中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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初春の丹沢:登山道の整備が進む塔ノ岳(今年4回目)

2010年01月31日 22時57分08秒 | 丹沢の山旅

                                     <塔ノ岳山頂からの眺望>

           初春の丹沢:登山道の整備が進む塔ノ岳(今年4回目)
                            (単独山行)
                     2010年1月31日(日)

■煌々と光る月を見ながら・・

 早いもので,ついこの間,新年を迎えたかと思ったら,今日はもう1月31日.
 誰からも強制されているわけではないが,1月中にせめて4回程度は塔ノ岳に登りたい.1月も今日で終わりとなると,私も少々あわてる.幸い今日は天気も良さそうなので,思い切って塔ノ岳へ出かける.
 早朝,5時過ぎに家を出る.西の空には煌々と輝く真ん丸な月がある.怪しい月の光を浴びた途端に,突然,宮沢賢治の童話「月夜のでんしんばしら」を思い出す.
 “ドッテテドッテテ,ドッテテド
   でんしんばしらの軍隊は
     はやさ世界にたぐいなし
       ドッテテドッテテ,ドッテテド
        でんしんばしらの軍隊は
          きりつ世界にならびなし.
            ・・・・・・・・・・・・・
    (宮沢清六他(編),1969,『宮沢賢治童話集』実業之日本社,p.249)
 少年時代から,妙に頭にこびりついているこの童話が懐かしい.
 今,私の目の前で,明るい月の下で,電信柱が頑張っている.月の光に負けじとばかりに街灯が光っている.私は,電車の時間を気にしながらも,立ち止まって,この月をデジカメに収める.

                   <西の空に煌々と輝く月>

■温かいが身体が重い
 渋沢発大倉行1番バスは,数人の立ち席が出るほど,日曜日にしては,登山客の数がやや少ないようである.辺りを見回すと,三角髭のTさん,韋駄天のTさん,齢80歳に手が届きそうなK女史ほかご常連の顔がちらほら見える.
 韋駄天のTさん,K女史は,バスが大倉に到着するとすぐに登山を開始する.例によって,出発間際にモタモタする私は,ご常連より崇風遅れて,7時07分に歩き出す.
 塔ノ岳登頂は,先週金曜日以来,1週間余りの間がある.もちろん,その間に,中山道や鎌倉を歩いていたが,所詮,高度差のあるところはあるいていない.歩き出してすぐに体が重いことに気がつく.まあ,1週間も間が空いたんだからしかたがないなと,自分を慰めながら歩き続ける.
 歩き始めてから30分ほどで,私の体も本来の調子に戻る.
 今日は,背中から温かい太陽の光を浴びながらの登山である.気温が何度あるか分からないが,今頃の時期にしては,かなり温かい.私は途中から少しピッチを上げて歩くことにする.途中,何人かの登山客を追い抜くが,逆に何人かの若手の駈けっこさんに追い抜かれる.

■折角の身体だから大切にしよう
 雑事場の平の手前で,先発のK女史に追い付く.
 「今日は温かで,登山日和ですね・・・」
とお互いに挨拶する.
 「では,お先にマイペースで歩かせていただきます・・・」
 「マイペースが良いですね.お互いに折角の身体なので,大切に使って,丹沢を楽しみましょうね」
 私はK女史を追い越させていただく.
 身体を大切につかいましょうというK女史の含蓄ある言葉に,私はなるほどそうだと同感する.そこから連想して,
 「私はなんで山に登っているんだろう・・」
という厳粛な疑問が,頭の中に湧きあがってくる.この答えは,かの有名な「そこに山があるからだ」では済まされない.これでは山があればなぜ登るのかという疑問に回答したことにはならない.

                   <堀山から富士山を望む> 

■急ピッチに進む登山道の改修工事
 8時08分に駒止茶屋を通過する.歩き始めてから所要時間は1時間01分.歩き始めに足が重く感じた割にはなかなか良いペースである.私は気分が良くなるが,オーバーペースにならないように,十分自重して登り続ける.
 途中,見晴らしの良いところで富士山の写真を撮りながら登り続けて,8時23分に堀山の家に到着する.山小屋の関係者らしい人が庭先で薪割をしている.私は軽く会釈をしてから通過する.
 今年になってから,登山道の整備が急ピッチに進んでいる.
 8時40分に戸沢分岐に到着する.この辺りは冬になると何時も泥がグチャグチャしていて嫌なところだが.広い木道が取り付けられている.
 萱場平も泥で困るところだが,平を真っ直ぐに貫くように木道の設置工事が進んでいる.今日は工事をしていないが,来週早々には,萱場平の木道も通れるようになりそうである.

                <改修が終わった戸沢分岐の木道>


                   <今日の萱場平>

■「あと7分」坂
 やがて,「あと7分の辛抱」の階段の下に到着する.今日は何だか疲れた感じがするので,7分で登り切るのは辛いかなと思いながら階段を一段,一段登る.途中で若者に追い抜かれる.
 9時05分に花立山荘を通過する.階段道は1分余計の8分掛ってしまう.
 花立山荘前から富士山の写真を撮る.先ほどより沢山の雲が湧きだしている.
 そのまま,花立場に向かう.今度は逆にピッチが上がる.平素,花立山荘から10分掛るが,今日は8分でクリアする.これだから体調の良し悪しは良く分からない不思議なものである.
 気温が高いためか,富士山も南アルプスも春霞で朧である.
 「・・・もうすぐ,春だな~ぁ・・」
私はこの風景から春を予感する.

