<浅間山山腹から外輪山を望む>
中秋の信州:浅間山登頂(2):山頂を目指して
(山旅スクール5期「鎌倉トレッキング会」)
2010年10月3日(日)
<浅間山概念図>
<山頂へ向かう>
■ザレた急勾配の登山道
火山館を10時12分に出発した私たちは,10時40分に,無事,Jバンド分岐点に到着する.
昨日の離山ハイキングの様子では,ノシイカさんを除く方々は,せいぜいJバンド分岐まで歩ければ上々だと思っていたが,全員意外と元気である.その上,登る気満々である.こうなったら,案内役の私も,何とか全員を山頂まで連れて行こうと思うようになる.
全員を疲れさせずに登るには,スローペースで登るしかない.足の速い人を先頭に立てると,他の人もその速さに引きずられて,結局は途中で落伍してしまうだろう.そこで,私が隊列の先頭に立って,1時間当たりの登攀速度を250メートル程度に抑えて,ユックリ,ユックリと登り続ける.
浅間山はコニーデ型の火山である.したがって,山の勾配は中腹辺りが最もきつくなる.踏み跡のような細い登山道が山肌を巻くようにして続く.急坂の登山道は長野県と群馬県の県境に向かって北東の方向に続く.登るにつれてザアレ道は,1歩登って半歩スリ落ちるような急勾配になる.
それでも,登っている内に,だんだんと高度が増して.第2外輪山の山々が,だんだんと目線と同じぐらいの高さになる.
■Nさんが高山病
知らず知らずのうちに高度が増している.振り返ると第2外輪山のすぐ向こうに四阿山が見えている.群馬県側の山麓から白い雲が湧き上がっている.嬬恋村辺りの平野部は一面の雲に覆われているが,雲海の遙か彼方に谷川岳と思われる山塊が雲に浮かぶように見えている.
浅間山が独立峰のためか,山裾から山肌を巻くようにして強い風が吹き上げてくる.高度が増すにつれて,風もだんだんと強まり始める.
標高2400メートルを少し越えた付近で,一行の一人,Nさんの体調が悪くなる.何回か深呼吸をして貰った後,姪の山ガールにNさんのリュックを持って貰って,再び歩き出す.しかし,ほんの5分も歩かないうちに,Nさんが道端に座り込んで吐き出す.これは単なる疲労ではなく明らかに高山病である.直ちに標高の低いところへ下山すべきである.
私がNさんにエスコートして下山しようと申し入れるが,Nさんは一人で大丈夫だと言う.遠慮するなと申し入れたが,Nさんは案外シッカリしているようである.この辺りは見晴らしも良いし,登山道も一本道.初期の高山病とハッキリしているので,少し標高が低いところへ行けば必ず治ることも自明である.固辞するNさんに逆らってエスコートするのも返ってNさんの負担になると判断し,お一人で火山館まで下山して貰うことにする.
■前掛山分岐点
Nさんのことで,15分ほどロスタイムが出たが,Nさんとお別れしてから,すぐに浅間山釜山と前掛け山の分岐に到着する.11時55分である.
釜山と前掛け山の間の第1火口原を東から強烈な風が吹き抜けている.ここで休憩を取りながらウインドウブレーカー代わりに雨具を着込む.雨具の袖が強風に煽られてバタバタと大きな音を立てる.辺り一面,噴火で飛び散った火山弾で埋め尽くされているが,風を遮るような大きな岩はない.強風の中20分ほど休憩をしながら,風対策の装備をシッカリする.こんなとき,同じ登山学校で習ったメンバーなので,以心伝心で装備が終わる.
■強風と砂つぶての山頂
12時05分,いよいよ山頂を目指して登山を開始する.前方には,第2外輪山の切り立った火口壁が見えている.登るにつれて風がますます強くなる.私のすぐ前を歩く仲間が,強風に煽られてよろよろしている.大分疲労も貯まっているようである.私は後ろからこの方の身体を支えながら,
「ゆっくり,ゆっくり・・深呼吸をして・・」
と言い続ける.
「あと一息,あと一息・・・ここまで来たら,是非,山頂まで行きましょう・・」
と絶えず声を掛ける.
その甲斐があってかどうか分からないが,12時24分,Nさんを除く全員が山頂に到着する.山頂に立つと一層強い風が吹いている.火山灰の砂粒が,顔にビシビシと当たる.
とても長居をする余裕はないが,山頂から八ヶ岳連峰の山々が良く見えている.周囲の眺望をサッサと写真に収めて,12時28分に下山を開始する.
<八ヶ岳遠望>
<素晴らしい火口原>
■火口原で昼食
強風の中,一刻も早く風下に戻りたいが,足許に注意しながら下り続ける.
下り始めて10分ほどで釜山前掛山分岐を通過する.ここまで下ると風は幾分弱くなる.昼食時はすでに過ぎているが,こんな吹きさらしの所で昼食を摂る気にはならない.多少の空腹を我慢して,一気に下り続ける.その間,何人かの登山客とすれ違う.
