<Jバンド分岐を過ぎて浅間山を見上げる>
中秋の信州:浅間山登頂(1):火山館
(山旅スクール5期「鎌倉トレッキング会」)
2010年10月3日(日)
<登山地図>
<プロフィールマップ>
<浅間山荘へ>
■寝不足の朝
昨夜は小諸駅から徒歩で10分ほどの所にある弟の家に宿泊した.丁度東京在住の姪も夕方に帰宅する.久々の再開だったので,話が弾んだ.パソコンを囲んで,海外旅行の写真などを見ながら,旅の思い出や経験談を語り合う内に,ついつい夜更かししてしまった.
少々寝不足だが,6時に起床する.さすがに高原の町,小諸である.朝は我が家のある鎌倉より幾分寒いようである.
今日の天気予報は曇り後雨.余り良くない.せめて,午後まで雨にならなければ有り難いなと思う.
弟は連れ合いが早くになくなったので,普段は一人暮らし.弟が料理した朝食を一緒に食べる.
7時丁度に,弟の自家用車に乗って出発.山ガールの姪も同行する.心強い.
途中,荒町にあるコンビニに立ち寄る.今日の昼食と,火山館の小屋番,Kさんへの手土産を購入する.小諸市内から長い登り坂を浅間山荘へ向けて走る.沿道にはリンゴ畑が点在している.天気予報では曇りの筈だが,心地よい朝日が射している.
7時30分,予定通りに浅間山荘に到着する.
■浅間山荘に到着
浅間山荘で一行を待つ.
朝食の時間が,どうやら約束の時間より遅れているようである.一行の一人,ホッシーが玄関まで出てきて,
「食事中だから少し待ってて下さい・・」
と言う.
浅間山頂(正確には前掛山山頂;以下同じ)までピストンするのならば,浅間山荘を6時頃には出発したいところだが,これでは出発時間が大幅に遅れるので,とても山頂までは無理だなと思う.
<火山館を目指して>
■緑陰の登山道
7時56分,浅間山荘から歩き出す.登山道入口の鳥居で無事を祈ってから,登山道に入る.気温は暑くも寒くもない.ごく,ごく,ユックリとしたペースで歩く.道路の両側から大きく伸びた木の枝が柔らかい緑のトンネルのようになっている.暫くの間は四輪駆動車なら難なく通れるような歩きやすい道が続く.この辺りの標高は1,400メートル余りである.まだ,登山口とはいえ,すでに標高は丹沢の塔ノ岳山頂に匹敵する高所である.そのため,標高の低いところにくらべて,木々は随分と易しくて淡い緑色をしている.私は頭上の緑陰を見上げながら,
「ああ,綺麗だな,実に気持ちが良いな・・」
を連発する.
実際の所,今回の浅間山登山は少々面倒だなと思っていた.ところが,この美しい緑陰の中を歩いている内に,やっぱり来て良かったなと心底から思うようになる.
■美味しい湧き水
8時32分,二の鳥居に到着する.ここで,登山道は谷間の右岸を蛇堀川に沿って,不動の滝経由の道と,おなじ右岸だが,高巻きするトラバースする道に分岐する.この二つの道は,暫く登ったところで再び合流するので,どちらを登っても結局は同じになるが,同行している地元の弟の発案で,登りは不動の滝経由の登山道を登ることにする.
何本かの丸太を束ねただけの橋を2本渡って,蛇堀川の右岸に渡る.そして,不動の滝経由の道を進む.
8時48分,水飲み場に到着する.ここで,冷たい水を味わいながら,5分ほど小休止する.坂道で火照り気味の身体には,冷たい水が何よりのご馳走である.実に美味しい.
■不動の滝
さらに谷間の道を登り続ける.
8時52分頃,前方からザワザワと水が流下する音が聞こえ始める.やがて,進行方向右手に落差10数メートルの立派な滝が見え始める.標高は約1,670メートル.2段の滝である.この滝は硫化鉄を多く含んでいる水が流下するので,いつも赤茶色をしているが,この所の雨で水量が増えているらしく,川の水もあまり赤茶色が目立たないほど薄められている.
