【香港の一国二制度の形骸化とともにマカオの伝統を持った二制度も消えていくのか。その先にあるのは、中国政府が現在進めている「大湾区」計画なのかもしれない。】
★習近平政権は毛沢東政権3隣国地域併合に対して、2近接地域=2/3=0.66を軍事・・・制圧併合し(注1)、毛沢東2世政権を目指すか>
(注1)
●モンゴル内部抗争が1949年に内モンゴル自治区生む、毛沢東政権1935年~23年間
https://blog.goo.ne.jp/globalstandard_ieee/e/b420655f2702afa7b00e1abc536bb3e0
https://blog.goo.ne.jp/globalstandard_ieee/e/b420655f2702afa7b00e1abc536bb3e0
●中華人民共和国は新疆ウイグル自治区を併合1949年、毛沢東政権1935年~23年間
https://blog.goo.ne.jp/globalstandard_ieee/e/0c8a90c7e52f5943b5c1df8248955b94
●人民解放軍がラサを占領チベット全土を制圧1951年、チベット自治区、毛沢東1935年~23年間独裁
https://blog.goo.ne.jp/globalstandard_ieee/e/9af180d1f0c66964ea27ed6316f980ae
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2022.1.1 4:32
ふるまいよしこ
フリーランスライター
香港で14年、中国北京で13年半暮らした後、日本帰国。現地で培った人脈と情報網を元に、日本メディアが触れることができない現地情報を発信。特に最近は、主権返還前の香港での体験と知識をもとに変動が続く香港情勢を市民の視点からウォッチしている。
Twitter:@furumai_yoshiko
個人サイト:https://note.com/wanzee/
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ラスベガス以上の収益を誇る世界一のカジノシティー・マカオで、
「新カジノ王」こと太陽城集団のCEOが突然逮捕された。マカオの全カジノの約半分を傘下に収めているといわれる実力者。捕まえたのはマカオ警察だが、黒幕は中国政府ではないかということで、カジノ業界に激震が走っている。(フリーランスライター ふるまいよしこ)
〇世界一のカジノシティーで、「新カジノ王」が逮捕された
香港を訪れたことのある人ならば、マカオにも“ついで”に足を伸ばし、「アジアのラスベガス」で生まれて初めてのカジノ体験をした人も少なくないのではないだろうか。実のところ、マカオの訪問者は年々増加し、
2006年にマカオのカジノ売り上げは、本場ラスベガスを抜いて世界一になった。
そんなマカオのカジノ業界にいま大激震が起きている。ここ10年ほどで
太陽城集団(サンシティー・グループ)を業界売り上げのほぼ半分を握るまでに育て上げ、「新カジノ王」と呼ばれていた周焯華(アルヴィン・チャウ)CEOが11月末、マカオ警察に違法賭博営業とマネーロンダリングの容疑で逮捕されたのである。
太陽城集団は、マカオでのカジノ運営の他、そこから派生する形でホテルやレストラン、レジャー施設の運営や旅行ビジネス、金融や高級品店、さらには映画製作や配給に芸能人マネジメントと、娯楽関連業界で手広い業務を展開する、香港株式市場上場企業である。
特にカジノについてはマカオにあるカジノ41店、合わせて約6000テーブルのうち、すでに50%近くが太陽城集団の傘下にあるといわれる。
日本でもカジノ解禁が声高に論じられていたころ、太陽城集団も進出の準備を進めていたとされる。
そのトップが突然逮捕されたのだから、マカオ・香港の娯楽業界に衝撃が走った。
〇中国の検察院が「逮捕を認めたという声明を発表」した
予兆はあった。逮捕前日にあたる26日、中国浙江省温州市の検察院が「犯罪容疑者周焯華を首謀者とする越境賭博犯罪グループ」の逮捕を認めたという内容の声明を発表していたからだ。そう、それは「逮捕状を出した」ではなく、公開声明という奇妙なものだった。
さらに、それを受けて同市公安局のSNS公式アカウントが、周CEOを名指しして「早期に自首して寛大な処理を受ける」よう「呼びかけ」た。なんともモヤモヤする歯の奥になにかが挟まったような話ではあったが、「相手がマカオ人だからだろうか?」と臆測が広まっていた。
マカオも香港と同じように、原則は一国二制度下にある。このため、原則上は中国国内の公安が直接マカオに乗り込んで逮捕することはできないとされてきた(香港よりもずっと早くから中国化を受け入れてきたマカオゆえ、あくまでもカッコ付きであるが)。
そのため、今回のマカオ警察が周CEOを逮捕したのは、温州市公安局の意向をくんだ代理逮捕なのではないか?という声も上がった。しかしマカオ警察はそれを否定し、あくまでもマカオ当局によるこれまで2年間の捜査の成果であり、周の容疑はマカオにおける違法行為であると強調した。
〇中国国内で稼いだ金が香港&マカオに流れ込む
マカオでカジノが合法化されたのは1847年と古い。1999年にその主権がポルトガルから中国に返還されてからも、マカオは中国全土で唯一、カジノ運営が合法とされてきた。
中国が豊かになり、香港やマカオとの往来が以前ほど厳しくなくなると、どっと中国から観光客が押し寄せるようになった。香港ではブランド商品や高級品の“爆買い”や不動産購入が話題になる一方で、マカオでは当然ながらカジノが人気アトラクションだった。
