世界標準技術開発フォローアップ市場展開

ガラパゴス化から飛躍:小電力無線IEEE802規格開発会議・・・への寄与活動拡充

H3ロケット「中止か失敗か」論争、若田宇宙飛行士の船外活動 2つのJAXA記者会見に参加して思うこと2023年02月21日サイエンス・ナビゲーター茜 灯里

2023-02-25 11:27:01 | 連絡
:::::
サイエンス・ナビゲーター茜 灯里
茜 灯里(あかね あかり、1971年3月27日-52歳。 )は、日本の作家、科学ジャーナリストである。
本名は橘 由里香[1]。滋賀県大津市/東京都在住。
1971年3月27日に東京都調布市で生まれた[2]。52歳。
慶應義塾女子高等学校から慶應義塾大学に進学するも1年で中退。
東京大学に進学し、理学部地球惑星物理学科を卒業した。
朝日新聞記者[3]の経験の後、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻(博士課程)を修了し、2005年に博士(理学)を得た[2]。
学位論文の題目は『Isotopic study of noble gas and structure analysis on olivines from kimberlite(希ガス同位体分析と構造解析によるキンバーライト中のオリビンの研究)』[4]。
東京大学教員(科学コミュニケーション学・助手[5])を務めた後、東京大学農学部獣医学課程に学士入学し、獣医師免許を取得した[5]。
これまでに、国際馬術連盟登録獣医師[3]、東京工業大学特別研究員[6]、東京大学大学院農学生命科学研究科付属牧場特任助教[7]、鹿児島大学共同獣医学部附属動物病院特任助教(2014年- )[8]、立命館大学総合科学技術研究機構・助教[1]を務めた。
2020年に第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し[2]、2021年2月にデビュー作『馬疫』(光文社)(受賞時の題名は『オリンピックに駿馬は狂騒う』)を出版した[1]。

:::::
<H3ロケットは、日本の大型ロケット開発の歴史においてどのような位置付けなのか。同日に行われた記者会見で若田光一宇宙飛行士が語ったこととは。2つの記者会見に参加した筆者が紹介する>
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2023年2月17日、種子島宇宙センターにてH3ロケット試験機1号機の打ち上げを試みました。
けれど、発射カウントダウン中に第1段機体システムが異常を検知して、発射には至りませんでした。
ロケット打ち上げが「成功しなかった」ことは間違いありません。
では、「失敗」なのでしょうか。
今回は、経過説明の記者会見でのやりとりがYouTubeのJAXA公式チャンネルを通じて誰でも見られたために、「打ち上げ中止」なのか「打ち上げ失敗」なのかをJAXA担当者に問う記者たちの態度にも注目が集まりました。
一方、同日は、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の若田光一宇宙飛行士の記者会見もありました。
全体で20分という限られた時間の中、質問は4名によって行われ、筆者もその1人として若田さんと対話しました。
JAXAはNASA(米航空宇宙局)と並び称せられる存在で、活動は一般からも高い関心を寄せられます。
H3ロケットについておさらいし、2つの記者会見についても概観しましょう。
◇ ◇ ◇ 
日本の人工衛星打ち上げ用ロケットの歴史は、1970年10月に開発がスタートし、75年に技術試験衛星Ⅰ型「きく1号」を搭載して打ち上げに成功した「N-Iロケット」に始まります。
JAXAの前進である宇宙開発事業団 (NASDA) と三菱重工業が、米国のデルタロケットを基に製造した全長32.57メートルの三段式ロケットで、82年まで運用されました。
 以来、N-II(76年から開発、81~87年に運用)、H-I(81年から開発、86~92年に運用)、H-II(86年から開発、94~99年に運用)、H-IIA(96年から開発、2001年から運用、現役)、H-IIAの姉妹機でISSに物資を運ぶH-IIB(09~20年に運用)と続きます。
