<ワカティブ湖を望む>
ルートバーン(6):ニュージーランドへ(3)
(湘南カラビナ隊)
2005年1月28日(金)~2月6日(日)
第2日目:2005年1月29日(土)
<飛行ルート>
5.いよいよクイーンズタウン
■オークランドでトランシット
昨夜18時45分に成田国際空港を離陸した私たちは,約9時間の退屈なフライトの後,1月29日朝9時09分にオークランド国際空港に着陸した.
9時15分,駐機場に停止.スクリーンの表示によると,外気温は19℃である.
9時22分,飛行機から降りる.
9時50分,入国審査.数十人の行列ができている.ジグザクに張られたテープ道を辿りながら,順番に入国審査を受ける.テープ道には,入口が2カ所ある.だが,テープの張り方が,すこし変なので,片方の入口を辿ってみると,審査をする窓口が1カ所しかないのに,もう一方の入口を辿ると数カ所に窓口にたどり着ける.
どこかのツアーの添乗員だろうか.小太りした中年の女性が,日本語で,
「このテープの張り方,ちょっとおかしいですね」
と言いながら,審査員にテープの張り方を直すように申し入れる.しかし,申し入れを受けた審査員は,事情が飲み込めないらしくて,
「これで良いんです・・・」
と仕草で答える.そこで,この女性は,
「皆さん,こちらへ並び直した方が早いですよ」
と並んでいる乗客を促す.
私も,テープを潜って並び直す.行列はどんどん短くなり,すぐに私の番になる.若い女性の係員が「ハロー」といいながら,私のパスポートをペラペラとめくる.そして,一瞬,ちらりと鋭い視線を私の方に向けて,パスポートにポンと印を押して,私の方にパスポートを投げ返す.
9時56分,バゲージクレイムを済ます.預けた荷物はすぐに出てくる.係員が登山靴の底を入念にチェックする.靴の底に泥がついていると,とても面倒なことになるというので,私も家を出るときに,念には念を入れて,靴底を水洗いしてきた.
10時4分,出口から待合室に出る.待合室の入口で,現地ガイドのT石さんが「アルパインツアー」と書いた紙を持って,私たちが出てくるのを待っている.
一同,T石さんの後について,かなり離れた場所の建物にある国内線のカウンターまで,ゾロゾロと移動する.余談になるが,これまで私も仕事で何回となく海外を旅行したことがある.こんなときは,当然,出迎えなどなく,訳の分からない外国の地で,下手な片言英語で,タクシー乗り場を探して,ホテルへ移動するのが当たり前の私には,手取り足取りのツアー旅行は,拍子抜けするほど有り難く感じる.
(注)同行者の写真の掲載については,全員の承認を得ている.
<オークランド空港>
<こちらを向いている女性左が現地ガイドのS水さん,右が空港乗り継ぎのガイドT石さん>
■まずは食事
15時25分,国内線NZ641便クイーンズタウン行にチェックインする.Sさんがきめ細かく何もかもしてくれる.有り難い.
国内線のチェックインも国際線ターミナルで可能である.チェックイン後,再びロビーへ戻る.
10時37分,空港内の通貨交換所で,とりあえず1万円を現地通貨に換える.1万円が123.5ニュージーランドドル(以下たんにドルと表記)である.逆に1ドルが77円82銭である.2年前,ミルフォードサウンドを訪れたときは,1 万円が146.18ドルであった.あのときに比較すると,ここ2年間で,随分と円が安くなっている.
まだ時間がある.空港内の店をウインドウショッピング.何もかも割高に感じる.
11時15分,空港内のレストラン「葉山」で昼食.海苔巻きとみそ汁を注文する.海苔巻きは5貫で6.5ドル.海苔巻きの中身は,アボガド,キュウリ,シャケ,チキンなどで,少し変わっている.みそ汁は2ドル.ただ味噌をお湯で溶いただけのような味がする.とろとろになったワカメの切れ端が2片ばかり,汁の中で漂っている.
フクロウが突然トイレへ行く.
■国内線ターミナルへ移動
11時46分,全員集合.ここから,20分ほど掛けて,国内線ターミナルまで徒歩で移動する.暑い.もちろん,国際線ターミナルと国内線ターミナルの間には,20分おきに循環バスが動いている.でも,今日は天気がよいので,Sさんが歩いて移動することにしたらしい.
