中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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ルアペフ山・タラナキ山登頂記(8)神秘的はエメラルド湖

2006年04月05日 11時18分48秒 | ニュージーランド:ルアペフ・タラナキ
神秘的なエメラルド湖
2006年1月29日(日) その3



<<トンガリロクロッシング>>
 高いところからエメラルド湖を見下ろした後,いよいよザレた急坂を下る。私達は登山には素人だが,それでも,ここ3年間,登山学校での山行で,この程度のザレ道は,いつも歩いている。それに登り坂に少し弱いお2人も,下り坂はお手の物である。お2人の名誉のために,急いでコメントしなければならないが,いくら登り坂に弱いと言っても,通常の山道ならば,300~350メートル/時の速度で登るのならば,難なく何時間でも続けられる力量を持っている。だから,エリアマップに書かれている標準時間で,十分に歩けるだけのパワーはある。ただ,同行の野鳥共,つまりフクロウとバーダーが強すぎるのである。この鳥共は,平気で600メートル/時ほどの早さで登ってしまう。だから,ビアンコ夫人や私は,四苦八苦して鳥共を追いかける羽目になる。別に追いかける必要はないのだが・・・私達は,当初,ガイドが予想したよりも,ずっとスムーズに,誰一人転倒したり尻餅をついたりせずに,難なく急坂を下り終える。むしろ,私達の後ろに着いていたガイドが,スリップして尻餅をついていた。
 12:15分に下り始めた私達は,12:28にエメラルド湖に一番近い鞍部(標高1695メートル)にまで降りた。ここでエメラルド湖を見下ろしながら,暫く小休止する。小休止している間に,食べ物を食べ,給水をする。私もランチボックスからサンドイッチを取りだしてかぶりつく。大きなサンドイッチである。でも,パンは腰があって柔らかく,とても美味しい。ハムの他に野菜がタップリと挟み込んである。美味しいサンドイッチを食べながら,思わず,昨年,モンブラン山へ登ったときの貧しくて不味いランチを思い出す。美味しいといっても,とにかく大きなサンドイッチである。大半をそのまま残して,リュックに仕舞い込む。
風が吹いている。それほど強い風ではないが,とにかく寒い。仕方なく,私はリュックからヤッケを取りだして着込む。そして,わずかな時間を利用してエメラルド湖の風景をスケッチする。
 12:55,エメラルド湖を出発する。広い火口原をくねくねと登っていく。太ったガイドを先頭にフクロウとバーダーが後ろの人達にはお構いなしに,高速で登っていく。私は,すぐ後ろに居るビアンコ夫人,スケルトンさん,消防署員のことが多少気になるし,それに先行の2人に付いていったら草臥れてしまうのが自明なので,早くもなく,といって前と余り間を空けたくないという複雑な気持ちで登っていく。私達一団からはるかに離れて酋長とドッジ夫妻が付いてくる。
 ほどなく,私達はセントラルクレーターを横切り始める。辺りは切り立った衝立のような山に囲まれた荒涼とした平原である。広い平原の真ん中を歩いていると,やけに空が青く見える。紺碧の空の青と,赤茶けた岩石の色のコントラストが強烈である。まるで月面を歩いているような錯覚に陥る。セントラルクレーターからリムをトラバースしてプラトーへ出る。その間,少し長い登り坂が続く。
 13:13,標高1680メートル地点で,遅れている2人を待つために,暫く休憩を取る。13:15,再び歩き出す。ここからリムに沿って,短い距離だが,かなりの急坂になる。この急坂を登り切ると,途端に視野が開けて,ブルーレーク(Blue Lake)の畔に到着する(13:18)。どのくらいの大きさだろうか。多分直径が500メートルほどもあるのだろうか。青い水を讃えた湖面がとても美しい。対岸には,なだらかな丘陵が続いている。草木は生えていないが,これまでの風景に比較すると,何となく女性的な印象を受ける。
 ブルーレークの反対側を見ると荒々しい旧火口がポッカリと穴を空けているのが見える。その先,遠くに,明日登るルアペフ山が見渡せる。山腹の一部に雲が掛かり,旧火口の縁が雲から浮き出るように見えている。何という素晴らしさだろう。私は急いでスケッチをする。そして,この風景をデジカメに収める。
 13:28,ブルーレークを出発する。火山が形成した大斜面をトラバースしながら北上する。尾根を越えると北側の風景が一望できるようになる。広大な風景である。いつの間にかトラバース道の両側に野草が見え始める。焦れったくなるほど名前が思い出せないが,ボサボサした草が沢山生えている。辺りの景色も今までの荒々しさから一転して,のどかな山辺の道になる。
眼下に綺麗な湖が見える。その湖の遙か遠く,地平線近くに海が見えているようである。私は,ガイドに,
「あれは海ですか。タスマニア海ですか・・・それとも太平洋?」
聞く。すかさずガイドが,
 「あれは海じゃないよ・・・ニュージーランド北島で最も大きな湖,タウポ湖(Lake Taupo)だよ」
と教えてくれる。湖は明るい空色の水をたたえて,一見空との見分けが付かない。どうやら小さな島が湖の中にいくつか浮いているのうである。その先には白い雲が湧いていて茫洋としている。この辺りまで来ると,道路が実に良く整備されている。なだらかな下り坂である。山麓をゆるゆると廻りながら次第に下っていく。何とも爽快な遊歩道である。
 私達以外の登山者もチラホラと見かけるようになる。やがて,眼下にケテタヒ小屋(Ketetahi Hut)が見えるようになる。私達が歩いているところから,直線距離にしたら,いくらも離れていないが,なぜか道路はくねくねと迂回するように作られている。尾根を真っ直ぐに近道して下りたいなという衝動に駆られるが,ここは国立公園内である。登山道以外の場所に立ち入ることは許されないだろう。我慢して,くねくねと下っていく。
 13:40,ようやくケテタヒ小屋に到着する。小屋のトイレに行列ができている。小さな小屋は観光客で溢れている。小屋の前は広いデッキになっている。デッキの縁の手すりに沢山の人が腰掛けている。私達は,この小屋で小休止する。私は空いている手すりに腰を掛けて,すぐに小屋のスケッチをする。
(第8話おわり)


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