不思議活性

『ヨブ記』ウィリアム・ブレイクより 1・5


 ウィリアム・ブレイクは1822年『ヨブ記』の彫版を始め、1826年『ヨブ記』印刷とあります。1831年死去のブレイクの晩年の頃ですが、このような堅固な線での細密で芸術的香気の高い刻面銅板には圧倒されます。原画を見たわけではないので、印刷された本からの紹介ですが、それでも、この『ヨブ記』の彫版の鋭さと精巧さ、その着想と構図の大胆さ、宗教的雰囲気などを受け取ることが出来るのではないでしょうか。その『ヨブ記絵図』の解説ですが、『ブレイク研究・人と詩と絵』熊代壮歩著よりの紹介です。

 「ヨブ記」は旧約聖書にあるお話です。この『ヨブ記』ウィリアム・ブレイクですが、全く自由なブレイク的な展開であり、バイブルを「悪魔的」に読み改めるということでもありました。それは、どんな生活の禍や悲しみも、彼自身もしくは人間の外にある偶然には帰せられないこと、それを排除するのは、どんな正しい理法や教義の独善にも依頼しない、完全にその禍に密着して克明にそれを消してゆく以外に方法があり得ないのだというブレイク的な読み方なのです。
 それでは、いくつかの『ヨブ記絵図』の紹介です。

 ヨブ記 1 ウヅの地にヨブと名づくる人あり


・あらゆる富にめぐまれた敬神堅個な族長ヨブが、妻と三人の娘七人の息子と共に、大樹を背にして、膝に神の書を開いている彼等夫婦を中央に、暮れかかるこの日の感謝を捧げて居り、彼等の周囲をうずめる未の群は祝福と平安を表わし、樹にはいろいろの楽器が一日の終わりを物語るように懸けられている。
 向かって左側の入り日の前のゴシック風の会堂は堅信を標示し、右側の山の端には、ブレイク的には多少の危惧を暗示しそうに、新月があらわれている。繁茂する樹も、やがては錯誤の象徴である「妖変の樹」に一変しなければならない運命にある。

 ヨブ記 5 サタンやがてエホバの前よりいでゆき

・神の国とヨブの現実の世界を表わす上下二段に分けられ、その間をサタンが横ざまにかけ渡して居り、彼の右手がもっている放射筒からの火炎は、すでに下段のヨブの肩口に注がれている。サタンのヨブに対する直接の攻勢はこのあたりから始まろうとする。ヨブが此処で松葉杖の乞食にパンを与えているのも、行為自体は正しいとしても、それがヨブの独善あるいは我執からの行ないとしてはサタンに属するものであることを意味している。



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