★西大陸半島から日本海型眼鏡通して見える弧状列島日本の実像例か>

:::::
2021.12.26(日)
藤原 修平のプロフィール
(ふじわら・しゅうへい)在韓ジャーナリスト。朝鮮半島や中国東北地方の取材を行っている。
北京五輪・外交ボイコットに背を向ける韓国の“潔い”損得勘定
人権問題より経済優先、韓国は「裸の王様」か
藤原 修平:在韓ジャーナリスト)
韓国は“真実”が見えていない。まるで「裸の王様」だ!──そう思う日本人も多いのではなかろうか。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は豪州訪問中の12月13日に、北京オリンピックに政府関係者を派遣しない外交ボイコットについて「韓国政府は検討していない」と表明した。中国の人権問題を批判するかたちでボイコットを宣言した米英豪とは明確に距離を置いた。
韓国は、中国との経済的な関係に悪影響を及ぼすことを懸念したというわけだ。
韓国にとって中国は輸出入ともに2位のアメリカをはるかに凌ぐ、最大の貿易相手国である。
さらに、文大統領は就任以来「朝鮮戦争の終戦宣言」を目指しているが、裏で中国に指示されているとの韓国政府高官の発言もある。現在の韓国政府にとって、中国は命綱ともいえる存在なのだ。
〇中国への忖度を隠さない韓国
このように韓国が歩み寄ってくるタイミングを、中国が見逃すはずがない。東京電力が12月21日に福島第一原発の処理水海洋放出計画を原子力規制委員会に申請すると、中国の趙立堅副報道局長はその翌日の記者会見で「重大な懸念」を表明した。
そのなかで、「日本は周辺国を含む国際社会の懸念に真剣に耳を傾け、海洋放出という誤った決定を取り消すべきだ」との文言がある。この「周辺国」というのは、海洋放出に反発する世論の強い韓国を念頭に置いていると考えるべきである。
しかも趙氏は「汚染水」という言葉を使っている。韓国でも同じ表現が使われている点には注意すべきであろう。なぜならば、これまで中国では「核廃水」という言葉が広く使われてきたからだ。それにもかかわらず、中国政府は「汚染水」という言葉を極めて積極的に、恐らく例外なく用いるようになった。韓国の世論に同調するようなそぶりを見せているのだ。
その背後には、米韓同盟の切り崩しを狙う中国政府の意図がある。韓国政府の「外交ボイコットせず」との宣言は、そうした文脈のなかでなされたのだ。コロナ禍で疲弊しきった経済を考えると、韓国は中国に対して思い切った措置をとることは不可能である。
とはいえ、日本に対しては、慰安婦問題や強制徴用問題などに関して「人権」を掲げて攻撃し続けている。人権侵害が報告されている中国に対して微妙な距離感を保つというやり方もあるはずだ。しかし、どうやら韓国政府には、そうした方法は全く念頭にないらしい。
さらに韓国は、台湾のIT閣僚であるオードリー・タン政務委員長に依頼していたオンライン講演を、講演当日に一方的にキャンセルした。理由として、中台関係の様々な側面を考慮したことが挙げられたと報じられている。韓国が中国に忖度しているのだ。
〇中国の話なんて聞きたくない」と言う若者
しかし韓国政府の態度と裏腹に、韓国の一般国民の間には嫌中感情が渦巻いている。
手の届かない先進国の日本への関心が2010年頃から薄れていった一方で、発展著しい中国との経済的関係が目覚ましい勢いで深まっていった。それに伴い、中国語の学習者が爆発的に増え、なかには「中国語を教えます」を宣伝文句にする幼稚園まで出現した。
当時、そうした中国語ブームについて何人かの親に話を聞いたみたところ、ほとんどの親が同じ回答をした。「早いうちから中国語を勉強しておけば、将来、就職に有利になるでしょう」と言うのだ。「私の国は5年先も見通せませんよ」と国民が自虐する韓国で、子供の教育に関しては20年先を見越していたのである。
では、そうやって中国語を習った韓国人が中国を好きになったのかというと、そんなことはない。経済的関係が深まる一方で、中国は韓国に対する経済制裁を行ってきたし、韓国の嫌中感情は中国人に対する嫌悪である。それが若者にまで根強く浸透しているのだ。
20~30代の韓国の若者たちと歓談しているとき、筆者が中国で見聞した中国人の素顔について話をしたことがある。たとえば、地方を鉄道で旅しているとき、各駅停車の列車の硬座(最低ランクの席)で出会った庶民の話だ。これから出稼ぎに出る母親を、家族が駅まで見送りに来ていた。列車が出発すると母親は途端に泣きだした。少し経つと、彼女を慰めるために周りが話しかけ、彼女は泣き止んだ頃に冗談を飛ばして周りを笑わせた。そんな悲哀もあるが微笑ましい中国人のエピソードだ。
ところが、韓国の若者たちはまったく反応しない。顔をしかめて「中国人がどうしたっていうんです。中国の話なんて聞きたくない」と言うのだ。
このところ、韓国では中国語離れが進んでいる。ソウルにある大学でも、一部ではあるが、中国語を学ぶ学科で退学者が増えたり、志願者数が急激に減少しているという。
〇中国への配慮を滲ませた岸田政権
岸田政権は12月24日、北京五輪への政府関係者の派遣を見送ると発表した。事実上アメリカと足並みをそろえた格好だが、「外交ボイコット」という言葉を使っていない点で、中国への配慮も滲ませる。
日本でも貿易相手国は輸出入ともにトップが中国で、アメリカ(2位)を上回る。だが、輸入では中国に大きく頼っているものの、輸出額でみるとアメリカと大差はない。この点では韓国と異なる。そうした実情を考慮すると、今回の発表内容が妥当なのだろう。
だが、中国に歩み寄ったと思われるリスクも付きまとう。
日本は、中国における人権侵害を看過せず、今以上に毅然とした態度をとることが求められる。そればかりでなく、台湾とのさらなる関係発展を模索することも重要だ。さらに今後、東南アジア諸国との経済関係を深めて、中国離れを段階的に進めていくことが重要な課題になるだろう。
岸田政権には、韓国政府のような「裸の王様」にならないよう、細心の注意を払いつつ、中国からの圧力に対抗してほしいものだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます