<円覚寺白鷺池>
春の鎌倉:山ノ内・天園・源氏山周遊
(単独散策)
2011年3月17日(木).晴.寒い一日
<散策地図>
水平歩行距離 13.2km
累積登攀高度 494m
累積下降高度 494m
<プロフィールマップ>
■大震災の余波
東日本大震災に見舞われてから6日目を迎えるが,福島第1原子力発電所の消火作業は依然として深刻な状況のままである.そして,東京電力の計画停電が否応なしに実施されている.被災地からは食料,燃料,何もかも足りないという悲痛な声が聞こえている.
折も折,最悪な巡り合わせで,東日本は季節外れの西高東低の気圧配置になる,強い寒波が東日本を襲っている.被災地に無情な雪が降り続いている.何ということだろう.ただならぬ緊張感が,被災していない私達の周辺でも漂い始めている.
今,この時間,私達の家があるグループ1は,計画停電の時間帯である.停電になると,ほとんど一切のことができなくなる.私達は,何時の間にか,生活のすべてを電気に頼るようになってしまった.いざ,停電してみると,炊事洗濯,家事一切,停電すると一切できなくなる不便さをひしひしと味わっている.
昭和30年代後半の新婚早々の頃を振り返ってみると,プロパンガスが普及し始めていたが,台所の片隅には七輪があったし,薪を燃やして炊飯をしたり,風呂を沸かしたりすることは,ちっとも特別なことではなかったし,トイレもくみ取りだった.インターネット自体もなかった.そんな生活は当たり前で,特段,どうこう言うこともなかった.
それがどうだろう.高々40年ほどの間に,すっかり電気を使う生活に,すっかり馴れてしまった.計画停電が始まるまでは,電気を使うことに何の抵抗感もなかったし,いつの間にかそんな生活にすっかり慣れてしまったので,停電が長引くと大変困ってしまう.
JRを初め首都圏の私鉄は,電力不足で,平常時の50パーセントほどの電車を,ヤットコ,サットコ,動かしている状態である.こんな最中の混雑する電車の中,物見遊山のリュック姿で乗り込んで,通勤客に迷惑を掛けるわけにもいかないので,週に2回ほど登ってきた丹沢塔ノ岳行も自粛している.自粛が長引くにつれて,自分の足腰が弱まってしまうのではないかと心配になる.
私は,計画停電の時間を利用して,鎌倉一帯をグルリと一周してこようかと思い立つ.
<心地よい山ノ内の散策路>
■山ノ内から西瓜ヶ谷へ
9時52分,バス停鎌倉中央公園入口から歩き出す.今日は,昼過ぎまで,とにかく歩き回ることにする.歩くのが目的なので,良く知られている場所やハイキングコースを一回りするつもりである.その間,電車だけでなく公共交通機関を一切使わないので,極々,微量ではあるが,省資源にも貢献しているつもりである.
山の上ロータリーで左折して,大平山から山ノ内に向かう尾根沿いの住宅地を西へ向かう.そして,山ノ内配水池の手前から台峯緑地の東側の尾根道を下って,北鎌倉駅に向かって下山する.
<山ノ内の展望台から六国見山を望む>
■北鎌倉のコンビニ
北鎌倉駅近くのコンビニに立ち寄る.
北鎌倉周辺は,計画停電では,大船辺りと同じグループ5に入っているとばかり思っていたが,辺り一帯が停電している.コンビニでオニギリを2個ほど買うつもりだったので,当てが外れたなとガッカリする・・が,コンビニは停電の最中にも,ちゃんと営業している.これには感激.
私はレジにいる奥さんに,
「・・停電の最中に営業しているって・・凄いですね!」
と話しかける.奥さんはニッコリしながら,
「凄いでしょ!・・・でも,夕方5時を過ぎると真っ暗になるので,(店を)閉めています」
「ところで,ご主人,お変わりないですか」
「相変わらずですが,口ばかり達者で・・」
実は,もう10年以上も前から,私は鎌倉を一回りするときは,何時もこのコンビニに立ち寄って昼食を購入している.そんな関係から,ここのご主人とは懇意にさせていただいている.その内に一緒に鎌倉を散策しましょうと約束したまま果たせないうちに,ご主人は体調を崩されてしまった.
奥さんから,「口ばかり達者で・・」と伺ったときに,ちょっと安心して,ホッとする.
このところ,物忘れが多くなってきた自分と比較して,頭が冴えているご主人の健在が嬉しい.何時の日か店頭でご主人にお目に掛かれる日が来ることを期待して店を出る.
北鎌倉駅に到着する.
駅前は閑散としている.やっぱり,時節柄,観光を控えられている方が多いようである.
<観光客が居ない北鎌倉駅前>
<閑静な路地裏道を行く>
■明月谷から天園ハイキングコースへ
10時45分,名月谷登山口に到着する.ここへ来るのは久々のことである.住宅地の中の急坂を登って,左折.山道に入る.相変わらず誰も居ない.このところ雨が降っていないので,登山道の路面は良く乾いている.
