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乙武氏の入店拒否 ネットで“代理戦争”勃発 バリアフリーの本音と建前

2013年06月03日 | 過去記事



乙武氏の入店拒否 ネットで“代理戦争”勃発 バリアフリーの本音と建前

<ベストセラー『五体不満足』で知られる作家、乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)氏(37)が、車いすを理由にレストラン入店を拒否されたことをツイッターで明かしたことが波紋を広げている。乙武氏と店主はネット上で和解したが、当事者をよそに侃々諤々(かんかんがくがく)の議論は続き、国会でも取り上げられる事態に。バリアフリーの理想と現実をめぐり、本音と建前も交錯している。

 「こんな経験は初めて」「屈辱」-。乙武氏は18日、ツイッターで入店拒否されたというレストランを名指しで批判。予約して店を訪れた乙武氏は、店のあるビル2階にエレベーターが止まらないなど、車いすに対応できない理由を店側から「ぶっきらぼう」に説明されたという。

 店主は同日、ツイッターや店のサイトで乙武氏に謝罪。乙武氏が明かした現場でのやりとりを一部否定した上で、「車いすの方は事前に連絡をしていただけると思っていた」などと釈明した。これを受け、乙武氏も「事前連絡を怠った」と返答し、21日には自身のサイトで「いつの日か再訪してみたい」とつづり“幕引き”となった…はずだった。

 ◆第三者の“代理戦争”に

 ところが、こうしたやりとりが拡散するにつれ、議論は各所に飛び火。ネットでの中傷をユーモア交じりにいなすことで知られた乙武氏が感情的になったことも影響してか、第三者が騒動の是非を検証し批評し合う“代理戦争”に発展した。

 店側には、「失礼な店」「イギリスだと障害者差別で訴訟。店の負け確定」(ツイッター)といった批判が集中。一方、乙武氏にも「有名人ということを利用したツイッター暴力」(匿名掲示板)、「予約時に車いすであることを伝えるのは障害者側のマナー」(身体障害者の個人ブログ)などと批判が殺到した。

 さらに、22日の衆院厚生労働委員会では、日本維新の会の議員が田村憲久厚生労働相に騒動への見解をただした。田村厚労相は「店員が協力して連れて行く努力をすべきだと思うが、店の状況や対応が分からない」と述べるにとどめたが、ネット発の私的ないざこざが国会で取り上げられる異例の事態となった。

 ◆理想と現実が衝突

 実際のやりとりは結局、当事者にしか分からない。ネットでも「水掛け論。第三者が論じるのは無意味」と指摘する意見は少なくない。ただ、騒動がこれだけ注目を集めたのは、乙武氏の知名度に加え、バリアフリーの理想と現実のずれがネットを通じた“本音”によって見えやすくなったからでもあるだろう。

 「『車いすだったら先に連絡しなきゃ店に入れなくて当然』みたいな不平等を当然と肯定してしまう態度を差別という」(ツイッター)、「事故のリスクもあるし、個人店が対応するのは事前連絡なしでは不可能に近い」(匿名掲示板)

 いずれも建前ではなく、本音だろう。誰もが不自由のない生活を送れる社会の理想と、実際は対応しきれていない現実が衝突する。

 「悪者探しではなく、双方への理解が進むことが最も望ましい」「社会は可能な限りさまざまな境遇の人に配慮し、車いす利用者もできるだけ事前連絡や下調べするとスムーズかも」(ブログコメント)

 こうした意見は“建前”かもしれない。それでも、ネットの本音を相互理解のための素材として読み比べ、理想に近づく方策を探ることは、無駄ではないはずだ。(三)

 【用語解説】乙武氏入店拒否騒動

 乙武氏は18日、自身のツイッターで、予約した東京・銀座のレストランで「車いすなら事前に言っておくのが常識」「これがうちのスタイル」などと告げられ入店を拒まれたことを告白。店側はネット上で謝罪した上で「『うちのスタイル』とはいっていない」と反論。乙武氏は21日、公式サイトで店名を出したことを「軽率だった」としつつ、改めて当日の経緯を説明した>





勘違いしがちだが、客が店を選べるように、店も客を選べる。客が店を選ぶ理由を店に説明する義務がないように、その逆もまた然り。なんとなく店側が丁寧なのは、単なる自由経済主義、市場主義における社会通念上の慣習に過ぎない。トイレを借りて立ち読みしただけのコンビニで「ありがとうございました」とか「店員さんの腰は低くて親切」は日本国内限定に近い感覚だと言って差し支えない。そこには士魂商才がちゃんとある。

また「顧客」は「とくい」とも読むが、つまり、なにかと「目をかける」ことをいう。そして普通「目をかける」というなら、それは顧客側だとわかる。あの店はいまの時間帯、忙しいはずだから後で注文しようとか、オレっちは常連だからビールケースをテーブルにされるとか、ママに「タバコ買ってこい」とパシリにされるとか。それが客側の「粋」だ。だから店側は常連にだけ年始の挨拶をしたり、周年イベントに優先したりする。

本当なら立場は対等。乙武氏がやっていいのは「次から行かない」という意思表示と行動のみ。だから本人が、反省しました、と言うように、影響力があると自覚しながらのネガティブキャンペーンはルール違反だった。あえて言うと店側の過失はまったく見当たらない。あるとすれば、行ってみたいが場所が東京というだけだ。私がふらりと行けない。

福祉施設でも相手を見て「お断り」する。ルールを守れないなら受け入れはできない。事前予約の際に車椅子を告げるのはルールじゃない、と言うなら、これからもそうやって生きて行けばいい。事実、乙武氏もそれまでは「不便に感じたことがない」わけだ。「抱えてくれ」で断られたのも<こんな経験は初めて>らしい。自分が有名人だから、とは気付かなかったわけだが、そうじゃないとしても、それはまったくの偶然に過ぎない。いままでは良い人ばっかりだった、それだけだ。

また、乙武氏は女性連れだったそうだ。女友達かなんか知らんが女性との食事、それも店を予約するわけだから、事前に約束していたわけだ。自分が気を回さなかった所為で同伴の女性に不便をかける。不愉快にさせる。楽しく食事が出来なかった、これらは紳士の振舞いではない。自分が電動車椅子生活だというのも、その日の朝目覚めて気付いたわけでもあるまい。女性を安心させながら楽しくデートする、これに健常者も障害者もない。






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