大クレーターを横断 2006年1月29日(日)その2
<<トンガリロクロッシング>>
私達はトンガリロクロッシングを歩いている。
右手に雄大なナウルホエ山が見える平原でトイレ休憩を取った私達は,10分余り休憩した後,9:57に出発する。ハイキング道路は進行方向右手に曲がり,目の前の山脈に登り始める。急坂が続く。途端に酋長さんとドッジさんの足取りが重くなる。登るにつれて,眼下の視界が開け始め,だんだんと見晴らしが良くなる。 10:29,遅れているお2人を待ち合わせる意味も含めて,3分ばかり立ち休憩を取る。標高1420メートルである。
「それにしても,今日のガイドは,やたらに早く歩いて,やたらに休憩ばかりするな・・・彼ら本物のガイドかな・・・」
と心の中で不審に思うが,ぐっと胸の内に押さえる。
10:20,またもや小休止。標高1540メートル。ふたたび歩き始める。露岩帯の尾根に沿って登り続ける。溶岩が固まってできたゴツゴツとした岩が累々と積み重なっている。10:58から11:03,再び休憩になる。眼下に見晴らしが開け,ちょっとした広場になっている。私達の前後に沢山の登山客が休憩を取っている。私はにわかに「大」がしたくなり,やむを得ず少し離れた大きな岩陰に紛れて「大」を足す。ふと左手を見ると,わずか5~6メートル離れたところに,広場から分かれた枝道があることが分かった。その道を私から20メートルほど離れたところから,アベックがこちらへ向かって歩いて。私は驚いて大切な作業を中断する。少々ちぐはぐな気分のまま,辺りの小石を「一物」の上に沢山乗せて,何気なく現場を立ち去る。辺りにはミツバチを少し大きくしたほどの蝿(?)が数十匹,瞬時に集まってきて「一物」の上に群がっている。見えなくしているのに・・・
ここからは,広い南クレーター(South Crater)の中を歩くことになる。
11:11,ガイドが私達を集めて,クレーターの説明を始める。
「・・・このクレーターは1800年前の爆発でできたんです・・・・地球上で最も大きな火山だったんです・・・・ニュージーランドはインドプレート,オーストラリアプレート,太平洋プレートが重なって生成されました・・・」
11:24,私達は南クレーターを渡りきって,ここからクレーターの縁をトラバース気味に登り始める。途端にまた2人組が遅れ始める。11:27,クレーターのリム(標高1670メートル)に達する。左手には,今までの横切ってきた広大な南クレーターが眼下に広がっている。まるで月面を歩いているようである。
クレーターの左手には雄大なナウルホエ山が聳えている。ここでナウルホエ山をバックにして,交代で写真を取り合う。何とも爽快で,いい気分である。
稜線歩きをしながら,11:38に標高1710メートル地点に達する。そして,11:52,標高1800メートル地点で小石を積み上げた三角ピラミッドの前で小休止する。私は,また,三角ピラミッドとナウルホエ山をバックに写真を撮って貰う。 12:04,標高1810メートルの地点に達する。眼下に鋭く切り立った大噴火口が見下ろせる。赤茶けてただれたようなザラザラした岩が高いところから転げ落ちるように谷底へ向かっている。斜面の縁には鮫の乱杭歯のように鋭く切り立った尖峰が立ち並んでいる。谷間の彼方まで左右から鋭い稜線が折り重なるように落ち込んでいる。何というダイナミックさだろう。私は息を飲むような気持ちで,この素晴らしい光景を目に焼き付ける。
ここからザレた急な登りになる。ガイドのすぐ後ろで登っている酋長さんの足取りがいかにものろい。居たたまれなくなった私は,登山道左手のザレ場を登って酋長さんを追い越す。そしてガイドの脇に出る。ガイドが,
「・・・先にドンドン登っても良いよ・・・」
とボデーランゲージで私に合図する。
「しめた~ぁつ・・・!」
私は今までの燃え切らないエネルギーを一気に吐き出すような気分で,ドンドンと先へ登る。私が先へ登るのを見ていたフクロウが飛び出す。私はとにかく息が切れるほどの速度で登ってみたかった。思い切り速い速度で燃焼する。するとすぐに息が上がってくる。これまで寒いなと思っていたのに,一気に暖かくなる。
12:12,急坂を登り詰めると丘陵のような所に出る。標高1870メートル。このトレッキングコースの最高地点である。ガイドが,ハア,ハア,と息を切って,私を追いかけてきて,
「・・・そこの一番高いところで待っていなさい・・・」
と言う。もちろん私は最初からそのつもりである。私のすぐ後にフクロウが続く。フクロウは何時も強いなと感心する。その後に例の2人組以外の人達が次々に到着する。右手,すなわち東北東の眼下に,素晴らしく青緑に澄んだエメラルド湖(Emerald Lake)が見下ろせる。
荒々しくゴツゴツとした赤茶けた稜線に囲まれた青緑の静かな湖水が何ともいえない調和を保っている。
いつの間にか,私達の周りには誰も居ない。風も穏やかで静寂そのものである。こんな所でしばらく滞在して絵を描きながら過ごせたら,すばらしいだろうなと,ふと思う。ここから右手にエメラルド湖を見ながら,急なザレ道を通って,エメラルド湖の湖畔近くまで下る。ガイドが,ザレ道の下り方を,私達にコーチする。
「・・・歩幅を小さく,腰を落として,フラットフッティング・・・」私達が登山学校で口酸っぱく教えられた内容と同じである。
12:15,いよいよザレた下り坂を下り始める。
