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怪人二十面相 108

2023-02-17 14:26:57 | 怪人二十面相

 さいぜんの館員は、明智のことばの意味をさとったのか、ツカツカとその棚の前に近づいて、ガラスに顔をくっつけるようにして、中にかけならべた黒ずんだ仏画を凝視ぎょうししました。そして、たちまちさけびだすのでした。

The curator seemed like understood what Akechi meant, got close to the glass of the showcase, stared at the dark Buddist paintings on the wall. Soon he started shouting.

「アッ、これも、これも、あれも、館長、館長、この中の絵は、みんなにせものです。一つ残らずにせものです。」

"Oh! This, and this, and that one too, Director, Director, all of these paintings are fake. They all are counterfeit."

「ほかの棚をしらべてくれたまえ。早く、早く。」
 刑事部長のことばを待つまでもなく、三人の館員は、口々に何かわめきながら、気ちがいのように陳列棚から陳列棚へと、のぞきまわりました。

"Check other cases, now, now."
Before the chief detective said that other three staffs went around from one showcase to another crying out something frantically.

「にせものです。めぼしい美術品は、どれもこれも、すっかり模造品です。」

"They are fake. The notable art works are counterfeit altogether."

 それから、彼らはころがるように、階下の陳列場へおりていきましたが、しばらくして、もとの二階へもどってきたときには、館員の人数は、十人以上にふえていました。そして、だれもかれも、もうまっかになって憤慨しているのです。

Then they went to check the showcases in the downstairs. When they came back to the second floor the number of the museum staffs increased to more than ten. Every one of them were red in fury.

「下も同じことです。のこっているのはつまらないものばかりです。貴重品という貴重品は、すっかりにせものです……。しかし、館長、今もみんなと話したのですが、じつにふしぎというほかはありません。きのうまでは、たしかに、模造品なんて一つもなかったのです。それぞれ受持のものが、その点は自信をもって断言しています。それが、たった一日のうちに、大小百何点という美術品が、まるで魔法のように、にせものにかわってしまったのです。」

"It's the same in the downstairs. Remained ones are trifles. All precious things are fake. But, Director, we talked about this, it's nothing but unreasonable. Surely there was no counterfeit in here  yesterday. Each staff in charge is declaring it. Then again, handreds of art works became counterfeit like a magic in one day."

 館員は、くやしさに地だんだをふむようにしてさけびました。
「明智君、われわれはまたしてもやつのために、まんまとやられたらしいね。」
 総監が、沈痛なおももちで名探偵をかえりみました。

The staff exclaimed almost stamping his feet in frustration.
"Mr. Akechi, it seemed we got defeated again."
Distressed, the chief of M.P. turned his head to the detective.

「そうです。博物館は、二十面相のために盗奪とうだつされたのです。それは、さいしょに申しあげたとおりです。」

"You are right. The museum have been attacked by Twenty Faces. I told you so."

 大ぜいの中で、明智だけは、少しもとりみだしたところもなく、口もとに微笑びしょうさえうかべているのでした。

Only Akechi wasn't upset at all, with even a smile at the corner of his mouth in commotion.

 そして、あまりの打撃に、立っている力もないかと見える老館長を、はげますように、しっかりその手をにぎっていました。

And he was holding tightly the hand of the old director who got so weak by the greatest shock.

 

この章はここで終わりです。

 



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