<塔ノ岳山頂から富士山南アルプスを望む>
富士山・南アルプスの眺望とネコに癒される丹沢:塔ノ岳(今年58回目)
(単独山行)
2014年12月24日(水) 快晴
■今日はシャリバテにならないぞ
年の瀬も押し迫った.
昨日(12月23日),何とかン百枚の年賀状を発送した.まだまだやり残しの雑務は沢山あるし,頂戴した手紙などにお返事が未だのものも沢山残っているし…パソコンのご機嫌も斜めだし…でも,まあ,それはそれとして,今日は1週間ぶりに塔ノ岳に登ろうかと思う.
今は1年でも最も日が短い時期である.それに今朝は聖天なので放射冷却でシッカリ気温が下がっている.4時10分,家を出る.外は真っ暗でとても寒い.
”何も好き好んでこんなに早く出掛けなくても良いのに…”
いや,全くその通りである.出発時間をあと2時間遅らせたって,夕方までに十分帰宅できるのに…
でも,習慣とは恐ろしい,こんなに早く出掛けるなんて意味がないと分かっているのに,そうしないと気が済まないのである.
ところで,前回は歩き出してから1時間半ぐらい経ったところでシャリバテになってしまったので,今日は朝食をバッチリ摂ろうかと思う.そこで電車に乗る前に大船駅近くの某牛丼店に入って朝定食をシッカリと食べる.ただし,半ライスだが…
■大倉から歩き出す
小田原で東海道本線から小田急線に乗り換えて,6時20分に渋沢駅に到着する.大倉行1番バスに乗るにしても早すぎる時間なのに,先客が2人も居る.今日はどうやら常連客以外の方々が多そうである.
1番バスはほぼ客席が埋まる程度の混雑である.乗り合わせた常連さんは,韋駄天NMさん,毎日登山のTGさんとYKさん,三角髭のTDさん,SSKさん,NMさん,IWIさん.
車中で韋駄天のSTさんが昨日転倒して怪我をしたという話を聞く.他人事ではない.桑原,桑原…何をさておいても安全第一だと肝に銘ずる.STさんが一日でも早く塔ノ岳に復帰することを祈念したい.
バスは7時丁度に大倉に到着する.
私は,歩き出し直後,実にユックリとした速度でしか歩けない.そうしないと後半のリズムが狂ってしまいシンドイ思いをすることになる.私は近くに居られるTGさん,SSKさん,NMさんに,
「私,ユックリペースでしか歩けませんので,先に出発します…」
とお断りして,7時06分,大倉から歩き出す.
天気は上々.どうやら路面は乾いているようである.私は数十メートル後からNMさんたちの話し声を聞きながら,完全なマイペースで歩き続ける.ほどなく後ろから来られた三角髭のTDさんに追い抜かれる.その一瞬,私は途中までTDさんと一緒に歩こうかとも思ったが,”待てよ…”
TDさんの後ろ姿は少しずつ小さくなっていく.
■見晴階段
7時20分,丹沢ベースを通過する.どういう訳か,今まですぐ後ろから聞こえていたNMさん達の話し声が段々と遠ざかる.そして,前を歩いているTDさんの後ろ姿も私の視界から消える.そして,何時の間にか私の完全な一人旅になる.
7時49分,見晴茶屋を通過する.大倉から歩き出して43分経過している.元気なときの私の標準ラップは40分なので,ちょっと遅い歩きである.
すぐに見晴階段に差し掛かる.ここで,恒例の定点観測写真を撮る.急階段の途中に何人かの登山者の後ろ姿が写っている.階段の中腹辺りを登っているTDさんの後ろ姿も小さく見えている.
"まだ今ならTDさんに追いつけそうだ…"
と良からぬ雑念がふと過(よ)ぎる.
”ダメ,ダメ,ダメ~ェ…!”
私は雑念を振り切って,極力自制してユックリ,ユックリと登り続ける.
<見晴階段>
■駒止茶屋
見晴階段を登り切る.後ろを振り返ってNMさん達が登ってこないかを確かめるが,姿が全く見えない.
"もういいや…山頂まで一人旅を続けよう…"
8時06分,一本松を通過する.大倉を歩き出してから丁度1時間経過している.僅か数年前までは,1時間で駒止茶屋近くまで達していたのに…この体力の衰退振りには情けなくなるが,これも現実.認めざるを得ない.
