忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

「忘れるのは忘れたいから」―――ジークムント・フロイト

2013年05月12日 | 過去記事



ジークムント・フロイトがヒステリーを研究した。すると、社会に適応できない人は自我を崩壊させないため、なにかと不平不満を抱くことがわかった。要するに自分は悪くない、だ。フロイトはそれをアホンダラで済まさず「再適応システム」だとした。治療法も発見。症状を改善するためには「話を聞いてやればいい」こともわかった。

フロイトが癌で死ぬと、娘のアンナ・フロイトが児童精神分析の分野で研究を続ける。子供にもヒステリーがあるし、物事の道理が通じないことも少なくない。民主党みたいに自分の非を認めなかったり、人の所為にしたり。父親のジークムントはそれを「防衛機制」という概念で説明したが、娘はこれをさらに整理して体系化させた。私も障害者児童福祉論とかでお世話になった。頭が痛くなった。

私のレベルに合わせて簡単に言うと、つまり、素直じゃない。それからどうやってもケチをつけるとか。子供なら可愛いこともあるが、これを大のオトナがやれば困るだけになる。

テレビを見ていると「アベノミクス詐欺」という語呂が聞こえる。びっくりして確認すれば「アベノミクス“便乗”詐欺」のことだった。怪しげな電話があって「アベノミクスで景気が良くなってます、今がチャンス、投資しませんか」とくる。テレビの中では「気をつけてください」と同時に詐欺師は「景気が良くなってくる」「株価が上がっている」「円安に進んでいる」などと言います、騙されないようにしましょう、と結んでいた。

ちょっと引っ掛かる。実態のない投資先に金を振り込ませることを詐欺という。安倍政権の経済政策で景気が良くなっている、株価が上がっている、円安が進んでいる、のはぜんぶ事実だ。それに「地震が来る」とか「軒下が腐ってる」と脅して金を盗るわけでもない。地球温暖化の所為でCO2の排出権取引が儲かるとか、クリーンエネルギー関連がお得です、などはぜんぶが嘘だった。テレビメディアはどうにも、アベノミクスを「詐欺紛い」と報じたいのかと邪推もする。要するに気に入らないとわかる。

同志社大教授の浜矩子はアベノミクスを「アホノミクス」と呼んでケチをつけた。メディアで<作られたバブルに過ぎない>と言ったとか。さすがは「1ドル50円」論者だが、いわゆる「バブル経済」とは結果論のことだ。バブルかどうかは崩壊しないとわからない。というか、崩壊しなければバブルではない。アベノミクスをして「バブルだ」と明言するなら、それは「必ず崩壊する」という根拠を示さねばならない。素人じゃないんだから。

つまり、浜矩子は公然と「日本の財政は破たんして、日本経済は崩壊する」と明言している。いくら責任を取らなくてもいい立場としても、これはケチのつけ過ぎだ。また、その説明というか、要するにイチャモンだから文句も酷い。例えば<日本の株価が上がったのは外国人投資家が買いに転じたことも大きい。アベノミクスで一儲けしようと思った彼らが資金を振り向けてきた。こうした動きによって、円安・株高が加速したのです>とか当たり前のことを言う。すなわち、このオバサンは外国人投資家が見向きもしないような市場のほうがよい、と言っている。頭の中に染髪料が入ったのか。

精神科医の香山リカは毎日新聞でやる。やっぱり「バブル」だと断定して<診察室で会う人からは、まだ「アベノミクスで大もうけです」といった言葉は聞こえてこない>とか素っ頓狂を書く。旅行会社がゴールデンウィークに旅行者が増えた、それも「過去最高」だと喜んでいるのが気に入らない。それと・・・ちょっと馬鹿すぎるから貼ってみる。

<旅行会社が大型連休前に発表したところでは、この休みの期間中の旅行者は過去最高なのだとか。理由は「安倍政権の経済政策『アベノミクス』で景況感が改善しているから」と分析されていた。ここでポイントになるのは、実際に景気が良くなり現実にお金がたくさんあるのではなく、あくまで景気の状態に対する印象の「景況感」が改善しているだけ、ということだろう>

おわかりいただけただろうか(笑)。香山は「旅行会社が発表した分析結果」を参考にコラムを書いている。それは<安倍政権の経済政策『アベノミクス』で景況感が改善しているから>というものだった。それから<ここでポイントになるのは>と挟んでから所見を書く。いまから自分の思うところを書きますよ、ということだ。しかし、香山は続けて<あくまで景気の状態に対する印象の「景況感」が改善しているだけ、ということだろう>と書いている。つまり、同じことを書いている。<ここでポイント>もへっちゃくれもない。

こんなの安モンの新人職員が書くレポートでも突き返される。「風邪を引いた理由は風呂上がりに裸で寝たから」と医者が分析していたとする。それに「ここでポイントは」と挟んでから「風呂上がりに裸で寝た、ということだろう」と書けば頭を疑われる。

