<糖尿病入院加療中金正恩委員長に代わり実妹・金与正氏が表舞台で活躍か>
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<過去駐韓大使から、現役駐韓大使や韓国駐日大使へのメッセージか>
2020.6.9(火)
武藤 正敏(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
「国の将来より左派政権維持に執心の文在寅、そこに付け入る金正恩」
5月31日、脱北者を中心とする韓国の市民団体が、大型風船を使って、北朝鮮の体制を批判するビラ50万枚を北朝鮮に向かって飛ばした。すると、金正恩委員長の実妹・金与正氏が韓国政府を批判する談話を発表。韓国政府に対してビラの散布を中止するよう強い調子で要求した。この一件が、いま韓国と北朝鮮の間のホットイシューになっている。
北朝鮮のビラ散布中止要求とこれに対する韓国政府の対応は、これまで以上に北朝鮮の威嚇に全面屈服するものである。韓国政府は総選挙を前後して、ますます左寄りに傾斜する姿勢を強めている。それは内政で言えば、歴史の見直しによる権力基盤の強化、尹美香氏に対する庇い立ての姿勢に現れている。
これは日本に対し、元徴用工に関連し、日本企業の資産現金化を日本の報復を覚悟してでも実施しようという動きとはきわめて対照的である。
北朝鮮は、金与正(キム・ヨジョン)氏の談話以降、立て続けに韓国に対し圧迫を続けているが、これは北朝鮮の単なる脅しではなく、何らかの意図を持った行動ではないかとの懸念が広がっている。さらに北朝鮮は、韓国に対し日韓離間を促しているようにも思える。北朝鮮は、「尹美香氏を陥れるのは、親日派の策謀だ」との批判をしており、韓国と北朝鮮政府が連携して対日非難を繰り広げる動きにつながる危険性が増していると見るべきだろう。
こうして見てくると、今の文在寅政権は何が国のため重要かではなく、「左派政権を強化するためには何が必要か」を基準にして、政策判断しているように思われる。これは将来の韓国のため非常に不幸なことである。そして、北朝鮮との関係の維持・強化のためには犠牲をいとわない姿勢であることが懸念される。北朝鮮の挑発に理念も原則もなくなびいていく姿勢。北朝鮮はこれをどう受け止めているであろう。北朝鮮のような国は、相手が強力であれば一目を置く国である。それを見境なしに譲歩を繰り返していると、なおさら要求が高まってくることが文政権には理解できないのだろうか。
北朝鮮は、日米韓の連帯を恐れている。まず、元徴用工や慰安婦の問題、戦略物資の輸出規制、GSOMIA終了問題でとげとげしい関係にある日韓を離間させることが彼らの利益にかなうであろう。慰安婦団体の問題での「親日批判」はほんの手始めに過ぎない。韓国の追従、日本との対立を利用してくることが懸念される。
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