のどかな散策路
<<タマ湖・タラナキ滝周遊>>
2006年1月31日(火) その1
夜半,12:40頃,目が覚める。それから明け方まで,半分目が覚めたようなウツラウツラ状態で,ベッドに静かに横たわったまま,ひたすら長い夜が明けるのを待つ。こんな時,私一人の部屋ならば,勝手に起き出して好きなことをやり出すのだが,この旅ではTさんと相部屋である。Tさんに迷惑を掛けるわけにはいかないので,ひたすら「忍」の字でジッとしている。暗い部屋の天井で,何かが周期的に「ピカッ,ピカッ」と点滅する。ごく弱い光だが,気になって仕方がない。この光,多分,火災報知器のセンサーから出ているものだろうが,どうも目を覚させる作用があるようである。
時間つぶしにトイレに行く。明るいトイレの電気の下で暫く過ごす。
再びベッドに横になり天井の「ピカッ,ピカッ」を凝視しつづける。その内にいつの間にか寝入ってしまう。いい気分で寝ていると,いきなり電話のベルで起こされる。6:30のモーニングコールである。今度はやたらに眠いが,起きなければならない。
窓外を眺める。辺り一面に霧が立ち込めている。どうやら余り天気は良くないようである。やたらにバックウインドが出る。ニュージーランドへ来てから食べ物の種類が違ったために,今日あたりで,体の中が,すっかりニュージーランド風に変化してしまったらしい。ウインドの香りも,何となくニュージーランド風に変わっている。
7時少し前にロビーへ降りる。定刻前に全員が集まる。添乗員のSさんが今日の新聞を片手に持って現れる。新聞の天気予報の記事を見ながら,
「・・・今日の天候ですが,日中は晴れ,午後曇り後雨,所によっては雷雨という予報です」
と,紹介する。ややこしい予報である。要するに晴れたり曇ったり雨が降ったり雷が鳴ったりで何でもありの天気である。
「午後って,大体何時頃のことでしょうか・・・」
と誰かが質問をする。もちろん,誰も正確なことは分からない。
朝食のために,いつものレストランに入る。席も何時もと同じである。やや離れたところに,登山家の田部井さんグループのおばさん達も座っている。
もちろんバイキング形式である。
私は太らないように注意しながら食べ物を選ぶ。
たまたま田部井さんも近くで食べ物を選んでいる。添乗員のSさんが,かしこまった仕草で田部井さんに挨拶をする。
「わたくし,・・・もう,お忘れのことと存じますが,2年ほど前にアルパインツアーの人間としてインタビューさせていただいたことのあるSと申します・・・」
田部井さんは気さくにSさんと,二言,三言,話をしている。後で伺うと,田部井さんのグループは,今日,ルアペフ山へ登るそうである。
私は,リンゴ,トマト,椎茸など,なるべく低カロリーのものを選んで朝食にする。しかし,牛乳,ヨーグルト,ジュースなど高カロリーのものを沢山飲んでしまったので,全く元の木阿弥である。
7:45,朝食を済ませて3階の自室へ引き上げる。階段の途中,2階でテラスへ出てみる。霧が山裾を這い上がるように,すこしずつ上っているのが分かる。私がテラスに居ると,後から上ってきたフクロウ,スケルトン,ビアンコ,消防署員,バーダーも釣られてテラスへ出てくる。
眼下にゴルフ場が見える。グリーンの中を,数羽のサギが,トコ,トコと歩いている。朝方の雨で洗われた木々や芝生の緑が,みずみずしく見える。雨は緑に良く合うなと心の中で合点する。
8:00,やっと自室へ戻る。そして,リュックの中の荷物を整えて,集合時間を待つ。
8:16,再びロビーへ降りる。そして,玄関で今日のランチボックスを受け取る。
8:34,「歩き出し」である。今日のガイドはスコッティさんとレッズさんのお二人である。いきなり早足である。ホテルの前の自動車道を上る。出発してすぐにインフォーメーションセンターの建物を通過する。この道は舗装されているが,かなりの勾配がある。そこを速い速度で登っていくので,たちまちの内に息苦しくなる。私は後ろにいるマダムビアンコに,
「・・・ゆっくり行きましょうよ・・・」
と声を掛けて,少し遅いテンポに切り替える。
路傍に白い小さな花をビッシリと咲かせた巻本が自生している。ガイドが,この花の前で立ち止まる。
「・・・この花,マヌカって言うんだよ。この花には抗菌作用があるよ・・・隣の黄色い花はロータスアルファという花です・・・・」
この辺りで,舗装道路が終わる。ここから先は未舗装の山道になる。この遊歩道も昔は幹線道路だったようである。そのために,遊歩道にしては道幅がかなりゆったりとしている。道の両端にニュージーランドフラックスが咲いている。この植物の繊維は衣料にも使われていたという。また花には甘い蜜が一杯詰まっているらしい。
私達は,なだらかな散策路を,ゆっくりと歩いている。霧雨が降り始めた。
(第17話おわり)
