診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

ワクチン接種をしてきました

2021年04月29日 | 新型コロナウィルス

昨日、診療が終わって近くの病院で医療従事者のワクチン接種を受けてきました。予定より 1 ヶ月ほどの遅れでした。数日後より高齢者接種が始まるのに帳尻を合わせたような対応です。感染拡大の中、無症状感染者からの診察中の感染を非常に危惧していました。私の知り合いの医師数名がコロナに感染してしまい大変なことになってしまっています。他国はかなりワクチン接種が進んでいる中、これぞまさしく国の責任と言いたく、残念でなりません。昨日も診察中、コロナ重症者対応病院の医師から、当院の 93 歳の男性が感染して救急入院されたと連絡が入りました。この方の、これまでの治療の情報提供の依頼を受けました。予約患者さんでごった返している中、手早くこの方の疾患やこれまでの治療、検査結果、投薬内容などを記載し、FAX で送りました。非常に状態は悪いということです。よく、入院できたものだと思いましたが、このように、コロナといわず緊急入院すると、入院先から患者情報の提供依頼がされ、診療に非常に大きな影響が出ます。先のブログにも記載しましたが、症状発症する 2 日前から無症状でも感染させる能力があるので、患者さんには申し訳ないですが、ヒヤ~としました(前回受診は3週間前でしたので大丈夫のようです)。 ところで、ワクチン接種の状況ですが、インフルエンザワクチン接種のような皮下注射に比べ、格段痛みを感じず、打ったのかどうかもわからない程度でした。気分不良もなく、帰宅しても全く普通。 5 6 時間してから接種部の筋肉痛が出だしてきました。腕を動かすとそこそこ痛みは感じますが、動かさなければ感じません。デスクワークには全く問題ありませんが、ゴルフなどのスウィングはできそうにありません。今で、接種して 20 時間。まだ、痛みは感じますが許容範囲内です。個人差はあると思いますが、約 12 日で改善するようです。

高齢者からのワクチン接種は非常に問題があると感じています。吉村知事などよく経済も大切で経済を回しながらコロナ対策をしたいと繰り返し言っているようですが、それなら、勤労者をまず接種すべきであって、この年齢層を早く接種すれば、職場でのクラスター発生を気にすることなく、電車での感染を気にすることもなく(電車での感染は低いと思われますが)、また昼食、夕食、飲酒なども気にすることなく、飲食店の倒産の防止にも繋がるはずです。地域によっては 85 歳以上を先に接種するなど非常に愚策なことをあたかも正論のように行っている自治体がありますが馬鹿げています。高齢者には申し訳ないですが、人間皆平等というなら、そこまで長生きできた皆さんは後回しで、まだ 30 年、40 年しか生きていない人たちの余命を考えると、この人たちが先に接種するべきであろうと考えられます。高齢者を見殺しにするのかなどといったお叱りをうけるかもしれませんが、では、勤労世代からしても我々を見殺しにするのかと反論したいところだと思います。世界の平均寿命は 72 歳。この年齢にすら達していない人たちを優先すべきではないだろうか。人の意見は様々なので、私の意見には賛否がでることは覚悟していますが、根底には自分さえよければといったところがあるからなのでしょうか。実際、クリニックで 5/19 より個別接種が始まります。区役所から 65 歳以上の市民に接種券と案内が郵送されました。その中にはクリニックなどの医療機関で希望される方は医療機関に迷惑がかかるので 5/10 以降に電話で問合せ下さいと記載されているにも関わらず、我が先にとここ数日は、電話が鳴りやまない迷惑な状態が続いています。受付業務に非常に大きな支障が出ており、私も診察中に心疾患で通院されている患者さんの件で他院への電話問合せをしようとしても電話が使用できず、自分の携帯で連絡をするような始末。急ぎたい気持ちはわかりますがみっともない。当院は、このような状況はある程度予想していたので、郵送された案内の中に、協力医療機関としてクリニックの名前を記載しないよう保健所に依頼していました。記載でもしてしまったら、当院の患者さん以外の一見の方々からの電話問い合わせも殺到することでしょう。実際、記載している医療機関では、電話問合せが当院の比ではないようです。医療機関は一般医療の合間にワクチン接種の協力をするのであって、コロナの為だけにあるのではないことを理解してほしいものです。当院は、一見の方のワクチン接種は致しません。