国際線ターミナルを出る.暫くの間,直進する.やがて右折,さらに左折して,約20分後,国内線ターミナルに到着する.途中,大きな荷物を引きずりながら,ウンザリした表情で汗をかきながらターミナル間を移動する人たちと,何人もすれ違う.ここで現地ガイドとはお別れである.
<国内線ターミナルへ歩いて移動>
■クイーンズタウンへ
12時34分,チェックイン.搭乗口は32番ゲートである.ゲート付近のベンチに腰を下ろす.眠い.とにかく眠い.ついウトウトとする.
12時34分,ボーディング開始.NZ641便,クイーンズタウン行である.
私の席は9A,窓際である.小さな飛行機である.中央の通路をはさんで左右に3列の席が並んでいる.席に座って,ついウトウトする.
知らぬ間に,飛行機はゴウゴウと単調な連続音を発しながら飛行している.窓外は海である.夏の海が青く光っている.
13時20分,お茶とクッキーが配られる.お茶が美味しいのでお代わりをする.
ひどく訛った英語で頻りにアナウンスがある.皆目聞き取れない.単語一つすら分からない.一応,英語を習っているのに・・・まことに情けない.
13時43分,眼下に南島が見えてきた.入り組んだリアス式の海岸線.ところどころに集落が見える.曲がりくねって流れる川に沿って道路が走っている.のどかな風景である.
「あの辺り,散歩してみたいな.気持ちがいいだろうな」
と誘惑に駆られる.
白い羊の群のようなちぎれ雲が眼下一面に広がっている.はるか南には峨々とした山脈が雪を被って連なっているのが見える.機内の温度が少々高い.何となくけだるい雰囲気が漂う.私の隣の席で消防署員,仁王様のお二人が,上体を揺らしながら居眠りをしている.
やがて,飛行機は残雪深い山脈すれすれに飛んでいる.眼下に氷河湖特有のクネクネした長細い湖が見え始める.湖水が青色に輝いている.
「ああ,あれがグレーシャーブルー(注1)ですか」
いつの間にか目を覚ました仁王様が感嘆している.
14時03分,キャビンアテンダントが飴を配る.
14時08分,飛行機は,突然,雲の中に入ってしまう.辺りは真っ白.時折,雲間から下界が覗ける.私の席は進行方向の左側.右側の窓際の席に座っている消防署長が,
「右手に雪を被ってまっ白な素晴らしい山脈が見えますよ」
と言っている.早速,デジカメで撮って貰い,私たちの席まで回して貰う.画像の右下に飛行機のエンジンが大きく写っているが,その先に切り立った山脈が連なっているのが見える.多分,これがニュージーランド南アルプス山脈なのだろう.
14時18分,進行方向左手に,氷河湖特有の曲がりくねった湖がいくつも見えるようになる.素晴らしい景観である.
14時23分,晴れの領域に入る.飛行機は次第に高度を下げている.エンジン音が心なしか静かになっているような気がする.辺りの山々がだんだんと立体的に見えるようになってくる.
14時29分,日光がさわやかに当たっている丘陵すれすれに飛行機は高度を下げている.丘陵を超えると大きな青い湖が光っている.対岸には町並みが見える.クイーンズタウンである.
14時33分,飛行機は,無事着陸する.「ズシン」と軽い衝撃で機が揺れる.山に囲まれた広い空港である.駐機している飛行機は殆どない.
14時36分,停止.「ポン」と合図のチャイムが鳴る.
<クイーンズタウン空港に着陸>
■クイーンズタウン空港到着
14時42分,飛行機から外へ出る.まぶしい太陽が光っている.目の前のギザギザ山が素晴らしい.明日ハイキングするリマーカブルズ山脈(The Remarkables)である.
14時45分,現地ガイドと対面.セカセカとした大柄の女性である.14時46分,預けた荷物を受け取る.荷物を載せた数台の台車が連結したまま停まっている.乗客は,台車から自分の荷物を探して勝手に引き出すという面白いシステムである.
15時50分,トイレに行く.便器の位置が高い.何時も,この便器の位置で外国へ来たことを実感する.
<クイーンズタウン空港からリマーカブルズ山脈を望む>
■ワカティブ湖
14時56分,関西空港から来た2人と合流する.そのままリムジンに乗車する.これでアルパインツアーの総勢12人が揃ったことになる.空港はクイーンズタウン市街地の東南に位置している.空港からクイーンズタウンまで,リムジンバスで小1時間掛けて移動する.
