中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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新雪の塔ノ岳 長靴で軽快に登る

2008年02月06日 10時06分27秒 | 丹沢の山旅

        新雪の丹沢塔ノ岳:長靴で軽快に(第8回)
             (単独山行)
          2008年2月5日(火)

■小田急電車が遅れる

 2月3日,滅多に雪が降らない鎌倉も大変な大雪であった。翌,2月4日,私は塔ノ岳の雪景色が見たくて仕方がなかったが,不運にも小田急電車が何かが故障とかで,渋沢まででる手段がない。即,塔ノ岳行を取りやめる。
 そして,今日(2月5日),塔ノ岳登頂をすることにした。何時ものように,5時10分に家を出る。それ程寒くはないが,まだ真っ暗である。今日は,何となく小田急が頼りない感じがして,藤沢から小田急に乗るのを止めて,大船6時04分発静岡行電車で小田原まで出ることにする。
 途中,国府津駅を出る頃,駿河湾から真っ赤な太陽が顔を出し始める。何時の間にか,夜が明けるのが随分と早くなっている。例によって,ワンパターンで小田急線に乗り換える。今日は小田急の電車も定刻ピッタリに発車する。所が新松田に到着した途端に,相模大野で信号機とやらが故障したとかで,電車が動かなくなった。暫くの間ヤキモキするが,幸いなことに,ほんの5分ほど遅延しただけで,7時12分頃,渋沢駅に到着する。
 急いで改札口を抜けて,7時16分発大倉行バスに飛び乗る。今日,バスに乗り合わせた登山客は10人足らずで,何時もよりも少し少ないように思える。

■雑事場ノ平付近から残雪
 バスは,7時28分に,大倉に到着する。早速待合室に入って,身支度を整える。私の横で,老夫婦が同じように身支度を整えている。すると奥さんの方が,スパッツを左右逆に付けている。私は注意しようかそれとも知らんぷりをしようかと迷うが,安全な登山をするには,注意した方がよいと思って,
 「奥さん,スパッツ,左右逆に付けていますよ・・」
と小さな声で注意して,直ぐにお二人から離れる。
 今日は,何時もより少々遅れて,7時44分に歩き出す。バス停から,暫くの間,舗装道路を歩くが,路面がビッショリと濡れている。どうやら,今朝方,雨が降っていたようである。天気予報ではピカピカの晴天の筈だったのに,また外れたようである。
 高原の家分岐付近で,大柄な登山者に追いつく。追い越すのをためらっていると,その方が,サッと道路脇に身体を寄せて,
 「どうぞ,お先に・・・」
と私に道を譲る。まだ40歳代のご婦人である。体力がありそうである。
 「どうも済みません・・・この年齢ですから,途中でくたばるかもしれません。その時は,どうぞ,追い越してください・・・」
と何だか訳の分からないことを言いながら,先に行かせて貰う。
 今日は,どうやら体調が良さそうである。観音茶屋辺りまでは,朝日が射し込む穏やかな冬枯れの林の中を気持ちよく登り続ける。ところが,雑事場ノ平付近まで来ると,残雪が目立つようになる。雑事場ノ平から見晴茶屋に向かう平坦な尾根道は,まだ標高はそれ程高くないのに,すっかり雪道になっている。

               <雪に覆われた一本松付近>

■長靴は快調
 長靴はなかなか快調である。ただ,歩く速度を上げようとすると,足首の辺りから上で,長靴が,ゴニョ,ゴニョと足に当たって,どうも具合が悪い・・・が,ノンビリと歩くには,長靴はとても具合がよい。
 以前,このブログで書いたが,雪道での長靴のグリップ力は,軽登山靴とほぼ同じである。急がずに,楽しく歩くには,正に長靴がピッタリである。途中で何人かの登山客を追い抜く。そのとき,殆ど全員が,私の長靴をチラリ,チラリと見る。
 一本松を過ぎると,積雪がやたらに多くなる。本来はかなり道幅の広いところだが,人が1人やっと通れるぐらいの踏み跡が,雪の中に深い溝のようになって続いている。何時もならば,この辺りは,かなりハイピッチでドンドンと歩くところだが,今日は,とても無理。ここ数年,冬の塔ノ岳にも登り続けているが,この辺りでこんなに雪が深くなっているのは,今回が初めてのような気がする。
 比較的傾斜が緩い雪道を,ノンビリと歩くには,絶対,長靴が良い。