登山道から滝を覗き込みながら,何枚かの写真を撮る.
■火山館の薪
滝を過ぎた頃から,登山道の勾配が急になる.九十九折りの急坂である.この辺りの坂道を長坂と呼んでいる.時々,階段道になる.登山道両側の所々に,薪が山積みされている.例え1本でも良いから火山館まで運んで下さいとかいた立て札が付いている.
私は,ここを通るとき,いつも数本の薪を担ぎ上げている.でも,今日の薪は最近降った雨が芯の方まで染み込んでいるので,想像以上に重たい.その上,木肌がベタベタしているので,持ちにくい.でも,火山館の小屋番Kさんのために,せめて1~2本でも良いから持っていきたい.どの薪を持っていったらよいか少々迷ったが,中ぐらいの大きさの薪2本だけ担ぎ上げることにする.
8時59分,先ほど分岐した道が再び合流して1本の登山道になる.ここに3番目の大鳥居がある.ここで10分ほど給水休憩を取る
<牙山が見え出す>
■牙山
9時23分,右手前方に牙山(ぎっぱやま)が見え始める.もの凄く機微言いトーミの峰,黒斑山などと同じ第2外輪山の一部である.私たちは,これから第2外輪山の裂け目から,火口のある釜山と第2外輪山の間にある火口原,湯の平の入口を目指して登っている.この入口に最初の目的地である火山館がある.
今,右手前方に見えている牙山の断崖が,右手の後方になるまで登れば火山館はもうすぐである.
「あそこに断崖が見えるでしょう.あの断崖の山が牙山です.断崖を通り過ぎれば,すぐ火山館ですよ・・・ゆっくり,ゆっくり,登りましょう・・」
と一同を励まず.
<火山館で一休み>
■蛇堀川の源流
一旦,樹林帯を抜ける.辺りの視界が開ける.進行方向右手にはゴツゴツと切り立った山塊が聳えている,トーミの峰,黒斑山などの第2外輪山の山々である.右手には,硫黄の臭いが立ちこめる谷間が見えている.ここが蛇堀川の源流である.その先に牙山が聳えている.谷間は火山独特の赤茶色ガレ場になっている.赤茶色の断崖が湧き出る地下水で濡れて,ピカピカと光り輝いている.
「・・凄い風景ですね.やっぱり火山独特の眺めですね・・」
と言っている.私もその通りだなと思う.
紅葉が始まると,この辺りの風景は一段と素晴らしくなるが,まだ,紅葉が見頃になるのは,ちょと先.
「紅葉が見頃になると,素晴らしい長めになりますよ・・是非,想像してみて下さい」
■浅間神社
谷を回り込むように横切って左岸に向かう.ここから短い急坂を登ると,目の前に浅間神社の鳥居が2基建っている.9時57分,浅間神社に到着する.まずは安全を祈願する.
浅間神社のすぐ脇にある火山館の前で,何枚かの記念写真を撮る.
■火山館に立ち寄る
まずは,火山館の小屋番,Kさんに挨拶する.久々の再会である.私は東京駅構内で購入したほんの小さな土産物を手渡す.
「ほんのお印・・たまには都会の雰囲気を味わって下さい・・」
Kさんは,とても好感の持てる方である.私が年に何回か火山館を訪れるのも,Kさんと雑談をするのが楽しみだからである.
2年ほど前までは,“トマトちゃん”という愛称のハトが居て,愛嬌を振りまいていたが,今はどこかに行ってしまった.残念.
地元出身の私としては,1人でも浅間山に好感を持つ人を増やしたい.そこで,同行の5人,元山ガールをKさんに紹介する.
私は,念のため,Kさんに伺う.
