<塔ノ岳山頂付近の樹氷>
樹氷が素晴らしい丹沢:塔ノ岳(今年7回目)
(単独山行)
2010年2月21日(日)
■渋沢発大倉行1番バスは大混雑
初春の今日この頃,早朝の気温は,一時よりも,大分,温かくなっている.そうは言うものの,毎度のことながら,早朝,5時過ぎに家を出るのはつらい.今朝も,何時ものように,“行く,行かない.行く,行かない,・・・”を何度も繰り返してから,4時頃,やっと起床する.所が,毎度不思議なことに,リュックの中身を点検し始めると,俄然,行く気になってくるから不思議である.
渋沢発大倉行1番バスは,天気が良いせいか,沢山の登山客で混雑している.K女史,韋駄天のTさん他,数名のご常連も乗っている.ご常連と雑談を交わしているうちに,バスは大倉に到着する.
韋駄天組やK女史は,すぐに登山を開始する.私は,どうも荷物の始末が下手なので,どうしても歩き出しの時間が遅くなってしまう.1番バスの大半の乗客が歩き出した後,7時12分に,漸く,大倉バス停から歩き出す.
ここ一両日,雨は降っていないはずだが,路面は濡れている.
■見晴山荘を通過
今日も,私は自分自身に,「絶対に無理をするな・・」言い聞かせる.ともすれば,どうしてもオーバーペースになり勝ちな自分を,強くコントロールしなければ,ドンドンと飛ばすに決まっている.そして,最後にはバテてヘタヘタになってしまうのが目に見えている.まして,自分の前に居る登山者は,どうしても追い越したくなるし,逆に追い越されると,抜き返してやろうという敵愾心が湧いてくる.これを,上手に制御しながら,マイペースを維持するのは,結構,大変である.
私は,うっすらと汗ばむ程度の速度で登り続けるように,最大の努力を払いながら登り続ける.それでも,普段登っておられない方々は,次々に追い越させていただく.逆に,威勢の良い若者には,ドンドンと追い越される.
7時47分,見晴山荘を通過する.この辺りから,山影に残雪が見え始める.
見晴山荘を通過して,すぐに大倉尾根の最初の難所,長い階段道に取り付く.坂を見上げると,沢山の登山客が数珠つなぎになっている.
坂道に取り掛かるところで,K女史に追い付く.
「FHさん,先に行って・・」
「ありがとうございます.でも,私も良い年なので,自分の身体を大切に,ユックリ登ります・・」
「そうよ,折角の自分の身体だもの・・大切に使わなきゃ・・」
こんなやり取りのあと,とりあえず先に行かせてもらう.
足許が濡れていて,とても滑りやすい.
<一本松付近から雪道>
■堀山の尾根
登るにつれて,だんだんと残雪が増え始める.
8時32分,一本松を通過する.ますます足許が悪くなるが,我慢してアイゼンなしで登り続ける.そして,滑らないように注意をしながら,長い階段を登って,8時18分に駒止茶屋を通過する.日曜日なので,駒止茶屋も開店しているらしい.
大倉から,駒止茶屋までの今日の所要時間は1時間06分.大分鈍足だが,足許が悪いことを考えれば,まあこんなところかと,無理矢理,納得する.
登山道は,砂交じりの融雪が夜中にまた凍って,足跡の凸凹がそのまま凍りついている.砂地かと思って油断すると,その下に凍りついた氷が潜んでいる.危なくて仕方がない.
やがて,堀山の尾根に入る.平坦な道になるが,路面が凍結していてツルツルである.私は登山学校で習った歩行方法を頭の中で繰り返しながら歩き続ける.
“地面に真っ平らに足をつけろ!”
“歩幅を小さくせよ!”
“後ろに蹴るな!”
“腰を落とせ!”
いわゆるキックステップである.
富士山が良く見える場所に到着する.どなたかが富士見平と呼んでいるところである.辺りが何となく霞んでいて,白みがかった青空に真っ白な富士山が茫洋と見えている.