(第7回おわり)
<<トンガリロクロッシング>>
私達はトンガリロクロッシングを歩いている。
右手に雄大なナウルホエ山が見える平原でトイレ休憩を取った私達は,10分余り休憩した後,9:57に出発する。ハイキング道路は進行方向右手に曲がり,目の前の山脈に登り始める。急坂が続く。途端に酋長さんとドッジさんの足取りが重くなる。登るにつれて,眼下の視界が開け始め,だんだんと見晴らしが良くなる。 10:29,遅れているお2人を待ち合わせる意味も含めて,3分ばかり立ち休憩を取る。標高1420メートルである。
「それにしても,今日のガイドは,やたらに早く歩いて,やたらに休憩ばかりするな・・・彼ら本物のガイドかな・・・」
と心の中で不審に思うが,ぐっと胸の内に押さえる。
10:20,またもや小休止。標高1540メートル。ふたたび歩き始める。露岩帯の尾根に沿って登り続ける。溶岩が固まってできたゴツゴツとした岩が累々と積み重なっている。10:58から11:03,再び休憩になる。眼下に見晴らしが開け,ちょっとした広場になっている。私達の前後に沢山の登山客が休憩を取っている。私はにわかに「大」がしたくなり,やむを得ず少し離れた大きな岩陰に紛れて「大」を足す。ふと左手を見ると,わずか5~6メートル離れたところに,広場から分かれた枝道があることが分かった。その道を私から20メートルほど離れたところから,アベックがこちらへ向かって歩いて。私は驚いて大切な作業を中断する。少々ちぐはぐな気分のまま,辺りの小石を「一物」の上に沢山乗せて,何気なく現場を立ち去る。辺りにはミツバチを少し大きくしたほどの蝿(?)が数十匹,瞬時に集まってきて「一物」の上に群がっている。見えなくしているのに・・・
ここからは,広い南クレーター(South Crater)の中を歩くことになる。
11:11,ガイドが私達を集めて,クレーターの説明を始める。
「・・・このクレーターは1800年前の爆発でできたんです・・・・地球上で最も大きな火山だったんです・・・・ニュージーランドはインドプレート,オーストラリアプレート,太平洋プレートが重なって生成されました・・・」
11:24,私達は南クレーターを渡りきって,ここからクレーターの縁をトラバース気味に登り始める。途端にまた2人組が遅れ始める。11:27,クレーターのリム(標高1670メートル)に達する。左手には,今までの横切ってきた広大な南クレーターが眼下に広がっている。まるで月面を歩いているようである。
クレーターの左手には雄大なナウルホエ山が聳えている。ここでナウルホエ山をバックにして,交代で写真を取り合う。何とも爽快で,いい気分である。
稜線歩きをしながら,11:38に標高1710メートル地点に達する。そして,11:52,標高1800メートル地点で小石を積み上げた三角ピラミッドの前で小休止する。私は,また,三角ピラミッドとナウルホエ山をバックに写真を撮って貰う。 12:04,標高1810メートルの地点に達する。眼下に鋭く切り立った大噴火口が見下ろせる。赤茶けてただれたようなザラザラした岩が高いところから転げ落ちるように谷底へ向かっている。斜面の縁には鮫の乱杭歯のように鋭く切り立った尖峰が立ち並んでいる。谷間の彼方まで左右から鋭い稜線が折り重なるように落ち込んでいる。何というダイナミックさだろう。私は息を飲むような気持ちで,この素晴らしい光景を目に焼き付ける。
ここからザレた急な登りになる。ガイドのすぐ後ろで登っている酋長さんの足取りがいかにものろい。居たたまれなくなった私は,登山道左手のザレ場を登って酋長さんを追い越す。そしてガイドの脇に出る。ガイドが,
「・・・先にドンドン登っても良いよ・・・」
とボデーランゲージで私に合図する。
「しめた~ぁつ・・・!」
私は今までの燃え切らないエネルギーを一気に吐き出すような気分で,ドンドンと先へ登る。私が先へ登るのを見ていたフクロウが飛び出す。私はとにかく息が切れるほどの速度で登ってみたかった。思い切り速い速度で燃焼する。するとすぐに息が上がってくる。これまで寒いなと思っていたのに,一気に暖かくなる。
12:12,急坂を登り詰めると丘陵のような所に出る。標高1870メートル。このトレッキングコースの最高地点である。ガイドが,ハア,ハア,と息を切って,私を追いかけてきて,
「・・・そこの一番高いところで待っていなさい・・・」
と言う。もちろん私は最初からそのつもりである。私のすぐ後にフクロウが続く。フクロウは何時も強いなと感心する。その後に例の2人組以外の人達が次々に到着する。右手,すなわち東北東の眼下に,素晴らしく青緑に澄んだエメラルド湖(Emerald Lake)が見下ろせる。
荒々しくゴツゴツとした赤茶けた稜線に囲まれた青緑の静かな湖水が何ともいえない調和を保っている。
いつの間にか,私達の周りには誰も居ない。風も穏やかで静寂そのものである。こんな所でしばらく滞在して絵を描きながら過ごせたら,すばらしいだろうなと,ふと思う。ここから右手にエメラルド湖を見ながら,急なザレ道を通って,エメラルド湖の湖畔近くまで下る。ガイドが,ザレ道の下り方を,私達にコーチする。
「・・・歩幅を小さく,腰を落として,フラットフッティング・・・」私達が登山学校で口酸っぱく教えられた内容と同じである。
12:15,いよいよザレた下り坂を下り始める。
(第7回おわり)