「浅間山頂まで,標準時間でどのくらい掛かりますか?」
「浅間山荘から,ここまで,どのくらい時間が掛かりましたか?」
「2時間位です」
「そうですか,それなら山頂まで2時間で登れますよ.ひょっとしたら2時間を切るぐらいでしょう・・」
「分かりました.では,12時半まで登ります.それまでに山頂に到着できないときは,そこから引き返します.14時30分頃までには,火山館に戻るようにします・・」
<火山館:人物は無関係>
<湯の平へ>
■草すべり分岐
10時12分,私たちは火山館を出発する.これから何処まで登れるか分からないが,せめてJバンド分岐辺りまでは登りたいなと思っている.
火山館を回り込むように浅間神社の脇の急坂を登る.すぐに登山道の勾配が緩くなる.そして,深い唐松林に入り込む.この辺りには,春遅くまで残雪がある.一昨年,ここでカモシカに出会ったことがあった.あのときは小諸の弟と2人の気儘旅.ここでカモシカをスケッチしたことを思い出す.
辺り一面が見事な唐松林になっている.まだ本格的な紅葉は始まっていないが,それでもここは標高2000メートルの高原である.浅間山荘付近と比較すると,随分と秋も早そうである.ほんのりと紅葉し始めた唐松がとても美しい.
唐松の林の合間から第2外輪山の山々が断崖のように聳えているのが見える.ほんのり紅葉の唐松と,ゴツゴツとした外輪山の山並みが見事に調和している.浅間山独特の風景が広がっている.
程なく草すべり分岐に到着する.ここから草すべりを約1時間登るとトーミの頭脇に到着する.第2外輪山の火口壁を急登するコースである.
弟は,ここから草すべりコースの途中まで行って,昼食を摂り,昼寝をしてから火山館に戻るという.
ほんの数分,立ち休憩を取った後,私たちは,ここで弟と別れて,Jバンド分岐を目指して歩き出す.
■Jバンド分岐を越えて
10時40分,Jバンド分岐に到着する.
ここが思案のしどころである.ここからJバンド方向に進んで,火口原の湯の平散策を楽しむか,それとも,ガレ場が連続する浅間山を登るかの選択である.
私は,内心では,Jバンド分岐を湯の平方面に向かい三つ石付近で昼食を摂って,往路を戻るのが楽で良いなと思っていたが,一行の山へ登りたいとう意欲が実に強いのに驚かされる.
「じゃぁ・・天気も良いし,登るか.行けるところまで行こう・・」
と決心する.
今日の天気予報は,大外れである.午前中は曇りで午後から雨とのことだったが,今のところ朝から晴天である.浅間山の山頂辺りを見上げると,青空に向かって,水蒸気がモクモクと上っているのがクッキリと見えている.
私たちは森林限界を越えて,いよいよガレた急な坂道を登り始める.果たして何人が山頂まで辿りつけるのだろうか.それにしても,一同,思っていたより元気である.
(つづく)
「関東・上信越の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/44440ab4842704fee287a5a10cf6c602
「関東・上信越の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/8ae280b31b2cc4e8b2c683af80c88323
[編集後記]
■資料作りに精根尽き果てる
ここ数日の忙しさといったら・・・現役時代でも滅多にないほどであった.
まずは,10月30日から2泊3日の中山道中六十九宿巡りの下調べ.参加者全員にコピーを配布するために,できるだけ早く纏めて,コピー役のNさんにお渡ししなければならない.
ここ3~4日,毎日10時間以上もの時間を費やして,資料調査,地図作りに没頭した.既に文献など2万円以上の投資をしているが,内容が文献毎に少しずつ違っているところがあり,迷いに迷う.
カシミールを駆使して,これから歩く場所の歩行距離,累積登攀高度などの下調べを進めるが,ルートがなかなか明確に決められないので,あちこちで引っかかってしまう.その都度,戸惑いながら,少しずつ作業を進める.これらの作業結果をA4の用紙にプリントする.1セット20枚以上のカラープリントである.これを幹事役3人分を含めて4セットをプリントアウトする.イライラするほどプリント時間が掛かる.
