営業部長が大活躍の塔ノ岳
(単独山行)
2007年12月6日(木)
偉いぞ!
営業部長
ネズミ捕らえたんだって!
ミー君お手柄!
※昔の猫ならネズミを捕るのは当たり前だが・・・
<尊仏山荘営業部長ミー君>
■ネズミを捕ったぞ!
初冬の暖かい日,塔ノ岳の尊仏山荘を訪れた。
この日の小屋番はOさんである。
山荘の先客Xさんは,大の猫好きである。私が山荘に入ると,開口一番,
「相変わらず,猫の写真を撮っているんですか?」
と私に質問する。
「はい・・・相変わらず。一昨日は,鎌倉の杉本観音の受付でお手伝いをしている窓口担当に合いましたよ・・・昨日は釈迦堂切通で,子猫の写真を沢山撮りました」
「猫,家で飼っているんですか?」
「いえ・・今は飼っていません。でも,昔,わが家では,ずっと猫を飼っていましたよ・・それが今になると懐かしくって・・・」
「そう・・猫は可愛いけど,死んだときに悲しくってね・・」
そんなやり取りをしていると,小屋番のOさんが,猫自慢をする。
「この間,ミーがネズミを捕りましたよ」
と自慢げに話を始める。
「偉いですよ・・捕ったネズミを食べちゃいましたよ」
「へぇ・・そりゃ偉い! 今時の猫にしては大したもんだ・・」
ところで,話題のミー君は何処にいるのだろうかと,辺りを見回すと,番台の後にあるタタミ部屋で香箱を作っている。
「おい・・こら,こっちへ出てきなさい・・」
とOさんが声を掛けると,営業部長は畳の上で座り直す。Oさんがミー君を抱えて,土間に連れ出す。
ミー君は,やや不機嫌そうに,背伸びをしながら,大きな欠伸をする。そして,目を覚ますためか,バケツに顔を突っ込んで,ピシャピシャと水を飲み出す。
私は,猫の仕草が可愛いので,何枚もの写真を撮る。
写真を撮りながら,昔,家に居たネコのことを,懐かしく思い出す。
■シャリバテ
今朝は放射冷却で冷え込んだ。
何時もより少し遅く起きた私は,朝食にパン1枚食べただけで家を飛びだした。藤沢から小田急電鉄で渋沢に出た。そして,渋沢発7時16分発の2番バスに乗車。7時40分,大倉を歩き出した。2番バスに乗り合わせた登山客は,ほんの数名,天気が良い割には乗客が少ない。
7時40分に大倉を歩き出す。今日の塔ノ岳山行は,今年度通算41回目になる。歩き出すと,身体が暖まり,調子が良くなる。要所,要所でラップタイムを取りながら登り続ける。すると,花立山荘までは,前回12月2日に登ったときと,全く同じで,1分も誤差がない。私はラップタイムを取りながら,この程度の馬力で歩くとその通りになる人間の感覚って良くできているなと感心させられる。
ところが,戸沢分岐を過ぎた辺りから,前回と全く同じ速度で登っているのに,何となく疲労を感じ始める。いわゆるシャリバテである。やっぱり朝食がパン1枚ではエネルギー不足のようである。
花立山荘までは,なんとか前回と同じラップで歩けたものの,ここから先は,どうも大変になりそうな予感がする。そこで,花立山荘で立ち休憩を取りながら,ピーナッツバターを挟み込んだパンを2個,急いで腹に収める・・・が,すぐにシャリバテが回復する訳ではない。歩行速度が極端に落ちる。
塔ノ岳山頂には,前回より6分ほど遅れて,10時05分であった。大倉から塔ノ岳までの所要時間は2時間25分,前回の2時間15分より10分も余計に掛かった。
ちなみに,今日,10時現在の山頂の気温は+1.0℃。無風なので,かなり暖かく感じる。山頂では数名の登山客が休憩を取っている。
山頂からの展望はとても素晴らしい。7合目辺りから上が真っ白な富士山と,その右に南アルプスの山々がクッキリと見えている。この風景を見るだけでも,塔ノ岳へ登る価値があると思う。
<山頂からの富士山と南アルプスの眺望>
<尊仏山荘談義>
■鍋嵐談義
山荘で猫の話題を皮切りに,半時間ほどあれこれと雑談で夢中になる。私が
「ところで,例の鍋嵐へ登ってきましたよ・・」
と話題を提供する(注:このブログで鍋嵐登頂記を報告済み)。
「ああ・・そうですか。私行ったことないけど山頂からの眺望はどんなですか?」
