<ストーブの前のネコ>
雪・雪・雪の丹沢:塔ノ岳(今年6回目)(2)
(単独山行)
2010年2月14日(日) (つづき)
<尊仏山荘>
■ネコも寒い
K女史に続いて,入口でアイゼンを外して,尊仏山荘に入る.山荘は登山客で混雑している.
私には,お名前は分からないが,ご常連も沢山居られる.
山荘の温度計によると,10時過ぎの山頂の気温はマイナス3.3℃.随分と温かである.
今日の小屋番は,オーナーのHさん,ネコのシモベを名乗るOさんなど3人体制.ただ,残念なことにOさんは水汲みに出掛けているようである.雪の中の水汲みは大変だろうなと同情する.
Oさんが居なければ,営業部長のネコちゃんの写真は,今日もお預けだなと諦める.
戸沢分岐で,私を追い越して行ったX氏は,私よりも10分以上前に到着していたようである.
私は,早速,300円也のお茶を所望する.
私が席に着くと,X氏が,
「FHさん・・・そこにネコがいますよ・・」
と私に注意を促す.
なるほど,営業部長のミー君が石油ストーブの前に,ちょこんと座っている.
「おい,お前さん・・・元気かよ・・」
と話しかけながら,ストーブネコの写真を撮る.
「お前さんも,もう年だよね・・火が恋しいんだな~ぁ・・・」
と言いながら,ネコの頭を撫でる.ネコは迷惑そうな顔をするが,おっとりと構えている.この素直さがミー君の良いところである.
「お前さんに会いたくて,エッチラ,ホッチラ,わざわざ登ってきたんだよ・・」
私は心の中でネコに囁いている.
写真を撮ろうとしても,なかなかカメラ目線になってくれない.そこがネコらしくていいぞということにする.
それにしても,ミー君は可哀そうである.
いくら景色が素晴らしい所とはいえ,この極寒の山頂で,ネコ1匹だけで暮らしている.自分の周りには,人間しかいない.四方を見回しても,近場にはネコ1匹も居ない.私の知る限りでは,一番近い所に暮らすネコは,登山口近くの克董窯のネコだけだ.丁度,私一人がサバンナで象の大群の中で暮らしているようなものだ.
いくら大声でネコ語を話しても,その話を聞いて理解してくれるネコは,1匹も居ない.そう考えると,ミー君がとても可哀そうに思えてくる.
「そういえば,ネコのSさんが登ってこなくなってから,随分,経ちますね・・」
と,何時しかネコのSさんの話になる.
Sさんは,ネコの耳垢をちり紙で拭いたり,特製の首輪をつけたりで,ネコの世話をとても良くしてくれていた.昨年,ネコを先頭にSさんが雪の中を散歩していたときのことを思い出す.
<ネコだって寒いよ>
■堀山の家近くの白い花
K女史から小さなアンパンを頂戴する.
X氏と雑談.
「FHさん・・・ブログの中で,堀山の家の隣の白い花のような木の名前が分からないって書いていたでしょう・・・あれは『仙人草』って言うんですよ・・」
「なるほど,そうでしたか!」
私は忘れないようにノートに,センニンソウとメモする.
そういえば,ある知人と,どこか歩いていたときに,堀山の家の白い木が話題になったことがあった.そのときこの知人が,
「あの木は『綿』だ・・」
と言っていたのを思い出す.
何れ機会があったら,インターネットでセンニンソウを調べてみたいなと思っている.
話題が逸れるが,どうも私の脳味噌には欠陥があるらしくて,草花の名前は,いくら聞いても,頭には入らずに,すぐに抜けてしまう.山野草の名前が分かったら,里山歩きも,きっと随分と楽しくなるだろうに・・・
■次々に常連がご到着
やがて,ご常連のM氏が到着する.何と5番バスで来たという.それなのに.もう,ご到着である.今日は2時間10分ほどで登ったとのこと.凄い!
私が日曜日に登ると,何時も同じパターンで,M氏とお会いする.
私が山荘を出発する頃,M氏が到着する.そして,下山途中,観音茶屋付近で,何時も追い越される.今日の下山も,多分,同じパターンになるだろう.
<下山開始>
■4本爪アイゼン
10時57分に尊仏山荘を出る.
何時の間にか,山頂で休憩を撮っている登山客が増えている.今日は温かいとはいえマイナス3℃.この寒空で良く皆さん平気だなと感心する.
今日は,最初から軽アイゼンを装着する.偶然,同じ時間に山荘を出発したX氏と一緒に下山開始.
軽アイゼンを付けていると,下りが実に楽である.
余談で私見だが,丹沢表尾根,大倉尾根付近を歩くには,6本爪アイゼンより,4本爪アイゼンの方が,数段,適しているように思える.その理由は,比較的雪の量が少ないことと,岩混じりの斜面が結構多いことが挙げられる.
登りは6本爪の方が楽なこともあるが,下りの礫道や木道歩きには4本爪アイゼンの方がずっと歩きやすい.雪が多いときには,山頂直下の急坂で,4本爪では安定しないと感じることも,数年に1回ほどはあるが,往生するのは,ここ一か所だけである.
