ウイルヘルム山登頂記(18):山頂を目指して(4)
無事ベースキャンプへ戻る
2007年2月10日(土)~17日(日)
第5日目 2007年2月14日(火)(つづく)
■美味しい湧き水
アウンデ湖を出発したトビアスと私は,ノンビリと急坂を下る。途中,度々,トビアスの靴が壊れる。そして,泥だらけの急坂では,私が踏ん張りが利かなくて遅くなる。でも,徐々に,徐々に先へ進む。

<アウンデ湖畔>
滝の写真を撮ったり,トビアスが右足の靴を直したりしながら,ノンビリと下る。 私は,出発前に準備した水1.5リットルと,魔法瓶のお湯0.5リットルを全部飲み干してしまった。もう少し水が欲しいなと思いながら下り続ける。すると,途中のガラ場で湧き水が流れているところがある。トビアスが流れてくる水の上にかがみ込んで,美味しそうに水を飲み出す。私はトビアスに,
「この水,飲めるんですか・・・」と一応確かめる。そして,トビアスの真似をして,流れに口を直接付けて,変な姿勢のまま,「ゴクゴク」と水を飲む。水は冷たくて,とても美味しい。淡泊な味である。これには大満足である。
<アウンデ湖からピュンデ湖へ流下する川>
■ピュンデ湖畔に到着
さらに下り続けて,14時37分,ピュンデ湖畔に到着する。ここからは昨日散策したのと同じ道を辿ることになる。水浸しの道・・・というかジャングルの中の水浸しの空間が道である。水面に出ている木の枝や石を頼りに飛び跳ねるようにして渡る。もう散々歩いて疲れ果てた足は,思うように動かないだけでなく,踏ん張りが利かない。そんな足には,結構,厳しい道である。それに,高度障害のためか,十分に食事が取れないこともあって,シャリバテ気味になっている。