8時21分に堀山を通過する.ここから,暫くの間,下り坂になる.何時もなら,この下り坂は猛スピードで通過するが,今日は路面を埋め尽くしている融雪が再凍結していて,やたらに滑る.アイゼンを装着しようかなと迷うが,とにかく,何事も練習.この辺りなら仮に滑っても怪我をする心配はない.ノーアイゼンで,堀山の家までは歩こうと決める.
ソロリ,ソロリと慎重に歩いて,8時37分に堀山の家に到着する.
■萱場平
堀山の家から花立て山荘まで,長い急坂が続く.凍結した残雪がますます増える.私は,リュックから4本爪アイゼンを取り出して装着する.
余談だが,これまで6本爪アイゼンと,4本爪アイゼンを使ってみたが,表尾根や大倉尾根を歩いている限りでは,6本爪アイゼンより,4本爪アイゼンの方が,ずっと使いやすいし,4本爪アイゼンで十分だと思っている.その理由は,4本爪アイゼンで,十分登攀下降できるし,雪のないザレ場でも4本爪アイゼンならば,わざわざ脱がなくても,歩けるからである.
私は汗が噴き出ないように加減しながら,坂道を歩き続ける.登るにつれて,残雪は次第に深くなる.
9時01分,萱場平を通過する.ここは泥んこの名所だったが,立派な木道が完成して,とても歩きやすくなっている.
■花立山荘
何人かの登山客を追い越すが,逆に何人かの若い方々に追い越される.
9時16分,漸く「あと7分坂」に到着する.ここは日当たりが良いせいか,残雪はやや少ない.前方には,止まりそうな速度で喘ぎながら登っている人が居る.私も心の中で.
「あと7分,あと7分の辛抱・・・」
と唱えながら,喘ぐように登り続ける.
上を見るとウンザリするほどの長い坂道が見えるので心が萎える.私は足元だけを見つめながら,登り続ける.でも,時々,頭上を見上げて,まだこんなところを歩いているのかとウンザリする.
9時24分,ようやく花立山荘に辿りつく.今日は,7分坂を8分掛けて登ったことになる.大倉を歩き出してから,2時間12分も経過している.遅い! せいぜい2時間ぐらいで登らなければ・・・
山荘前の休憩所には,数名の登山客が屯している.この人たちは,登りか下りか分からない.会話をするのも面倒なので,軽く会釈をして通過する.
<あと7分坂>
■素晴らしい樹氷
9時35分に花立場(花立山)に到着する.途中で写真を何枚も撮ったとはいえ,普段なら花立山荘から花立場まで9分ほどで登れるのに,今日は11分掛っている.やや重装備をしているためか,足が重い.
9時41分に金冷シを通過する.残雪がますます多くなる.山頂に近付くにつれて,1週間前より残雪が多くなったような気がする.
金冷シを過ぎると,気候が一気に冬になる.登山道周辺の枯れ木の枝に残雪が凍りついて,実に見事な樹氷になっている.私はデジカメを取り出して,沢山の写真を撮り続ける.
そうこうしていると,下から見覚えのある白い帽子を被った男性が登ってくる.このブロブでも度々登場するX氏である.私は足を止める.
やがて,汗びっしょりになって登ってくるX氏が私に追い付く.
「そろそろ,追い付かれるかと思っていました・・・」
X氏は,私より1本遅いバスを利用している.つまり,15分遅いバスで大倉に到着したのに,もう追い付かれたことになる.
「私は,写真を撮りながら,ユックリ登りますので,お先にどうぞ・・」
<金冷シ付近から鍋割山稜>
■塔ノ岳山頂
私は樹氷の写真を撮りながら,ユックリと登り続ける.そして,9時58分に塔ノ岳山頂に到着する.