現地ガイドによると,今日は,最近にない素晴らしい天気だという.この天気を愛でて,見晴らしの良いところを通りながらホテルへ向かうという.
進行方向左手に青い水をたたえた大きなワカティブ(Lake Wakatipu)湖が見える.現地ガイドが,
「ワカティブは巨大な悪魔が横たわる湖という意味です」
と説明する.仁王様が,
「スバラシィ.スバラシィ・・・」
を連発しながら,頻りにカメラのファインダーを覗き込む.
15時10分,見晴らしの良い小高い所で駐車する.手元の高度計では標高465メートルである.前方にワカティブ湖,その対岸にギザギザと切り立ったリマーカブルズ山脈が見える.辺りは閑静な住宅地である.広々とした敷地に小綺麗な建物が建っている.
ガイドに,
「この辺りの住宅はいくらぐらいで買えるんですか」
と聞く.大体,3000万円程度で買えるらしい.うらやましい.ガイドが,すかさず,
「ニュージーランドの1人当たりの年収は,日本の大体3分の1ですよ.ですから,結構高いんですよ」
と付け加える.
<ワカチブ湖を望む>
(注)
1.グレーシャー(Glacier)は氷河のこと.
氷河で削られた細かい土が,湖の水中に漂い,湖水に射し込む太陽の光の
中から青色を強く反射するために,湖が美しい青色に見える.この青色のこと
をグレーシャーブルーと呼んでいる.
(つづく)
「ルートバーン」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/bf7400e9bb23812d7eb1a0c7490e41e7
「ルートバーン」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b9473320f478397baa19ae19cd778562
[編集後記]
2011年3月16日(水).曇.寒い一日
テレビでは,相変わらず大震災関連の報道を繰り返し流している.昨日,菅総理大臣が東京電力に乗り込んで,東京電力に“危機感が薄い”と苦言を呈したと報道される.
原子力発電所の事故は,一向に収束に向かう兆しが見えない.
素人の私でも,今回の事故がチェルノブイリの事故ほどにはならないことは,何となく分かるが,でも,やっぱり恐ろしい.悪夢だ!
今日は.東京周辺のJRや私鉄の電車も,平常時のおおむね50パーセント程度は動いているようである.しかし,その一方で,東京電力の計画停電が本格的に実施されるようになった.
私の家がある地域も,大船駅周辺も,同じ鎌倉市内だが,停電のグループが違っている.
ノートなどの文房具を買い足したかった私は,大船が別グループであることを忘れて,午前中にうっかり大船へ出掛けてしまった.勿論,徒歩である.
鎌倉中央公園を抜けて,山崎から大船に差し掛かる頃,信号機が消えているのを見て,「しまった・・・!」と思ったが,後の祭り.
「まあ,いいか,運動になるさ・・」
で,大船駅まで歩いてしまう.駅前周辺の店は殆ど閉店している.閉店しているのを知ってか,知らないのか,結構,沢山の人たちが街中を歩き回っている.
仕方がないので,一旦,家に帰る.そして午後,今度は私の家の近くが停電している間に,もう一度大船まで出掛ける.
夕方,山旅スクール5期「鎌倉トレッキング会」のメンバーに,3月20日に開催予定だった定例会を中止する旨を知らせるメールを送る.残念だが・・・
まだ,まだ,交通事情が逼迫している.不要不急の外出は避けるべきだろう.それに,混雑する電車に,,リュックを背負って乗り込むのも,企業戦士の通勤客でに迷惑を掛ける.また,こんな世相の中で,ノホホンとハイキングなどしていたら被災地の皆さんに申し訳が立たない.
とはいえ,私は,できるだけ早い時期に,塔ノ岳を往復したい.前回塔ノ岳を往復したのが3月8日(火)である.次は13日(日)に登るつもりだったが大震災.もう,8日間も間が空いている.ブロイラー化,間違いなしである.でも,こんな悩みは小さい小さい.田作(ごまめ)の歯ぎしりである.
それに,被災地に対して,何もできない自分の無力さも悲しい.せいぜい,家の電気をこまめに消すことぐらいか・・・・
本日のボヤキはこれで終わりにするか.
(ぼやきおわり)