<<タマ湖・タラナキ滝周遊>>
2006年1月31日(火) その1
夜半,12:40頃,目が覚める。それから明け方まで,半分目が覚めたようなウツラウツラ状態で,ベッドに静かに横たわったまま,ひたすら長い夜が明けるのを待つ。こんな時,私一人の部屋ならば,勝手に起き出して好きなことをやり出すのだが,この旅ではTさんと相部屋である。Tさんに迷惑を掛けるわけにはいかないので,ひたすら「忍」の字でジッとしている。暗い部屋の天井で,何かが周期的に「ピカッ,ピカッ」と点滅する。ごく弱い光だが,気になって仕方がない。この光,多分,火災報知器のセンサーから出ているものだろうが,どうも目を覚させる作用があるようである。
時間つぶしにトイレに行く。明るいトイレの電気の下で暫く過ごす。
再びベッドに横になり天井の「ピカッ,ピカッ」を凝視しつづける。その内にいつの間にか寝入ってしまう。いい気分で寝ていると,いきなり電話のベルで起こされる。6:30のモーニングコールである。今度はやたらに眠いが,起きなければならない。
窓外を眺める。辺り一面に霧が立ち込めている。どうやら余り天気は良くないようである。やたらにバックウインドが出る。ニュージーランドへ来てから食べ物の種類が違ったために,今日あたりで,体の中が,すっかりニュージーランド風に変化してしまったらしい。ウインドの香りも,何となくニュージーランド風に変わっている。
7時少し前にロビーへ降りる。定刻前に全員が集まる。添乗員のSさんが今日の新聞を片手に持って現れる。新聞の天気予報の記事を見ながら,
「・・・今日の天候ですが,日中は晴れ,午後曇り後雨,所によっては雷雨という予報です」
と,紹介する。ややこしい予報である。要するに晴れたり曇ったり雨が降ったり雷が鳴ったりで何でもありの天気である。
「午後って,大体何時頃のことでしょうか・・・」
と誰かが質問をする。もちろん,誰も正確なことは分からない。
朝食のために,いつものレストランに入る。席も何時もと同じである。やや離れたところに,登山家の田部井さんグループのおばさん達も座っている。
もちろんバイキング形式である。
私は太らないように注意しながら食べ物を選ぶ。
たまたま田部井さんも近くで食べ物を選んでいる。添乗員のSさんが,かしこまった仕草で田部井さんに挨拶をする。
「わたくし,・・・もう,お忘れのことと存じますが,2年ほど前にアルパインツアーの人間としてインタビューさせていただいたことのあるSと申します・・・」
田部井さんは気さくにSさんと,二言,三言,話をしている。後で伺うと,田部井さんのグループは,今日,ルアペフ山へ登るそうである。
私は,リンゴ,トマト,椎茸など,なるべく低カロリーのものを選んで朝食にする。しかし,牛乳,ヨーグルト,ジュースなど高カロリーのものを沢山飲んでしまったので,全く元の木阿弥である。
7:45,朝食を済ませて3階の自室へ引き上げる。階段の途中,2階でテラスへ出てみる。霧が山裾を這い上がるように,すこしずつ上っているのが分かる。私がテラスに居ると,後から上ってきたフクロウ,スケルトン,ビアンコ,消防署員,バーダーも釣られてテラスへ出てくる。
眼下にゴルフ場が見える。グリーンの中を,数羽のサギが,トコ,トコと歩いている。朝方の雨で洗われた木々や芝生の緑が,みずみずしく見える。雨は緑に良く合うなと心の中で合点する。
8:00,やっと自室へ戻る。そして,リュックの中の荷物を整えて,集合時間を待つ。
8:16,再びロビーへ降りる。そして,玄関で今日のランチボックスを受け取る。
8:34,「歩き出し」である。今日のガイドはスコッティさんとレッズさんのお二人である。いきなり早足である。ホテルの前の自動車道を上る。出発してすぐにインフォーメーションセンターの建物を通過する。この道は舗装されているが,かなりの勾配がある。そこを速い速度で登っていくので,たちまちの内に息苦しくなる。私は後ろにいるマダムビアンコに,
「・・・ゆっくり行きましょうよ・・・」
と声を掛けて,少し遅いテンポに切り替える。
路傍に白い小さな花をビッシリと咲かせた巻本が自生している。ガイドが,この花の前で立ち止まる。
「・・・この花,マヌカって言うんだよ。この花には抗菌作用があるよ・・・隣の黄色い花はロータスアルファという花です・・・・」
この辺りで,舗装道路が終わる。ここから先は未舗装の山道になる。この遊歩道も昔は幹線道路だったようである。そのために,遊歩道にしては道幅がかなりゆったりとしている。道の両端にニュージーランドフラックスが咲いている。この植物の繊維は衣料にも使われていたという。また花には甘い蜜が一杯詰まっているらしい。
私達は,なだらかな散策路を,ゆっくりと歩いている。霧雨が降り始めた。
(第17話おわり)