診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

なぜ、高等学校の授業料無償化

2023年09月19日 | ブログ

診察中、ブログを愛読していただいている何人もの患者さんからそろそろ新しい記事を書いて欲しいとの依頼がある。今、充電中などと返事はするが、相変わらず世間に立腹することがテーマになってしまう。それでもいいとの後押しを頂いて、久しぶりに記事を書いてみようと思い、まずは高等学校授業料の無償化について私見を記してみた。こういった記事は反論したくなる人も多いであろうからお許し頂きたい。

世帯年収の上限を撤廃し、全世帯の生徒が無償で高校に通学できるというシステム。なんだか大阪が初めての試みと得意がっている吉村知事。戦略会議では 「大阪の子供たちが所得や家庭の状況に左右されず、自分の可能性を追求できる社会を目指すべきだ。その大きな第一歩を踏み出せた」 と意気込んているようだ。 現行制度では世帯年収が 590 万円以下の子供は実質無料で高校に通うことができている。そもそも現行制度が出来上がった理由として、高等学校に行きたくても親の年収が低い子供は授業料を払うことができず、平等に教育を受けることができないという理由で立ち上がったシステムのようである。恐らく現実的には、志望した府立高校の受験失敗で滑り止めとした私立高校に入学する例が低所得世帯の場合の救済適応になるのではないだろうか。そういう家庭を救済する政策なのであろう。ならば、なぜ高所得世帯まで無償化にする必要があるのか非常に矛盾している。百歩譲って現行制度なら、知事の言い分も否定はしないが、親の所得が理由で平等な教育が受けられないというなら、高所得家庭を無償化にする必要はない。では、なぜ新制度にしようとしているのか。政治家とは自分が人気を得、自分の政党が人気を得ることを最優先に考え、その手段として国民、府民から集めた多大な税金を美辞麗句を並べて自分たちのために利用しているのである。今、参政権は 18 歳以上になった。これまでの選挙では、高齢者の投票率が圧倒的に高いので高齢者から人気を集めるために医療、介護、福祉といったところに重点を置いた政策が取られてきた。ある程度確立され、政党が変わっても大きく変化することがない。この高齢者層以外の年齢層から更に票を集めるためにはどうすればいいか。それが高校授業料の無償化という彼らの作戦である。この政策に喜びを感じるのは高校生ではなく、その親である中年層である。高校生の親の年齢層は凡そ 40 歳代 ~ 50 歳代であろう。590 万円以下の世帯所得制限による授業料無償の現行制度では、授業料を支払っている中~高所得世帯の中年層の親たちには不評なため、彼らからの票を集めることは困難なのである。よって所得制限を撤廃することで、さらに多くの中年層から人気を集め、票を集めることができるというカラクリである。全く幼稚な政策である。高校授業料無償化が成立すると、次は大学授業料の無償化も準備しているようであるが、これは投票権のある大学生( 18 歳 ~ 20 歳代)とその親( 40 歳代 ~ 60 歳代)からの票集めであろう。まとめると、高齢者以外の全年齢層( 30 歳代が抜けているが)から票を集めるために、授業料の無償化という偽善事業で我々から集めた税金を自分たちの人気のためにばらまいていくのである。細かくは調べていないが、この無償化に費やす補助金(ばらまき額)は府が持っている税総額のごく一部程度で、ビクともしない額らしい。それなら、税金をもっと安くするべきで、それは即ち府民全員に公平である。税というものに対して本末転倒である。