天気予報は大きく外れて,雨が降るはずなのに,一向に雨が降る気配はない.有り難い.
高度が下がるにつれて,風も収まり温かくなる.登山道の周辺に,高山植物が見え始める.
13時39分,標高2050メートル付近のなだらかなところで,遅めの昼食を摂ることにする.姪を含めて,一同,車座になる.
浅間山荘の弁当を見せていただく.オムスビが3個と沢山のネーベンが入っている.これならば,840円也の弁当代も,決して高くはなさそうである.皆の意見では,浅間山荘のご飯は大変美味しかったと評判である.
■Nさんと合流
昼食を終えて13時45分に再び歩き出す.食事時間は,たった16分.この辺りも,登山学校の教え通りで,大変気分が良い.
暫く下り続けると,先ほど高山病で下山したNさんが,突然,現れる.
Nさんは,折角,高いところまで登ったのに,真っ直ぐ火山館に引き上げるのでは勿体ないので,この近くの広場で昼寝をしていたという.そして,たまたま私たちとすれ違った登山者から,
「お仲間の人が,近くで昼食を摂っていますよ・・・」
と教えて貰っていたそうである.
■Jバンド分岐を通過
標高が下がるにつれて,繁茂する植物が多くなる.植物のことは,殆ど知識がないので,正確な記述はできないが,最初は背丈の低い草が増え始める.そして,次第に腰の高さぐらいの植物が増え始める.
13時53分,Jバンド分岐を通過する.
この辺りから次第にカラマツが増え始める.まだ,紅葉の見頃には早すぎるが,緑を少し残したまま薄っすらと黄ばみ始めたカラマツは,実に美しい.カラマツの間から第2外輪山の山々が見え隠れする.火山独特の岩の色と,黄ばみ始めたカラマツが実に見事な調和をしている.時間が許されるならば,こんな素晴らしいところで何時までも過ごしたいなと思う.
■火山館へ戻る
14時10分,草すべり分岐を通過する.周囲のカラマツ林が一層深くなり,何とも言えないエキゾチックな感じになる.どこかの木陰から白雪姫の小人が突然現れるのではないかと錯覚するほどの深い森である.
やがて森を抜けると,前方に火山館の屋根が突然見え出す.幾分荒れて急斜面の坂道を下って,14時17分に火山館に到着する.
(つづく)
「関東・上信越の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/76e01d869e2f19bad967edce76c442f0
「関東・上信越の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b2e6f55c3fddd064083f9329c30b375c
中秋の信州:浅間山登頂(2):山頂を目指して
(山旅スクール5期「鎌倉トレッキング会」)
2010年10月3日(日)
<浅間山概念図>
<山頂へ向かう>
■ザレた急勾配の登山道
火山館を10時12分に出発した私たちは,10時40分に,無事,Jバンド分岐点に到着する.
昨日の離山ハイキングの様子では,ノシイカさんを除く方々は,せいぜいJバンド分岐まで歩ければ上々だと思っていたが,全員意外と元気である.その上,登る気満々である.こうなったら,案内役の私も,何とか全員を山頂まで連れて行こうと思うようになる.
全員を疲れさせずに登るには,スローペースで登るしかない.足の速い人を先頭に立てると,他の人もその速さに引きずられて,結局は途中で落伍してしまうだろう.そこで,私が隊列の先頭に立って,1時間当たりの登攀速度を250メートル程度に抑えて,ユックリ,ユックリと登り続ける.
浅間山はコニーデ型の火山である.したがって,山の勾配は中腹辺りが最もきつくなる.踏み跡のような細い登山道が山肌を巻くようにして続く.急坂の登山道は長野県と群馬県の県境に向かって北東の方向に続く.登るにつれてザアレ道は,1歩登って半歩スリ落ちるような急勾配になる.
それでも,登っている内に,だんだんと高度が増して.第2外輪山の山々が,だんだんと目線と同じぐらいの高さになる.
■Nさんが高山病
知らず知らずのうちに高度が増している.振り返ると第2外輪山のすぐ向こうに四阿山が見えている.群馬県側の山麓から白い雲が湧き上がっている.嬬恋村辺りの平野部は一面の雲に覆われているが,雲海の遙か彼方に谷川岳と思われる山塊が雲に浮かぶように見えている.
浅間山が独立峰のためか,山裾から山肌を巻くようにして強い風が吹き上げてくる.高度が増すにつれて,風もだんだんと強まり始める.
標高2400メートルを少し越えた付近で,一行の一人,Nさんの体調が悪くなる.何回か深呼吸をして貰った後,姪の山ガールにNさんのリュックを持って貰って,再び歩き出す.しかし,ほんの5分も歩かないうちに,Nさんが道端に座り込んで吐き出す.これは単なる疲労ではなく明らかに高山病である.直ちに標高の低いところへ下山すべきである.