変異株の勢い

2021年04月25日 | 新型コロナウィルス

変異株の急激な拡散により大阪は連日 1,000 人以上の感染者数が続いている。感染力が強いだけでなく、重症化率も大きいようで、これまでのコロナ感染症といった捉え方では大変なことになってしまう。20 歳台から 50 歳台の感染者数が非常に多く、所謂働き盛りの世代の感染数が目立っている。仕事帰りの食事、飲酒などが影響しているのではと推測される。これまで、食事、飲食は危険であると言われてきているのに、まあ大丈夫だろうなんて気楽に考えてきた人達が墓穴を掘る形になってきている。痛い目に合うぐらいならまだ良い方だが、死んでしまっている人もいる。大阪では連日 1520 名の死亡者が出だしている。週に 100 人のペースで死亡者が出ている。これまでのコロナでは考えられない数字である。この 1 年、外食もしていない私の元に、会社帰りに飲酒しました、ランチに行きましたなどと平気で言う患者さんがおられる。内心、このような患者さんはクリニックに来ないで欲しい。以前のブログにも書いたように、症状発症の 2 日前から他人にうつす危険があるのです。もっとも、双方のマスクは徹底しているので大丈夫だとは思っていますが。

感染拡大の原因をマスコミは若者を悪者に仕立ているが、果たしてそうであろうか? 若者の殆どは真面目である。一部の愚かな者がいるだけである。先日、堺市では 20 歳台の若者が、こんな時期に高を括って急性アルコール中毒になるほどの飲酒をし、救急車をコール。駆けつけた救急隊が受入れ先の病院を探すも見つからず。結局、救急車の車内で死亡してしまった事例があったようである。直接的にコロナで死亡したわけではないが、間接的にコロナで死亡したのである。こういうのも一部の若者のことである。では、中高齢者は皆真面目?否、そうではないはず。若者同様、殆どの中高齢者は真面目である。しかし、一部の愚かな中高齢者が迷惑をかけている。堂々とTVの街頭インタビューで自論を唱えている若者、中高齢者のシーンを目にすることがあるが、殆ど理解力の乏しい誤った判断を正論と勘違いしていることの多いのには驚きである( わざと、そういうインタビューを流しているのかもしれないが )。緊急事態宣言・・このような人がいるからやらざるを得ないのに、そんな人間がわかっていない。『 私は、手洗いも、マスクもしっかりしているのに感染してしまった。防ぎようがない。』なんて言っているのを聞いたことがあるが、マスクをしていない相手が傍にいればなんの意味もないのであることを 1 年以上経っても理解できていない人がいる。マスクは相手の為にしているのであって、自分を守っているためではないことが相変わらず理解されていない。自分がマスクをしているのは、相手を守っているのであり、相手がマスクをしているのは自分を守ってくれているのである。変異株ウィルス・・・甘く見てはいけないが、大きく恐れる必要はない。今まで通りの予防さえしていれば。