大倉からの所要時間は,2時間46分,いくらアイゼンを付けたり,写真を撮ったりとはいえ,何とも冴えない記録である.ちなみに,同程度の条件でも,昨年の今頃は,2時間25分から30分程度で登っていた.やっぱり,急性胃炎を患ってから,体力が完全には復帰していないなと実感する.
山頂には,10人ばかりの登山者が休憩を取っている.
私は,山頂からの写真を一通り撮るという儀式を済ませてから,尊仏山荘に向かう.
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.沢山の登山客で混雑している.小屋番はオーナーのHさん他,2名体制である.
ネコのミー君が,珍しく客室にいる.少し動いてはすぐにストーブの前に座り込む.山頂の気温はマイナス2.8℃.ネコも寒いんだろう.
オーナーのHさんが,私に話しかける.
「FHさん・・Kさんという方,ご存知ですか・・? 昨日,来られて,FHさんのこと聞かれましたよ」
「えっ! Kさん・・?」
私は,一瞬,誰だろうと戸惑ったが,すぐに誰かが分かった.
そういえば,随分沢山の知り合いが,Kさんと同じ某登山団体に入会している.私自身も,もう何年も前から,入会しようかなと,時々迷うこともあるが,何となくウジウジしているうちに,そのままになっている.
小屋の中が,客でだんだんと混雑してくる.長居して営業を妨害してもいけない.そろそろ下山しようかと思っているところに,入れ替わるようにK女史が山頂に到着する.
<うう~っ・・寒い>
■ジャイアンさん
10時29分に山荘から,X氏と一緒に外へ出る.
山荘の入口でアイゼンを装着していると,ご常連の男性,M氏が到着する.何時も凄く速く登り降りする方である.
「お先に下山します・・・また,何時ものように追い付いてください・・」
ほんの30分ほどの間に,山頂に屯している登山者の人数が,何倍にも膨れ上がっている.こんな寒いところで休憩は堪らないなと思いながら,登山客の間を縫って,下山口へ向かう.
山頂から,ほんの30メートルほど下ったところで,上の方から,大声で,
「FHさぁ~ん・・・!」
と呼ばれたような気がする.周りの人たちも,誰を呼んでいるんだろうと,一瞬立ち止まる.防寒具を着用しているので,遠目では誰だか分からなかったが,このブログでも時々登場するジャイアンさんである.仲間の方々と山行途中,尊仏山荘に立ち寄ったところ,オーナーのHさんから,
「FHさんなら,たった1分前に,小屋を出たところです・・」
と教えられて,私を追いかけたという.有難いことである.
■雑談しながら下山
次々に登ってくる登山客とすれ違いながら,ユックリと下山し続ける.山頂付近では,ふたたび樹氷の写真を撮り続ける.上空には厚い雲が立ち込めていて,富士山はとっくに見えなくなっている.
下山しながら,X氏と,取りとめもない雑談を続ける.Windows 7のこと,胸やけ,ギリシャの経済危機,各国のGDP,円高・ユーロ高,登山靴等々,話題は多岐にわたる.こんな雑談が知的欲求を掻きたてるので,とても楽しい.
「そういえば,FHさんは,あまり汗をかかないですね・・」
とX氏が言う.
「いえ・・逆に汗をかかないように自重しながら歩いているんです」
と答える.
下山は案外順調.堀山の尾根でアイゼンを外す.その後は至って慎重に下山し続ける.
丹沢ベースで,わざわざ休憩を取って,バスを1本遅らせる.
12時40分,丁度バスが発車する時間に,バス停大倉に到着する.下り所要時間は,2時間11分.私たちがバス停に到着すると同時に,M氏も到着する.X氏がM氏に,
「今日は,追い越されませんでしたね・・」
と冗談を言う.
休日に開かれている青空市場を見物.13時11分発渋沢駅行のバスに乗車する.
「これで,今週の行事は無事終わりましたね・・」
とX氏が言う.
なるほど,週に1回登ることを行事と考えれば,気分が楽になるなと感心する.
