑そうな顔をしているが,逃げるわけでもない.ここがミー君の良いところである.
 携帯電話の写真で,四苦八苦して数枚の写真を撮る.

                   <2階からスタスタと降りてくる>


                   <Oさんと愛猫ミー君>

■ご常連と雑談
 山荘には数名の後常連が居るだけ.
 何時しかシロヤシオの話になる,
 「今年は,たぶん,シロヤシオが綺麗でしょう・・」
とOさんのご託宣.Oさんによると,5月下旬に見頃になるらしい.今から楽しみである.
 つづいてヒルの話になる.蛭ヶ岳から来た人が,足下に5~6匹のヒルが集ったまま山荘の到着したことがあるとご常連が言う.
 「普通に歩いていれば,ヒルなどに会うことはないけど,道ばたに休むとヒルにやられるよ・・」
私も同感である.
 ついで,ダイヤモンド富士の話になる.富士山山頂のど真ん中に日が沈むのをダイヤモンド富士と呼んでいる.私が,
 「えっ!・・何時,ダイヤモンド富士が見えるんですか」
と質問する.Oさんが,気の毒そうに,
 「昨日でしたよ・・・今日は右端の剣ヶ峰辺りに日が沈みますよ・・・」
 「そうでしたか・・・残念!」
 「鎌倉辺りでは,時間がずれるから,これからダイヤモンド富士が見えるかもしれませんよ・・」
 私は,今日の夕方,鎌倉では,どの辺りに日が沈むか確かめることにする.
 丁度そのとき,パンツ姿の男性が山荘に到着する.今日2回目の塔ノ岳ランニングだそうである.

                 <尊仏山荘から富士山を望む>

■陽春のような尾根道を下山
 10時01分,尊仏山荘から下山開始.
 風が一段と強まっている.相変わらず富士山が良く見えている.時々,登ってくる登山者とすれ違いながら,順調に下り続ける.
 花立山荘と萱場平の中間で,先ほどのランニング男性に追い抜かれる.
 泥んこに往生しながら,11時19分,駒止茶屋を通過する.この辺りから,路面の状態は格段に良くなる.陽春のような日差しの中,森林浴を楽しみながら,のんびりと下山し続ける.見晴山荘に近づく頃,先ほどの男性が,また,登ってくる,今日,3回目の塔ノ岳往復である.
 「また,登るんですか・・?」
私はビックリして伺う.
 「はい・・・先ほど駒止茶屋あたりで韋駄天のTさんとすれ違いましたよ・・」
 12時14分,バス停大倉に到着する.
 下り所要時間は,2時間13分.

<ラップタイム>

 7:06  大倉歩き出し
 7:26  観音茶屋
 7:42  見晴茶屋
 8:11  駒止茶屋
 8:37  堀山の家
 9:08  花立山荘
 9:22  金冷シ
 9:36  塔ノ岳山頂 着
=============================================
10:01  塔ノ岳山頂 発(+4.4℃)
10:17  金冷シ
10:31  花立山荘
11:08  堀山の家
11:19  駒止茶屋
11:42  見晴茶屋
11:55  観音茶屋
12:14  大倉 着

[山行記録]

■水平距離 
      7.0km(片道)

■累積登攀下降高度   1269m

■登攀所要時間
  大倉  発       7:06
  塔ノ岳 着       9:36
 (所要時間)  2時間30分(2.50h) 
 登攀速度   1269m/2.50h=507.6m/h

■下降所要時間
  塔ノ岳 発      10:01
  大倉  着      12:14
 (所要時間)  2時間13分(2.22h)
 下降速度   1269m/2.22h=571.6m/h
                               (おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/5d319f855ceeb1ce3916a7289c0f4b4e
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/56d0a004d91269806c9d5940288bec4d 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いつもブログ見てます!! (ファンより)
2010-02-27 18:53:41
 25日はお疲れ様でした!!
私もミーくんに会うのが楽しみになりました。
私からみると何回かお顔を見ているのですが...
この日は、確信を持ち、声を掛けてしまいました!!
年齢を考えたら凄すぎることをしていると考えますが....体調に留意されて
これからも、塔ノ岳詣をお続け下さることを
一ファンとして願っております!!
これからはよろしくお願いします!!
返信する
コメントありがとうございました. (FH)
2010-02-27 21:50:35
ファンさん

コメントありがとうございました.
何回かお目にかかっているようですが,気がつかず申し訳ありませんでした.

あの日は,大変な泥んこで参りました.

今度,お目にかかったら,また,声を掛けてくさい.

これからもよろしくお願いいたします.
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。