<凛とした鍋割山稜>
<雪に覆われた谷間>
■次々に知人とすれ違う
下山途中,金冷シ付近で,山旅スクール5期の「晴れ大明神」とバッタリ.昨年末の5期同窓会でお会いして以来の最下位である.お互いにエールを交換して分かれる.彼と挨拶をしているうちに,X氏との距離が開く.でも,どうせ1人旅なのだから,距離が開いても一向に構わない.
花立て山荘手前で,顔なじみの男性とすれ違う.
「やあ,・・こんにちは,暫くぶりでしたね・・」
やがて,萱場平手前のガレ場を下り始める.足許を凝視しながら,一歩一歩慎重に下り続ける.そのとき,
「おや・・・FHさん・・!」
と誰かが話しかけてくる.山旅スクール6期の女性群3人組である.
その他にも何人かの顔見知りとバッタリ.一言二言雑談をしているうちに,X氏との距離がだんだんと広がる.
「まあ,いいか・・」
で気楽に下り続ける.
<一寸したモンスターのタマゴ>
■Windows 7談義
11時34分,萱場平に到着する.ふと後ろに人の気配がしたので振り向くと,私の前を歩いているはずのX氏がいる.
「あれ・・何時追い越したんでしょうか・・」
「いや,ちょっと,そこで○!”△%・・」
「そうでしたか・・」
ここからは,ほぼ私がX氏の後ろについて,歩き続ける.途中で,写真を撮る度に,40~50メートルほど間が開いてしまう.
11時48分,堀山の家を通過する.その直前で,中年女性とすれ違う.
「ここから先,アイゼンがなければ無理でしょうか?」
と私たちに質問する.私は内心で唖然とする.雪があるのが分かっているのにアイゼンを持たずに登ってくる無鉄砲さに呆れる.
「アイゼンがないと大変ですよ・・」
とお答えする.
12時05分,駒止茶屋を通過する.雪が凍結すると,茶屋近くの急坂で結構難儀する.今日のところは,気温が高いせいもあって,特段どうということもない.
慎重に階段を下り続ける.ここでも先を行くX氏との間が開く.そして平坦な場所でまた追い付く.
歩きながらWindows XPからWindows 7への移行の苦労話が話題になる.私も,やっとWindows 7を,少しばかり使いこなせるようになったが,XP環境からの移行には随分と戸惑った.何しろ基礎知識が欠如している私には,マニュアルを読んでも,良く理解できないから,困ったものである.
<堀山の家>
■ドロドロ道
日中の気温が高くなってきたのか,見晴山荘辺りから,ひどい泥んこ道になる.靴はたちまちのうちに泥まみれになる.もうこうなったら,靴が泥だらけになるのを避けても仕方がない.私は臆せずに泥の中を歩き続ける.
■M氏が追い付く
雑事場ノ平を過ぎたあたりで,M氏が私たちを追い越していく.正に韋駄天.
それでも,X氏と前後しながら,12時59分,大倉バス停に到着する.下山は意外に速くて,所要時間は2時間02分.予定していた2時間20分を大幅に短縮した.
13時11分発渋沢行のバスに乗車する.ご常連が数名乗っている.渋沢でタッチの差で小田原行の電車を乗り過ごす.次の電車まで,待ち時間が10分以上ある.ホームで待つのは寒くて仕方がない.多少,時間がかかっても,温かい所にいたい.そこで,今日は,久々に相模大野経由のルートで帰宅することにする.
上り電車のホームへ移動して,X氏と一緒に新宿行の急行電車に乗車する.相模大野では,うまい具合に急行藤沢行の電車に接続する.藤沢から大船経由で,15時過ぎに帰宅する.小田原経由のルートに比較して,結果的には30分ほどタイムロスをしているが,乗車賃は幾分安くつく.
家に到着する.家内は買い物に出ていて留守.
とにかく寒い.
すぐに風呂を沸かす.そして,バスにお湯が貯まるのを待ちかねたように,風呂に浸かる.冷え切った体には,お風呂が何と言っても一番心地よい.ユックリと湯船に浸かりながら,一日動きまわった満足感に浸る.
そういえば,今日はバレンタインデーだったな.
誰からも義理チョコ一つ来ない,
「そんなの当然だよ.大体,ただでチョコレートを貰おうなんてあさましいよ」
と,もう一人の私が,私を嗜める.
でも,10日ぶりの塔ノ岳.よかったな~ぁ・・・!
[ラップタイム]
7:09 大倉歩き出し
7:32 観音茶屋
7:48 見晴茶屋
8:28 駒止茶屋
8:48 堀山の家
9:37 花立山荘
9:58 金冷シ
10:17 塔ノ岳山頂 着
==================================================
10:57 塔ノ岳山頂 発(-3.3℃)
11:04 金冷シ
11:18 花立山荘
11:48 堀山の家
12:05 駒止茶屋
12:28 見晴茶屋
12:51 観音茶屋
12:59 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間
大倉 発 7:09
塔ノ岳 着 10:17
(所要時間) 3時間08分(3.13h)
登攀速度 1269m/3.13h=405.4m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:51
大倉 着 12:59
(所要時間) 2時間02分(2.03h)
下降速度 1269m/2.03h=625.1m/h
(おわり)
[加除修正]
2010/2/16 転換ミス,入力ミス訂正
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/f07bd9f9f283c0727c3e2edbbff03479
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/5d319f855ceeb1ce3916a7289c0f4b4e
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