10時55分,名月院裏山の山頂に到着する.ここから,少し長い階段道を下って,今泉台4丁目の登山口を通過する.進行方向左手には,つい先日散策した六国見山が見えている.
11時01分,勝上嶽(「嶽」の正字は「山」冠に「献」)に到着する.ここは,建長寺から長い石段を登って,半僧坊からさらに上に登ったところである.山頂の展望台で風景を眺めるために5分ほど休憩を取る.
眼下に七里ヶ浜から藤沢付近の市街地が良く見えている,その向こうには,茫洋と少し霞んだ富士山や,丹沢,箱根の山々が,とても良く見えている.
<勝上嶽から富士山を望む>
■十王岩
11時08分,勝上嶽から天園ハイキングコース沿いに歩き出す.何時もならば,かなり沢山の登山客とすれ違うはずだが,今日は全く登山客の姿はない.
11時17分,十王岩に到着する.久々の十王岩なので,ここからの眺望を楽しもうと思う.丁度そのとき,わめき十王から登山道に下ってくるご夫婦とすれ違う.軽く挨拶.
十王岩から,鎌倉の市街地を望みながら,この風景をデジカメに収める.
■四国大窪寺薬師如来像
11時19分,四国大窪寺薬師如来像の前に到着する.丁度このとき,先ほどのご夫婦に追いつく.
話題が逸れるが,鎌倉検定の通知の中に,鎌倉市から観光客に鎌倉を説明してあげて下さいという文章が配られていたことを思い出す.とはいえ,やたらに纏わり付くのも迷惑だなと躊躇しながら,
「ここが準四国八十八カ所めぐりの88番目大窪寺薬師如来像です・・素通りしないで,ちょっと五案になったら如何ですか・・・」
とお誘いする.
ついでに,傍らのヤグラの中にある石仏群を紹介する.不思議なことに,ここには87番目が欠落している.もう,10年以上も前のことになるが,山仲間の仙人達と,これを探し回って,崖下の某所にあるのを見つけたが,ここでは場所を伏せておこう.
たまたま通りすがりの二階堂の老紳士と雑談をしている間に,ご夫妻は私より先を歩かれる.
■百八ヤグラ
老紳士との雑談を終えて再び歩き出す.
ところが,百八ヤグラ前の十字路で,再び先ほどのご夫婦に追いつく.
「すぐそこに百八ヤグラがあります.ついでだから見ていきませんか・・」
とお誘いする.そして,上から2層目のヤグラ群だけを見学する.
私もここを見学するのは半年ぶりのことである.
百八ヤグラの2層目を一回りしてから,
見学後,お互いに名刺交換.ご夫婦の旦那さんは,退職前の私とご同業.何となく安心する.勿論,この旦那さん,まだバリバリの現役である.
ここで,ご夫婦とお別れして,先に行かせて貰う.
■大平山山頂
途中,汗をかきながら歩いている年配の男性を追い抜いて,12時16分,鎌倉の最高峰大平山山頂に到着する.昼時にもかかわらず,山頂直下の広場には人影が全くない.こんなことは極めて珍しい.
今日は天気が良いので,東京湾の野島公園,さらにその向こうに千葉の海岸が良く見えている.また,三浦三山もおだやかに見えている.
<大平山山頂から三浦三山が見える>
■峠の茶屋
久々に峠の茶屋に立ち寄る.
「おや~ッ・・いらっしゃい! 死んじゃったかと思ってましたよ・・」と
峠の茶屋の女将が冗談を言う.近くに居るご常連が,
「長い間来ないと死んだことになっちゃいますよ・・」
と笑う.
150円也のスプライトを所望する.
客席では,エンちゃん他ご常連が数名,テーブルを囲んで一杯やっている.相変わらずの風景である.
先ほどコンビニで購入したオニギリとスプライトで昼食を済ませる.
<峠の茶屋:ご常連が元気だ>
<大平山岩塊からの展望>
■貝吹地蔵
12時37分,峠の茶屋を出発する.今日はオーソドックスな経路を辿って瑞泉寺登山口に下山することにする.
12時48分,貝吹地蔵前を通過する.谷間を下りて,お塔ノ窪ヤグラを見物しながら番場ヶ谷に出ようかと迷うが,今日はオーソドックスな道を歩くんだったなと思い返す.
■北条首ヤグラ
12時56分,登山道の傍らにある北条首ヤグラの石柱案内板の写真を撮る.この石柱は,石柱の添え書きによると天保12年に造られたものである.天保12年は,勿論,江戸時代,西暦1841年である.ペルリの黒船が来る12年前のことである.
その頃はどんな時代だったんだろうかと想像する.こんな想像を逞しくするのも楽しいことである.
たまたま通りかかった老夫婦に,
「これ何ですか?」
と聞かれる.これを機会に,近くにある北条首ヤグラを一緒に見学する.
