<テレビ番組「アニマルプラネット」に出演中のミー君>
丹沢:山猫“ミャ~”との交友録(6);FHの妙な方程式
2012年3月某日
寒さ暑さは彼岸までとは良く言ったものである.丹沢塔ノ岳の山頂付近には,まだまだ雪が残ってはいるものの,ほんわかとした柔らかな春の日射しが実に心地良い.
我が輩のようなネコ属でも,春の到来は実に嬉しいのである.
そうそう,まずは自己紹介しなければ・・・毎度,お馴染みの山猫ミーと発します.塔ノ岳山頂の尊仏山荘にわらじを脱いでから,早,12年.毎日,日向ぼっこをしながら,入れ替わり立ち替わり登ってこられるご常連のお話に聞き耳を立てるのを趣味にしております.
今日の,我が輩と同年配のFHという軟弱な常連が,韋駄天組の皆様より30分も遅れて,わが山荘に顔を出しました.そして,例によってたまたま居合わせたご常連と何やら雑談を始めました.
今日の雑談は,大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間を評価する方程式とやらです.
また,例によって屁理屈タラタラの他愛のない話ですが,折角だから皆様にご披露することに致しましょう.
では,この辺りで,FHご本人にバトンタッチしましょう.
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FHです.
毎度,口さえ開けば愚痴話になってしまい,まことに恐縮ですが,今日は自分の登山能力を評価する標準方程式なるものを披露させて頂きたいと思います.
なぜ,こんな下らんことを考えているかとご不審の念を抱かれる方々も居られるでしょうが,実は,毎回,塔ノ岳を往復するたびごとに,果たして今日の歩行実績はどの程度に評価したら良いんだろうと迷っています.その理由は,毎回登山道の状態が異なるし,たくさんの写真を撮れば当然時間も食います.また,顔見知りの方に出会えば,どうしても楽しく雑談をしてみたくなります.雪になれば当然アイゼンの脱着に時間も掛かります.
そんな諸々の要因を勘案して,本日の山行結果は果たして自分にとってどんなものだったかを多少なりとも客観的に評価してみたくなります.
そこで,まあ・・・こんなことを考えているんです.
馬鹿馬鹿しいといえば,それまでですが,まあ,お暇な方がお付き合い下さい.
実は,ここ数年,一寸した体調不良が切っ掛けになって,大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間が,年々歳々,長くなっております.年を取れば登攀速度が遅くなるのは当たり前ではないかと言ってしまえばそれまでですが,正直なところ大変悔しい思いをしております.
その反面,スマートトレッカーなんて格好いいことを言って,“無理をしない登山”を標榜して,ユックリズムに徹しようともしています.こういうのを俗に“二律背反”って言うんですね.
私の心の中には,“速く登りたい”という気持ちと,“ユックリズム”が相矛盾しながら同居しているんです.
要するに“ユックリで,かつ,速く登りたい”っていうことなんです.まあ,一種の自己矛盾なんですね.
つい2~3年前までは,春秋の季候の良いときならば,私も大倉から塔ノ岳山頂まで2時間15分から2時間20分ぐらいの所要時間で楽に登っておりました.ところが,年に1回程度の頻度で体調不良になり,ほんの10日ほど登山を休んでいる間に,ガクンと体力が落ちる・・・そんなことをたった2~3年続いた間に,今では2時間40分程度掛けないと楽に登れなくなってしまいました.雪があると2時間50分も掛かることがあります.
残念ながら,これが私の現実です.
正直,悔しいですが,致し方ありません.これを克服するには週に2~3回は塔ノ岳に登る必要があります.ところが,それは中々無理,せいぜい週に1~2回程度.これでは現状維持が精一杯というところです.
でも,そうは言っても,“山行実績”をある程度客観的に評価する尺度が欲しいなと前々からボンヤリと考えておりました.そして,先日来,これから披露させて頂く“妙な方程式”で,実績を評価することに致しました.
<さまざまな変動要因>
まず,私の所要時間を左右する変動要因にはどのようなものあるのでしょうか.この変動要因は,多分,非常にたくさんあるに違いありませんが,あまり複雑に考えると訳が分からなくなります.ですから,私のようなボンクラ頭で考えるには,なるべく少ない要因だけに限定した方が宜しいでしょう.
そんなことから,私は,次の数項目の変動要因だけに絞るって考えることにしました.
■加齢要因
何といっても年齢が増すにつれて,足腰が弱くなり,バランス感覚も悪くなります.特に70歳代後半になると顕著になるような気がしています.それは,私と同年配の山猫ミー君の立ち居振る舞いを見ていても分かることです.
■路面状態
当日の登山道が,乾いているか,泥んこか,雪道かで,所要時間が著しく変動します.