<ピュンデ湖全景>
随分と注意しながら歩いているつもりでも,ときどき石を踏み外したり,バランスが取れなかったりする。その結果,何回も水たまりの中に嵌ってしまう。登山靴やズボンの裾は泥だらけになる。半ばやけくそになって,歩き続ける。
時間は記録しなかったが,やっと最後の1本橋に到着する。この橋の長さはせいぜい5~6メートルほどしかないが,すぐ足下を水量豊かな川が音もなく流れている。トビアスが先に渡り,長い棒きれを私の方に差し出す。そして,
「これに掴まって,ユックリ渡れ・・・」
と私に指示をする。
私は,オッカナ,ビックリ,棒の端を握って,1本橋を渡りきる。
■無事,ベースキャンプに戻る
橋を渡ると一寸した広場になる。ここで,数人のトビアスの知人が立ち話をしている。トビアスも話の輪に加わって暫くの間夢中で話をしている。成り行きで,ここで4~5分,休憩を取ることになる。
いろいろと道草をしながら,ダラダラと歩いたが,15時丁度に,無事,ベースキャンプに戻った。
私が到着すると,ツアーリーダーのケイが,満面の笑みをたたえて明るい声で,
「ご苦労様・・・登頂成功おめでとうございます・・・」
と私を出迎える。私は内心で,「この人は何でこんなに元気なのだろうか」と唖然としている。出発前に,ケイが「何とか午後3時には戻りたい・・」と言っていた。幸いにも,私の場合も,途中でダラダラと下ったにもかかわらず,ケイの危惧していた15時のリミット丁度の時間に戻れた。これは望外の幸いである。
靴やズボンが泥だらけになっているが,とりあえず小屋の中に入る。
「あ~ぁ・・・やっと小屋へ戻ったか・・・」
と安堵感で一杯になる。
■取りあえずは水分を補給
荷物を部屋に置く。少し安心してくると,登頂できたという満足感が沸々と湧いてくる。
食堂に戻る。ケイが,
「飲み物をどうぞ・・・水分を沢山摂って下さい」
と明るく私を促す。
「喉が渇いているので,もし水があるんでしたら,水を下さい」
とお願いする。ケイが,
「私の水が余っていますから,これを飲んで下さい・・・」
と言いながら,ペットボトルの水,1本を私に分けてくれる。私はこの水を有り難く頂戴して喉を潤す。
■ピュンデ湖で洗濯
暫く休んでいると,体力も平常通りに回復して,随分と楽になる。
そこで,ケイに断って,ピュンデ湖の岸辺まで行って,泥だらけの靴と,雨具のズボンを洗うことにした。小屋から草むらの中の踏み跡を100メートルほど辿って,ピュンデ湖畔に到着する。湖は,岸からすぐに深くなっているので,転落すると大変である。私は注意深く湖の水を手ですくって泥靴を洗い始める。
暫くすると,私の後で人の気配がする。何時の間にかケイが私の後に居る。
「手伝いましょうか・・?」
と言って,私の隣に座り込んで,雨具の泥を洗い流してくれる。
多分,ケイは自分が引率してきた仲間の私が,誤って湖に転落するのを心配して,様子を見に来たのだろう。この心遣いがとても有り難い。
泥の始末も終えて,また小屋へ戻る。そして,暫くの間,自分のシュラフに入り込んで,ジッと横になっている。眠くなるが,高山病になっては困るので,眠らないように気を付けている。
そうこうしている内に,私が小屋に戻ってから1時間余り経った。その頃,最後のグループの2人が,ようやく小屋に戻ってきた。今回は,所要時間には差があったものの,全員がウイルヘルム山登頂に成功した。喜ばしいことである。
「・・・それにしても,ウイルヘルム山は,結構,きつい山だったな・・」
と思う。
■やっぱり高山に弱い
ケイがパルスオキシメーターを持って,全員の酸素飽和度を測定する。私はシュラフに横になったまま左手の人差し指を差し出す。測定結果は,酸素飽和度81%,脈拍80で余り良くない数値である。
17時00分から夕食である。相変わらず食欲は余り無い。少々無理をして,ゆで卵1個,ハム,チーズ,混ぜご飯少々をやっと食べる。他の方々は結構食欲があるように見える。
「やっぱり,私は高所には弱いな・・・」
と実感する。もうそろそろ,4000メートル以上の山行はやらない方が良いのかなと思い始める。
17時30分,早々とシュラフに潜り込んで,就寝。
疲労もしたが,充実した1日だったなと実感しながら,何時の満仁か,すぐに眠り込んむ。
(つづく)
無事ベースキャンプへ戻る
2007年2月10日(土)~17日(日)
第5日目 2007年2月14日(火)(つづく)
■美味しい湧き水
アウンデ湖を出発したトビアスと私は,ノンビリと急坂を下る。途中,度々,トビアスの靴が壊れる。そして,泥だらけの急坂では,私が踏ん張りが利かなくて遅くなる。でも,徐々に,徐々に先へ進む。

<アウンデ湖畔>
滝の写真を撮ったり,トビアスが右足の靴を直したりしながら,ノンビリと下る。 私は,出発前に準備した水1.5リットルと,魔法瓶のお湯0.5リットルを全部飲み干してしまった。もう少し水が欲しいなと思いながら下り続ける。すると,途中のガラ場で湧き水が流れているところがある。トビアスが流れてくる水の上にかがみ込んで,美味しそうに水を飲み出す。私はトビアスに,
「この水,飲めるんですか・・・」と一応確かめる。そして,トビアスの真似をして,流れに口を直接付けて,変な姿勢のまま,「ゴクゴク」と水を飲む。水は冷たくて,とても美味しい。淡泊な味である。これには大満足である。

<アウンデ湖からピュンデ湖へ流下する川>
■ピュンデ湖畔に到着
さらに下り続けて,14時37分,ピュンデ湖畔に到着する。ここからは昨日散策したのと同じ道を辿ることになる。水浸しの道・・・というかジャングルの中の水浸しの空間が道である。水面に出ている木の枝や石を頼りに飛び跳ねるようにして渡る。もう散々歩いて疲れ果てた足は,思うように動かないだけでなく,踏ん張りが利かない。そんな足には,結構,厳しい道である。それに,高度障害のためか,十分に食事が取れないこともあって,シャリバテ気味になっている。