駒止階段をゆっくりと登り続ける.階段の途中で名前は知らないが見覚えのある女性を追い抜く.
8時21分,ようやく駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間15分.本当は1時間05~08分程度のラップで楽に歩ければ上々なのだが,なかなか…
<駒止階段>
■堀山の尾根道
堀山の尾根道に差し掛かる.冷たい風が吹いている.登山道の路面が凍結している.昼間になると融けて泥んこになるらしく,無数の凸凹の足跡がそのまま凍結している.
"この泥んこが融けない内に下山できたらいいな…"
富士山が見える場所に到着する.今日は文句なしに良く見えている.私はここで写真タイムを取ることにする.望遠にしたり,広角にしたり,カメラを上に向けたり,下に向けたり…とにかく手を変え品を変えて沢山の写真を撮る.そして,私のバカカメラで撮った駄作の中から,まあ,まあ,何とか富士山が写ったのが下の写真である.6合目ぐらいまで雪に覆われた富士山は実に美しい.
<堀山の尾根道からの富士山>
■小草平
8時40分,小草平に到着する.今日は平日,堀山の家は閉まったまま.小草平で休憩を取っている人も居ないので,辺りは静まり返っている.杉木立の間から,相変わらず富士山が良く見えているが,私のカメラでは露出オーバーになってしまい,富士山は全く写らない.
大倉からの所要時間は1時間34分,かなり遅めである.ここで後ろを歩いているに違いないSSKさん達を舞っていようかと思ったが,折角のリズムが狂うのも難儀なので,そのまま一人旅を続けることにする.
<小草平>
■萱場平
途中,富士山の眺めを楽しみながら,いよいよ核心部分の長い坂道に差し掛かる.私は,”絶対に汗はかかないぞ”,”呼吸が乱れるような歩き方はしないぞ”と自分を律しながら登り続ける.
ところが,戸沢分岐が近付く頃,またまた空腹感に襲われる.前回と同じである.
9時丁度に萱場平に到着する.ここで立ち休憩を取って,オニギリ1個をほお張る.すると不思議なもので,空腹感は立ち所に雲散霧消する.
私がオニギリをほお張っていると,2番バスで来られたTTさんが目の前を通過する.いくら足が遅い私でも,萱場平で30分もの差が付くとは…自分の情けなさに意気消沈.ガッカリ,でも,5分ほどでオニギリタイムを終えて,再び萱場平から歩き出す.
<萱場平>
■花立山荘
萱場平の木道を過ぎると,物凄い泥んこ道が100メートルほど続く.無数の足跡が深い凸凹のまま凍結している.
"この泥んこが融けない内に下山しなければ…"
凍結した泥んこ道を通過して,階段道に差し掛かる.ここまで来れば花立山荘まで10数分の辛抱である.
どこかで道草をしていたTTさんに一旦追い付くが,すぐにまた引き離される.
後七分坂の手前で下山してくるNMさんとすれ違う.
"この速さの差は一体何だ!…すげぇ~!"
またまた私はコンプレックス.
9時17分,後七分坂に到着する.ここからの富士山の眺めもなかなかなもの.私はカメラを構えて,数枚の写真を撮ってから,後七分坂を登り始める.
今日は極力暴走しないように自制しながら登ってきたので,後七分坂も軽い足取りで登れることに気がつく.
9時24分,花立山荘に到着する.後七分坂を丁度7分で登ったことになる.大倉からの所要時間は2時間19分.遅い!! 実に遅いぞ.でも,仕方ないさ,年だもの.
小草平からの所要時間は45分.こちらは萱場平で食事をしたロスタイム5分だけ余計に時間が掛かっている.
富士山が相変わらず良く見えている.
山荘前のベンチには登山客が1人,休憩を取っている.先ほど後七分坂で私を勢いよく追い抜いて行った方である.
"オレを追い抜いたんだから,こんなところで休憩を取らずにサッサと登ったら…"
と無言の捨て台詞.そして,花立山荘を通過する.
<花立山荘から富士山を望む>
■花立山
今日は疲労感が全くないので,花立山までの坂道も実に楽に登りきる.ただ,山頂付近からの眺望が実に素晴らしいので,またもや道草.花立て山からの前後左右の眺望をデジカメに収める.