10月6日(水),高校同窓会散策の会で井の頭公園を散策する予定があったが,中山道中の地図が完成していないので欠席,朝から晩までパソコンに釘付けになって,資料を纏める.眼がチカチカして,焦点が合わなくなってくる,典型的な眼精疲労である.眼科医から処方された目薬を差しながら,夜中の10時頃まで頑張って,何とか完成させる.10月7日開催の五十三次洛遊会定例会に,完成したプリントを持参して,幹事役のお三方に手渡す.心底からホッとする.
■眼が疲れる
寄る年波が原因かどうか分からないが,最近,パソコンに向かっていると,眼が疲れる.疲れてくると,焦点がぼけるだけでなく,物が二重に見え始める.そこで,つい先日,もしやと思って頭のCTスキャンをした.沢山の頭の断面図を眺めながら,脳専門の医師の診断を眼科医経由で伺う,
「チョチョッと白い点々が見えるけど,まあ年が年なので,これは仕方がないでしょう.脳腫瘍もないし,特に悪いところはありません・・・」
「・・・・」
「白内障も発症していません.緑内障もありません.年齢の割には水晶体は,まだまだ綺麗です・・」
「では,何処も悪くないということですか?」
「そうです.また春になったら,眼のチェックをしましょう・・」
「疲れたときに焦点がぼけたり二重に見えるのは,仕方がない訳ですね・・」
「そういうことです・・」
この診断結果には参った.要するに疲れ目で出る症状はどうしようもないということである.
■そろそろ絵を描き始めなければ・・・
この所の多忙で,肝心の水彩画を描く時間が全く取れない状態が続いている.イライラするほど毎日が瞬く間に過ぎ去っていく.
部屋の片隅にイーゼルを立てて,画板には半切の画用紙が貼り付けてある.それがいろいろと行事が重なって,落ち着いて描いていられない.マイッタナ.早くこんな状態から抜け出さなければ・・・
そういえば,また塔ノ岳から遠ざかったままである.これもマイッタナ!
私の愚痴は多くなるばかりである.
でもまあ,今日の愚痴は,これで終わりにしよう.
(愚痴おわり)
中秋の信州:浅間山登頂(1):火山館
(山旅スクール5期「鎌倉トレッキング会」)
2010年10月3日(日)
<登山地図>
<プロフィールマップ>
<浅間山荘へ>
■寝不足の朝
昨夜は小諸駅から徒歩で10分ほどの所にある弟の家に宿泊した.丁度東京在住の姪も夕方に帰宅する.久々の再開だったので,話が弾んだ.パソコンを囲んで,海外旅行の写真などを見ながら,旅の思い出や経験談を語り合う内に,ついつい夜更かししてしまった.
少々寝不足だが,6時に起床する.さすがに高原の町,小諸である.朝は我が家のある鎌倉より幾分寒いようである.
今日の天気予報は曇り後雨.余り良くない.せめて,午後まで雨にならなければ有り難いなと思う.
弟は連れ合いが早くになくなったので,普段は一人暮らし.弟が料理した朝食を一緒に食べる.
7時丁度に,弟の自家用車に乗って出発.山ガールの姪も同行する.心強い.
途中,荒町にあるコンビニに立ち寄る.今日の昼食と,火山館の小屋番,Kさんへの手土産を購入する.小諸市内から長い登り坂を浅間山荘へ向けて走る.沿道にはリンゴ畑が点在している.天気予報では曇りの筈だが,心地よい朝日が射している.
7時30分,予定通りに浅間山荘に到着する.
■浅間山荘に到着
浅間山荘で一行を待つ.
朝食の時間が,どうやら約束の時間より遅れているようである.一行の一人,ホッシーが玄関まで出てきて,
「食事中だから少し待ってて下さい・・」
と言う.
浅間山頂(正確には前掛山山頂;以下同じ)までピストンするのならば,浅間山荘を6時頃には出発したいところだが,これでは出発時間が大幅に遅れるので,とても山頂までは無理だなと思う.