「でも,週一回では,(体力の)現状維持ができるだけ・・・」
とX氏が注釈する.私もその通りだと思う.私は内心で,
「もう少し頻繁に塔ノ岳詣でを続けないと,なかなか体力は元に戻らないな・・」
と実感している.
15時頃,家に帰る.
長男夫婦が,可愛い孫娘を連れて,我が家を訪れている.爺さんの顔は緩みっぱなしである.孫と一緒の夕食は,とても楽しい.私は心の中で,
「こいつと一緒に山へ登りたいな・・」
と思っているが,反対されるにきまっているので,親には,そんなことを考えているとは,おくびにも出さない.
<ラップタイム>
7:12 大倉歩き出し
7:32 観音茶屋
7:47 見晴茶屋
8:18 駒止茶屋
8:37 堀山の家
9:24 花立山荘
9:41 金冷シ
9:58 塔ノ岳山頂 着
====================================
10:29 塔ノ岳山頂 発(-2.8℃)
10:45 金冷シ
10:56 花立山荘
11:24 堀山の家
11:44 駒止茶屋
12:07 見晴茶屋
12:21 観音茶屋
12:40 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:12
塔ノ岳 着 9:58
(所要時間) 2時間46分(2.77h)
登攀速度 1269m/2.77h=458.1m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:29
大倉 着 12:40
(所要時間) 2時間11分(2.18h)
下降速度 1269m/2.18h=582.1m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/7d828340017d223bdd704ad6e5ffc276
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/13ebd6da3ec766b4b764312c86726cdb
樹氷が素晴らしい丹沢:塔ノ岳(今年7回目)
(単独山行)
2010年2月21日(日)
■渋沢発大倉行1番バスは大混雑
初春の今日この頃,早朝の気温は,一時よりも,大分,温かくなっている.そうは言うものの,毎度のことながら,早朝,5時過ぎに家を出るのはつらい.今朝も,何時ものように,“行く,行かない.行く,行かない,・・・”を何度も繰り返してから,4時頃,やっと起床する.所が,毎度不思議なことに,リュックの中身を点検し始めると,俄然,行く気になってくるから不思議である.
渋沢発大倉行1番バスは,天気が良いせいか,沢山の登山客で混雑している.K女史,韋駄天のTさん他,数名のご常連も乗っている.ご常連と雑談を交わしているうちに,バスは大倉に到着する.
韋駄天組やK女史は,すぐに登山を開始する.私は,どうも荷物の始末が下手なので,どうしても歩き出しの時間が遅くなってしまう.1番バスの大半の乗客が歩き出した後,7時12分に,漸く,大倉バス停から歩き出す.
ここ一両日,雨は降っていないはずだが,路面は濡れている.
■見晴山荘を通過
今日も,私は自分自身に,「絶対に無理をするな・・」言い聞かせる.ともすれば,どうしてもオーバーペースになり勝ちな自分を,強くコントロールしなければ,ドンドンと飛ばすに決まっている.そして,最後にはバテてヘタヘタになってしまうのが目に見えている.まして,自分の前に居る登山者は,どうしても追い越したくなるし,逆に追い越されると,抜き返してやろうという敵愾心が湧いてくる.これを,上手に制御しながら,マイペースを維持するのは,結構,大変である.
私は,うっすらと汗ばむ程度の速度で登り続けるように,最大の努力を払いながら登り続ける.それでも,普段登っておられない方々は,次々に追い越させていただく.逆に,威勢の良い若者には,ドンドンと追い越される.
7時47分,見晴山荘を通過する.この辺りから,山影に残雪が見え始める.
見晴山荘を通過して,すぐに大倉尾根の最初の難所,長い階段道に取り付く.坂を見上げると,沢山の登山客が数珠つなぎになっている.
坂道に取り掛かるところで,K女史に追い付く.