花立山から先の凍結が気になっていたが,今日はアイゼンなしで全く問題なく歩ける.私は周囲の眺望を楽しみながらルンルン気分で歩き続ける.
9時38分,金冷シを通過する.
<花立山から富士山と南アルプスを眺める>
■塔ノ岳に到着
塔ノ岳山頂直下の階段に差し掛かったところで,下山してくる三角髭のTDさんとすれ違う.ほぼ同じ時間に大倉から歩き出したのに,これだけの時間差が付いてしまうから脅威である.
9時54分,やっと塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温はマイナス6℃.弱いながらも冷たい風が吹いている.まだ時間が早いので,山頂で休憩を取っているのはほんの2~3人だけ.
大倉からの所要時間は2時間48分.かろうじて40分台である.花立山荘からの所要時間は29分.金冷シからは14分.まあ,まあ,私の標準時間である.
<塔ノ岳山頂>
■塔ノ岳山頂から富士山と南アルプスを望む
今日の塔ノ岳山頂からの眺望は実に素晴らしい.空気が透明で,富士山だけでなく,遠くの南アルプスの山々までクッキリと見えている.何とも素晴らしい.
風が冷たいので,早く尊仏山荘に飛び込みたいが我慢をして写真を撮りまくる.
<塔ノ岳山頂から富士山と南アルプスを望む>
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■風の音
下山口の方を振り返ると,光る海が広がっている.相模湾である.右下に真鶴半島が小さく見えている,その向こうが伊豆半島である.出石地塘の大島も見えている.
”こう言うのを鳥瞰っていうんだな…”
と私は1人で合点である.
目には見えないが,相模湾の方から冷たい風が吹き上げてくる.まるでビュービューという音を立てているかのように…
"寒い!"
<塔ノ岳山頂から相模湾を望む>
■尊仏山荘
写真を撮り終えて尊仏山荘に入る.
"あれえっ…! ネコが小屋番!?"
ストーブ前の特等席を華伊達美弥雄君(ミャ~君のこと)が独占している.温かくて気持ちよさそうである.
今日の小屋番はWDさん.何時ものように300円也のお茶を所望する.先客はMTさんとTTさん.
<尊仏山荘に入る>
■猫と戯れる
華伊達美弥雄さんも老齢期を迎えている.そのせいかこの頃随分と人懐こくなっている.
「おい…ミャ~や.元気かな…?」
と声を掛けるが無反応.でも,触っても逃げもせず,されるままにジッとしている.
ストーブの前は,さすがに熱いのか,盛んに向きを変えて座り直す.
温和しいネコである.ネコの写真を撮りながら,猫と戯れる.
<尊仏山荘のネコ,ミャ~君,別名華伊達美弥雄君>
■下りも一人旅
10時12分,SSKさんが尊仏山荘に到着するのと入れ替わるようにして,私1人で下山開始.私は,できれば,大倉発12時22分のバスに乗りたいなと思っている.
"今日は道の状態も良いので2時間もあれば下山できるだろう…"
と皮算用.
ときどき登って来る登山者とすれ違いながら下山し続ける.
10時49分,萱場平を通過する.萱場平手前の凍結している泥んこ道は,今正に融け始めたところである.何とか泥んこになる前に通過する.
11時03分,小草平を通過.
”12時22分のバスは一寸無理かな…”
と思いはじめる.
11時18分,駒止茶屋を通過する.ここで,
"12時22分のバスに間に合いそうだな…"
と気を取りなおす.
駒止茶屋を過ぎれば,難所は駒止階段と見晴階段の2箇所だけ.後のところは歩行速度を上げて歩いても大丈夫だ.私は22分のバスに間に合うと確信して下り続ける.そして,12時09分,無事,バス停大倉に到着する.下りも完全な一人旅だった.
塔ノ岳山頂からバス停大倉までの所要時間は1時間57分.こちらは予定通りだった.
■富士山と矢倉岳
12時22分発のバスまで,少し時間があるので,洗い場で登山靴に付いた泥を洗い流す.近くにいる登山者が私に話しかける.
「山頂まで行ったんですか…?」
「塔ノ岳山頂まで行ってきましたが…」
「やけに,早いですね…」
と,ちょっと疑いの眼である.
”あんたに嘘ついて何の得があるんですか…”
と言いたくなるが,勿論,口には出さない.
バスは12時35分に渋沢に到着する.
