セピア色の画集:こりゃ~・・一体,何の絵だ!
物置をひっくり返していたら,古い古い絵が出てきた.
もう,かれこれ50年も前に画いた絵である.ただ,この絵を画いたときのことを,今でも鮮明に思い出すことができる.
当時,私は大学生だった.私は生まれ故郷の信州からは,とても遠い仙台に下宿していた.
丁度,正月休みで,懐かしい信州の自宅に帰っていた.
ある朝,庭を真っ白な新雪が覆っていた.雪が余りに綺麗だったので,座興でこの絵を画いた.特に上空を覆う雪雲を通して淡い日光が庭に降り注いでいるのが心地よく,綺麗だった.
************************
今は亡き母が,私の絵を見て,大変面白がった.そして,私には断りなしで,日本水彩会上田支部の会合に,この絵を持ち込んだ.題して『雪』.母が付けた名前である.
母の話では,この絵の評価は,完全に真っ二つに割れたという.面白いという人が居られたようだが,一方では,
“なんだ!・・この絵は・・箸にも棒にも引っかからんよ”
という方々も多かったようである.それで,結局は,この絵で上部団体の日本水彩展に応募することはしなかった.
この絵を画いた当の本人,私は,当然,座興で画いているので,まさか母が,そんな大逸れたところへ,この絵を持っていくとは,思ってもいなかった.
でも,このことが切っ掛けになって,私は同じ年に開催された第47回日本水彩展に『春の渓流』という絵を出品して,何とか入選ることができた(こちらの絵は別途取り上げる).
母は,もう,随分昔に旅立ってしまった.
この絵の裏側に画かれている母の字を見る度に,懐かしさが胸に込み上げてくる.そして,母と一緒に,信州のあちこちへスケッチに出掛けた日々のことを甘酸っぱく思い出す.ああ,もう一度,母に会いたい.そして,一緒に絵を描きに行きたい.
<懐かしい母の字>
今の私は,母の享年より10才も余計に長生きしている.でも,心の中では,今でも母は母.私は未だに母に甘えながら,一緒に絵を描きたいなと思っている.
何時かは,私も永久の旅立ちをする.それが何時の日か,神のみぞ知るで,私にも分からない.
でも,時が過ぎ,私もやがて旅立って,彼岸で,また,母と一緒に絵を楽しむ日がやってくる.そうしたら,また,母と一緒に,水彩道具を持って,どこへ行こうかな・・・
***********************
年を重ねると,だれしも涙もろくなる.
私は,この絵を眺めていると,熱いもの胸にが込み上げてくるのを押さえ切れない.
今,私は,在りし日の母を思い出を重ね合わせながら,「こりゃ~・・一体何?」の絵を見つめている.
こんな情景のことを,“走馬燈にように・・”,と言うのかな.と,ついつい余計なことも考えてしまう.
年の瀬も近付いた.
昔流に言えば,悲しいかな,また一つ年を取る.冥土への一里塚を,また一つ通過する.そして,いつかは私の身体も塵芥になって天空に消えていく.そして新しい星の原材料として使われる.
そんな碌でもないことを考えながら,私は,昨夜から,無理をしながら,パソコンで数百枚の年賀状を印刷した.義理でない方へ差し上げる年賀状には,一言二言添え書きをする.そんな作業をしている内に,塔ノ岳日和の1日を,年賀状のために費やしてしまった.
でも,まあ.たまたま,見つけた“こりゃ~・・一体何?”の絵のお陰で,久々に母の思い出に浸ることができた.
合掌.
(つづく)
「セピア色の画集」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b67c1ec01ebf1d08734e807734f943a8
「セピア色の画集」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/ce4ca970f5e6c20bbdd51e9efd52efe7
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いいお話です。
大学時代に描かれたのでしょうか。
お母様との思い出がたくさん詰まった作品なんですね。
実は私は展覧会への出品は小学生時代に学校が児童の作品を一括して出品する「こども県展」の出品の記憶しかないんです。
ですから、そういう大きな展覧会とは無縁の学生時代でした。笑
URLは、道楽で描いた「今様浮世絵」です。
これはお手伝いをしている「留学生文学賞」の受賞式で毎年受賞者に提供している作品です。
興味ありましたら、どうぞご覧下さい。
フラワーヒルさんとはタッチが違いますが……
何時もお世話になっています.
コメント有り難うございました.
この絵は多分大学3年生のとき書いたものです.
就職してから60歳代中頃までの50年間,全く絵など描いたことがありませんでした.
本年初め頃,学生時代の友人の強い勧めがあって,また水彩画を始めました.
絵につきましては,私は全くの新参者ですので,よろしくご指導の程お願いいたします.