■堀山ノ家
 9時11分に,駒止茶屋を通過する。何時もなら,この辺りから見晴らしが良くて,歩きやすい尾根道になるが,今日の登山道は深い雪の中に続く,細い足跡道に変わっている。踏み跡道の道幅は1人が通れるだけしかない。到底何時もの歩行速度では歩けない。ただ,凍結した根雪が新雪の下になっているので,滑る危険は殆どない。
 9時03分に堀山を通過する。雪道を考えると,ここで9時を過ぎていたのでは,10時に塔ノ岳山頂に到着するのは,100%無理である。今日は,ただ,ただ,安全第一で行こうと自分に言い聞かせる。
 堀山ノ家手前の日陰道は,何時も凍結した根雪で滑りやすい。ところが,今日は,根雪が新雪で覆われているので,楽々と通過できる。堀山ノ家から見える筈の富士山は,厚い雲に覆われていて全く見えない。

■ご常連とすれ違う
 堀山の家から,いよいよ長い階段道になる。ところが,今日は階段が深い雪に覆われていて,どこが階段か,はっきりとは分からない。高度が増すにつれて,ますます雪の量が増えていく。
 前方から,何時もすれ違う黒装束の修験者が下ってくる。何時もより随分と早い。私は,
 「こんにちは。今日は随分と早いですね・・・」
と挨拶する。

 「今日は雪が深くって・・・丹沢山の途中から引き返してきました・・・」
 9時27分に戸沢分岐に到着する。分岐点は深い雪に覆われている。戸沢側からは,1人,2人の踏み跡らしい窪みがあるが,新雪のために踏み跡は微かである。萱場平も一面の雪。

                <雪が深い戸沢分岐付近>

 いつの間にか上空にうす紫色の雲が立ち込めている。花立山荘手前の階段道は,さすがに雪に埋もれてはいないが,それでもタップリと雪が降り積もっている。
 9時51分に花立山荘を通過する。相変わらず西の空には分厚い雲が立ち込めている。雪はますます深くなる。花立山荘から先の階段道は完全に雪の下である。広い階段道は深い雪に覆われた急傾斜の登り坂に変わっている。アイゼンは必要ないが,キックステップをしないと登れないところもでてくる。長靴でキックステップをするのは,今回が初めての経験である。長靴は靴底がグニャグニャしているので,キックステップには不向きなことを体験する。

               <花立山荘手前の階段道も雪が一杯>

 前方から,ご常連のYさんが,2本のストックを上手に使いながら下山してくる。何時も足は裸のままだが,今日は珍しくズボンを履いている。
 「こんにちは,おや,今日はズボンですか?」
と挨拶する。Yさんは,
 「いゃ~ぁ・・・今日は雪が深いんで・・でも,ズボンがまとわりついて歩きにくいです。明日からは,また,ズボンなしで登りますよ・・」
と答える。

           <花立山荘手前の岩陰に綺麗なツララが光っている>

■金冷しを通過
 やがて見晴らしの良い尾根に出る。今日は怪しい雲が立ち込めていて,遠くの山々は全く見えない。尾根を登り切ったところにある木道も,今日は深い雪の下である。いつもとは勝手が違う場所についている踏み跡をたどる。やがて,稜線を越えてトラバース道になる。何時もなら特段危険だとは思わないところだが,今日は夏道が完全に消えていて,急斜面にトラバースする足跡を,ひたすら追いながら先へ進む。この辺りで対向者とすれ違うのは,かなり困難である。短いが,やや急な下り坂を2回下ってから,ヤセ尾根を通過する。登山道の両側には,降り積もった雪で,高さ50センチメートルほどの壁ができている。溝のような道をソロソロと進んで,10時09分に金冷しを通過する。
 ここから先の階段は完全に雪の下になっている。夏道とは明らかに違うところにも踏み跡道がついている。ウッカリ踏み跡を外れると,腰の辺りまで,ズボッと雪に嵌ってしまう。