猛威をふるう変異株コロナウィルス

2021年04月16日 | 新型コロナウィルス

大阪もアッという間に1,200例以上の一日感染者数を認めるようになりました。2週間前にブログで1,000 2,000 例あるいはそれ以上になることが予想されると記しましたが、まさしくその通りになってしまいました。世間では、変異株ウィルスの感染能力が従来のウィルスに比べて強すぎるから急激な拡散をしたと捉えられているようですが、その要因は否定しないものの、やはり緊急事態宣言が解除されたことに対する、多くの国民の気の緩みからの感染拡散の要因の方が大きいのではと思っています。緊急事態宣言が解除されたので、もう大丈夫、多少は騒いでも大丈夫と感じ、入学や卒業、入社や転勤など学校、職場関連の飲み会を含めた行事、桜の咲くころは年末年始以上に多くの行事や宴会が増える時期であることが、今回の拡散の大きな要因になったのではと思われます。折角、これからワクチン接種が始まろうとしている(一部では始まっている)時に、非常に残念な結果になりました。堺市では高齢者の集団接種が 5 1 日ごろから始まり、当院などのクリニックでの個別接種は  5 20 日ごろより始めると聞いていますが、未だ明確な案内は届いていません。もっとも、この時期になっても開業医や小病院の医療従事者は、ワクチン接種を受けることもできず、その日程の通知さえ届いていない現状です。どうやら高齢者の皆さんが先に接種を受けることになりそうです。できるだけ多くの方に接種ができるために、今、国で定めている 3 週間後の 2 回目接種は行わず、一通りの高齢者の方の1回目の接種が終わってから 2 回目の接種を行おうと予定しています。3 週間後の 2回目接種を遵守してしまうと、例えば1週間での接種人数が 150 人と設定すると、3 週間で 450 人の人が接種できるのですが、46 週目に再びこの 450 人の接種を繰り返すわけで、451 人目からは 7 週後からということになります。2 回目の接種を後回しにすれば、7 週目には 901 人目の人が接種できることになります。感染予防、発症予防の観点からは、1 回目の接種だけでも、さほど大きな差はないと確認しています。国の方針に逆らうようですが、逮捕はされないと思っています。本当、もう少しです。どうぞ、これまで通り、我慢し踏ん張ってください。


狭心症、心筋梗塞(虚血性心疾患)とは?

2021年04月04日 | 医療、健康

当院は虚血性心疾患に特化した循環器内科であるということで、胸痛を主訴に来院される初診の患者さんが以前から沢山おられます。しかし、全く問題のない胸痛である場合が殆どです。受診される方は案外 20~30 歳台と若い方が多く、症状をインターネットで調べ、自分で狭心症、心筋梗塞と判断して来られる傾向にあります。そもそも、狭心症とはどうして起こるのか? 心筋梗塞はどうして起こるのか? ということを理解すれば、不安も解消するはずです。当院のホームページを見られて受診される方が多いので、下記を参考にしてからお越し下さい。

① 狭心症とは、冠動脈という心臓の表面を取り巻いている 3~4 mm程度の血管(パイプ)にコレステロールなどの塊(プラーク)が長年にわたってこびり付き、その血液の流れが悪くなることにより、心臓そのものが栄養をもらい難くなる疾患です。プラークは年々カチカチになってしまい、そうなればコレステロールの薬を服用しても最早手遅れということになります。これがいわゆる冠動脈の動脈硬化というものです。当然、冠動脈のみならず、脳血管をはじめ、全身の血管にも同様の影響は出てきます。では、コレステロールの塊(プラーク)がこびり付く原因は何なのかということになります。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が長年高値のまま治療なく経過している場合、糖尿病のコントロールが不良(HbA1cが 7 %以上)の状況が長年持続している場合、血圧が高いにも関わらず、症状がないからと長年放置している場合がその殆どの原因になります。長年というのは個人差がありますが 7~10 年ほどの場合が多いです。当然、年齢(男性では 40 歳以上、女性では 50 歳以上)というのもリスクの一つには上がりますが、前述のリスクが無ければ、狭心症や心筋梗塞を来す可能性は非常に低いということです。また、女性ホルモンは動脈硬化を予防する大きな働きをすることがわかっており、女性の場合は閉経してからが注意です。