私がNさんにエスコートして下山しようと申し入れるが,Nさんは一人で大丈夫だと言う.遠慮するなと申し入れたが,Nさんは案外シッカリしているようである.この辺りは見晴らしも良いし,登山道も一本道.初期の高山病とハッキリしているので,少し標高が低いところへ行けば必ず治ることも自明である.固辞するNさんに逆らってエスコートするのも返ってNさんの負担になると判断し,お一人で火山館まで下山して貰うことにする.
■前掛山分岐点
Nさんのことで,15分ほどロスタイムが出たが,Nさんとお別れしてから,すぐに浅間山釜山と前掛け山の分岐に到着する.11時55分である.
釜山と前掛け山の間の第1火口原を東から強烈な風が吹き抜けている.ここで休憩を取りながらウインドウブレーカー代わりに雨具を着込む.雨具の袖が強風に煽られてバタバタと大きな音を立てる.辺り一面,噴火で飛び散った火山弾で埋め尽くされているが,風を遮るような大きな岩はない.強風の中20分ほど休憩をしながら,風対策の装備をシッカリする.こんなとき,同じ登山学校で習ったメンバーなので,以心伝心で装備が終わる.
■強風と砂つぶての山頂
12時05分,いよいよ山頂を目指して登山を開始する.前方には,第2外輪山の切り立った火口壁が見えている.登るにつれて風がますます強くなる.私のすぐ前を歩く仲間が,強風に煽られてよろよろしている.大分疲労も貯まっているようである.私は後ろからこの方の身体を支えながら,
「ゆっくり,ゆっくり・・深呼吸をして・・」
と言い続ける.
「あと一息,あと一息・・・ここまで来たら,是非,山頂まで行きましょう・・」
と絶えず声を掛ける.
その甲斐があってかどうか分からないが,12時24分,Nさんを除く全員が山頂に到着する.山頂に立つと一層強い風が吹いている.火山灰の砂粒が,顔にビシビシと当たる.
とても長居をする余裕はないが,山頂から八ヶ岳連峰の山々が良く見えている.周囲の眺望をサッサと写真に収めて,12時28分に下山を開始する.
<八ヶ岳遠望>
<素晴らしい火口原>
■火口原で昼食
強風の中,一刻も早く風下に戻りたいが,足許に注意しながら下り続ける.
下り始めて10分ほどで釜山前掛山分岐を通過する.ここまで下ると風は幾分弱くなる.昼食時はすでに過ぎているが,こんな吹きさらしの所で昼食を摂る気にはならない.多少の空腹を我慢して,一気に下り続ける.その間,何人かの登山客とすれ違う.
天気予報は大きく外れて,雨が降るはずなのに,一向に雨が降る気配はない.有り難い.
高度が下がるにつれて,風も収まり温かくなる.登山道の周辺に,高山植物が見え始める.
13時39分,標高2050メートル付近のなだらかなところで,遅めの昼食を摂ることにする.姪を含めて,一同,車座になる.
浅間山荘の弁当を見せていただく.オムスビが3個と沢山のネーベンが入っている.これならば,840円也の弁当代も,決して高くはなさそうである.皆の意見では,浅間山荘のご飯は大変美味しかったと評判である.
■Nさんと合流
昼食を終えて13時45分に再び歩き出す.食事時間は,たった16分.この辺りも,登山学校の教え通りで,大変気分が良い.
暫く下り続けると,先ほど高山病で下山したNさんが,突然,現れる.
Nさんは,折角,高いところまで登ったのに,真っ直ぐ火山館に引き上げるのでは勿体ないので,この近くの広場で昼寝をしていたという.そして,たまたま私たちとすれ違った登山者から,
「お仲間の人が,近くで昼食を摂っていますよ・・・」
と教えて貰っていたそうである.
■Jバンド分岐を通過
標高が下がるにつれて,繁茂する植物が多くなる.植物のことは,殆ど知識がないので,正確な記述はできないが,最初は背丈の低い草が増え始める.そして,次第に腰の高さぐらいの植物が増え始める.
13時53分,Jバンド分岐を通過する.
この辺りから次第にカラマツが増え始める.まだ,紅葉の見頃には早すぎるが,緑を少し残したまま薄っすらと黄ばみ始めたカラマツは,実に美しい.カラマツの間から第2外輪山の山々が見え隠れする.火山独特の岩の色と,黄ばみ始めたカラマツが実に見事な調和をしている.時間が許されるならば,こんな素晴らしいところで何時までも過ごしたいなと思う.
■火山館へ戻る
14時10分,草すべり分岐を通過する.周囲のカラマツ林が一層深くなり,何とも言えないエキゾチックな感じになる.どこかの木陰から白雪姫の小人が突然現れるのではないかと錯覚するほどの深い森である.
やがて森を抜けると,前方に火山館の屋根が突然見え出す.幾分荒れて急斜面の坂道を下って,14時17分に火山館に到着する.
(つづく)
「関東・上信越の山旅」の前回の記事
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「関東・上信越の山旅」の次回の記事
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