診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

サルコペニア、ロコモティブシンドローム そして  フレイル

2025年01月13日 | 医療、健康

2025 年も明けた。一年が経つのはあっという間。毎年、年始には『 今年は何をしようか? 』 と考え、想像するのだが、特に思いつかない。夏の暑さに比べ、冬の寒さに弱い私は、例年冬になると気分が冴えず(どちらかというと、うつ傾向)、何をやるにも気力がわかない。年々、筋力の衰えを感じ、筋力トレーニングでも継続しようと思い立つが、三日坊主。最早、サルコペニアを発症していると自覚する自分に対策を講じていないことが問題と感じている。さて、サルコペニアとはどういうことか? これは、筋力、筋肉量が減少し身体機能が損なわれることを指す。加齢にともない、筋肉量は減少。肩、尻、太ももといった比較的大きな筋肉はやせ細って、ペラペラになってしまう。筋トレやたんぱく質食の摂取がその予防にはなるのだが、続かない。月に 3 ~ 4 回ゴルフのラウンドをするが、50 歳台後半から突然、飛距離が落ちてきた。どれだけ大きくクラブを振り回してもボールは飛ばなくなった。当然、筋力だけではない。肩の関節、腰の関節(腰椎)、股関節などの関節障害や全身の筋肉の萎縮や硬化といった障害が加齢により出現し進行していく。これにより、四肢や体幹部の可動域が小さくなり、体が思うように動かないこともボールが飛ばなくなる原因の一つである。これらの運動器機能障害をロコモティブシンドロームという。一年半ほど前からこのロコモティブシンドロームの対策として、80 分間程度のストレッチを専属のトレーナーについて他動的に月 2 回程度行っている。かなり、肩や股関節は柔らかく回るようになり、腕もしっかり伸びるようになった。益々歳を重ねていくと、筋力、筋肉量の減少(サルコペニア)が進み、運動器(筋肉、関節、骨など)の機能低下が進行し、歩行能力をはじめ、体の動きは自己の意識通りには動いてくれなくなる。そうすると、精神的にも不安が強くなり、時に『 うつ(老人性うつ病) 』になったり、社会的にも他人と交わることも減り、閉じこもってしまうようになる。これがフレイルである。元々、筋肉量の少ない女性が、高齢になると男性以上にサルコペニアが進行し、ロコモティブシンドロームを発症し、最後はフレイルになっていく。以前、ブログ『 83 』( 2019/10/19 )に記したように、女性の場合、83 歳を過ぎてくると、このフレイルが急加速してくる。早めの、対策が重要である。

過去のブログを紹介します。

『 83 』 (2019/10/19)


怪しげな宣伝 明治プロビオヨーグルトR-1 『 医師の 94.9 % が奨める?? 』

2024年11月01日 | ブログ

連日、『 医師の 94.9 % が奨める 』 なんてでかでかと数字を出して如何にも健康に良いの買って下さいみたいなテレビ CM や新聞広告。ヨーグルトブームの火は消えず、あの手この手と手法を変えて過大広告を平気で出す時代には閉口する。誰しもがこの CM を観て製品以上に『 94.9 % 』 という凄い数字に驚くことと思う。いわゆる CM のインパクトである。調べてみると、約 1,000 人ほどのヨーグルト愛好者の医師からとった Web による誘導的アンケートのようである。無料で試供品として製品を提供し、それについてのアンケート調査である。これはよくある手法である。内科 67 % (うち循環器内科は 7 % のみ)であり、内科系以外が 33 % であった。最早この時点でサンプリングの仕方に問題があることに気付いていない。このアンケートの集計のデザインミスである。本来であれば愛好者 1,000 人を対象にするのでなく、非愛好者を含む 1,000 人(できれば 500 人 vs 500 人)の医師でアンケートを取るべきである。スタートの時点で論文として失格である。このような偏ったサンプリングの結果として『 医師の 94.9 % が奨める 』 なんてしてしまうとインチキ商法と捉えられても仕方ない。ヨーグルト非愛好者にも試供品を提供して感想を聞くべきであり、アンケート調査に参加させるべきである。当然、ヨーグルトの医学的メリットの乏しさを知る医師は多数いるはずで、全く奨めたくないというアンケートデータが多数でると思われる。百歩譲ってせいぜい、『 ヨーグルト愛好者の医師の 94.9 % が奨める 』 とするべきであって、本来なら愛好者、非愛好者両グループをまとめて医師とするべきで、そうすると『 医師の ○○%が奨める 』という見出しになり、○○%は推測ではあるが 60 ~ 80 %に大きく下がる値になるであろう。そもそも、この調査では対象者が医者である必要がないような内容である。まあ、世の中には詐欺みたいな商法が次から次へと湧いてくるものである。それを疑うことも知らず買わされてしまう人々も能天気なものである。このような表示 CM を『 景品表示法違反被疑 』というのであって、消費者庁に情報提供を行った。最も、この数字を無視して買うことには何ら非難することもなく、御自由にといったところである。


