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高山病:高地障害症候群(high altitude syndrome: HAS)/帝京大学救命救急センター鈴木 宏昌

2022-10-30 09:11:24 | 連絡
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帝京大学救命救急センター
Trauma and Critical Care Center,
Teikyo University, School of Medicine
鈴木 宏昌 (dangan@ppp.bekkoame.or.jp)
Hiromasa Suzuki, MD
(Any comments, questions are welcome.)
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診断と治療 Vol.85 増刊号
知っておくべき救急疾患100
責任編集:葛西 猛(亀田総合病院救命救急センター長)
<B. 主要な救急疾患の診断と治療>
4. 大気圧変化による疾患
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日本においても富士山(3776m)を筆頭に3000m以上の山は相当数あり、登山による高山病の可能性はある。
また、交通機関の発展により、2000~3000m級の高度の至る自動車道もあり登山を目的としない観光客が訪れる機会も増えている。
更に、海外の高地にスキーや観光で訪れる日本人も年々増加の一途をたどっており、いわゆる「高山病」にかかるチャンスは増えつつあると言える。
  急速に高い高度に移動することによって起こるさまざまな生体障害を高地障害症候群(high altitude syndrome: HAS)という。
高地障害症候群で重要な病態は次の3つである。
  1. 高山病 (Acute mountain sickness: AMS)

  2. 高地脳浮腫 (High altitude cerebral edema: HACE)

  3. 高地肺水腫 (High altitude pulmonary edema: HAPE)

    〇高地における生体障害の機序
高度が高くなることによって起こる生体への影響は次の2つによる。
  1. 気圧低下による物理的障害 (ALTITUDE-INDUCED DECOMPRESSION SICKNESS) 通常我々が生活している海抜0mでの気圧は1気圧(ATA)であるが、高度が高くなるほど気圧は低下する。急激に気圧が低下すれば減圧症(decompression sickness:DCS)も起こり得る。実際、急激に18000ft(約5500m)に上昇すれば DCS となり得る。こうした気圧低下によるDCSが問題となるのは主に航空機である。通常、現在の航空機は機内の気圧がコントロールされているため DSC の起こることはないが、航空機事故ではその可能性がないとはいえない。また、潜水直後に高い高度に上昇すれば、組織溶在窒素量が多いため低い高度でも発症の可能性がある。
  2. 酸素分圧低下による障害
    気圧の低下が生体に及ぼす最も大きな障害は酸素分圧の低下による低酸素症(hypoxia)である。
    基本原理
     Daltonの法則によれば、全気体の圧力は各混合気体の分圧の和であるから、
      P(t) = P(O2) + P(N)+P(x)
      P(t):全気体の圧力  P(O2):酸素分圧  P(N):窒素酸素分圧
      P(x):その他の気体の酸素分圧
    となっている。高度の上昇とともにP(t)が低下するのでP(O2)も酸素の組成比率(21%)のまま低下することになる。
    たとえば、高度4500mでは気圧はおよそ430mmHgとなり、酸素分圧(PiO2)は80mmHgに低下する。この時動脈血の酸素分圧は52mmHgまで下がり、酸素飽和度は85%を切る。これが高地における低酸素症発生の原理である。グラフは<下記 URL http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~dangan/DATABANK/altitude/highaltitude.htm参照>生理学的反応
      以下の如き生理学的反応が起こらず、異常な反応を示すのが「高地障害症候群」である。
    • 過換気 (hyperventilation)
        酸素分圧の低下により低酸素血症となるとcarotid bodyにより低酸素血症が感知され呼吸中枢(延髄)を刺激して過呼吸が起こる。低酸素症に耐えるためには過換気を維持しなければならないが、過換気により低炭酸ガス血症となり呼吸性アルカローシスとなって呼吸中枢は抑制されてしまう。しかし、健康人では腎からの重炭酸利尿によって呼吸性アルカローシスは代償されpHが維持され過呼吸が続く。こうした呼吸の馴化には4~7日かかるといわれている。acetazolamideは炭酸脱水酵素を抑制しアルカローシスの治療薬として使われる薬剤だが、重炭酸利尿を促進し呼吸性アルカローシスを速く是正するため、この馴化を短縮する。
    • 体液バランス (fluid balance)
        高所に至ると末梢静脈は収縮し、中心血液量(central blood volume)が増加する。これによってbaroreceptorが刺激されて ADH や aldosterone の分泌が抑制され利尿が起こる。呼吸性アルカローシスの代償として起こる重炭酸利尿と合わせ、循環血症量は低下し、高浸透圧血症(290~300mOsm)となる。これが正常の生体反応であり、利尿が起こらず体液貯留が起こることによって「高地障害症候群」が起こる。

    • 循環器系 (cardiovascular responce)
        1回拍出量は低下し心拍数が増加する。心筋自体は低酸素血症には強く、正常心筋は PaO2<30mmHgにも耐える。血圧は、交感神経系が緊張することにより軽度上昇するが、有意な変化ではない。最も重要な心血管系の変化は、肺血管の収縮である。この反応が強いと高地肺水腫(HAPE)へと進展する。また、低酸素血症に対して脳血流は増加し脳圧が上昇する。脳圧の上昇が高山病(AMS)に見られる頭痛や高地脳浮腫の発症にかかわっていると考えられている。

      • 睡眠障害 (sleeping disturbance)
          深い眠り(stage IIIとIV) が少なくなり、浅い眠り (staga I)が増加する。不眠を訴えることが多い。また、こうした睡眠中に無呼吸発作が起こりCheyne-Stokes様呼吸となり低酸素症を助長する。しかし、こうした睡眠中の呼吸異常は必ずしも HAS を意味しない。

    • その他
        高地に至って2時間ほどでerythropoietinは増加する。数日~数週で赤血球数が増加し、酸素運搬能は上がるが血液のsluggingが起こり易くなる。DCSとともに微少血管閉塞の原因となり病態に関与していることが示唆されている。
    • 以下下記URL http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~dangan/DATABANK/altitude/highaltitude.htm
    • 参照


    • http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~dangan/DATABANK/altitude/highaltitude.htm




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