「山頂は広葉樹の疎林ですが,葉が落ちていて,結構見えましたよ・・登山途中のヤセ尾根から見下ろす宮ヶ瀬ダムが綺麗でした・・」
と報告する。ついでに自家製の鍋嵐のルートマップとプロフィールマップをOさんに手渡す。Oさんが,
「お客さんの1人が鍋嵐に行きたいと言ってますので,お渡ししますよ・・」
と言う。私は,
「地図読みができて,ヤセ尾根が歩ける方でないと,近付かない方が無難な山でしたよ」
とコメントする。
後になって気が付いたが,私は,もう一人の小屋番Hさんに,
「是非,鍋嵐に行ってみたい。どんな山か知りませんか」
と聞いていたのを思い出した。Oさんが言っている「鍋嵐に登りたい」というお客さんは,ひょっとして私のことではないかと気が付く。私が小屋番を介して私に資料を渡してどうするんだ・・・こう思うと,ついつい可笑しくなる。
ついでに,
「例のエリアマップには,鍋嵐の情報はないですね・・」
と伺う。というのも,Oさんはエリアマップ『丹沢』の著者だからである。Oさんによると,エリアマップは素人の登山愛好家を読者対象にしているので,マイナーなところは記述しないという。むしろ,この所,素人の登山愛好家の事故が増える傾向にあるので,登山ルートの記述もだんだん減らしていくという。例えば西丹沢のミツバ山に薄くルートが入っているが,ここでの事故が多いので,これも消すかもしれないという。
■大倉に引っ越したら・・
Xさんが私に話しかける。
「大分頻繁に塔ノ岳に来られているようですが,お住まいは何処ですか?」
「私? 私は鎌倉に住んでいます。ところでXさんはどちらですか」
「小田急の相模大野近くです」
「それは近くて宜しいですね・・・鎌倉から1回出てくると,交通費が3,000円ほど掛かるんで,回数が多いと,結構大変ですよ」
すると,小屋番のOさんが割り込む。
「大倉辺りだと,月に2~3万円で家を借りることができますよ・・・いっそのこと,こっちへ引っ越されたら如何ですか?」
「それも名案ですね・・・大倉辺りに暮らしていたら,薄暗い内に登り始めて,10時頃には家に戻れますね・・・そうしたら毎日登っちゃうかも・・・」
■某山小屋の評判
私は駅の自動販売機で購入した「神奈川新聞」をOさんに渡す。
たまたま,この新聞に丹沢の某山荘が,経営難で冬閉館するかしないかが話題になっている。私もこの山荘に宿泊した経験がある。この山荘の弁当が,レトルトをお湯で暖めただけのものだったので,硬くて全く食べられなかったことを思い出す。あれでは,お客さんは離れてしまうなと,内心で思っている。
「あそこはお客さんのことを余り考えていないよ・・」
と××さんが言い出す。
「あそこは某団体が運営しているから,商売っけがなさすぎるんですよ・・夕食のときなど,お客さんは何んの話もせずに黙々と食べていましたよ。普通はお喋りしながら食べるのが当たり前でしょう・・」
と△△さんが辛辣なことをいう。
「そういえば丹沢山のみやま山荘は,とても良くなりましたね」
「そう・・,うちも大分お客さん取られましたよ」
とOさん。
風の噂によると,Oさんが,あの経営難の山荘の小屋番になる話もあったとか・・
<もっと山頂に居たいが下山>
■山頂付近は残雪
10時41分に尊仏山荘から下山開始。
金冷し辺りから上の登山道には,ところどころ残雪がある。残雪は登山者によって踏み固められていて結構滑りやすい。今日も念のために4本爪の軽アイゼンをリュックの中に入れていた。勿論,今回は使わなかったが,これから丹沢を訪れるときは,用心のために軽アイゼンを持参した方が良さそうである。
金冷しを過ぎた頃,2人連れの年輩の男性とすれ違う。先頭の男性が,
「あれ,もう山頂まで行って来られたんですか」
と私に話しかける。
そういえば,このお二人,私と同じバスに乗っていた。先頭を歩いてる男性が,
「今日は普段山登りをしていない友達と一緒なので遅くなりました」
と余分な言い訳を私にする。
私もご常連に比較すれば,決して速く歩ける方ではない。むしろ遅い方である。でも,私は,平素から,山に登り続けている。いくら遅いといっても,たまにしか登らない人よりは格段に速く歩けるのは当たり前である。内心では,そう簡単に比較してくれるなと言いたくなる。