               <花立山荘から富士山を望む>

■朝日に光る冬枯れの梢
 私は,先ほどのK女史の一言,「自分の身体を大切に使おう」を思い出す.
 縁あって,沢山の元素が集積し,協力し合って,今の私の身体を形成している.これらの元素の中には,かつて高貴な方々の身体の構成要素だったものも少なからず入っているかもしれない.それこそ太古の昔からの「えにし」を引き継いでいる.そう考えると,いくら自分の身体でも,仇や疎かに酷使してはならない.誠心誠意,御身の大切さを保持しなければならない.こんなバカなことを考えながら登り続ける.
 9時18分,金冷シを通過する.私の前後には誰もいない.私は,もうここまで来れば,急いでも,ユックリ登っても,ほんの数分の違いもないので,一層リラックスして登ろうと思う.それにしても,今日は温かい.冬枯れした木々の梢が,温かい太陽の光を浴びて,青空の下で光り輝いている.
 「ああ,美しいな・・・」
 今日も,そよとも風が吹かない.光り輝く梢が微動もしない.私は梢を眺めながら,登り続ける.

                   <梢が光る登山道>

■塔ノ岳山頂
 塔ノ岳山頂直下の階段で,下山してくる韋駄天のTさんとすれ違う.すれ違いざまに,
 「・・・今日は温かいですね.絶好に登山日和ですね・・」
と,何時もながらの平凡な挨拶をする.
 何となく惰性で登り続けるうちに,9時33分,
 「おや,もう山頂・・!」
という感じで,塔ノ岳山頂に到着する.
 何時の間にか富士山の山麓に,もくもく雲がまとわりついている.南アルプスの茫洋の彼方である.スッキリした富士山が見えないのは残念だが,恒例により山頂からの眺望をデジカメに収める.
 
                <塔ノ岳山頂からの富士山>

■尊仏山荘;手で水を掬うミー君
 尊仏山荘に入る.
 外国人男性2人と付き添いの若い女性1人が先客.英語と日本語のチャンポンで雑談をしている.
 今日の山頂の気温は0℃.温かい.
 番台にオーナーのHさんが座っている.300円也のお茶を所望する.Hさんではネコに会うのを諦めるしかないなと思っていると,奥からネコの忠実な僕(シモベ),Oさんが,
 「・・・やあ,イラッシャい・・・」
と言いながら出てくる.
 「Oさんが居られったんですか・・・では,後でミー君に写真を撮らせてください」
とお願いする.
 すると,どこからともなくミー君を抱えてきて,私の前にポンと置く.
 ミー君は迷惑そうのキョトンとしている.すぐに反抗しないで,Oさんがなすがままに受け止めている.この素直さが,このネコの良いところである.
 外人組もネコに興味をす.
 「このネコは,この山荘のマネジャーオブセールスデヴィジョンですよ・・」
とお互いに日本語と英語チャンポンで雑談をする.
 Oさんが言う.
 「このところ,こいつ手酌で水を飲むこと,覚えたんですよ・・」
 Oさんによると,今までは水の入ったバケツに首を突っ込んで直接水を飲んでいたが,最近は前足を器用に曲げて水をすくって飲むことを覚えたという.そういえば,前回,山荘を訪れたときにも,ミー君は手掬い水を飲んでいた.
 「アニマルプラネットの映像には,ミー君の手掬い水の映像は無かったですね・・」
 「そう,あの映像を撮った時点では,まだ,ミー君は,手掬いをしていなかったんです」
 私は,手掬いで水を飲むミー君の姿をデジカメに収めたかったが,あいにく今日は空振りに終わった.



                      <今日のネコ>

■可愛いシカに会う
 私は大倉発12時15分のバスに乗りたいと思う.何時も下りには十分時間を掛けるので,9時57分に山荘を出発する.
 最初の階段を降りかけたときに,K女史とすれ違う.
 「お互いに,何時までも元気で登りましょうね」
とエールを交換する.
 金冷シ付近で可愛いシカの親子を見掛ける.この可愛い動物が害獣だとは,どうしても思いたくない.


山登りの楽しさって,これなんだ
 次から次へと登ってくる登山客とすれ違いながら下り続ける.途中,花立山荘や堀山の家で「おしるこ」の案内を見掛ける.登山をしていると無性に甘いものが欲しくなることがある.ついフラフラと寄り道をしたくなるが,グッと我慢の子を通す.
 暖かい日差しを浴びながらの下山である.山頂を踏んでからの下山は,ひと仕事を終えたときの解放感,満足感と同じである.山のさわやかな空気を胸一杯に吸い込みながら,
 「ああ・・良いな,ああ・・素晴らしいな」
と感動しながら,大倉尾根を下り続ける.そして,私がなぜ山に登るのかの理由は,この“感動”が味わえるからだということに,やっと気がつく.
 12時丁度にバス停大倉に到着する.下り所要時間は2時間03分であった.

<ラップタイム>

 7:07  大倉歩き出し
 7:26  観音茶屋
 7:42  見晴茶屋
 8:08  駒止茶屋
 8:23  堀山の家
 9:05  花立山荘
 9:18  金冷シ
 9:33  塔ノ岳山頂 着
======================================
 9:57  塔ノ岳山頂 発(0.0℃)
10:10  金冷シ
10:21  花立山荘
11:11  駒止茶屋
11:33  見晴茶屋
11:45  観音茶屋
11:55  登山口
12:00  大倉 着

[山行記録]

■水平距離
       7.0km(片道)

■累積登攀下降高度   1269m

■登攀所要時間
  大倉  発       7:07
  塔ノ岳 着       9:33
 (所要時間)  2時間27分(2.45h)
 登攀速度   1269m/2.45h=518.0m/h

■下降所要時間
  塔ノ岳 発       9:57
  大倉  着      12:00
 (所要時間)  2時間08分(2.13h)
 下降速度   1269m/2.13h=595.8m/h
                            (おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/21a7c13d6a8efb766c05b14db4bda804
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/d9bf802e0357598086e38789009ddf74 



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