"12時37分の電車に間に合うかな…”
私はエスカレーターを速歩で登って,下りホームに駆け込む,丁度そのとき電車が到着する.間に合った!
車窓から富士山が良く見えている.
"よお~しっ…! 矢倉岳と富士山の写真を撮るぞ…"
私は年甲斐もなく,斜めがけに座席に座って,富士山と矢倉岳が重なる一瞬を待つ.こうして写した写真が下の写真である.
<富士山と矢倉岳が重なった!>
■締めくくりはコーヒーだ
電車は,13時00分,小田原に到着する.
"13時04分発,特別快速高崎行に間に合いそうだ…!"
私は乗客でごった返す小田原駅コンコースを抜けて,特別快速高崎行電車に飛び乗る.そしてボックス席を1人で占領する.
電車の窓から射し込む日光に暖まりながら良い気分である.たちまちの内に眠くなる.ウトウトしている内に,ボックス席の空いている場所に人が座っている.
13時33分,大船駅に到着する.
まだ時間が早いので,駅構内のBecker’sに立ち寄って,コーヒーを賞味する.50円の割引券を使って,190円也のコーヒーである.
<Becker’sのコーヒー>
■バス停で孫娘にバッタリ
14時頃,そろそろ時間なので席を立つ.自宅近くを通るバスのバス停方面へ向かうが,天気が良いので,そのまま歩いて帰ろうか,それともバスで帰ろうか迷う.
ちょうどそのとき,孫娘を連れた北鎌倉に住む長女とバッタリ会う.丁度,私の家に向かう途中のようである.孫娘が,
「あっ!…オジイチャンだ,これ持って!」
と重たい買い物袋を持たされる.自動的にバスを利用して帰ることになる.
こう書くと,孫娘がまるで少女のように思えるかもしれないが,実は高校3年生,来春は大学生になる.早々と推薦入試で進学先を決めてしまい,のうのうとした年末を享受している.
"今頃は,他の受験生は,死にものぐるいで勉強して居るぞ…! お前さん,このままでは馬鹿になるぞ!"
と言いたいところだが,ジッと我慢している.
とはいえ,孫娘の底抜けの明るさに,私は随分と救われた気分になる.
今夜はクリスマスイブ.孫娘がデコレーションケーキを作るんだと張り切っている.
今夜の夕食が楽しみである.
■尊仏山荘の元小屋番ONさんからの手紙
私が塔ノ岳に言っている間に,尊仏山荘の元小屋番のONさんから分厚い封書が届いている.何事かなと訝りながら中を見ると,大分前に私がONさんに提供したミャ~君の写真と,ONさんが丹沢で撮影した沢山の写真が同封されている.
私が提供したネコの写真は,ONさんが発刊した単行本の中で,何枚か引用されている.私はONさんのことを懐かしく思い出しながら,ネコと山の写真を堪能する.
ONさんの手紙によると来年1月15日発行の「ヤマケイ」2月号にミャ~君の記事が4ページ掲載されるとのことである.
<元小屋番のON三からの手紙> <沢山の写真が入っている>
■楽しい夕食
私達老夫婦は娘・孫娘と一緒にささやかなクリスマスイブを楽しむ.孫娘が作ったデコレーションケーキはまあ美味に決まっている.そんなわけで,体重が増える危惧がある.困ったものだ.
でもそれはそれとして,今日も大変”良かった 良かった”である.
<ラップタイム>
7:06 大倉歩き出し
7:31 観音茶屋
7:49 見晴茶屋
8:21 駒止茶屋
8:40 堀山の家
9:25 花立山荘
9:39 金冷シ
9:54 塔ノ岳 着(-6℃)
10:12 〃 発
10:22 金冷シ
10:34 花立山荘
11:03 堀山の家
11:18 駒止茶屋
11:40 見晴茶屋
11:51 観音茶屋
12:09 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1,269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:07
塔ノ岳 着 9:54
(所要時間) 2 時間48分(2.80h)
水平歩行速度 7.0km/2.98h=2.34km/h
登攀速度 1,269m/2.80h=453.2m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:12
大倉 着 12:09
(所要時間) 1時間57分(1.95h)
水平歩行速度 7.0km/1.95h=3.58km/h
下降速度 1,269m/1.95h=650.8m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f68f7527ac7c34cd894daaf58e321c72
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/a259e78538c404af640b3a9acf599e13
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