       <山頂に近付くと踏み跡だけが頼り:階段は深い雪の下に隠れている>

■やっと塔ノ岳山頂
 雪で階段がなくなると,そこは普段は想像もつかない急傾斜の雪道に変わっている。特に山頂近くの急勾配は,斜度が30度以上あるのではないかと感じる(正確には調べていない)。
 不用意に急な斜面を登ると,ズルズルと滑る。仕方がないので,長靴でキックステップを繰り返しながら,急な斜面を少しずつ登る。
 何時もの道と様子が違うので,自分がどの辺りを登っているのか,正確には分からなくなる。やがて,傾斜は少し緩いが,真っ直ぐな登り坂の踏み跡が,見えてくる。こんな所に,真っ直ぐな登り坂があったかなと,少々戸惑うが,すぐに,ここが山頂直下の木の板を組み合わせた長い階段のところだと分かる。
 雪に悩まされながら,10時25分に,なんとか塔ノ岳山頂に到着する。大倉からの所要時間は,実に2時間41分と最悪。でも,雪道だから「こんなものか」と不承不承,納得する。
 相変わらず山頂は深い雪に覆われている。東側の斜面の樹氷が見事だが,背景になる大山は雲の中である。西を見ても,上空は厚い雲に覆われていて,富士山は全く見えない。

             <今日の営業部長:Oさんが居ないので落ち着かない>

■尊仏山荘でお茶
 山頂は,とにかく寒い。尊仏山荘に入ろうと思う。山荘に向かって歩く度に,長靴がズボッ,ズボッと雪に嵌る。
 小屋に入る。中には誰も居ない。
 「こんちわ~」
と声を掛けるが返事がない。「まあいいか」で椅子に腰掛ける。私のすぐ後にご常連の方が入ってくる。小屋の寒暖計を見ると,今日,10時25分の山頂の気温は,マイナス6.4℃。かなり寒い。
 ややあって,小屋のオーナー,Hさんが,
 「いらっしゃい・・!」
と言いながら現れる。例により私は日本茶を所望する。
 小屋番のOさんが居ないので,所在なさ気の営業部長が,ストーブの前でジッと蹲っている。早速,営業部長の写真を数枚撮る。
 Hさんが,
 「今日,2番バスに人が乗っていましたか?」
と定番の質問をする。
 「10名程度でしたよ・・・私より先に登った人もいるかもしれませんが,大部分の人達はこれから現れますよ」
と答える。続いて私が,
 「今日は,雪で登ってくるのが大変でしたよ。この冬一番の雪のようですね・・」
と質問する。Hさんは,
 「昨夜から今朝に掛けて,随分と雪が降りましたよ・・・麓の秦野では雨だったようですが・・・」
と答える。つづいて,
 「ところで,この雑誌見ましたか?」
と言いながら,写真集『百名山:富士山・丹沢』(400円)を私に見せる。丹沢のページを開きながら,
 「この写真,Oさんが撮ったんですよ・・・」
なるほど素晴らしい写真である。同じ山を撮っても,私が撮った写真と比較にならないほど迫力のある写真である。やっぱり,Oさんは写真のプロだなと感心する。
 そろそろ下山しようかなと思い始める。その前に,ちょっとでも良いから富士山を拝みたいと思うが,一向に雲が上がる気配はない。帰りしなに,若い客が2人ほど山荘に入ってくる。

