英語学習は続く・・

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怪人二十面相 110

2023-02-18 18:40:53 | 怪人二十面相

 明智がさっそくたずねますと、警官は総監の前だものですから、ひどくあらたまって、直立不動の姿勢で、「そうです。」と答えました。

Akechi inquired promptly. The policeman answered 'yes' standing straight and stiff because he was in presence of the chief of Metropolitan Plice.

「では、きょう正午から一時ごろまでのあいだに、トラックが一台、裏門を出ていくのを見たでしょう。」

"Then you must have seen a truck go out from the back gate from the noon to 1 P.M. today."

「はあ、おたずねになっているのは、あのとりこわし家屋の古材木をつんだトラックのことではありませんか。」

"Well, do you mean the truck loaded with the old timbers from the house under demolition?"

「そうです。」
「それならば、たしかに通りました。」
 警官は、あの古材木がどうしたんです、といわぬばかりの顔つきです。

"Yes."
"Then I saw it."
His expression was like saying so what.

「みなさんおわかりになりましたか。これが賊の魔法の種です。うわべは古材木ばかりのように見えていて、そのじつ、あのトラックには、盗難の美術品がぜんぶつみこんであったのですよ。」

"Everyone, do you see it? This is the trick of his magic. The truth is that that truck was loaded with the stolen items under those old timbers."

 明智は一同を見まわして、おどろくべき種明たねあかしをしました。
「すると、とりこわしの人夫の中に賊の手下てしたがまじっていたというのですか。」
 中村係長は、目をパチパチさせて聞きかえしました。

Akechi looked around the people and revealed the unbelievable trick.
"Then, were there his gang amongst the demolision workers?"
The chief Nakamura asked brinking his eyes.

「そうです。まじっていたのではなくて、人夫ぜんぶが賊の手下だったのかもしれません。二十面相は早くから万端ばんたんの準備をととのえて、この絶好の機会を待っていたのです。

"That's right. Or all the workers might be the thief's subordinates. Twenty Faces had been waiting for this perfect chance with all the preparation done."

家屋のとりこわしは、たしか十二月五日からはじまったのでしたね。その着手期日は、三月も四月もまえから、関係者にはわかっていたはずです。そうすれば、十日ごろはちょうど古材木運びだしの日にあたるじゃありませんか。

The demolition was started from December 5th, right? The commencement day must have been known by the wrecker personnel three of four months before. 

予告の十二月十日という日づけは、こういうところから割りだされたのです。また午後四時というのは、ほんものの美術品がちゃんと賊の巣くつに運ばれてしまって、もうにせものがわかってもさしつかえないという時間を意味したのです。」

The date, December 10th was calculated by these thing. And the time, 4 P.M. was the time that the authentic works had been brought to the thief's nest so there was no problem if the counterfeits were turned up."

 ああ、なんという用意周到な計画だったでしょう。二十面相の魔術には、いつのときも、一般の人の思いもおよばないしかけが、ちゃんと用意してあるのです。

Oh, how well-prepared plan. Twenty Faces' magics always have tricks no general people think of.

「しかし明智君、たとえ、そんな方法で運びだすことはできたとしても、まだ賊が、どうして陳列室へはいったか、いつのまに、ほんものとにせものとおきかえたかというなぞは、解けませんね。」

"Still, Mr. Akechi, even if they could bring them out with that way, we don't know how they got into the gallery, or, when they replaced the real things with the counterfeits."

 刑事部長が明智のことばを信じかねるようにいうのです。
「おきかえは、きのうの夜ふけにやりました。」
 明智は、何もかも知りぬいているような口調で語りつづけます。

The chief detective said with some doubt about Akechi's word.
"They replaced them late last night."
Akechi continued as if he knew everything.

「賊の部下が化けた人夫たちは、毎日ここへ仕事へ来るときに、にせものの美術品を少しずつ運びいれました。絵は細く巻いて、仏像は分解して手、足、首、胴とべつべつにむしろ包みにして、大工道具といっしょに持ちこめば、うたがわれる気づかいはありません。

"The wreckers played by his subordinates came to work here everyday bringing the counterfeits little by little. The paintings rolled up, the statues disassembled, they could bring them by rolls, hands, arms, heads and torsos in each percels with the carpenter's tools. They didn't have to be suspected.

みな、ぬすみだされることばかり警戒しているのですから、持ちこむものに注意なんかしませんからね。そして、贋造品がんぞうひんはぜんぶ、古材木の山におおいかくされて、ゆうべの夜ふけを待っていたのです。」

Everyone was worried about stealing but bringing in. Those counterfeits had been waiting for the deep night covered under the old timbers."

「だが、それをだれが陳列室へおきかえたのです。人夫たちは、みな夕方帰ってしまうじゃありませんか。たとえそのうち何人かが、こっそり構内にのこっていたとしても、どうして陳列室へはいることができます。夜はすっかり出入り口がとざされてしまうのです。

"But who put those in the gallery. The wreckers go home every evening. Even if some of them remaind how could they get in the gallery? The all entrances are shut completely in the night time.

館内には、館長さんや三人の宿直員が、一睡いっすいもしないで見はっていました。その人たちに知れぬように、あのたくさんの品物をおきかえるなんて、まったく不可能じゃありませんか。」
 館員のひとりが、じつにもっともな質問をしました。

The director and the three people on the night duty were watching here all night. It's impossible to switch so many things without them notice it."
One of the museum staffs asked a justifiable question.

 

 



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