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スターリンク (Starlink)は、アメリカ合衆国の民間企業スペースX社が運用している衛星コンステレーション[2]。
低コスト・高性能な衛星バスと地上の送受信機により、衛星インターネットアクセスサービスを提供することを目的とする[3][4]。
2020年、北アメリカ大陸とヨーロッパで試験運用が始まった[5]。
サービス提供エリアでは、直径55センチメートル程度のアンテナで通信衛星と電波を直接やり取りして、地上の通信インフラが未整備の地域でもインターネットに接続できる[5]。
スペースXは、人工衛星を軍用や[6]、科学・探検などの用途に販売することも計画している[7]ほか、2020年代中頃までに総数約12,000基の人工衛星を3階層にわたって展開することを計画している。
最初が高度550kmの約1,600基の衛星で、次が高度1,150kmのKu/Kaバンドを用いる約2,800基の衛星、さらに高度340kmのVバンドを用いる約7,500基の衛星である[8]。
10年におよぶ計画の総コストは、設計・製造・打ち上げなど100億ドル近くに達すると推計される[9]。
〇概要
スターリンクはスペースXが運営する衛星インターネットコンステレーションであり[10][11]、地球上のほぼ全地域に衛星インターネットアクセスを提供している[12][13]。
この衛星コンステレーションは、2021年半ば時点で1600機を超える衛星で構成されている。
最終的には地球低軌道(LEO)上の何千もの大量生産された小型衛星で構成され、地上に置かれた専用の送受信機と通信することになる。
衛星インターネットサービスによって世界人口のほとんどをカバーすることが技術的に可能となるが、実際にサービスが提供されるのはスペースXがサービス提供のライセンスを取得した国に限られる。
2021年9月現在、17カ国でベータ版サービスを提供している。
スターリンクはワシントン州レドモンドにあるスペースXの衛星開発施設で研究、開発、製造、軌道制御が行われている。
10年にもおよぶ計画の総コストは、設計・製造・打ち上げなど100億ドル近くに達するとスペースXは2018年5月に見積もっている[9]。
製品開発は2014年に始まった。
2018年2月にプロトタイプのテストフライト衛星2基を打ち上げた[14]。
2019年5月には、商用サービスに向けた最初の大規模な打ち上げが実施され、追加のテスト衛星と60基の運用衛星が配備された[10][15][16] 。
スペースX社は一度に最大60基の衛星を打ち上げ、2021年後半か2022年までにほぼ全世界にサービスを提供するために、260kgの宇宙船を1,584基[17]配備することを目指している[18]。
2019年10月15日、米国連邦通信委員会(FCC)は、国際電気通信連合(ITU)に、FCCが既に承認している1万2000基のスターリンク衛星を補完するための3万基の追加衛星用の周波数を手配するための申請書を、スペースXに代わって提出した[19]。
2021年までに、スペースXはGoogle Cloud PlatformおよびMicrosoft Azureと契約を結び、地上でのネットワークインフラをスターリンク用に提供することで提携した[20]。
天文学者は、この計画が地上からの天体観測に与える影響や、既に混雑している軌道環境に衛星がどのように追加されるかについて懸念を示している[21]。 スペースXは、衛星の運用時の輝度を下げることを目的としたいくつかのアップグレードを実施することで、こうした懸念を軽減しようとしている[22]。
衛星にはクリプトンを燃料とするホールスラスタが搭載されており、寿命が尽きると軌道から離れることができる。
また、衛星は地上から送られる追跡データに基づいて、自律的に衝突を回避するように設計されている[23]。
〇国ごとの提供状況
衛星を使ったサービスを提供するには、国際電気通信連合(ITU)の規定や長年の国際条約により、各国の当局から許可を得る必要がある。
その結果、スターリンクのネットワークは緯度約60度以下でほぼ全世界をカバーしているにもかかわらず、農村部や十分なサービスが行き届いていない地域へのブロードバンドサービスが約12カ国でしか提供できていない。
また、スペースXはサービスを展開するための手続きを行う必要があり、その状況によって提供される地域、順序、期間が左右される。
例えば、スペースXは2020年6月にカナダのみで正式に許可を申請し[34]、2020年11月に規制当局が認可したことで[35]、その2ヶ月後の2021年1月にサービスを展開し始めた[36]。
2021年9月時点、スターリンクは17カ国で提供されており[37]、そのほか多くの国で規制当局に認可を申請している[38]。
アメリカではTモバイルUSと提携し、2023年末までに携帯電話の電波が届かない地域に対して、音声通話やデータ通信サービスなどが使用できるようにすることを発表した[39]。
