Fare un brutto sogno

大切なのはバランス
無理をしたときの揺り戻しが一番怖い

金時計の子

2004年11月01日 23時26分05秒 | 1.心の叫び
山形への遠征から午前様で帰宅。
さすがに今日の出勤は堪えるね。
試合内容にも疲れたし(笑)。

始業時間は9時半。今日は15分ほど遅刻する電車で出勤した。
電車の乗車位置は恐らくみなさん普段から固定していると思う。
私もいつも同じ場所から乗車している。
今朝、その場所に並んでいる女性の一人がとても見覚えのある人だった。
ただ、遠く離れた場所に住んでいると思っていたし、もう10年以上会っていないので声を掛け確かめることを躊躇った(笑)。
後ろに並ぶまで、私は女性の顔をまじまじと見て、とても失礼な感じだったと思う。

一旦後ろに並び、しばし沈黙が流れた。
が、突然、前の女性が後ろを振り返った。

「二○さん?」
「や、やっぱり有紀ちゃんか?」
「だよね(爆)」

いや、本当に驚いた。
「浅草橋に住んでるって聞いてたから絶対違うと思ったよ」
「そっちこそ、あまりにも変わらなさ過ぎるから驚いちゃった。逆に違うよねって思った」
もう随分前にこちらに引越し、近くに住んでいるとのこと。
全く知らなかった。
毎朝、急行一本違いで、二人が同じ場所に立っていた偶然が可笑しかった。

とある超有名一流大学の学業最優秀者へ授与される「金時計」を保持する彼女は、とても切れ者で尊敬していた。
新入社員として一緒に同じ部署に配属され、様々なことを一緒に経験した。

「憶えてる? 私、あの頃のせいで鉢植えの水遣りがとても上手になったんだよ」

当時、私達が入社した頃は、机の雑巾掛けや植物への水遣り、新聞記事の切り抜きなど先輩社員が出社する前にやらなければならないことが山ほどあった。
当時の始業時間、8時半の1時間前には出勤し、それをこなしていた。
今の時代では考えられないこと。
私は、当時からそういう仕事に疑問を持ち、事ある毎にサボっていた。
いや、単に朝が弱かったともいう(笑)。
しかし、金時計の彼女は当然、何をやるにも真剣に取り組んでいた。
そして、いつもそういう雑用やお客様へのお茶だしをやらされることに不満を持っていたそうだ。

ある日、金時計の彼女が当番で鉢植えに水を与えた日があった。
私が当番の時はよくサボるので、鉢植えにたっぷりと水を上げたそうだ。
すると、当時の課長代理が憤慨しながら新入社員全員を招集した。

「今朝、水をやったのは誰だ!!」

金時計の彼女が「私です」というと、その課長代理に大目玉を食らった。
「水遣り過ぎだ。植物の気持ちを考えて水をやれ!!」

私は当時のこの出来事を全く憶えていない。
今朝の電車の中で彼女からこの話を聞かされても、全く思い出せなかった。
朝いちで新入社員が招集されたとすると、その場に私が居たのか、遅刻常習者としては疑わしい(笑)。

「あなたがサボるから、私は良かれと思ってやったことで怒られて!」
「でも、植物にとっては、私が多めにあげて、あなたがサボって、丁度良かったんだね」
「おかげで水遣りがうまくなったのよ」
「今も植物のことを考えながら水をあげてるの」

彼女は一気に話し始めた。
ちょっぴり皮肉交じりだったが、嫌味ではなく本当に自分の為になったと感じさせる話し振りが、実に彼女のいいところだ。
昔からおっとりしていながらも、その前向きさや強さ、一生懸命さが彼女の魅力だった。
あの頃のまま、この子は本当に変わらない(笑)。

当時の二人の仕事は新規サービスの企画だった。
入社時の様々な研修での成績優秀者が数人集められ、彼女は新しいコンセプトの端末に関する企画開発、私はUNIXベースのAI/エキスパートシステムを用いたサービスの企画開発、他にも衛星通信やICカード/PETカードを用いたサービス企画など、各自にテーマが与えられ、サービスが実現するまで数年間、徹底的に取り組んだ。
大きなビジネスに発展したテーマもあった。
途中で挫折したテーマもあった。
ただ、そういう業務に新入社員時代から取り組めたことは、今でもいい経験になっている。
二人ともガムシャラだったことは間違いない。

彼女は5年間の産休や育児休暇を経て、数年前に会社に復帰してからは10時~15時の育児短縮勤務を続けているそうだ。

「お前、もったいないよ」

私は心からそう言った。
もっと活躍しろよと思う。
私などより、数倍も戦力になるだろう。

現在の勤務先も私と駅一つ違い、私の事務所からも歩いて数分の所にいるという。
今度、昼飯でも誘おうかと思う(笑)。

最近、人を尊敬するということが無くなって来た。
以前、戦友を「こいつカッコイイ」と思ったことはあったが、それは尊敬とはまたチョット違う(笑)。
ラッシュアワーの中、長い乗車時間の間、ずっと話をしていて、「ああ、俺、この子を尊敬してたっけな」と思い出した。
次々と出てくる昔の話、その時のこの子の考えや今日初めて聞くことが、とても新鮮であり、また、当時の気持ちを思い起こさせてくれた。

しかも、新入社員時代の初々しい気持ちまで一緒にね。

人は一瞬にして懐かしい時代の関係に戻るもんだね。
今、自分がどんなに取り繕った役回りを演じていても
そういうものが、ホント一瞬にして取り払われて
全く無防備な自分、当時の関係に戻ってしまう。

今朝の彼女が、今の彼女なのかどうかは判らない。
でも、薄茶色の髪、屈託の無い笑顔で話す今朝の彼女は
紛れも無く当時の彼女だった。
そうだった、この子の薄茶色の髪は染めているのではなく自前だったな(笑)。

私にとっては、彼女はやはりあの頃のままだった。


コメント
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