■気温
夏は暑く出どうしようもないし,度を超して寒くなると着るものが増えて,持ち物が重くなるので,やっぱり歩行速度が鈍ります.
■写真撮影枚数
私は,登山途中で綺麗な風景をデジカメに収めるのを趣味にしております.1枚の写真を撮るには,
1.カメラをケースから取り出す
2.カメラを構えてシャッターを押す
3.写した画面を確認する
4.カメラをケースに収める
の4段階の動作が必要になります.
一連の動作の所要時間を実測してみると,平均15秒掛かっていることが分かりました.つまり4分の1分です.4枚撮れば1分.40枚撮れば10分余計に掛かります.
■顔見知りとの雑談
山行途中で顔見知りの方とすれ違いざまに,一寸立ち話をするのも,登山の楽しみの一つです.
「やあ,やあ,・・・」
と二言三言お話しをさせていただくだけで,心が晴れ晴れとします.当然,長い時間立ち話をすることもありますし,“こんにちは”だけで過ごすこともありますので,所要時間はバラバラですが,おしなべて言えば,1回の立ち話の平均所要時間は約30秒,つまり2分の1分です.
■衣服調整・アイゼン脱着
私は歩き出すときに,一寸寒いぐらい薄着になって歩き出しますので,山行途中で衣服調整することはまずありませんが,仮に衣服調整をすれば,衣服をリュックから出し入れするのに5分ほど掛かるでしょう.また,アイゼン脱着にも5分程度掛かるでしょう.
<所要時間方程式>
■所要時間方程式を作る
以上の要因を考慮して,所要時間方程式を作ります.
ここで,
T =標準所要時間(分)
To=3年前の実績時間(2時間20分=140分)
A =係数
A=α・β
α=年齢係数
β=気温係数
m =写真撮影枚数
n =立ち話人数
p =衣服調整・アイゼン脱着回数
とすれば,
T =ATo+(1/4)m+(1/2)n+5p
=α・β・γ・To+(1/4)(m+2n)+5p (1)
ということになります.
ここで,To=2時間20分(140分)ですので,
T =140α・β+(1/4)(m+2n)+5p (2)
と書き換えることができます.
■2011年度のデータ
まずは,図1をご覧ください少々字が小さくて見にくいが・・).この図の縦軸は大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間,横軸は塔ノ岳山頂に到着したときの山頂の気温です.測定時間は,概ね9時30分頃から9時50分頃です.塔ノ岳山頂には,山頂のポール,尊仏山荘のトイレ前,客室前の3箇所に温度計がああります.それぞれの温度計の温度が2~3℃ほど微妙に異なりますが,このグラフでは客室前の温度計の値を採用しています.
所要時間は,多少のアイドル時間を含んでいますが,まあ,そう厳密なことは言わないでおくことにします.
このグラフを子細に眺めると,概ねマイナス5℃からクラス5℃ぐらいの時に一番短時間に登っていることが分かります.この温度帯よりも,気温が高くても,低くても所要時間は長くなってしまいます.
さらに子細に眺めると.データが,体調が良いとき,普通のとき,そして悪いときの3本の曲線に収斂しているようです.真ん中の曲線(Ln)が“通常”,下の曲線(Lf)が“速い”,上の曲線が“遅い(Ll)”です.
同じようなグラフを,過去,数年感にわたって記録していますが,全体的に見て,年ごとにだんだん所要時間が長くなる傾向があります(ただし,冗長になるのが怖いので,この経年の分析結果は別の機会に発表することにします).
図1 2011年度塔ノ岳登頂実績
■βの決定
さて,それでは図1のデータをよりどころにして,式(2)のαおよびβの値を決めることにします.少々乱暴な決め方ですが,この稿は学術論文ではないので,多少の独断と偏見はOKということにします.
まず,βを決めることにします.
少々乱暴ですが,図1から,
0℃の時, Ln=1
とすれば,外気温とLn,Lf,およびLlは,およそ次のようになっていることが分かります.
外気温(℃) Ln Lf Ll
-5 1.01 0.96 1.02
0 1.00 0.95 1.08
+5 1.01 0.95 1.08
10 1.04 0.97 1.11
15 1.12 1.04 1.17
20 1.20 1.12 1.27
ただし,+20℃辺りのデータは数が少ないので,信憑性は低いです.とは言っても,当初から全体のデータが粗いので,そう厳密なものではありません.
とはいえ,これらのデータから,式(2)のβを決めることができます.
まず,標準のLnの値に注目します.すると,山頂の気温が,
マイナス5℃あるいはプラス5℃なら標準所要時間を1.01倍する.
プラス10℃なら1.01倍する.
プラス15℃なら1.12倍する.