<金冷し付近の残雪> <登山口の紅葉>
■心地よい日溜まり
花立山荘辺りまで下ると,日光がとても暖かく感じて気持がよい。日の光を浴びながら,ノンビリしたい気分になる。そこで,花立山荘のベンチに腰掛けて,暫くの間,日光浴を楽しむ。
今日は,花立山荘から見下ろす秦野平野が実に美しい。雲ひとつない絶好の日和である。柔らかな日差しが平野に降り注いでいる。私はまるで鳥にでもなった気分で,美しい下界の景色に見とれながら,ユックリと階段道を下り続ける。
萱場平付近の山道は,霜柱が溶けてやや泥濘道になっているが,それ以外のところは,落ち葉が降り積もっていて,逆にとても歩きやすい。
駒止茶屋付近から下は,真っ盛りは過ぎたとはいえ,まだ紅葉が残っている。美しい紅葉に見とれながら,堀山でまた暫く休憩を取る。もうこうなると下りのラップタイムなどどうでも良くなる。誰も居ない草むらに仰向けに寝転んで,日光の暖かさを楽しむ。
<山腹の紅葉>
■1袋100円のミカン
12時44分に見晴茶屋を通過する。いつもならば,もうそろそろ渋沢駅にいる時間である。さて,何時のバスに乗ろうかと気になり始める。今からだと,12時52分のバスに乗るのは到底無理。となると,13時22分のバスということになる。それならば,十分に時間がある。
私は周囲の風景を楽しみながら,ユックリと下り続ける。
13時09分に登山口に到着する。バス停までの道すがら,無人スタンドに立ち寄って,1袋100円のミカンを購入する。1袋の10個ほどのミカンが入っている。味はあまり良くないが,兎に角安いので,ここを通る度にミカンを購入している。
13時14分に大倉バス停に到着する。下りの所要時間は,2時間33分。なんと,登りよりも10分近く余計に時間が掛かっている。
今回は,何となく疲労感が残っている。
「やっぱり,年かな?」
と不安になる。この不安を取り除くには,山行の継続しか方法がない。明日1日はとにかく休養しよう。ても,また近々,もう一度,塔ノ岳を訪れようかなと思い始める。
[山行記録]
7:40 大倉歩き出し(290m)
7:45 登山口(325m)
7:48 克童窯(350m)
7:53 丹沢ベース(390m)
8:00 観音茶屋(465m)
8:03 高原の家分岐(500m)
8:13 雑事場ノ平(595m)
8:15 見晴茶屋(605m)
8:28 一本松(745m)
8:42 駒止茶屋(855m)
8:49 堀山(910m)
8:56 堀山の家(925m)
9:11 戸沢分岐(1075m)
9:13 萱場平(1090m)
9:34 花立山荘(1260m)(シャリバテ;3~4分食事)
9:49 金冷し(1330m)
10:05 塔ノ岳山頂 着(1465m)(10:41発)(+1.0℃)
10:55 金冷し(1350m)
11:11 花立山荘(1285m)(11:13まで休憩)
11:34 萱場平(1115m)(11:45まで休憩)
11:48 戸沢分岐(1090m)
12:00 堀山の家(950m)
12:09 堀山(920m)
12:18 駒止茶屋(880m)
12:31 一本松(780m)
12:44 見晴茶屋(625m)
12:48 雑事場ノ平(610m)
12:54 高原の家分岐(535m)
12:57 観音茶屋(500m)
13:02 丹沢ベース(440m)
13:06 克董窯(395m)
13:09 登山口(360m)
13:14 大倉 着(310m)
■登攀・下降高度
塔ノ岳山頂 1491(m)
大倉 290
(高度差 1201m)
■登攀所要時間
大倉発 7:40
塔ノ岳山頂着 10:05
(所要時間2時間25分(2.42h)
■登攀速度 1201(m)/2.42(h)=496.2(m/h)
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:41
大倉着 13:14
(所要時間 2時間33分(2.55h))
■下降速度
1201(m)/2.55(h)=480.0(m/h)
(おわり)