<火山館を目指して>
■緑陰の登山道
7時56分,浅間山荘から歩き出す.登山道入口の鳥居で無事を祈ってから,登山道に入る.気温は暑くも寒くもない.ごく,ごく,ユックリとしたペースで歩く.道路の両側から大きく伸びた木の枝が柔らかい緑のトンネルのようになっている.暫くの間は四輪駆動車なら難なく通れるような歩きやすい道が続く.この辺りの標高は1,400メートル余りである.まだ,登山口とはいえ,すでに標高は丹沢の塔ノ岳山頂に匹敵する高所である.そのため,標高の低いところにくらべて,木々は随分と易しくて淡い緑色をしている.私は頭上の緑陰を見上げながら,
「ああ,綺麗だな,実に気持ちが良いな・・」
を連発する.
実際の所,今回の浅間山登山は少々面倒だなと思っていた.ところが,この美しい緑陰の中を歩いている内に,やっぱり来て良かったなと心底から思うようになる.
■美味しい湧き水
8時32分,二の鳥居に到着する.ここで,登山道は谷間の右岸を蛇堀川に沿って,不動の滝経由の道と,おなじ右岸だが,高巻きするトラバースする道に分岐する.この二つの道は,暫く登ったところで再び合流するので,どちらを登っても結局は同じになるが,同行している地元の弟の発案で,登りは不動の滝経由の登山道を登ることにする.
何本かの丸太を束ねただけの橋を2本渡って,蛇堀川の右岸に渡る.そして,不動の滝経由の道を進む.
8時48分,水飲み場に到着する.ここで,冷たい水を味わいながら,5分ほど小休止する.坂道で火照り気味の身体には,冷たい水が何よりのご馳走である.実に美味しい.
■不動の滝
さらに谷間の道を登り続ける.
8時52分頃,前方からザワザワと水が流下する音が聞こえ始める.やがて,進行方向右手に落差10数メートルの立派な滝が見え始める.標高は約1,670メートル.2段の滝である.この滝は硫化鉄を多く含んでいる水が流下するので,いつも赤茶色をしているが,この所の雨で水量が増えているらしく,川の水もあまり赤茶色が目立たないほど薄められている.
登山道から滝を覗き込みながら,何枚かの写真を撮る.
■火山館の薪
滝を過ぎた頃から,登山道の勾配が急になる.九十九折りの急坂である.この辺りの坂道を長坂と呼んでいる.時々,階段道になる.登山道両側の所々に,薪が山積みされている.例え1本でも良いから火山館まで運んで下さいとかいた立て札が付いている.
私は,ここを通るとき,いつも数本の薪を担ぎ上げている.でも,今日の薪は最近降った雨が芯の方まで染み込んでいるので,想像以上に重たい.その上,木肌がベタベタしているので,持ちにくい.でも,火山館の小屋番Kさんのために,せめて1~2本でも良いから持っていきたい.どの薪を持っていったらよいか少々迷ったが,中ぐらいの大きさの薪2本だけ担ぎ上げることにする.
8時59分,先ほど分岐した道が再び合流して1本の登山道になる.ここに3番目の大鳥居がある.ここで10分ほど給水休憩を取る
<牙山が見え出す>
■牙山
9時23分,右手前方に牙山(ぎっぱやま)が見え始める.もの凄く機微言いトーミの峰,黒斑山などと同じ第2外輪山の一部である.私たちは,これから第2外輪山の裂け目から,火口のある釜山と第2外輪山の間にある火口原,湯の平の入口を目指して登っている.この入口に最初の目的地である火山館がある.
今,右手前方に見えている牙山の断崖が,右手の後方になるまで登れば火山館はもうすぐである.
「あそこに断崖が見えるでしょう.あの断崖の山が牙山です.断崖を通り過ぎれば,すぐ火山館ですよ・・・ゆっくり,ゆっくり,登りましょう・・」
と一同を励まず.
