連日、『 医師の 94.9 % が奨める 』 なんてでかでかと数字を出して如何にも健康に良いの買って下さいみたいなテレビ CM や新聞広告。ヨーグルトブームの火は消えず、あの手この手と手法を変えて過大広告を平気で出す時代には閉口する。誰しもがこの CM を観て製品以上に『 94.9 % 』 という凄い数字に驚くことと思う。いわゆる CM のインパクトである。調べてみると、約 1,000 人ほどのヨーグルト愛好者の医師からとった Web による誘導的アンケートのようである。無料で試供品として製品を提供し、それについてのアンケート調査である。これはよくある手法である。内科 67 % (うち循環器内科は 7 % のみ)であり、内科系以外が 33 % であった。最早この時点でサンプリングの仕方に問題があることに気付いていない。このアンケートの集計のデザインミスである。本来であれば愛好者 1,000 人を対象にするのでなく、非愛好者を含む 1,000 人(できれば 500 人 vs 500 人)の医師でアンケートを取るべきである。スタートの時点で論文として失格である。このような偏ったサンプリングの結果として『 医師の 94.9 % が奨める 』 なんてしてしまうとインチキ商法と捉えられても仕方ない。ヨーグルト非愛好者にも試供品を提供して感想を聞くべきであり、アンケート調査に参加させるべきである。当然、ヨーグルトの医学的メリットの乏しさを知る医師は多数いるはずで、全く奨めたくないというアンケートデータが多数でると思われる。百歩譲ってせいぜい、『 ヨーグルト愛好者の医師の 94.9 % が奨める 』 とするべきであって、本来なら愛好者、非愛好者両グループをまとめて医師とするべきで、そうすると『 医師の ○○%が奨める 』という見出しになり、○○%は推測ではあるが 60 ~ 80 %に大きく下がる値になるであろう。そもそも、この調査では対象者が医者である必要がないような内容である。まあ、世の中には詐欺みたいな商法が次から次へと湧いてくるものである。それを疑うことも知らず買わされてしまう人々も能天気なものである。このような表示 CM を『 景品表示法違反被疑 』というのであって、消費者庁に情報提供を行った。最も、この数字を無視して買うことには何ら非難することもなく、御自由にといったところである。
2ヶ月ほど前、宮崎沖の日向灘震源の大きな地震が発生した。いわゆる日向灘地震である。今回はマグニチュード 7.1 と比較的大きな地震であったが、過去 100 年の間に日向灘沖で M 7.0 ~ 7.5 の地震は平均 20 年に1 回の頻度で起こると推定されていた。しかし、今回は 40 年振りの発生で、推定された 20 年の 2 倍に値する。太平洋沖で陸のプレートとフィリピン海プレートの衝突(海プレートの沈み込み)からくるエネルギーの発散が地震となって現れるのであるが、地震を気にする一部の地元の人は、20年前から、『 日向灘地震がもう来る、もう来る 』と不安がって 20 年が経過したのである。全く、地震の予告など非科学的で当たらない。同じようなことが、南海トラフ(水深 4,000 M程度の海盆地)大地震にも言えるのではと思える。100 ~ 150 年周期で起こる南海トラフの地震も直近では終戦前後の 1944 年に東南海地震、1946 年に南海地震(M 8.0)が起こっている。さらに遡ると、600 年代から信憑性の低いデーターを基に、100 ~ 150 年周期で起こっていると言われている。そして、次回訪れるであろう大地震は南海トラフの広範囲(東海、東南海、南海)で連動して起こり、巨大地震が来るであろうと専門家??が推定し、世間を騒がせているのである。科学的根拠は少なく、過去の非常に少ないデーターと主観をもった推定で振り回されていると思わざるを得ない。2050 年までに発生する確率が 70 ~ 80 %と地震委員会の予想である。南海トラフ地震も何回も来る来ると言ってればそのうち当たりますよ。まさに何回トラフ地震です。