<堀山の尾根から見た富士山>
イヌ・シカ・ネコと出会った丹沢:塔ノ岳(今年8回目)
(単独山行)
2009年2月12日(木)
■月明かりの出発
下の方が少し掛けた丸い月が,高い所で煌々と輝いている.つい3日前は西の空の水平線近くで輝いていたのに,随分と変わるものだなと驚きながら,湘南モノレールの初電に乗る.渋沢発大倉行の2番バスには,15人ほどの登山客が乗車している.この時期の平日にしては,かなり沢山の登山者である.
今日は久々の快晴である.放射冷却のために,明け方は随分と気温が下がっていたが,日中はかなり暖かくなりそうである.私は身支度を整えるために大倉バス停近くの待合室に入る.偶然,同じバスに乗り合わせたご常連のNさんが出発の準備をしている.
7時36分,Nさんと一緒に大倉を歩き出す.前回,Nさんとご一緒したときには,出だしのピッチが速いNさんに合わせたために,途中で意地切れがしてしまったので,今回は,無理をしないで,終始,自分の速度で登ろうと思う.そこで,Nさんにお断りして,Nさんの後について,ノソノソと歩き出す.
Nさんとの距離はだんだんと開いていく.でも,それも良いかと割り切って,ユックリペースで歩き続ける.7時49分に丹沢ベースを通過する.ここで衣服調整をしているNさんを追い越させて貰う.
■体力に合わせて
今日は,歩行中の呼吸と疲労感に注意して歩こうと目標を決める.具体的には,常に腹式呼吸をしていること,そして,両足の疲労の具合を常に意識しながら歩く積もりである.
私は自分の両足に問いかける.
「・・おい,お前さん達! 調子はどうだい・・・?」
「・・今のところ,まあ,まあ・・・の調子ですよ.今んところは・・」
という返事が返ってくる.
8時07分に見晴茶屋を通過し,やがてこのコース最初の急な上り坂に差し掛かる.意外に調子よく登れる.私は両足に確かめる.
「・・・おい,脚達よ.大丈夫か!」
「歩き出しをゆっくり歩いたんで,ゼンゼン大丈夫ですよ.もう少し速くしましょうか・・」
「おい,おい・・後でバテるから,抑えて,抑えて・・・」
私は,もっと速く歩こうと,はやる脚達を抑えて,ユックリと登り続ける.
■富士山や南アルプスが綺麗
駒止茶屋手前の急坂も,今日は案外楽に登り続けられる.ここでも,私は,両脚に,
「おい,お前達大丈夫か・・・!」
と問い続ける.でも,私の心配にもかかわらず,案外良いテンポで登って,8時35分に駒止茶屋と通過する.歩き出してから59分である.わずか1分とはいえ,両脚の言い分を聞きながらも,とにかく,所要時間が1時間を切ったことは,嬉しいことである.
ふと,Nさんのことが気になって,後を振り向く.見通しの利く範囲には,Nさんの姿が見えない.一体,どうしちゃったんだろうと気になり始める.
堀山の尾根に入る.富士山が良く見えるチェックポイントに到着する.そろそろ中国の黄砂が空を濁らせる頃である.少々,心配するが,抜けるような青空が広がっている.青空をバックに白い富士山がとても良く見えている.早速,何枚かの写真を撮る.
■イヌが登る
私の前を,イヌを連れたご夫婦が歩いている.追い越し際に,
「元気なイヌですね・・イヌも元気に山登りするんですね」
と挨拶する.
「・・・でも,一番元気なのは私・・」
と奥さんが返事をする.奥さんによると,以前,このイヌを金時山に連れて行ったことがあるという.それにしても,誰と比較して,私が一番強いって言っているんだろうか.少々,気になるが,それ以上聞くのをやめる.
<イヌ連れのご夫婦が登っている>
私は,イヌにサヨナラをして,先を急ぐ.私は自分の脚に,
「平らなところでは,もっとピッチを上げるぞ・・・」
と叱咤する.
「しょうがないな~ぁ・・・」
と両脚が揃って返事をする.私は両足の不満を無視.堀山からの下り坂を,かなりの勢いで下る.
やがて,堀山ノ家手前の坂道に到着する.
