世界標準技術開発フォローアップ市場展開

ガラパゴス化から飛躍:小電力無線IEEE802規格開発会議・・・への寄与活動拡充

西大陸,品証,石井 大智 香港国家安全法6章66条 解釈も裁判官も共産党一党独裁北京中央政府の意のままか

2020-07-01 14:35:08 | 連絡
2020年6月22日 
石井 大智
いしい・だいち
香港中文大学大学院博士課程
2018年9月に慶應義塾大学総合政策学部卒業後、香港中文大学大学院の博士課程に進学。人の移動に特に高い関心を持ち、中学生の時に難民が多く避難するヨルダンに渡航。慶応大在学中には香港の重慶大厦(チョンキンマンション)で難民支援を行う。専門は文化人類学と移民研究で、特に留学生の移動と就業、エスニックマイノリティーによる現地コミュニティーの発展に関心を持つ。香港の抗議活動では多くのメディアの取材コーディネートもしている。
※このプロフィールは、著者が日経ビジネス電子版に記事を最後に執筆した時点のものです。
:::::
解釈も裁判官も北京の意のまま、香港国家安全法6章66条を読み解く
中国本土への移送もあり得る?
 その運用形態は、管轄権に最も表れている。今回発表された説明では「特定の状況」の案件を除き、香港側が管轄権を行使するとしている。捜査や裁判についても香港国家安全法と香港で制定された法律に従ったものになるとしている。
 しかし、今回制定される法律は香港で制定された法律よりも優先され、さらに全人代常務委員会が解釈権を有するとされた。香港の憲法に当たる香港基本法も同様に全人代常務委員会に解釈権がある。昨年11月末、デモ参加者が顔を覆うことを禁止した「覆面禁止法」が香港基本法に違反するとした香港の高等法院の判決を受けて、全人代常務委員会法制工作委員会などが「香港の法律が香港基本法に違反していないか判断できるのは全人代常務委だけだ」と声明を発表する一幕もあった。このように、中央政府は香港の司法が解釈できる幅を狭めようとしていることから、香港国家安全法についても基本的には香港の司法より中央政府の意向が反映されると考えられる。
 つまり「特定の状況」の定義をはじめ法がどのように運用されるかは中央政府側の解釈のさじ加減でいくらでも変えられる。結果として、中央政府が香港での犯罪に管轄権を行使することさえも容易になると考えられている。
 これは香港で発生した犯罪行為が中国本土の司法で裁かれる可能性があることを意味しており、譚耀宗全人代常務委員会香港代表もその可能性を認めている。そのため、逃亡犯条例改正案への反対運動において懸念されていた、香港にいる人々が合法的に中国本土に送られること(いわゆる「送中」)が再び懸念されている。元保安局長であり建制派(政府寄り)の葉劉淑儀(レジーナ・イップ)新民党主席でさえも「多くの香港人が恐怖を覚えるだろう」とコメントしている。
「一国」の統合を強めようとする中央政府
 香港国家安全法は形式上は香港政府側にある程度の権限を与えているように見える。だが実質を見れば「二制度」をさらに形骸化し、「一国」の統合を強める可能性が高い。
 香港の議会や司法にはその法律の修正・解釈をする余地がほとんどない。さらに、香港政府の曽国衛政制及内地事務局局長は今後、香港国家安全法に反対することが9月の立法会選挙での立候補資格取り消しの理由となる可能性を示唆している。実際に法律が適用されるまでに至らなくとも法律の存在自体が萎縮効果をもたらすのは間違いないだろう。
 日本を含む西側諸国における「法の支配」は当然のことながら政府も制約するものだが、中国においては必ずしもそうではない。

その構図については以前掲載した関連記事でも指摘している。中央政府側が解釈権を持つ香港国家安全法が、実際にどのように運用されるのかは今後も注視が必要だ。



 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