南海トラフ? 何回トラフ?

2024年10月07日 | ブログ

2ヶ月ほど前、宮崎沖の日向灘震源の大きな地震が発生した。いわゆる日向灘地震である。今回はマグニチュード 7.1 と比較的大きな地震であったが、過去 100 年の間に日向灘沖で M 7.0 7.5 の地震は平均 20 年に1 回の頻度で起こると推定されていた。しかし、今回は 40 年振りの発生で、推定された 20 年の 2 倍に値する。太平洋沖で陸のプレートとフィリピン海プレートの衝突(海プレートの沈み込み)からくるエネルギーの発散が地震となって現れるのであるが、地震を気にする一部の地元の人は、20年前から、『 日向灘地震がもう来る、もう来る 』と不安がって 20 年が経過したのである全く、地震の予告など非科学的で当たらない。同じようなことが、南海トラフ水深 4,000 M程度の海盆地)大地震にも言えるのではと思える。100 150 年周期で起こる南海トラフの地震も直近では終戦前後の 1944 年に東南海地震、1946 年に南海地震(M 8.0)が起こっている。さらに遡ると、600 年代から信憑性の低いデーターを基に、100 150 年周期で起こっていると言われている。そして、次回訪れるであろう大地震は南海トラフの広範囲(東海、東南海、南海)で連動して起こり、巨大地震が来るであろうと専門家??が推定し、世間を騒がせているのである。科学的根拠は少なく、過去の非常に少ないデーターと主観をもった推定で振り回されていると思わざるを得ない。2050 年までに発生する確率が 70 80 %と地震委員会の予想である。南海トラフ地震も何回も来る来ると言ってればそのうち当たりますよ。まさに何回トラフ地震です。これまで、大地震の予測すらできていない地震学者のいうことを真に受けて慌てて水を買ったり、非常食を買ったり、旅行を中止したりと、相変わらず大騒ぎする一部の国民に首をかしげたくなる。もし、推定されるような東海、東南海、南海連動大地震が起こるなら、もはやもがいても助かる確率は低く、家は潰され、買った水や非常食は家の下敷き、津波に流されます。備えあれば患いなしですが、本当にこれら 3 地域の連動した大地震が起こるのなら、準備は無意味に等しいのかもしれません。 死者は 32 万人以上、建物の全壊は 238 万棟余りと推計されている。ちなみに東日本大震災(死者 15,735 名、行方不明者 4,467 名)の 20 倍の被害を受ける地震と推定されているようである。東海? 東南海? 南海? のどれかは近い将来くるのでしょうが、連動するという可能性の根拠とその確率はどうなのか説明を受けたいところである。そもそも、もっともらしい説明を受けても当たるとは思えないが。