私の前に,尊仏山荘ご常連の夫婦連れが,随分とユックリ,登っている.追い越すのも気が引けるので,そっと後に付いて歩く.すると,後に続く私に気が付いた夫婦は私に道を譲ってくれる.奥さんが,私に,
「・・・ここから山頂までどのくらいの時間で登られるんですか?」
と聞く.私は少し戸惑いながら,
「今の調子で歩くと・・そうですね.9時55~56分頃,山頂に到着すると思います・・・」
■ご常連のSさん
終始,両足と会話をしながら,急階段を登って,9時07分,萱場平に到着する.この所,雨が少ないためか,例年に比較して萱場平の泥濘はそれほどひどくないようである.今日は何時もより暖かいが,それでも朝の内は凍結しているので,今のところ,歩きやすい.
ここで,何時ものように定点写真を撮る.画像の中に,ベンチで休憩を取っている人影が入ってしまう.本当は,人物なしの写真が欲しかったので,少々残念である.
無数の足跡がコチコチに凍り付いている地面を良く見ながら,足場の良い所を選んで,萱場平を横切る.途中で,先ほどからベンチに座っている男性に挨拶をする.男性はご常連の“猫のSさん”である.今年になって初めてのSさんとの再会である.
私は,Mさんの隣に座り込んで,雑談をしたかったが,肝心の両脚が,
「折角,リズムに乗って歩いているんだから,このまま歩き続けましょうよ・・・」
と,言うことを聞かない.私は仕方なく両脚に従うことにする.Mさんに,
「・・・済みません.お先に失礼します.尊仏でお待ちしています・・」
と挨拶する.
<今日の萱場平>
※ベンチに座っているのがSさん
■花立山荘
岩稜地帯の登り坂に入る.稜線から西を眺めると,相変わらず真っ白な富士山が良く見えている.私は,暫時,立ち止まって,美しい富士山をデジカメに収める.やがて,花立山荘手前の長い登り階段にさしかかる.この階段を登ってしまえば,もう後は,そんなに苦しい所はない.何時も,ここまで来ると,山頂までの道程が見えたような感じがして,とても気が楽になる.
相変わらず,両脚は元気である.私は,この階段を登りきるのに,何分ぐらい掛かるのか測ってみたくなった.両脚に,
「お前達,あんまり張り切るなよ.私がハアハアにならない程度の速さで登ってくれないか・・」
と言い聞かせる.その代わりに,私は頭の中で「イチ,ニッ,サン.・・・イチ,ニッ,サン.・・」とリズムを取って,両脚の運びを制御する.
階段を登りきって,9時27分に花立山荘に到着する.山荘周辺には全く人気がない.誰も居ない所に勿体ないほど富士山がスッキリと見えている.
花立山荘前の階段を登りきるのに要した時間は,6分弱.また,堀山ノ家から花立山荘までの所要時間は33分である.私としては,まあ,まあ納得のできるラップである.
■シカと出会った塔ノ岳山頂
草臥れているときは,花立山荘から花立場まで,10分も掛かることがあるが,今日は比較的調子がよいので8分ほどで登り切る.この2分の差は結構大きい.
花立場から富士山,南アルプスの写真を撮って,馬の背に向かう.途中でご常連のYさんとすれ違う.今日は奥さんと二人連れである.さらにその先で,ご常連のTさんとすれ違う.
「今日の山頂は,風が冷たいですよ・・」
と,Tさんが私に話しかける.
「また,お会いしましょう・・・」
と何時ものように挨拶をして,お別れする.
9時40分に金冷シを通過する.この辺りから上は,昨夜降ったのか雪がほんの少し残っている.相変わらず両足も元気なので,やや速いペースで登り続ける.
目の前の茂みから,可愛いシカが,私の方をジッと見ている.私が近付いても逃げない.こんなシカが,実に可愛いなと思う.
そして,9時53分,塔ノ岳山頂に到着する.気温はそれほど低くないようだが,山頂を吹き抜ける風が,とても冷たい.山頂では,2~3人の先客が記念写真を取り合っている.私も大急ぎで周辺の写真を撮って,尊仏山荘に飛び込む.
今日の大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間は2時間17分.15分を切ることはできなかったが,今の私の体力では,こんなところがせいぜいだろうと納得する.
<塔ノ岳山頂から富士山・南アルプスを望む>
■尊仏山荘
尊仏山荘に入り込む.今日の小屋番は,営業部長の忠実な部下のOさんと,Wさんである.今日は平日なのに,豪華な2人体制である.
10時少し前の山頂の気温は0.0℃.