これまで、大地震の予測すらできていない地震学者のいうことを真に受けて慌てて水を買ったり、非常食を買ったり、旅行を中止したりと、相変わらず大騒ぎする一部の国民に首をかしげたくなる。もし、推定されるような東海、東南海、南海連動大地震が起こるなら、もはやもがいても助かる確率は低く、家は潰され、買った水や非常食は家の下敷き、津波に流されます。備えあれば患いなしですが、本当にこれら 3 地域の連動した大地震が起こるのなら、準備は無意味に等しいのかもしれません。 死者は 32 万人以上、建物の全壊は 238 万棟余りと推計されている。ちなみに東日本大震災(死者 15,735 名、行方不明者 4,467 名)の 20 倍の被害を受ける地震と推定されているようである。東海? 東南海? 南海? のどれかは近い将来くるのでしょうが、連動するという可能性の根拠とその確率はどうなのか説明を受けたいところである。そもそも、もっともらしい説明を受けても当たるとは思えないが。
17 日間の白熱したパリオリンピックが閉幕した。パリと日本の時差が 7 時間ということが、日本でも比較的夜の耐えれる時間帯に観戦することが出来た。日本選手の頑張りも素晴らしく、金メダル数はアメリカ、中国の半分とはいえ 3 位と、過去には想像もできない立派な成績だった。バレーボールやバスケットボールも期待されたものの、少し残念な結果となったが、世界と肩を並べることのできる選手および競技が増えた。今回、金メダルを取った体操競技では、得点が 1,000 分の 1(小数点以下 3 位)まであり、どのようなシステムになっているのか詳細は不明だが、人間のやっていることを人間が採点するのに 1,000 分の 1 までの点差は必要なのか、果たして正確なのかと疑問を抱く。もっと言うならば、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)に至っては、10,000 分の 1(小数点以下 4 位)まで採点をするようで、これまた意味不明な数字と疑問を抱く。この競技、採点に納得いかないチームは約 8 万円を払って再度採点をしなおしてもらえるルールがあるようで、日本が予選で 8 万円を払って 5 位から 3 位に繰り上がるという、政治の世界にも似たシステムにこれまた疑問を感じた。陸上男子 100 Mでは、アメリカのライルズとジャマイカのトンプソンが 9 秒 79 で同着。しかし、1,000 分の 1 まで写真判定すると 0.005 秒差でライルズの金メダル獲得となった。超人的な反射でスタートを切り、走り抜けていく競技とはいえ、人間が走っている競技を 1,000 分の 1 まで評価する意味はあるのかとまた疑問を感じざるを得なかった。しかし、人間離れした数々の技や体力、精神力には敬意を払うのみである。4 年後のロサンゼルスでのオリンピックには野球、ソフトボールが復活するであろうから、また楽しみである。
夏になって気温が上がり、発汗などにより体内から水分が減少すると血圧が下がってきます。冬と同じだけの降圧剤を服用していると血圧が下がり過ぎてしまう人が結構います。この季節は一段階、降圧剤を弱くして服用してもらう方が多いです。診察室では血圧測定以外に、『 最近、立ちくらみは出ていませんか? 』 と質問し、血圧の過剰な低下が無いか確認しています。『 昨日、貧血が酷かったです 』 といわれる患者さんが時々おられます。『 え、貧血?どんな症状が出てましたか? 』 と聞くと、立ちくらみやふらつきを訴えます。なるほど、貧血?ね。世間一般では脳貧血 と言われているようですが、医学的にはこの症状を貧血とは言いません。貧血と言われたら、全く別の病気を考えてしまいます。この場合は、血圧低下による一過性の脳虚血の状態ですが、病院で 『 貧血が酷いです 』 なんて言ったら、血液検査をされてしまいます。医学的な貧血とは、赤血球の成分であるヘモグロビン(血色素)が減少する現象を指します。このヘモグロビンは酸素を全身の各臓器に運ぶトラックの役目をするので、これが減少すると臓器が酸素欠乏になっていくわけです。