「FHさん,先に行って・・」
「ありがとうございます.でも,私も良い年なので,自分の身体を大切に,ユックリ登ります・・」
「そうよ,折角の自分の身体だもの・・大切に使わなきゃ・・」
こんなやり取りのあと,とりあえず先に行かせてもらう.
足許が濡れていて,とても滑りやすい.
<一本松付近から雪道>
■堀山の尾根
登るにつれて,だんだんと残雪が増え始める.
8時32分,一本松を通過する.ますます足許が悪くなるが,我慢してアイゼンなしで登り続ける.そして,滑らないように注意をしながら,長い階段を登って,8時18分に駒止茶屋を通過する.日曜日なので,駒止茶屋も開店しているらしい.
大倉から,駒止茶屋までの今日の所要時間は1時間06分.大分鈍足だが,足許が悪いことを考えれば,まあこんなところかと,無理矢理,納得する.
登山道は,砂交じりの融雪が夜中にまた凍って,足跡の凸凹がそのまま凍りついている.砂地かと思って油断すると,その下に凍りついた氷が潜んでいる.危なくて仕方がない.
やがて,堀山の尾根に入る.平坦な道になるが,路面が凍結していてツルツルである.私は登山学校で習った歩行方法を頭の中で繰り返しながら歩き続ける.
“地面に真っ平らに足をつけろ!”
“歩幅を小さくせよ!”
“後ろに蹴るな!”
“腰を落とせ!”
いわゆるキックステップである.
富士山が良く見える場所に到着する.どなたかが富士見平と呼んでいるところである.辺りが何となく霞んでいて,白みがかった青空に真っ白な富士山が茫洋と見えている.
8時21分に堀山を通過する.ここから,暫くの間,下り坂になる.何時もなら,この下り坂は猛スピードで通過するが,今日は路面を埋め尽くしている融雪が再凍結していて,やたらに滑る.アイゼンを装着しようかなと迷うが,とにかく,何事も練習.この辺りなら仮に滑っても怪我をする心配はない.ノーアイゼンで,堀山の家までは歩こうと決める.
ソロリ,ソロリと慎重に歩いて,8時37分に堀山の家に到着する.
■萱場平
堀山の家から花立て山荘まで,長い急坂が続く.凍結した残雪がますます増える.私は,リュックから4本爪アイゼンを取り出して装着する.
余談だが,これまで6本爪アイゼンと,4本爪アイゼンを使ってみたが,表尾根や大倉尾根を歩いている限りでは,6本爪アイゼンより,4本爪アイゼンの方が,ずっと使いやすいし,4本爪アイゼンで十分だと思っている.その理由は,4本爪アイゼンで,十分登攀下降できるし,雪のないザレ場でも4本爪アイゼンならば,わざわざ脱がなくても,歩けるからである.
私は汗が噴き出ないように加減しながら,坂道を歩き続ける.登るにつれて,残雪は次第に深くなる.
9時01分,萱場平を通過する.ここは泥んこの名所だったが,立派な木道が完成して,とても歩きやすくなっている.
■花立山荘
何人かの登山客を追い越すが,逆に何人かの若い方々に追い越される.
9時16分,漸く「あと7分坂」に到着する.ここは日当たりが良いせいか,残雪はやや少ない.前方には,止まりそうな速度で喘ぎながら登っている人が居る.私も心の中で.
「あと7分,あと7分の辛抱・・・」
と唱えながら,喘ぐように登り続ける.
上を見るとウンザリするほどの長い坂道が見えるので心が萎える.私は足元だけを見つめながら,登り続ける.でも,時々,頭上を見上げて,まだこんなところを歩いているのかとウンザリする.
9時24分,ようやく花立山荘に辿りつく.今日は,7分坂を8分掛けて登ったことになる.大倉を歩き出してから,2時間12分も経過している.遅い! せいぜい2時間ぐらいで登らなければ・・・
山荘前の休憩所には,数名の登山客が屯している.この人たちは,登りか下りか分からない.会話をするのも面倒なので,軽く会釈をして通過する.
