「 先生、お蔭さんで毎日楽しくグラウンドゴルフをしています。」といつも元気に明るく診察室に入って来られる Uさん。心筋梗塞の既往があるにもかかわらず、既に85歳になるが自分の趣味を見つけ、毎日が楽しくて仕方がないようだ。学校の校庭や専用のグラウンドでゴルフのパターのようなクラブ1本でグラウンドに立てた旗を目掛けてボールを転がす競技である。誰でもが入りやすい競技であり、最近は男女問わずご高齢の方々に人気を集めている。しかし、更なる鉄人がいる。小生の父親である。間もなく83歳になろうとしているが、毎週本格的なゴルフコースでラウンドをしている。誘いさえあれば、週2回でもラウンドをしている。スコアーも大崩れなく90前後。競技会で既に2回のエイジ・シュートと、2回のホールインワンを達成している。昔はシニアチャンピオンやグランドシニアチャンピオンにもなっているシングルプレーヤーである。死ぬまでゴルフはするという意気込みで、筋力の衰えを嫌い、週2回ジムでトレーニングをしているという鉄人親爺である。当然、膝痛や腰痛を抱えてはいるが、休んでいたらもう二度とゴルフができなくなると頑張る姿に拍手である。
「 先生、膝が痛くて長いこと整形外科に罹ってますが治りません 」、「 腰が痛いので整形外科や整骨院に罹っています。治してくれません。」という悩みが、循環器医である私に連日訴えられる。「 顔のしわと同じですよ。歳を重ねるとしわは増えますよね。努力しても若い時のように元には戻りませんよね。整形外科や整骨院は多少は痛みを和らげてくれますが、病的な異常がない限り、治してはくれません。というか治りませんよ。」と毎回説明。若い時なんて、気にもしなかったことが・・・。そういう私も2年ほど前からかなり酷い首筋の痛みや肩コリに悩まされ、診察の合間に湿布を張ったり、鎮痛剤の軟膏を塗ったりと辛い診療を毎日行っている。「 いつになったら治るのか? 」と早2年が経過。「 もう治らないのか! 」と歳を重ねていく自分を患者さんに置き換えて考える今日この頃である。
開業して15年目になりますが、開業当初は蝿がたかるようにマスコミ関係から電話・FAX・ダイレクトメールが届いた。どこで調べたのか、『 先生のこれまでのご経験などを雑誌に載せませんか 』、『 連日、5分程度のコーナーを設けますので、ラジオ番組に出ませんか 』、『 週刊誌に名医シリーズで連載しますので如何ですか 』・・・まだまだ多数あった。流石に開業当初はクリニックも採算が取れるのかと不安になる医者が多いらしく、広告・宣伝にでもなればと了承するものがいるようだ。うまいこと足元を見ているといったところである。これ皆、かなり高額の金銭を払わなければなりません。ラジオは5分×2週間?ほどで150万円とか言ってました。週刊誌は白黒で1/4ページで30万円ほどと言っていたかな?まあ、お金を払えば名医になれたり、名門クリニックになれてしまうところが怖いですね。この話、当然医療関係だけでないことは推測できるわけで、「 行列ができる・・・店 」、うまいことサクラを並ばせて行列を作っているのですね(笑)。
若者たちはインターネットにて様々な分野の情報を手に入れている時代になったが、いまだお年寄りはテレビ番組で情報を入手することが一般的のようである。『 先生、昨日テレビで・・・・・してましたよ。・・・・・が血圧にいいらしいですね! 』などと沢山の患者さんが診察中にお話しされる。正しい情報、納得できる情報は殆どない。そもそもテレビ局の収入はスポンサーや番組取材から得るもので、いくら何百万の人々にテレビを観てもらっても一銭も収入にはならない。ならば、どうするか? スポンサーになってくれる相手の言うことを、真実が否かを調査することもなく大きくうなずいて過大広告する。この手口で今の番組はなりたっている。お酢がいい、ニガリがいい、バナナがいい、トマトがいい、玉ねぎがいいとダイエットを謳う番組が、その都度テレビ局にお金を払ってくれる団体や個人から言われた通りに放送される。全部バランスよく食べるのが一番いいに決まっている。報道の悪質さに加え、受け取る側の冷静さを無くした判断力の甘さが今の世の中であることに非常に残念で情けなく感じる。食べ物でダイエットなんてできませんよ。ダイエットしたいなら、食べないことあるいは食べる量を計画をもって減量することですね。
診察室で血圧を測ると20~30mmHgほど毎回高くなる患者さんがいる。知らず知らずに診察室の雰囲気に緊張してしまうようで、『白衣高血圧』という。しかし、診察室で使用する水銀計と違って、自宅では上腕で測定するタイプや手首で測定するタイプなどがあり、果たしてこれが正しいのかと疑問をもつ患者さんは少ない。診察室で測定する方が低くなるという『白衣高血圧』とは逆のパターンがある。『仮面高血圧』という表現もあるが、大抵は手首の血圧計を使用されている場合が多い。診察室に持参して頂き、3回ずつ測定をして比較すると、手首の血圧計は10~20mmHgほど水銀計より高い値が出る事実に遭遇する。実際、自分で家電に出向いて数種類の電動血圧計で試してみるとやはり手首の血圧計は20mmHgほど高い値がでる。新たに購入する場合は、上腕タイプを勧めるが、既に手首の血圧計を購入した患者さんは診察室で比較してもらい、補正した値で血圧を記録するのが良いと思われる。ただし、中には殆ど差の無い場合もある。