<ピュンデ湖全景>
随分と注意しながら歩いているつもりでも,ときどき石を踏み外したり,バランスが取れなかったりする。その結果,何回も水たまりの中に嵌ってしまう。登山靴やズボンの裾は泥だらけになる。半ばやけくそになって,歩き続ける。
時間は記録しなかったが,やっと最後の1本橋に到着する。この橋の長さはせいぜい5~6メートルほどしかないが,すぐ足下を水量豊かな川が音もなく流れている。トビアスが先に渡り,長い棒きれを私の方に差し出す。そして,
「これに掴まって,ユックリ渡れ・・・」
と私に指示をする。
私は,オッカナ,ビックリ,棒の端を握って,1本橋を渡りきる。
■無事,ベースキャンプに戻る
橋を渡ると一寸した広場になる。ここで,数人のトビアスの知人が立ち話をしている。トビアスも話の輪に加わって暫くの間夢中で話をしている。成り行きで,ここで4~5分,休憩を取ることになる。
いろいろと道草をしながら,ダラダラと歩いたが,15時丁度に,無事,ベースキャンプに戻った。
私が到着すると,ツアーリーダーのケイが,満面の笑みをたたえて明るい声で,
「ご苦労様・・・登頂成功おめでとうございます・・・」
と私を出迎える。私は内心で,「この人は何でこんなに元気なのだろうか」と唖然としている。出発前に,ケイが「何とか午後3時には戻りたい・・」と言っていた。幸いにも,私の場合も,途中でダラダラと下ったにもかかわらず,ケイの危惧していた15時のリミット丁度の時間に戻れた。これは望外の幸いである。
靴やズボンが泥だらけになっているが,とりあえず小屋の中に入る。
「あ~ぁ・・・やっと小屋へ戻ったか・・・」
と安堵感で一杯になる。
■取りあえずは水分を補給
荷物を部屋に置く。少し安心してくると,登頂できたという満足感が沸々と湧いてくる。
食堂に戻る。ケイが,
「飲み物をどうぞ・・・水分を沢山摂って下さい」
と明るく私を促す。
「喉が渇いているので,もし水があるんでしたら,水を下さい」
とお願いする。ケイが,
「私の水が余っていますから,これを飲んで下さい・・・」
と言いながら,ペットボトルの水,1本を私に分けてくれる。私はこの水を有り難く頂戴して喉を潤す。
■ピュンデ湖で洗濯
暫く休んでいると,体力も平常通りに回復して,随分と楽になる。
そこで,ケイに断って,ピュンデ湖の岸辺まで行って,泥だらけの靴と,雨具のズボンを洗うことにした。小屋から草むらの中の踏み跡を100メートルほど辿って,ピュンデ湖畔に到着する。湖は,岸からすぐに深くなっているので,転落すると大変である。私は注意深く湖の水を手ですくって泥靴を洗い始める。
暫くすると,私の後で人の気配がする。何時の間にかケイが私の後に居る。
「手伝いましょうか・・?」
と言って,私の隣に座り込んで,雨具の泥を洗い流してくれる。
多分,ケイは自分が引率してきた仲間の私が,誤って湖に転落するのを心配して,様子を見に来たのだろう。この心遣いがとても有り難い。
泥の始末も終えて,また小屋へ戻る。そして,暫くの間,自分のシュラフに入り込んで,ジッと横になっている。眠くなるが,高山病になっては困るので,眠らないように気を付けている。
そうこうしている内に,私が小屋に戻ってから1時間余り経った。その頃,最後のグループの2人が,ようやく小屋に戻ってきた。今回は,所要時間には差があったものの,全員がウイルヘルム山登頂に成功した。喜ばしいことである。
「・・・それにしても,ウイルヘルム山は,結構,きつい山だったな・・」
と思う。
■やっぱり高山に弱い
ケイがパルスオキシメーターを持って,全員の酸素飽和度を測定する。私はシュラフに横になったまま左手の人差し指を差し出す。測定結果は,酸素飽和度81%,脈拍80で余り良くない数値である。
17時00分から夕食である。相変わらず食欲は余り無い。少々無理をして,ゆで卵1個,ハム,チーズ,混ぜご飯少々をやっと食べる。他の方々は結構食欲があるように見える。
「やっぱり,私は高所には弱いな・・・」
と実感する。もうそろそろ,4000メートル以上の山行はやらない方が良いのかなと思い始める。
17時30分,早々とシュラフに潜り込んで,就寝。
疲労もしたが,充実した1日だったなと実感しながら,何時の満仁か,すぐに眠り込んむ。
(つづく)