<あと7分坂>
■素晴らしい樹氷
9時35分に花立場(花立山)に到着する.途中で写真を何枚も撮ったとはいえ,普段なら花立山荘から花立場まで9分ほどで登れるのに,今日は11分掛っている.やや重装備をしているためか,足が重い.
9時41分に金冷シを通過する.残雪がますます多くなる.山頂に近付くにつれて,1週間前より残雪が多くなったような気がする.
金冷シを過ぎると,気候が一気に冬になる.登山道周辺の枯れ木の枝に残雪が凍りついて,実に見事な樹氷になっている.私はデジカメを取り出して,沢山の写真を撮り続ける.
そうこうしていると,下から見覚えのある白い帽子を被った男性が登ってくる.このブロブでも度々登場するX氏である.私は足を止める.
やがて,汗びっしょりになって登ってくるX氏が私に追い付く.
「そろそろ,追い付かれるかと思っていました・・・」
X氏は,私より1本遅いバスを利用している.つまり,15分遅いバスで大倉に到着したのに,もう追い付かれたことになる.
「私は,写真を撮りながら,ユックリ登りますので,お先にどうぞ・・」
<金冷シ付近から鍋割山稜>
■塔ノ岳山頂
私は樹氷の写真を撮りながら,ユックリと登り続ける.そして,9時58分に塔ノ岳山頂に到着する.
大倉からの所要時間は,2時間46分,いくらアイゼンを付けたり,写真を撮ったりとはいえ,何とも冴えない記録である.ちなみに,同程度の条件でも,昨年の今頃は,2時間25分から30分程度で登っていた.やっぱり,急性胃炎を患ってから,体力が完全には復帰していないなと実感する.
山頂には,10人ばかりの登山者が休憩を取っている.
私は,山頂からの写真を一通り撮るという儀式を済ませてから,尊仏山荘に向かう.
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.沢山の登山客で混雑している.小屋番はオーナーのHさん他,2名体制である.
ネコのミー君が,珍しく客室にいる.少し動いてはすぐにストーブの前に座り込む.山頂の気温はマイナス2.8℃.ネコも寒いんだろう.
オーナーのHさんが,私に話しかける.
「FHさん・・Kさんという方,ご存知ですか・・? 昨日,来られて,FHさんのこと聞かれましたよ」
「えっ! Kさん・・?」
私は,一瞬,誰だろうと戸惑ったが,すぐに誰かが分かった.
そういえば,随分沢山の知り合いが,Kさんと同じ某登山団体に入会している.私自身も,もう何年も前から,入会しようかなと,時々迷うこともあるが,何となくウジウジしているうちに,そのままになっている.
小屋の中が,客でだんだんと混雑してくる.長居して営業を妨害してもいけない.そろそろ下山しようかと思っているところに,入れ替わるようにK女史が山頂に到着する.
<うう~っ・・寒い>
■ジャイアンさん
10時29分に山荘から,X氏と一緒に外へ出る.
山荘の入口でアイゼンを装着していると,ご常連の男性,M氏が到着する.何時も凄く速く登り降りする方である.
「お先に下山します・・・また,何時ものように追い付いてください・・」
ほんの30分ほどの間に,山頂に屯している登山者の人数が,何倍にも膨れ上がっている.こんな寒いところで休憩は堪らないなと思いながら,登山客の間を縫って,下山口へ向かう.
山頂から,ほんの30メートルほど下ったところで,上の方から,大声で,
「FHさぁ~ん・・・!」
と呼ばれたような気がする.周りの人たちも,誰を呼んでいるんだろうと,一瞬立ち止まる.防寒具を着用しているので,遠目では誰だか分からなかったが,このブログでも時々登場するジャイアンさんである.仲間の方々と山行途中,尊仏山荘に立ち寄ったところ,オーナーのHさんから,
「FHさんなら,たった1分前に,小屋を出たところです・・」
と教えられて,私を追いかけたという.有難いことである.