<火山館で一休み>
■蛇堀川の源流
一旦,樹林帯を抜ける.辺りの視界が開ける.進行方向右手にはゴツゴツと切り立った山塊が聳えている,トーミの峰,黒斑山などの第2外輪山の山々である.右手には,硫黄の臭いが立ちこめる谷間が見えている.ここが蛇堀川の源流である.その先に牙山が聳えている.谷間は火山独特の赤茶色ガレ場になっている.赤茶色の断崖が湧き出る地下水で濡れて,ピカピカと光り輝いている.
「・・凄い風景ですね.やっぱり火山独特の眺めですね・・」
と言っている.私もその通りだなと思う.
紅葉が始まると,この辺りの風景は一段と素晴らしくなるが,まだ,紅葉が見頃になるのは,ちょと先.
「紅葉が見頃になると,素晴らしい長めになりますよ・・是非,想像してみて下さい」
■浅間神社
谷を回り込むように横切って左岸に向かう.ここから短い急坂を登ると,目の前に浅間神社の鳥居が2基建っている.9時57分,浅間神社に到着する.まずは安全を祈願する.
浅間神社のすぐ脇にある火山館の前で,何枚かの記念写真を撮る.
■火山館に立ち寄る
まずは,火山館の小屋番,Kさんに挨拶する.久々の再会である.私は東京駅構内で購入したほんの小さな土産物を手渡す.
「ほんのお印・・たまには都会の雰囲気を味わって下さい・・」
Kさんは,とても好感の持てる方である.私が年に何回か火山館を訪れるのも,Kさんと雑談をするのが楽しみだからである.
2年ほど前までは,“トマトちゃん”という愛称のハトが居て,愛嬌を振りまいていたが,今はどこかに行ってしまった.残念.
地元出身の私としては,1人でも浅間山に好感を持つ人を増やしたい.そこで,同行の5人,元山ガールをKさんに紹介する.
私は,念のため,Kさんに伺う.
「浅間山頂まで,標準時間でどのくらい掛かりますか?」
「浅間山荘から,ここまで,どのくらい時間が掛かりましたか?」
「2時間位です」
「そうですか,それなら山頂まで2時間で登れますよ.ひょっとしたら2時間を切るぐらいでしょう・・」
「分かりました.では,12時半まで登ります.それまでに山頂に到着できないときは,そこから引き返します.14時30分頃までには,火山館に戻るようにします・・」
<火山館:人物は無関係>
<湯の平へ>
■草すべり分岐
10時12分,私たちは火山館を出発する.これから何処まで登れるか分からないが,せめてJバンド分岐辺りまでは登りたいなと思っている.
火山館を回り込むように浅間神社の脇の急坂を登る.すぐに登山道の勾配が緩くなる.そして,深い唐松林に入り込む.この辺りには,春遅くまで残雪がある.一昨年,ここでカモシカに出会ったことがあった.あのときは小諸の弟と2人の気儘旅.ここでカモシカをスケッチしたことを思い出す.
辺り一面が見事な唐松林になっている.まだ本格的な紅葉は始まっていないが,それでもここは標高2000メートルの高原である.浅間山荘付近と比較すると,随分と秋も早そうである.ほんのりと紅葉し始めた唐松がとても美しい.
唐松の林の合間から第2外輪山の山々が断崖のように聳えているのが見える.ほんのり紅葉の唐松と,ゴツゴツとした外輪山の山並みが見事に調和している.浅間山独特の風景が広がっている.
程なく草すべり分岐に到着する.ここから草すべりを約1時間登るとトーミの頭脇に到着する.第2外輪山の火口壁を急登するコースである.
弟は,ここから草すべりコースの途中まで行って,昼食を摂り,昼寝をしてから火山館に戻るという.
ほんの数分,立ち休憩を取った後,私たちは,ここで弟と別れて,Jバンド分岐を目指して歩き出す.
■Jバンド分岐を越えて
10時40分,Jバンド分岐に到着する.
ここが思案のしどころである.ここからJバンド方向に進んで,火口原の湯の平散策を楽しむか,それとも,ガレ場が連続する浅間山を登るかの選択である.
