地下室は十畳敷きほどの広さで、四ほうコンクリートの壁につつまれた、以前は物置きにでも使われていたらしい部屋でした。どこかに階段があるはずだと思って、さがしてみますと、大きな木のはしごが、部屋のいっぽうの天井につりあげてあることがわかりました。出入り口をふさいだだけではたりないで、階段までとりあげてしまうとは、じつに用心ぶかいやり方といわねばなりません。このちょうしでは、地下室から逃げだすことなど思いもおよばないのです。
The room was over 18 square meter, surrounded by concrete walls and it might used to be a storage room. There must be a staircase, he searched and found a big wooden ladder was hung from the ceiling. The thief must be very wary. Shutting the exit was not enough so he took the ladder away. In this situation there is no way to think of getting out from here.
部屋のすみに一脚のこわれかかった長イスがおかれ、その上に一枚の古毛布がまるめてあるほかには、道具らしいものは何一品ありません。まるで牢獄のような感じです。
There was nothing other than an almost broken couch with an old blanket on it in the corner of the room. It looked like a prison cell.
小林少年は、その長イスを見て、思いあたるところがありました。
「羽柴壮二君は、きっとこの地下室に監禁されていたんだ。そして、この長イスの上でねむったにちがいない。」
As Kobayashi saw the couch an idea occured to him.
"I bet Hashiba Souji had been cooped up in here and slept on this couch."
そう思うと、何かなつかしい感じがして、彼は長イスに近づき、クッションをおしてみたり、毛布をひろげてみたりするのでした。
This idea comforted him somehow, he went to the couch, pushed the cushion and spread the blanket.
「じゃ、ぼくもこのベッドでひとねむりするかな。」
大胆不敵の少年探偵は、そんなひとりごとをいって、長イスの上に、ゴロリと横になりました。
"Well, let me have a rest here."
The brave detective boy talked to himself and lay on the couch.
万事は夜が明けてからのことです。それまでにじゅうぶん鋭気をやしなっておかねばなりません。なるほど、理くつはそのとおりですが、このおそろしい境遇にあって、のんきにひとねむりするなんて、ふつうの少年には、とてもまねのできないことでした。
Everything has to wait for the morning. Until then he has to resotre his energy. Surely it is true but it's impossible to have a sleep for an ordinary boy in this horrible situation.
「ピッポちゃん、さあ、ねむろうよ。そして、おもしろい夢でもみようよ。」
小林少年は、ピッポちゃんのはいっているカバンを、だいじそうにだいて、やみの中に目をふさぎました。そしてまもなく、長イスの寝台の上から、すやすやと、さも安らかな少年の寝息が聞こえてくるのでした。
"Pippo, let's sleep. And have a fun dream."
In the darkness, Kobayashi closed his eyes holding the bag with Pippo in it deary. Soon there was a peaceful sound of his breathing.
この章は終わりました。