症状としては、頻脈(動悸)、息切れが大半で、さらに進むと顔や手足のむくみ、臓器障害が出てきます。貧血にはいくつもの種類があり、特に頻度の多い鉄欠乏性貧血は有名です。これは名前の通り、鉄分が不足する貧血で、過度のダイエット、菜食主義による鉄摂取不足や、婦人科疾患の出血過多(月経不順、子宮筋腫による出血など)、高齢者になると、胃や腸からの鉄吸収が悪く鉄欠乏性貧血を呈することも少なくありません。しかしながら、注意が必要なのは悪性疾患、特に胃がん、大腸がんによる慢性の消化管微量出血によるものが比較的多いことを経験します。鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄剤の薬を服用するのが一般的ですが、同時に胃カメラ、大腸ファイバーを受けることが無難です。極端な菜食主義者や胃腸からの吸収障害によるビタミン B12 欠乏性貧血、葉酸欠乏による貧血などは頻度は多くないものの時々遭遇します。腎機能が低下してくると、造血因子が減少して起こる腎性貧血(高齢者でちょこちょこ遭遇する)、その他 溶結性貧血や再生不良性貧血、赤芽球癆・・・ など多種あります。貧血もないのにあるいは原因もわからず、鉄剤のサプリをTVコマ―シャルに騙されて服用している人がそこそこいるようですが、不要なことをして体調を崩さないことを祈ります。
毎年 4 ~ 5 月の木の芽時になると、多くの人が 体調不良を訴える。気温の寒暖差によるストレスにより自律神経の機能が乱れやすくなってしまう。『 胃がムカムカする 』 、 『 少し食べるだけでお腹が張る 』 、 『 吐き気が続く 』 、 『 胃がキリキリする 』 など、上腹部 (心窩部) の症状を訴える人が増える。私も、そのうちの一人である。症状の精査目的で胃カメラ (内視鏡) 検査を行うも、胃炎や潰瘍、さらには胃ガンなど (器質的異常) もなく、比較的綺麗な胃であるにも関わらず、症状は取れず長引く場合もある。これは胃の機能的な異常 (動きが悪い) によって、症状が引き起こされていると考えられ、『 機能性ディスペプシア 』 と呼ばれる。治療としては、胃酸を抑える薬、胃の動きを良くする薬などを服用するのであるが、良く反応する場合と殆ど反応しない場合がある。そのうち自然に治ることが一般的である。私の場合、先月、夜間睡眠中に突然吐き気を催し、トイレに起き上がったが、吐けない。気分の落ち着くのを待ったが、結局夜が明けてしまった。朝食も摂れず、水分のみ摂って出勤。体のだるさと吐き気は続きながらの診察スタート。この時は、流石に診察は困難かと悩みながら開始した。しゃべるのもきつかったが患者さんからは容赦はない(笑)。しかしながら、昼前にはかなり症状も改善し、午後の診察は普段通りできた。 また、先々週、覚醒時にベッドから起き上がろうとしたとたん、体が大きく揺れ目の前の景色がジェッ トコースターに乗っている時のように右から左から画面が歪んで飛び込んでくる。立ち上がることもできず、再び大の字をかいてベッドに倒れ込むも、症状は更に酷くなる。ベッド上に座り込むことで少し症状は軽くなり、5 分ほどして揺れは落ち着き、目の前の画面も落ち着いた。いわゆる頭位変換性めまい (BPPV) である。65 歳以上の女性に多く、診察の場で出会う患者さんは結構おられるので、この現象がすぐに理解できた。しかし、いざ実際に自分が経験するとこんなに酷いものかと驚いた。教科書通り、5 ~ 6 日で回復した。最初の 3 日間は、吐き気も伴ったため、朝食はできず紅茶のみで仕事に向かった。診察中も少し頭を左右に動かすと、突然ジェットコースターに乗っているような画面の揺れを感じる為、頭をできるだけ動かさないように注意しながら診察を続けたが、なかなか厳しい時間であった。6 月になり、気分不調を訴える患者さんも少し減ってきたようである。しかし、間もなく梅雨に入りじめじめした日が続き、梅雨が明けると恐ろしく暑い夏が待っている。調子よくなる季節なんてあるのだろうか?