■いよいよ下山

 10時59分に尊仏山荘を出る。下りに備えて,長靴に4本爪アイゼンを最初から装着する。さすがに外は寒い。素手でアイゼンを装着していると,手先が凍り付くような感じを受ける。
 先ほど登ってきた踏み跡を頼りに下山を開始する。階段が雪に埋もれた山頂直下は,えらく急な下り坂になっている。距離はそれ程ないが,12爪アイゼンとピッケルが欲しくなるほどである。登山学校で教わった雪道の歩き方を思い出しながら慎重に下る。ときどき登ってくる登山者とすれ違うが,踏み跡道の道幅が狭いので,すれ違うのに往生する。
 11時09分に,金冷しを通過する。ここで1人の女性とすれ違う。女性が,
 「あれ~・・・もうこんな所まで降りてきたんですか? 私,同じバスに乗っていましたよ・・」
と私に挨拶する。私は,やっと,高原の家分岐で追い抜いた女性だと分かる。
 「いえ,そんなことないですよ。随分とお早いですよ。もうすぐ山頂ですから・・・」
と,私は訳の分からない返事をする。

      <金冷し手前の尾根道より:富士山は見えないが,南アルプスが見えている>

■12時52分のバスに乗りたい
 その後も雪道が続く。4本爪ながらアイゼンはとても良く利くので,楽な気分で下山を続ける。その間,ポツ,ポツと切れ目なく登山者とすれ違う。下るに連れて気温が高くなる。そのために,だんだんとビショビショな腐れ雪が多くなる。
 
 <萱場平:誰かが作った雪ダルマ>              <萱場平の残雪>

 萱場平には,いつのまにか,大きな雪だるまが立っている。
 アイゼンを装着したまま,12時17分に一本松に到着する。ここでアイゼンを取り外す。一本松を過ぎると,雪は完全に溶けている。アイゼンを外した長靴は実に爽快である。やっと,何時もの調子で下り続けて,12時37分に観音茶屋を通過する。
 こうなると,大倉発12時52分のバスに乗りたくなる。歩く速度を極端に速めて,12時49分に大倉バス停に到着する。トイレ前の水道で,長靴の泥をザッと落として,12時52分発のバスに飛び乗る。
 小田原経由で東海道本線の高崎行に乗車,15時過ぎに無事帰宅する。
 16時から,水戸黄門のテレビを楽しむ。
 今日一日,私は,年甲斐もなく,一体,何をやっていたのだろうか。

[ラップタイム]

 7:44  大倉バス停(290m)歩き出し
 7:49  登山口(325m)
 7:53  克童窯(350m)
 7:57  丹沢ベース(390m)
 8:03  観音茶屋(465m)
 8:09  高原の家分岐(500m)
 8:19  雑事場ノ平(595m)
 8:21  見晴茶屋(605m)
 8:37  一本松(745m)
 8:53  駒止茶屋(855m)
 9:03  堀山(910m)
 9:11  堀山の家(925m)
 9:27  戸沢分岐(1075m)
 9:30  萱場平(1090m)
 9:51  花立山荘(1260m)
10:09  金冷し(1330m)
10:25  塔ノ岳山頂着(1465m)
=================================
10:59  塔ノ岳山頂発(-6.4℃)
11:09  金冷し(1350m)
11:22  花立山荘(1285m)
11:39  萱場平(1115m)
11:40  戸沢分岐(1090m)
11:53  堀山の家(950m)
12:00  堀山(920m)
12:07  駒止茶屋(880m)
12:17  一本松(780m)
12:26  見晴茶屋(625m)
12:28  雑事場ノ平(610m)
12:34  高原の家分岐(535m)
12:37  観音茶屋(500m)
12:41  丹沢ベース(440m)
12:43  克董窯(395m)
12:45  登山口(360m)
12:49  大倉 着(310m)

[山行記録]

■登攀・下降高度
 塔ノ岳山頂    1491(m)
 大倉        290
  (高度差    1201m)
■登攀所要時間
 大倉発      7:44
 塔ノ岳山頂着  10:25
    (所要時間2時間41分(2.68h)
■登攀速度
  1201(m)/2.68(h)=448.1(m/h)
■下降所要時間
 塔ノ岳山頂発  10:25
 大倉着     12:49
    (所要時間 1時間50分(1.83h))
■下降速度
  1201(m)/1.83(h)=656.3(m/h)
                        (おわり)



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