中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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ウイルヘルム山登頂記(11):ケグルスグルへ(7)

2007年02月28日 11時52分20秒 | パプアニューギニア:ウイルヘルム山

        ウイルヘルム山登頂記(11):ケグルスグルへ(7)
             悪路に悪戦苦闘
         2007年2月10日(土)~17日(日)

第3日目 2007年2月12日(月)(つづき)

■まずは警察へ
 出発前になって,今度は自動車のスペアタイヤがないので,それを取りに行っているとか,銀行でお金をおろしているので,時間が掛かったとやら,色々な言い訳が重なって,出発時間がドンドンと遅れる。
 {そんな,当たり前の準備ぐらいは,前の日にしておけよ・・・」
と怒鳴りつけたくなる・・・が,ここはPNG。ジッと我慢の子である。
 2時間も無駄な時間を過ごした後,13時11分,私達は,ようやくマウントウリアムホテルを出発した。ホテルの敷地から一歩外へ出ると,猥雑で泥っぽい市街地が広がっている。沢山の人々が屯している。やがて,私達を乗せたリムジンは沢山の人達をかき分けるようにして進み,13時15分,広場の一角に金網で囲われた建物の前に到着する。どうやら警察署のようである。先頭を走っていた私達の荷物車は何処へ行っているのか行方不明である。

           <警察署から広場を見る>

 痩せて背が高い中年男性が,私達の車の窓に近寄って,私達に話しかける。私達も面白がって適当に話をする。その内に,どうやらこの男性が警察官であることが分かる。 全体がどのようになっているのか,あまりよく分からないが,ソロモンが,
 「茶色の車が来たら,一緒に行くよ・・」
という。ところが実際には緑色の車が入ってきた。茶色の車とは,どうやら緑色の私達の荷物車のことらしい。どうして緑色が茶色になったのか,サッパリ分からない。
 だんだんと事情が分かってくる。窓越しに私達に話しかけた警官が,私達に随行してケグルスグルまで行ってくれるらしい。私達の自動車が2台揃ったので,警察官もすぐ同乗するかと思ったら,
 「今,鉄砲を持ってくる・・・」
と言って,また居なくなる。
 「最初から鉄砲を持って,待っていればいいのに・・・」
彼の段取りの悪さには,いい加減,イライラする。
 「・・・今度は,また弾を取りに行くのかな・・・」
と誰かが冗談を言う。
 そういえば,先ほどのマウントウイリアムホテルでは,4人の警察官が同行するような話だったが,いつから1人になったのかな・・・全てはパラダイス観光任せ。何が何だか,全く良く分からない。

        <私達の乗った緑色の車:ベティ小屋にて>

■沢山の集落を通り過ぎる
 13時35分,警察官を乗せて,漸く警察を出発する。警察署の前で,30分も無駄な時間を費やしたことになる。すぐに大きなマーケットの脇を通り過ぎる。
 この辺りから,急に道路が荒れてくる。自動車は上下左右に大きく揺れ始める。自動車は,水たまりや大きな礫が散乱する道路を,ソロリソロリと前進する。その度に,車内はグラリ,グラリと大きく揺さぶられる。まるで洗濯機の中で撹拌されているような状態がずっと続く。
 道路の両側には,ほぼ絶え間なく人影がある。ときどき粗末な家が数軒集まった集落を通過する。家の造りには,集落によって,かなり差があるようである。まるで石器時代の縦穴住居のような住宅が集まっている集落があるかと思えば,結構立派な家が建ち並んでいる所もある。沢山の花が咲き誇っている美しい集落もある。
 道端では,少しばかりの品物を並べて,商売をしている人が沢山いる。
 ときどき,川に掛かる木造の橋を渡る。そのときだけ自動車の揺れが小さくなる。激しく揺られ通しの私達は,橋の上に来ると振動が小さくなるので,一瞬,ホッとする。橋といっても川に差し渡した木の上に木材を並べただけの簡素な代物である。自動車の車輪が,この木材に乗り上げる度に「ガタガタ」と大きな音を立てる。