私は,内心では,Jバンド分岐を湯の平方面に向かい三つ石付近で昼食を摂って,往路を戻るのが楽で良いなと思っていたが,一行の山へ登りたいとう意欲が実に強いのに驚かされる.
「じゃぁ・・天気も良いし,登るか.行けるところまで行こう・・」
と決心する.
今日の天気予報は,大外れである.午前中は曇りで午後から雨とのことだったが,今のところ朝から晴天である.浅間山の山頂辺りを見上げると,青空に向かって,水蒸気がモクモクと上っているのがクッキリと見えている.
私たちは森林限界を越えて,いよいよガレた急な坂道を登り始める.果たして何人が山頂まで辿りつけるのだろうか.それにしても,一同,思っていたより元気である.
(つづく)
「関東・上信越の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/44440ab4842704fee287a5a10cf6c602
「関東・上信越の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/8ae280b31b2cc4e8b2c683af80c88323
[編集後記]
■資料作りに精根尽き果てる
ここ数日の忙しさといったら・・・現役時代でも滅多にないほどであった.
まずは,10月30日から2泊3日の中山道中六十九宿巡りの下調べ.参加者全員にコピーを配布するために,できるだけ早く纏めて,コピー役のNさんにお渡ししなければならない.
ここ3~4日,毎日10時間以上もの時間を費やして,資料調査,地図作りに没頭した.既に文献など2万円以上の投資をしているが,内容が文献毎に少しずつ違っているところがあり,迷いに迷う.
カシミールを駆使して,これから歩く場所の歩行距離,累積登攀高度などの下調べを進めるが,ルートがなかなか明確に決められないので,あちこちで引っかかってしまう.その都度,戸惑いながら,少しずつ作業を進める.これらの作業結果をA4の用紙にプリントする.1セット20枚以上のカラープリントである.これを幹事役3人分を含めて4セットをプリントアウトする.イライラするほどプリント時間が掛かる.
10月6日(水),高校同窓会散策の会で井の頭公園を散策する予定があったが,中山道中の地図が完成していないので欠席,朝から晩までパソコンに釘付けになって,資料を纏める.眼がチカチカして,焦点が合わなくなってくる,典型的な眼精疲労である.眼科医から処方された目薬を差しながら,夜中の10時頃まで頑張って,何とか完成させる.10月7日開催の五十三次洛遊会定例会に,完成したプリントを持参して,幹事役のお三方に手渡す.心底からホッとする.
■眼が疲れる
寄る年波が原因かどうか分からないが,最近,パソコンに向かっていると,眼が疲れる.疲れてくると,焦点がぼけるだけでなく,物が二重に見え始める.そこで,つい先日,もしやと思って頭のCTスキャンをした.沢山の頭の断面図を眺めながら,脳専門の医師の診断を眼科医経由で伺う,
「チョチョッと白い点々が見えるけど,まあ年が年なので,これは仕方がないでしょう.脳腫瘍もないし,特に悪いところはありません・・・」
「・・・・」
「白内障も発症していません.緑内障もありません.年齢の割には水晶体は,まだまだ綺麗です・・」
「では,何処も悪くないということですか?」
「そうです.また春になったら,眼のチェックをしましょう・・」
「疲れたときに焦点がぼけたり二重に見えるのは,仕方がない訳ですね・・」
「そういうことです・・」
この診断結果には参った.要するに疲れ目で出る症状はどうしようもないということである.
■そろそろ絵を描き始めなければ・・・
この所の多忙で,肝心の水彩画を描く時間が全く取れない状態が続いている.イライラするほど毎日が瞬く間に過ぎ去っていく.
部屋の片隅にイーゼルを立てて,画板には半切の画用紙が貼り付けてある.それがいろいろと行事が重なって,落ち着いて描いていられない.マイッタナ.早くこんな状態から抜け出さなければ・・・
そういえば,また塔ノ岳から遠ざかったままである.これもマイッタナ!
私の愚痴は多くなるばかりである.
でもまあ,今日の愚痴は,これで終わりにしよう.
(愚痴おわり)