■雑談しながら下山
次々に登ってくる登山客とすれ違いながら,ユックリと下山し続ける.山頂付近では,ふたたび樹氷の写真を撮り続ける.上空には厚い雲が立ち込めていて,富士山はとっくに見えなくなっている.
下山しながら,X氏と,取りとめもない雑談を続ける.Windows 7のこと,胸やけ,ギリシャの経済危機,各国のGDP,円高・ユーロ高,登山靴等々,話題は多岐にわたる.こんな雑談が知的欲求を掻きたてるので,とても楽しい.
「そういえば,FHさんは,あまり汗をかかないですね・・」
とX氏が言う.
「いえ・・逆に汗をかかないように自重しながら歩いているんです」
と答える.
下山は案外順調.堀山の尾根でアイゼンを外す.その後は至って慎重に下山し続ける.
丹沢ベースで,わざわざ休憩を取って,バスを1本遅らせる.
12時40分,丁度バスが発車する時間に,バス停大倉に到着する.下り所要時間は,2時間11分.私たちがバス停に到着すると同時に,M氏も到着する.X氏がM氏に,
「今日は,追い越されませんでしたね・・」
と冗談を言う.
休日に開かれている青空市場を見物.13時11分発渋沢駅行のバスに乗車する.
「これで,今週の行事は無事終わりましたね・・」
とX氏が言う.
なるほど,週に1回登ることを行事と考えれば,気分が楽になるなと感心する.
「でも,週一回では,(体力の)現状維持ができるだけ・・・」
とX氏が注釈する.私もその通りだと思う.私は内心で,
「もう少し頻繁に塔ノ岳詣でを続けないと,なかなか体力は元に戻らないな・・」
と実感している.
15時頃,家に帰る.
長男夫婦が,可愛い孫娘を連れて,我が家を訪れている.爺さんの顔は緩みっぱなしである.孫と一緒の夕食は,とても楽しい.私は心の中で,
「こいつと一緒に山へ登りたいな・・」
と思っているが,反対されるにきまっているので,親には,そんなことを考えているとは,おくびにも出さない.
<ラップタイム>
7:12 大倉歩き出し
7:32 観音茶屋
7:47 見晴茶屋
8:18 駒止茶屋
8:37 堀山の家
9:24 花立山荘
9:41 金冷シ
9:58 塔ノ岳山頂 着
====================================
10:29 塔ノ岳山頂 発(-2.8℃)
10:45 金冷シ
10:56 花立山荘
11:24 堀山の家
11:44 駒止茶屋
12:07 見晴茶屋
12:21 観音茶屋
12:40 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:12
塔ノ岳 着 9:58
(所要時間) 2時間46分(2.77h)
登攀速度 1269m/2.77h=458.1m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:29
大倉 着 12:40
(所要時間) 2時間11分(2.18h)
下降速度 1269m/2.18h=582.1m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/7d828340017d223bdd704ad6e5ffc276
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/13ebd6da3ec766b4b764312c86726cdb
私は今年2回目の塔ノ岳、この日の前日に行ってきました。
樹氷が綺麗でちょっぴり得した気分です。
今回初めて尊仏山荘内で食事をしたのですが、猫のミー君には会えなくてとても残念。。。
こうなったらミー君に会えるまで塔ノ岳に何度も通わないといけないなと思う今日この頃です。
今週末はお天気が悪そうでどこにも行けそうにないので今からがっかりモード突入です。。。
枯葉マークのFHです.
コメント,ありがとうございました.
今年の冬の丹沢は,まあまあの雪で,結構楽しいですね.
是非,損物山荘のネコに会ってやってください.
小屋番の方に,
「ネコを呼んでください・・」
とお願いすれば,ネコを呼んでくれると思います.
また,当ブログをおたずねください.