② 胸痛といっても特徴があります。 冠動脈の全てにプラークがこびり付くわけではなく、こびり付きやすい部位というのがあります。胸痛といった症状が出るのは血管の直径の 3/4 ほどが詰まってくると起こりやすくなります。ではどんな時に胸痛がでるかということです。大人しくしているとき、座っている時、眠っている時など安静時には胸痛は起こりません。階段を昇っている最中、ジョギングをしている最中、荷物を運んでいる最中、テニスなどの運動をしている最中など比較的心臓に負荷がかかっている時に起こります。血管が最早 3/4 以上狭窄してきているわけですから、これらの労作をすれば再現性があります。半年に1回、月に1~2 回胸痛を感じるといって受診される方がおられますが、この程度の頻度では異常ないことがお解かりと思います。数年前に胸痛を感じ、近医で狭心症と診断され、今回久しぶりに胸痛が出ましたと言って来られる方も結構おられます。数年間、胸痛がでない狭心症などありません。診断が間違っていたことになります。また、胸痛の持続時間は 2~5 分程度です。一瞬や数秒、あるいは数十分~数時間などはあり得ません。但し、冠動脈が完全に詰まれば、最早痛みは消失せず、七転八倒し、息苦しさなども出現し、救急車を呼ばざるを得ない状況になります。これが心筋梗塞です。狭心症の延長線上にあるので、大抵は前述の狭心症を経験するのですが、15 %ほどの心筋梗塞は無症状(プラークの狭窄が 3/4 に満たない)から突然発症する場合があります。しかし、これらの症例もLDL高値、糖尿病、高血圧などが十分コントロールされていないはずです。循環器医はコレステロールに非常に慎重になりますが、他の領域の内科医は食事、運動療法を指示する程度である場合が多いです。コレステロールは乳製品や魚介類(イカ、エビなど)で上昇しますが、40 歳半ばを過ぎる頃には内因性のコレステロールが上昇して来ます。寝ている間に、肝臓で作られるコレステロールの量が年々増加していきます。これに対しては、食事療法や運動は無効で、薬を服用する以外はありません。内服治療を受けられ、正常に安定すると薬を止めたいと言われる患者さんが時々おられます。いわゆる素人判断です。身を持って理解してもらうために 2ヶ月休薬し、採血して確認しますが、当然再上昇しています。LDLコレステロールの上限値は 139 ですが、狭心症や心筋梗塞に罹患され、カテーテル治療を受けられた方はLDLコレステロールを 70~80 程度まで下げた方が、再発率がかなり抑えられると解かっています。ですので、当院の患者さんには一般の 2~3 倍の高脂血症の薬を投与されている方が結構おられます。正常であればいいのではありません。インターネットやTV、雑誌などによる薄っぺらい知識で私に対抗しようと来る患者さんがおられますが、かえって不利益になりますので要注意です。

③ 狭心症にはもう一つ、冠攣縮性狭心症というのがあります。画像上(カテーテルやCTによる造影検査)で狭窄が殆どない冠動脈で起こる胸痛発作です。これは前述と異なり、労作には関係なく、殆どが気温の下がる早朝や冬の外気、夏のエアコンなどの寒冷により数分間の胸痛を自覚します。狭窄が殆ど無いといっても、コレステロールや糖尿病、高血圧などによる冠動脈の内膜に障害(傷がつき)があり、その部位が寒冷刺激により数分間痙攣を起こして一時的に冠動脈の流れが悪くなって胸痛が起こります。殆どは数分で痙攣は消失し改善しますが、ごく稀に完全閉塞を起こし、血栓が形成され心筋梗塞を起こす場合があります。この痙攣による現象はニトログリセリン(ニトロペン、ミオコールスプレー)の舌下により 40~50 秒で改善します。20~30 歳台ではまず起こりません。先日も20歳台の方が他院で冠攣縮性狭心症を疑われ、当院を受診されましたが、冠動脈のリスクが全く無く、問題なく経過観察と診断しています。

問題のない胸痛の殆どは、ストレス、疲労、不安、環境の変化などの因子が精神面に影響し、自律神経の緊張感が高っまた状況が続くときに起こりやすいと考えられています。いわゆる不安神経症という状況です。これらの因子が解決されるか、軽い抗不安剤を一時期内服するかで自然に症状は消失していきます。心配し過ぎないことが改善の早道です。胸には心臓以外に、肺、大動脈、筋肉、神経などがある訳ですから、その点についての不安があるようでしたら診察を受けて下さい。