同じように,体調や路面状態が良いときはLfの値を使います.体調や路面状態が悪いときはLlの値を使います.
■αの決定
今回は,記述が冗長になるのを避けるために,実績データを示すのは省略しますが,ごく簡単に紹介済ますと,2009年度から2011年度までの0℃におけるLnは以下の通りでした.
2009年 2時間20分(140分)
2010年 2時間25分(145分)
2011年 2時間30分(150分)
つまり,私の場合,5分/年の割合で平均所要時間が長くなっています.これは大変悲しいことですが仕方がないですね.たったこれだけの数字でαを決めるのは少々乱暴ですが,簡略化のために,一応,αは,次の通りとします.ただし,2009年を基準年とします.そして,2009年からの経過年数をnとします.
α=1+0.03n
ただし,nは2009年からの経過年数.
■試算
では,αとβを使って実際に計算してみましょう.
仮に,2012年に大倉尾根を経由して塔ノ岳に登ったと仮定します.このときの塔ノ岳山頂の気温が0℃,そして登っている間に,30枚の写真を撮りました.また,5人の知人と途中で雑談しました.途中でアイゼンを1回装着しました.
以上の仮定で所要時間を推計してみましょう.
まず,2009年を基準にしていますから,
n=2012-2009=3
したがって,
α=1+0.03n=1.09
次にβですが,山頂の気温が0℃ですから,
β=1.0
また題意から
m=30
n=5
p=1
です.したがって,式(2)は,
T =140α・β+(1/4)(m+2n)+5p (2)
=140×1.09×1.0+(1/4)(30+2×5)+5×1
=167(分)
=2時間47分
ということになります.
3月20日に,塔ノ岳に登ったときの実際の所要時間は2時間48分.このとき写真はもう少したくさん撮りましたが,まあ,まあ,式(2)の推測結果と良く合致しているようです.
■5年後の私
さて,それでは,5年後の私が,同じ条件で塔ノ岳に登ったとしましょう(実際には死んじゃってるかもしれませんが・・・).
まず5年後ですから,
α=1+0.03×8=1.24
です.β,m,n,およびpは,前項の試算と同じとすれば,
T=140×1.24×1.0+(1/4)(30+2×5)+5×1
=188(分)
=3時間08分
ということになります.
嗚呼!
ついに所要時間が3時間をオーバーしてしまう・・・・・・!!
でも・・・まぁ~,・・・本当は,5年後に塔,ノ岳に登れるだけの体力があるかどうか.そこんところの方がはなはだ心許ないんです.
ここ数年,あちこちの部品の摩耗がひどくなっています.あと数年すれば,多分,もう登るのは無理になる可能性の方がずっと高いような気がしています.
まあ,こんなところで,今日の愚痴話は終わりにして,山猫ミー君にバトンタッチさせて頂きましょう.
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再び山猫ミーです.
本音を言わせて頂ければ,FHさんの冗長な話は退屈しますよ.
そんなにグチャグチャと持って廻ったような,勿体振った言い回しをしなくても,たかが所要時間など,2時間50分が3時間になったって構わないじゃないか・・・ちょっと道草すれば5分や10分,すぐに狂っちゃうでしょう.そんなことに目くじら立てて,大げさな式など作って,一体何になるって言うんです?
まあ自分勝手なお遊びにしか見えませんよ.
我が輩が,
「何をゴチャグチャ,やってるんですか? 下らないよ」
と言いました.すると,FHさんも,
「ご尤も,ご尤も,・・・・(こんなこと)下らんことですよね」
と首を縦に振っている.
まあ,グチャグチャ言わずに,何時間かかっても良いから,ずっと尊仏山荘に顔を出して下さいよとFHさんに言いました.
では・・・・・
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b7c292ada2159abf2e390f5c380ba113
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/2951bc0282f1e1ec897597d797e72e64
理論ずくめの公式で頭が痛いです
私の方はというと
本能だけでやっていますので......
ただ一つ言えることは
愚直なまでの飽くなき山好きの心
山が好きだから通う
体調を慮りながら、これからの桜の季節にますますの塔ノ岳詣を期待しております
常連さんたちの顔ぶれが揃ってないと物足りなさも感じます
これからも可能な限り、山へ
いつも応援させていただいております
今日は川村さんが登ってますネ
丹沢ウッズさんからコメントを頂戴すると大変勇気付けられます.
日曜日(3月25日)は,山仲間との定例会の開催日で,城山・幕山を一回りしてきました.
幕山公園の梅は正に見頃.素晴らしかったです.
そんなわけで,日曜日には塔ノ岳に行けませんでしたら,今週から定例通り週に1~2回のペースで塔ノ岳詣でを致します.
よろしくお願い致します.
どうも有難うございました.