日本では、KDDIがスペースXと業務提携し、2022年に1,200箇所の基地局を介して地方の顧客向けにより高速な通信の提供を目指すことを発表した[40]。
2022年ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、ウクライナでは通信インフラが攻撃される虞が強まった。
開戦2日後の2月26日[5]、ウクライナのデジタル転換相を兼務するフョードロフ副首相はツイッターでスターリンクの提供を要請[41]。
スペースX社CEOのイーロン・マスク
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イーロンマスクがウクライナでスターリンクを始動2022.03.07
https://blog.goo.ne.jp/globalstandard_ieee/e/27719f7f5bb7aa117f5986a5e5795122
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は2022年2月27日7時33分(日本標準時)、ツイッターを通じて、スターリンクがウクライナで利用可能であると表明した[42]。
スターリンクは、ウクライナの部隊による無人航空機(ドローン)での偵察や攻撃、公的機関や市民による戦況などのSNSへの投稿に利用され、国土防衛戦や国際世論に対する情報・宣伝戦を支えている[5]。
ウクライナでの利用者増加により、スマートフォン用のスターリンク接続システムは同年3月に一時、世界で最も多くダウンロードされたモバイルアプリになった[5]。
〇コンステレーションの設計と現状
初期の設計では、全てのフェーズ1の衛星が1100~1300km程度の高度にあった。
しかしスペースXは最初の1584機の衛星の高度を下げることを要求し、2020年4月には全ての衛星の軌道を約550kmまで下げることを要求した[69][70]。
この変更は2021年4月に承認されている[71
〇衛星
2015年の初期に公開された情報によると、質量100~500kgの小型衛星を高度約1,100kmの低軌道(LEO)に配備することが想定されていた。
実際に、2019年5月に初めて大型展開された60基の衛星の質量は227kg[73]であり、宇宙環境への配慮から比較的低い550kmに配置された[74]。
2015年1月時点の初期計画だと、コンステレーションは約4,000個の協調する[75]衛星で構成されることになっており、その数は2015年1月に軌道上にあった運用中の衛星の2倍以上に及ぶ[76]。
米国連邦通信委員会(FCC)に提出された書類によると、衛星はKuバンドとKaバンドの光衛星間リンクとフェーズドアレイ・ビームフォーミング、デジタル処理技術を採用する予定である[77][78]。
周波数申請の一環としてフェーズドアレイ技術の詳細が開示されているが、スペースXは光衛星間リンクの詳細に関して守秘義務を課している[79]。
初期の衛星はレーザーリンクなしで打ち上げられた。
2020年後半に衛星間レーザーリンクのテストに成功した[80][81]。
衛星は大量生産され、従来の衛星に比べて単位能力あたりのコストが大幅に削減される予定である。
イーロン・マスクは「ロケットにやったことを衛星にもやってみようと思う」[82]、「宇宙に革命を起こすためには、衛星とロケットの両方に取り組まなければならない」[83]、「宇宙ベースのインターネットや通信のコストを下げるためには、小型の衛星が不可欠である」[84]と語っている。
2015年2月、スペースXは、衛星通信市場への新規参入者であることから、参入障壁となる5G通信規制を行う前にKaバンド周波数の将来の革新的な利用法を検討するようFCCに要請した。
スペースXの非静止軌道通信衛星コンステレーションは、「操縦可能な地球局の送信アンテナが地理的に広い影響を与え、衛星の高度が著しく低いと、地上の送信からの集約的な干渉の影響が拡大する」24GHz以上の高周波帯で運用される予定である[85]。
静止衛星を経由するインターネットトラフィックは、理論上の最低往復遅延時間が477ミリ秒(ユーザーと地上ゲートウェイ間)であるが、実際には現在の衛星だと600ミリ秒以上の遅延がある。
スターリンク衛星は、静止軌道の1/105から1/30の高さの軌道を周回しているため、地球から衛星までのレイテンシは25から35ミリ秒程度と、既存のケーブルや光通信網に匹敵する実用的なものとなっている[86]。
このシステムは、「IPv6よりもシンプル」と謳われるピアツーピアのプロトコルを使用し、エンドツーエンド暗号化も組み込まれる予定である[87]。
スターリンク衛星は、軌道の上昇と維持のために、クリプトンガスを用いたホールスラスタを使用している[88]。
クリプトンのホールスラスタは、キセノンを用いた同様の電気推進システムと比較して流路の侵食が著しく大きい傾向があるが、クリプトンのほうが豊富に存在し市場価格も低い[89]。
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