こんな調子だから、このあとも大したことは書いていない。ともかく、理屈抜きで安倍政権とか自民党が気に入らない、というのは伝わってくるが、診察室で<“景気の悪い話”ばかりだ>と言われても、そんなの知らない。だからなんだ、という他ない。

しかし、だ。香山が阿呆なこと書いて金もらうのは勝手だが、ちょっとシャレにならんことも書いていた。あんまり不安を煽ってもアレだし、と思ったのか、香山は話を少し左に逸らせる。<もちろん、不安一色よりはいいのかもしれないが、それでも「ただ待つ」のには限界がある>として、なんと「岸壁の母」を例に挙げた。本当に驚くべきレベルのアレだ。


<歌謡曲「岸壁の母」の母親は、戦地から帰らぬ息子を待ち続け10年間、港に通い続けるという設定だが、これは特殊なケースだろう>


こういう軽薄な感覚で精神科医というモノは務まるのだろうか、と心配になる。あの「岸壁の母」を<港に通い続けるという設定>として<これは特殊なケースだろう>とやってしまう。知らないなら調べて書くとか、書いてから確認するとか、どうにかならなかったのか。毎日新聞も原稿を読んだのか。いくら変態新聞とはいえ「文章」も商売道具だろうが。

そもそも、有名な話だが「岸壁の母」は実話だ。東京から舞鶴まで、およそ6年通った「端野いせ」がモデルである。ソ連が息子さんをシベリアに抑留した、その帰りを待っていた。当たり前だが桟橋には「端野いせ」だけではなく、他にもたくさんの「母親」がいた。だから舞鶴にはいまでも「引揚記念館」がある。舞鶴港での引揚人数は延べ66万4531人。北朝鮮の拉致と同じ、決して「特殊なケース」と判断してよいものではない。老婆心ながら、香山は無知を謝罪して<設定>や<特殊なケースだろう>は取り消したほうがいい。

しかも、それと「アベノミクス効果の期待感」を比して<一般的にどれくらい待てばよいのか。期間も示されずにただ待つということ自体、私たちには大きなストレスになる>と括る。旦那や父親、息子や弟が死んだかどうかわからない、帰ってくるのかどうなのか、誰に聞けばいいのか、どうすればいいのか、と日本海を見つめる母親の心と<しかも、待ったあげく「あなたへの恩恵はありませんでした」と、外れる場合もあるとなれば、ストレスはさらに倍増>とか同じ天秤に乗せる精神、神経は医者にも治せないだろう。

NHKラジオは1946年から「尋ね人の時間」を放送した。「伝言番組」だ。聴取率は90%を越えた。当時の日本人は自分の家族、友人、戦友、恩師、を必死で探した。香山はアベノミクスを馬鹿にしたいから<そのうち、「待ってもダメみたい」とあきらめが生じる頃には社会全体がパニックになるかもしれない>と脅すが、当時の日本人はもっと深刻なストレスを克服している。オノレの短い物差しでなんでも測るのは止めた方がいい。

また、こういう電波芸者以外のマトモな学者、例えば慶応大学経済学部の塩澤修平教授などは<円安をミクロ的に見て、輸入業者が苦しくなっているなどと、損をしている人たちの話をあえて取り上げる報道もあります>と案じている。それから<そんな中で無用な不安感を煽り、人々がまた悲観的になれば、結局、アベノミクスはうまくいきません>とイチャモンを言う連中の動機を晒す。つまり、連中はアベノミクスに失敗してほしい。日本経済など知ったことではない、それよりも安倍政権を終わらせたい、というのが本音だ。

香山が言う<パニックになるかもしれない>も本音、どうせなら安倍政権の経済政策の失敗で、日本社会なんかパニックになってほしい。そうすればまた、日本の悪口で金儲けもできる。こんなのがテレビや新聞で阿呆を言うから、塩澤修平教授も<そうした中、トータルでものを見ず、一部だけを取り上げて不安感を煽る風潮があるのは問題です>と懸念する。

私もまったく問題だ、と思っていた先日、朝日新聞にアベノミクスの悪口があった。記事は<かつお節にアベノミクスの波 原料高騰、値上げも>だった。朝日新聞に日本の伝統食品を心配してもらえるとは痛み入るが、たぶん、それで<不安感を煽る>のはしんどい。それに朝日は民主党政権時代、あれほど「円高・株安・不景気」をなんかしろと書いてきた。このままじゃぁ日本の財政は破綻する、と朝日新聞の読者に刷り込んだ。

いまの不況は自民党政権の所為、と決めつけて「負の遺産」という言葉も流行らせた。その野党・自民党に対して「党利党略を超えて」とか説教臭い社説も書いた。それがいま、それよりも「鰹節の心配」とは恐れ入った。そんなに好物だったとは。

ま、心配せずとも支那産も朝鮮産もある。ちゃんとベンゾピレンとか、基準値を超える発癌性物質も検出されている。それに円安とはいえ、この先もずっと日本国内産より安価だ。それをキムチと一緒に喰えばいい。朝日新聞社員に焼津の鰹節は贅沢だ。




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