■大塔宮
この老夫婦とは,明王院分岐でお別れして,私は瑞泉寺口を目指す.
13時23分,瑞泉寺口に下山する.何時もならば,この辺りから観光客が多くなるはずだが,観光客は1人も居ない.空きすきの道を歩いて,13時29分,永福寺跡を通過,13時34分,大塔宮(鎌倉宮)に到着する.
近くの木から,ウグイスの啼き声が聞こえてくる.
■鶴岡八幡宮
13時51分,鶴ヶ岡八幡宮に到着する.さすがに,ここでは観光客の姿が見えるが,何時もより随分閑散としている.
池の畔にある幼稚園.今日は卒園式があったようである.日の丸と卒園式の看板が何となく微笑ましい.
■ガソリンスタンドの長い行列
途中,コンビニに立ち寄るために,若宮大路を南へ下る.若宮大路はただならぬ雰囲気である.歩道側の車線には駐車する自動車が長蛇の列を作っている.この列がピタリ止まっていて,全く動かない.
コンビニで飲み物を購入した序でに伺うと,この車の行列は給油待ち.由比ヶ浜にあるガソリンスタンドまで続いているそうである.これは大変だ.
<由比ヶ浜のガソリンスタンドから続く長蛇の列>
■刃稲荷
雪の下1丁目から横須賀線踏切を渡る.
住宅地の路地脇にある刃稲荷を参拝.ここは刀工正宗の屋敷跡である.ここから短いトンネルを潜って,寿福寺境内に入る.
■太田道灌の墓
寿福寺の墓地を囲む崖沿いの道を登る.途中,太田道灌墓の前を通過する.
道路を挟んで反対側の竹藪の中に「了得院殿」と刻字した石塔があるはずだが,余りに竹藪が繁茂しているので,どこにあるか分からない.
一体,了得院殿とは誰なのだろうか?
どなたかが太田道灌の奥方だといっていたが,ハッキリしない.
■源氏山公園
14時22分,源氏山公園に到着する.今日も天気が良いのに,人っ子一人居ない.不気味なほど静かである.
源頼朝像の広場,化粧坂を通り抜けて,葛原岡神社を詣でる.ここで,やっと2人の観光客の姿を見つける.人気のないところばかり歩いてきたので,何となくホッとする.
<人懐こいネコに会う>
■山ノ内配水池から鎌倉中央公園へ
14時39分,源氏山を後にする.山の上通りの桜並木に沿って,大平山住宅地に入る.
14時53分,鎌倉中央公園梶原口に到着する.園内を一周して,バス停鎌倉中央公園入口を目指す.
獅子岩までは全く人影がなかったが,下の池付近の広場に入ると,近所の子ども連れの方々が,芝生にシートを敷いて遊んでいる.やっと人影を見つけて,安堵した気分になる.
15時15分頃,無事帰宅.
塔ノ岳へ行ったときほどは歩いていないが,まあ,まあ,ある程度堪能するだけ歩き込んで大満足である.
<鎌倉中央公園の市民農園>
■電気のない所で夕食
グループ1に属する我が家は,夕方から計画停電.非常用の乾電池の光の下で夕食.相変わらず長女が孫2人を連れて宿泊している.食卓は暗いけど賑やかである.
何時まで,この非常事態が続くのか気がかりである.このまま日本が沈没してしまうのではないかと,少し不安になる.
そして,私自身,こんな行き当たりばったりの日常を送っていて良いのだろうかと,反省すること頻りである.
<ラップタイム>
9:52 バス停鎌倉中央公園入口歩き出し
10:08 山ノ内配水池
10:12 山ノ内展望台
10:24 北鎌倉某コンビニ(10:30まで買い物)
10:45 名月谷登山口
10:55 名月院裏山山頂
10:58 今泉台登山口
11:01 勝上嶽山頂(12:08まで展望休憩)
11:17 十王岩展望台
11:19 大窪寺薬師如来(11:25まで)
11:23 百八ヤグラ十字路(11:40まで見学)
12:16 大平山山頂
12:22 峠の茶屋(12:37まで昼食)
12:48 貝吹地蔵
12:56 北条首ヤグラ(13:00まで見学)
13:23 瑞泉寺登山口
13:29 永福寺跡
13:34 大塔宮
13:31 鶴岡八幡宮
14:15 寿福寺登山口
14:22 源氏山公園(14:39まで散策)
14:44 山ノ内配水池
14:53 鎌倉中央公園
15:13 バス停鎌倉中央公園入口
[散策記録]
■水平歩行距離 13.2km
■累積登攀下降高度 494m
■所要時間(休憩時間込み)
バス停鎌倉中央公園発 9:52
〃 着 15:13
(所要時間) 5時間21分(5.35h)
歩行速度 13.2km/5.35h=2.47km/h
(おわり)
「鎌倉あれこれ」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/ad9d84944cbf3f2174b5f9a11d18a8c8
「鎌倉あれこれ」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/19ea9e0a1971537ee463c678fe518605
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