■自動車を追いかける子供達
 子供達が,私達の車を追いかけて,ワア,ワアと大声を出している。
 「・・・そういえば,flower-hillも,子供の頃,たまに自動車を見かけると,後を追いかけて,排気ガスの匂いを嗅いでいたな・・・・」
と,追いかけてくる子供達を見て,自分の幼少の頃のことを懐かしく思い出す。あの頃,日本の田舎では,乗用車など殆どなく,走っているのはトラックとバスだけだった・・・何だ,今のPNGと同じではないか・・・と,一人で苦笑する。
 14時13分,突然車が停まる。泥に車が嵌り,動けなくなる。運転手が車をバックさせて,勢いを付けて泥沼を突進する。凸凹道を進むと,前方に大きな水たまりがある。この水たまりをザワザワと音を立てながら進む。
 14時40分,ソロモンが車を停めるように,運転手に指示する。そして,道端の物売りから,枝付きの生ピーナッツを沢山購入してくる。車内の私達にもお裾分けをする。早速食べてみる。生ピーナッツは少し青っぽい味だが,歯ごたえも良く,なかなか美味しい。

■簡単には用が足せない
 その内に,私達の仲間の女性が,
 「・・・トイレに行きたいので,自動車を停めて下さい・・・」
と運転手に言う。運転手は即座に,
 「ここではダメ・・・・我慢して・・・」
と要求を跳ね返す。彼によれば,この辺りの土地は,自分たちの種族の土地ではない。こんなところで自動車を停めたら大変なことになる。だから我慢せよという。
 私達の自動車は,峠道をトラバースし始める。との間になるのだろうか,辺りには全く人影がなくなる。15時29分,ここで運転手が車を停める。
 「なるべく早く用を足してくれ・・・」
と私達を促す。
 15時32分,そそくさと用を足した私達を乗せた車は,再び走り出す。進行方向左手には深い谷が切れ落ちている。尾根の左岸に沿って,車はソロソロと進む。

■土砂崩れの赤土が行く手を遮る
 16時13分,私達の車の前方に赤土が盛り上がっているのが見える。どうやら,進行方向左手から,土砂崩れがあって,もともとの道の上に,赤土が堆積しているらしい。土砂崩れの先端は,道路脇の家の庭まで達している。日本だったら,当然,通行止めになっているところである。そこを無理矢理に自動車が通るために,道路上に盛り上がった赤土に深い轍が彫り込まれてしまっている。
 ここを通過する車は,赤土の麓から勢いをつけて,一気に登り切らないと先へ進めない。私達を乗せた車も,勢いをつけて登ろうとするが登り切れない。運転手がエンジンを吹かす。しかし,車はますます泥に填り込む。ここで,やっと,ツアーリーダーが, 
 「長靴を履いて自動車に乗ってください・・・」
と言っていた意味が分かった。私達も覚悟を決めて,一旦,自動車を降りて,自動車の後押しをしようかと思い始める。だが幸いなことに,どこからともなく数名の男性が姿を現す。そして,泥沼に嵌った私達の車の後押しをする。しかし,車は泥から脱出できない。近くの民家から小柄な女性が出てくる。彼女は,大声で指揮を執りはじめる。男性に命じて,自宅の庭から泥だらけの長い木材を1本運ばせる。それを自動車の車輪の下に敷かせる。そして,若手全員が,
 「セエ~ノ・・・」
で自動車を押す。それでもダメ。今度は泥の付いていない新品の木材1本と泥付き木材1本,合計2本追加する。そして,また「セエ~ノ・・・」を繰り返す。お陰で私達の車は,漸く赤土の地獄から抜け出すことができた。その後,ドライバーが手伝ってくれた人達に,いくらかのお金を支払ったようである。

       <車がエンコした現場:前の泥坂で難渋>

■漸くケグルスグルのベティ小屋に到着
 16時51分,泥んこで石ばかりの道の先に「Bettty’s Lodge」と書いた看板が見え出す。ここがベティさんの敷地の入口である。しかし,敷地内に入っても,道路は一向に良くならない。深い轍の跡を砂利で埋めているが,それでも相変わらず自動車は上下左右に激しく揺れっぱなしである。
 16時51分,私達は漸くの思いで,ケグルスグルのベティ小屋(標高2630m)に到着する。

           <ベティ小屋に到着>

 マウントハーゲンを出発してから,実に9時間近くに及ぶ凸凹道の長旅であった。成田からマウントハーゲンまでの所要時間よりも長い苦難の道程であった。
                      (つづく)



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