300円也のお茶を所望する.腰を据えてお茶を飲みだしてから,暫くすると,山荘のラジオから10時の時報が聞こえてくる.リュックから握り飯を取りだして食べていると,Nさんが山荘に到着する.さらに5~6分経った頃,“猫のS”さんも,山荘に到着する.
Oさんと,Sさんが揃ったら,これはもう営業部長のミー君にお出まし願うしかない.Oさんに親分の営業部長は不在かと聞く.Oさんは,辺りを見回して,「あれ,居ないな」と怪訝な顔をして,
「多分,2階で寝ているんでしょう」
と答える.そして,
「ミャ~や,出てお出で・・」
と猫なで声で,ミー君を呼ぶ・・・が,返事がない.
「一寸見てきます・・・」
と言いながら,Oさんは2階に上る.暫くして,寝ぼけ眼のミー君を抱えて降りてくる.そして,床に営業部長をポンと置く.ミー君は太い尻尾をユックリ廻しながら,ボンヤリしている.このおっとりとした姿が良い.
Sさんがミー君を抱えている所を,1枚パチリ.続いてミー君をカメラで追う.ノソノソと,水が入ったバケツに首を突っ込んで,水を飲み始める.
ミー君は,心なしか,この所,スマートになったような気がする.Sさんがミー君の耳掃除を始める.ミー君はSさんを信頼してか,Sさんに身を任せている.
※ネコシリーズは下記の記事参照.
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/48e6d5c20383960dbc60893235e9ab82
■のんびりと下る
10時34分,尊仏山荘を出発,下山を開始する.今日も大倉発12時52分のバスに乗るつもりである.十分に時間があるので,途中の景色を楽しみながら,ユックリと下山する.
金冷シ手前の長い下り坂に差し掛かるところで,登りで追い越した夫婦連れに再び追いつく.奥さんが私にいろいろと話しかけてくる.年に何回ぐらい塔ノ岳に登るのか,海外の山にも登るのか,北アルプスの山に登ったことがあるかなど沢山の質問を畳みかけてくる.
11時03分に花立山荘を通過する.また一人旅になる.登ってくる登山客と,ときどき擦れ違いながら下る.長い下り階段を下りて,岩稜帯に入る.そのとき,下から登ってきた中年の女性が,いきなり話しかけてくる.
「・・あら,flower-hillさん.今日は・・・」
私は,誰だか分からずに,一瞬,キョトンとする.でも,最近,一度,会ったような気がする.
「山旅スクールの・・・」
「いえ,違います.ミルフォードでご一緒した××です・・」
そいえば,もう何年も前になるが,ニュージーランドのミルフォードサウンドを旅行したときに一緒だった方である.
立ち話をしているうちに,後から下ってきたNさんが,私に追いつく.ここから先は,いろいろ雑談しながら,Nさんと一緒に下る.そして,予定通り,12時43分に大倉に到着する.大倉の待合室で,ご常連のMさんが座っているのが見える.
「あれ,Mさん.今日はすれ違わなかったですね・・」
こうして,今年第8回目の塔ノ岳詣では終わった.
今日の両脚は,まあ,まあ良く頑張った.
[ラップタイム]
7:36 大倉歩き出し
7:55 観音茶屋
8:09 見晴茶屋
8:35 駒止茶屋
8:50 堀山ノ家
9:07 萱場平
9:27 花立山荘
9:40 金冷シ
9:53 塔ノ岳山頂 着
============================================
10:34 塔ノ岳山頂 発(0.0℃)
10:48 金冷シ
11:03 花立山荘
11:19 萱場平
11:35 堀山ノ家
11:50 駒止茶屋
12:12 見晴茶屋
12:25 観音茶屋
12:43 大倉
[山行記録]
■水平歩行距離 7.0km(片道)
■累積登攀・下降高度 1201m
■登攀所要時間
大倉発 7:36
塔ノ岳山頂着 9:53
(所要時間) 2時間17分(2.28h)
登攀速度 1201m/2.28h=526.8m/h
水平歩行速度 7.0km/2.28h=3.07km/h
■下降所要時間
塔ノ岳発 10:34
大倉着 12:43
(所要時間) 2時間09分(2.15h)
下降速度 1202m/2.15h=558.6m/h
水平歩行速度 7.0km/2.15h=3.26km/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b8e877a062ab20741c0bab91f724257d
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/48e6d5c20383960dbc60893235e9ab82
最新の画像[もっと見る]
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前
- 精密検査から戻って;長女が老夫婦を日比谷花壇大船フラワーセンターへ招待・・・ 4年前