直近では23年1月26日に、情報収集衛星「レーダ7号機」を搭載したH-IIA 46号機が打ち上げに成功しました。
H3ロケットは、H-IIA/Bの後継機です。14年度から開発がスタートし、総開発費は約1900億円とされています。H-IIの改良開発だったH-IIA/Bとは異なり、打ち上げコスト削減や他国からの受注を視野に入れて、設計コンセプトを抜本的に見直しました。
機体は、搭載する衛星によって全長57~63メートルとなる二段式ロケットで、必要に応じて第1段メインエンジン(LE-9)の数、固体ロケットブースター(SRB-3)の数、フェアリングのサイズを変えて効率的に打ち上げることができます。
さらに、H-IIA/Bまでは特注品としての製造でしたが、自動車や航空機のライン生産に近い形を取ることで、製造期間の短縮やコスト削減を実現しました。
打ち上げ費用も、H-IIAの約100億円から半減の50億円にできる見込みといいます。
 開発のコンセプトは、これまでの日本の大型ロケットはすべて「使い捨て型」であることも影響していそうです。
打ち上げたロケットは回収・再使用されないので、諸外国に日本産ロケットを売り込むには、高い信頼性とともにコスト安を極める必要があります。 
一方、「再使用型」としては、NASAが開発した有人宇宙船「スペースシャトル」が有名です。
1981年から2011年にかけて135回打ち上げられ、軌道船(オービタ)部分が繰り返し使われました。
一回あたりのコストは使い捨てロケットよりも安くなる見込みでしたが、部品が膨大な数であったため再使用のための検査費用が巨額になり、03年のコロンビア号空中分解事故以降は安全対策のコストも多大になったことから、07年には1回の飛行につき約10億ドル(当時の相場で約1200億円)が必要になりました。
 とはいえ、近年の海外のロケット開発では、再使用型が改めて広がっています。
アメリカの民間宇宙開発会社スペースXが開発した「ファルコン9」では、第1段部分を逆噴射によって軟着陸させて回収します。
21年5月には、再使用機が10回目の打ち上げに成功しました。
打ち上げ費用は約70億円と見積もられています。
 日本政府は19年に「H3ロケットの後継機として、2030年頃に回収・再使用型ロケットを打ち上げる」という方針を示しました。
打ち上げ費用は、H3ロケットの半額である約25億円を目標にしています。
量産や完全再使用によって、40年前半にはH3の10分の1(約5億円)にして国際競争力をつける計画です。
ただし、メーカーによる技術実証などが始まったばかりで、これから10年ほどはH3ロケットが活躍する見込みです。
〇メインエンジン着火後の打ち上げ中止は約30年ぶり  
今回は、初のH3ロケット「試験機1号機」が打ち上がる予定でした。
日時は、天候などを加味して直前まで数度の延期があり、最終的に23年2月17日10時37分55秒に設定されました。
当日はカウントダウンも行なわれ、発射6.3秒前に第1段エンジン(LE-9)に着火しました。
その後、発射0.4秒前に固体ロケットブースタ(SRB-3)にも着火して、H3ロケットが打ち上がるはずでしたが、第1段にある制御用機器が異常を検知してSRB-3の着火信号を送出しなかったために、発射に至りませんでした。
日本のロケットで、メインエンジンに着火した後に打ち上げが中止になるのは、1994年のH-IIロケット2号機以来、約30年ぶりでした。
H3ロケットは22年11月に、今回と同じ機体とロケット発射場を用いて、「実機型タンクステージ燃焼試験」(CFT)と呼ばれる総合システム試験を実施しています。ロケットが飛んでいかないよう固定した状態、かつSRB-3は非搭載でしたが、地上設備との接続テストやLE-9の燃焼テストを行って正常に終了しています。
JAXAは当日14時から岡田匡史プロジェクトマネージャが記者会見を行い、「原因を早急に解明し、3月10日までの予備期間内での打ち上げを目指す」と発表しましたが、2月20日現在、新たな情報はありません。
この記者会見に、筆者は記者枠(質問ができる立場)でオンライン参加していました。
原因不明の段階だったので、記者の質問は「想定される原因」「今後の予定」と、「記事の見出しをつけるためのもの」に大別された印象を持ちました。「JAXAは失敗と思っているのか、中止と思っているのか」といった質問は、後者を主な目的としています。
