セピア色の画集;『雪山を下る(ユングフラウ)』(40号)
(2013年3月制作)
2013年4月2日から7日まで横浜で開催された某展覧会に出展した水彩画3枚の内の1枚である.
数年前,私は国際山岳ガイドSさんが主催するツアーに山仲間数人と一緒に参加した.スイスのメンヒとユングフラウの2座を登頂するのが目的である.どちらの山も標高4000メートルを越える高山である.どちらも12本爪のアイゼンとピッケルを使用して,山岳ガイドとザイルパーティを組んでの登山だった.
私たちは,ユングフラウヨッホ駅から歩き出して,まずはメンヒの山頂まで登り,往路を引き返して,その日は山麓の山小屋に宿泊した.
翌日,早朝暗い内に山小屋を出発して,ユングフラウに向かう.ユングフラウは結構きつい山だった.
途中,20~30メートルもあろうかと思われる雪の断崖を登る,さらにナイフエッジの稜線を登り下りする.稜線の両側は斜度60度ほどに切り立っている.狭い稜線をガイドの後に付いて必死に登る.
ようやく到着した山頂は数人の人がやっとしがみつくほどの広さしかない.
下りもきつかった,歩いても,歩いても,まだ先がある.ナイフエッジの稜線を下り終えると,今度は雪の断崖である.ここを1人ずつロープダウンする.
この断崖を降りると,なだらかなで広大な雪原が続く.
私は随分とへばって居る.元気な仲間達は,もう随分と先まで降りている.
わずかに平らな所で,ほんの1分ほどの立ち休憩.素早く水を補給する.そして,懐からかみ切れと鉛筆を取り出して,風景をササ~ッとスケッチする.遙か先に仲間達が下山しているのが見えている.自分の体力のなさが悔しい.
その後も,長い,長い雪原歩きが続く.やがて前方にユングフラウヨッホ駅が見え出す.見えていても中々辿り着けない.ヘトヘトになってやっとの思いでユングフラウヨッホ駅に辿り着く.駅前の広場に屯している一般観光客の皆さんが,ヘトヘトの私にヤンヤの喝采と拍手をして出迎えてくれる.
こんな情景を思い出しながら,私はこの絵を纏めた.
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