オリンピック

2024年08月15日 | ブログ

17 日間の白熱したパリオリンピックが閉幕した。パリと日本の時差が 7 時間ということが、日本でも比較的夜の耐えれる時間帯に観戦することが出来た。日本選手の頑張りも素晴らしく、金メダル数はアメリカ、中国の半分とはいえ 3 位と、過去には想像もできない立派な成績だった。バレーボールやバスケットボールも期待されたものの、少し残念な結果となったが、世界と肩を並べることのできる選手および競技が増えた。今回、金メダルを取った体操競技では、得点が 1,000 分の 1(小数点以下 3 位)まであり、どのようなシステムになっているのか詳細は不明だが、人間のやっていることを人間が採点するのに 1,000 分の 1 までの点差は必要なのか、果たして正確なのかと疑問を抱く。もっと言うならば、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)に至っては、10,000 分の 1(小数点以下 4 位)まで採点をするようで、これまた意味不明な数字と疑問を抱く。この競技、採点に納得いかないチームは約 8 万円を払って再度採点をしなおしてもらえるルールがあるようで、日本が予選で 8 万円を払って 5 位から 3 位に繰り上がるという、政治の世界にも似たシステムにこれまた疑問を感じた。陸上男子 100 Mでは、アメリカのライルズとジャマイカのトンプソンが 9 79 で同着。しかし、1,000 分の 1 まで写真判定すると 0.005 秒差でライルズの金メダル獲得となった。超人的な反射でスタートを切り、走り抜けていく競技とはいえ、人間が走っている競技を 1,000 分の 1 まで評価する意味はあるのかとまた疑問を感じざるを得なかった。しかし、人間離れした数々の技や体力、精神力には敬意を払うのみである。4 年後のロサンゼルスでのオリンピックには野球、ソフトボールが復活するであろうから、また楽しみである。


脳貧血 ?

2024年07月15日 | 医療、健康

夏になって気温が上がり、発汗などにより体内から水分が減少すると血圧が下がってきます。冬と同じだけの降圧剤を服用していると血圧が下がり過ぎてしまう人が結構います。この季節は一段階、降圧剤を弱くして服用してもらう方が多いです。診察室では血圧測定以外に、『 最近、立ちくらみは出ていませんか? 』 と質問し、血圧の過剰な低下が無いか確認しています。『 昨日、貧血が酷かったです 』 といわれる患者さんが時々おられます。『 え、貧血?どんな症状が出てましたか? 』 と聞くと、立ちくらみやふらつきを訴えます。なるほど、貧血?ね。世間一般では脳貧血 と言われているようですが、医学的にはこの症状を貧血とは言いません。貧血と言われたら、全く別の病気を考えてしまいます。この場合は、血圧低下による一過性の脳虚血の状態ですが、病院で 『 貧血が酷いです 』 なんて言ったら、血液検査をされてしまいます。医学的な貧血とは、赤血球の成分であるヘモグロビン(血色素)が減少する現象を指します。このヘモグロビンは酸素を全身の各臓器に運ぶトラックの役目をするので、これが減少すると臓器が酸素欠乏になっていくわけです。症状としては、頻脈(動悸)、息切れが大半で、さらに進むと顔や手足のむくみ、臓器障害が出てきます。貧血にはいくつもの種類があり、特に頻度の多い鉄欠乏性貧血は有名です。これは名前の通り、鉄分が不足する貧血で、過度のダイエット、菜食主義による鉄摂取不足や、婦人科疾患の出血過多(月経不順、子宮筋腫による出血など)、高齢者になると、胃や腸からの鉄吸収が悪く鉄欠乏性貧血を呈することも少なくありません。しかしながら、注意が必要なのは悪性疾患、特に胃がん、大腸がんによる慢性の消化管微量出血によるものが比較的多いことを経験します。鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄剤の薬を服用するのが一般的ですが、同時に胃カメラ、大腸ファイバーを受けることが無難です。極端な菜食主義者や胃腸からの吸収障害によるビタミン B12 欠乏性貧血、葉酸欠乏による貧血などは頻度は多くないものの時々遭遇します。腎機能が低下してくると、造血因子が減少して起こる腎性貧血(高齢者でちょこちょこ遭遇する)、その他 溶結性貧血や再生不良性貧血、赤芽球癆・・・ など多種あります。貧血もないのにあるいは原因もわからず、鉄剤のサプリをTVコマ―シャルに騙されて服用している人がそこそこいるようですが、不要なことをして体調を崩さないことを祈ります。