メディアは取材対象の広報担当ではありませんから、時には批判的な切り込みも必要です。とりわけ会見では、記者全体が共有できる答えを増やし、多くの情報を読者に届けるために、阿吽の呼吸で押したり引いたりと質問の役割分担をすることもあります。
ただし、かつては一般の人にはブラックボックスであった記者会見も、最近は多くが配信で見られるようになりました。
マスメディアによる報道が「第4の権力」と言われて久しいですが、個人がSNSで発信できる時代においては、取材対象だけでなく記者も世間の目に晒されていることを忘れてはなりません。
記者の役割分担で筆者が最近体験した好事例は、H3ロケットの会見の数時間後に行われた若田宇宙飛行士のISSからの「軌道上記者会見」です。
通信時間は20分、若田さんの最初と最後の挨拶があるので、質疑応答は正味15分ほどしかありません。
質問の順番は、最初にテレビ局や新聞社からの代表質問が3問あり、筆者を含む他の媒体の記者3名が1問ずつ行うという方式です。
時間に余裕があれば2周目に入ります。
質問は予備を含めて、事前に若田さんに届いています。
今回は、若田さんが5回目の宇宙滞在で初めて船外活動を行ったことが最大のニュースでした。
筆者は、船外活動の太陽電池の架台の設置作業が予定通りにいかず、リアルタイムで地球とやり取りをして行った時の状況や、チームワークを保てた秘訣を尋ねる予定でした。
もっとも、他の質問が分からない状態で会場に行くので、全員が船外活動について尋ねるならば、自分は予備の質問をしようと心積もりをしておきました。
記者会見開始30分前に記者4名が集まったので、質問の擦り合わせをすることにしました。
代表質問3問は、
①船外活動の所感と船外から見た地球の印象、
②H3ロケットの打ち上げに関するコメント、
③古川聡宇宙飛行士が関わった宇宙医学実験のデータ書き換え問題について、でした。
質問を準備した当時は、打ち上げ成功に対するコメントを予定していたはずですが、今となっては厳しい質問が続く印象です。
ISSからの記者会見はYouTubeで配信され、アーカイブ
も残ります。番組として考えた時に、筆者のターンでは「和の心」「絆」などをキーワードにして、明るさや希望を感じさせる答えを引き出そうと考えました。
 とはいえ、記者会見に予想外はつきものです。
チームワークについては若田さんが最初の挨拶や先の質疑応答で多く語ったため、急遽、宇宙でのサステイナブルな生活技術と地球での活用について尋ねました。
若田さんは、ISSの日本の実験棟「きぼう」では汗や尿を用いた水再生装置を使っていることを紹介し、この技術は将来の有人宇宙活動を推進し、地球でも緊急時に使える技術なので地球全体のSDGsにも役立つと見解を述べました。
さらに、全体的に思ったよりも船外活動そのものの話が少なかったため、2周目の締めをこの話題にして、「船外活動で宇宙服を着ているとはいえ生身を宇宙空間に晒し、どんなことを感じたか。恐怖や畏怖はあったか」を尋ねました。
若田さんの答えは「恐怖や畏怖はなかった。宇宙服を介して外は真空の世界で厳しい環境であるという緊張感はあったが、一つ一つ冷静に自分が行うべきことを確実にやることに集中した」でした。
宇宙飛行士の強靭なメンタルと、ミッション達成への責任感を垣間見ることができました。
〇失敗ではなくフェールセーフ
記者会見の質問は瞬発力が求められることも多く、多くの読者を代弁するつもりでも、自分の見解が先立つように見えることがあります。
ネットで炎上気味になった「H3ロケットの記者会見で、失敗と指摘する台詞」に対して、論破王として知られる2ちゃんねる創始者のひろゆきさんはツイッターで引用し、十八番の台詞「それって、あなたの感想ですよね」と返しています。
ちなみに、今回の打ち上げに関する筆者の感想は、「ロケット本体や搭載した地球観測衛星『だいち3号』が、損失したり制御不能になったりするのが失敗。
今回は、フェールセーフ(装置の故障や誤操作を想定し、安全に動作を止めて被害を最小限に抑える仕組みが働くこと)。
安全に停止して、貴重な観測データが取れる『だいち3号』を守ってくれてありがとう」です。年度内の再打ち上げ成功を期待しています。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