そして、中国国内で稼いだお金を持ち込んで財テク・あるいは海外資産化するための手段として、「表(不動産や投資)の香港、裏(カジノ)のマカオ」ともいわれるようになった。
だが、2013年に習近平政権が誕生し、通称「ぜいたく禁止令」が発令され、汚職の取り締まりも厳しくなって、以前ほど派手な資金持ち込みや爆買いはできなくなった。
それでもやはり、香港での不動産投資、そして保険加入という形での資産移転の手段は尽きなかったし、同様にマカオを経由したマネーロンダリングはその手段がさらに巧妙になっただけで、途絶えたわけではなかった。
〇愛国派のイメージが強かった周CEO
過去の報道を調べてみると、昨年7月にも周CEOが太陽城集団の中国国内でのマネーロンダリングや2019年の香港デモを資金支援した容疑で取り調べを受けたというウワサが流れて、同集団株が急落している。
このとき、周CEOは動画で声明を発表して、同グループのマカオでの観光、カジノ事業は完全に合法的なものだと強調し、ウワサを全面否定した。
さらには、香港デモ支援のウワサに対しても「自分は愛国者であり、国家に危害を与えるいかなる行為を支持することは絶対にない」と断言している。
その言葉はある意味、これまで一般社会が周CEOに抱いていたイメージそのままだった。というのも、太陽城集団傘下の娯楽文化企業は、2016年に中国で公開された国威発揚映画「メコン川行動」、そして2018年の「紅海行動」に出資している。
その内容は、前者がタイのメコン川流域、後者は中東を舞台にし、どちらも中国から派遣された特殊部隊が現地テロリストグループを壊滅させて、人々を救うという、昨今の中国で大ウケするタイプの作品で、堂々とそんな作品を作ること自体がすでに「愛国派」だとみなされる行為だったからだ(ただし、今回の逮捕後、作品配給会社は周CEOらの出資を否定する声明を出している)。
「愛国者」イメージはただの隠れみのだったのか、それとも「愛国者」ですらも許されない罪を犯したということか。それとももっと深い理由があるのか?……一部ではギャンブルに負けた者の腹いせではないかなどと、今回の逮捕をめぐってさまざまな議論が飛び交っている。
〇上客向けカジノルーム「貴賓庁」運営で稼いでいた
ところで、マカオではカジノ経営はマカオ政府のライセンス発給制度の下で行われている。現在そのライセンスを持っているカジノ経営者は、
初代「カジノ王」の故スタンレー・ホー氏が設立したSJM(澳門博彩)、ウィン・マカオ(永利)、ギャラクシーカジノ(銀河)の3地元資本に加え、米国のラスベガス・サンズ、同MGMグランド、さらにマカオとオーストラリアの合弁「新濠」(経営者はスタンレー・ホーの息子)の6社である。
ご覧の通り、太陽城集団はこの6つの中にはない。
太陽城集団のカジノ運営はこれら6社とは別の「カジノ仲介」といわれる業務スタイルで、6社のうち主にマカオ資本カジノと契約を結んで、そのカジノの一角や傘下のホテルなどで賭場ホールを運営するというものだった。売り上げの一部をライセンス所有カジノに上納するが、すべて独立採算制で顧客の誘致も自分たちが担当する。ライセンスカジノ側とは「持ちつ持たれつ」の関係をとる。
太陽城集団はこのカジノ仲介で、上客向けカジノルーム「貴賓庁」を運営しており、その顧客のほとんどは中国人だ。そこでは、資金を貸し付けてギャンブルを楽しませる「ジャケット」という業務を展開していた。
負けて負債を抱え込んだ顧客を「株主」や「会員」という名称で招き入れて、新規会員誘致の任務を与えた。つまり、借金と引き換えに自分の貴賓庁を売り込ませるのだ。その結果、太陽城集団貴賓庁は中国国内に「株主」約200人、「会員」8万人を抱えるまでに成長したとされる。
同時にフィリピンやカンボジアで取得したカジノライセンスを利用して、オンラインカジノを展開。オンラインカジノなら貴賓庁内だけではなく、中国国内にいながらにして顧客はギャンブルを楽しむことができた。
だが、マカオでは他国のカジノライセンスを利用した営業は禁じられており、これがマカオでの逮捕の直接の理由となった。
さらに中国国内の報道によると、その「貴賓庁」と「オンラインカジノ」ビジネスでは、周CEO個人が所有する金融会社を通じて金銭の貸し借りをする形で、顧客たちの賭け金の一部を暗に海外資産へと転換、海外持ち出しが図られていたという。
温州市当局の逮捕状はこの容疑に対するもので、先の声明によるとすでに中国国内で「業務を展開」していた周CEO傘下の金融会社の関係者ら11人が逮捕されている。
「カジノ仲介」ビジネスは故スタンレー・ホーが考案し、1980年代に始まった。同時に彼は政府に働きかけて、万が一仲介事業者と顧客との間にトラブルが発生しても両者間の問題とみなし、ライセンスカジノ事業者に波及することはないとする法律も制定されている。
つまり、周CEOが逮捕されても彼と契約を結んでいた大手カジノ運営者が連座させられてその法的責任を問われることはないことになっている。
事件後に太陽城集団は貴賓庁業務の全面中止を発表したが、影響はそれだけにとどまらなかった。その他の仲介業者や大手カジノがそれぞれ運営していた貴賓庁も、その後業務の一時中止に追い込まれている。
〇貴賓庁ビジネスが停止したら、マカオGDPの4分の1が消失する
これはマカオにとって大打撃である。というのも、新型コロナ大流行前の2019年の統計では、カジノ関連収入はマカオ政府収入の8割以上を占め、さらにマカオGDPの半分以上を支えている。
貴賓庁ビジネスはさらにそのカジノ売り上げの約5割を占めており、貴賓庁ビジネスの停止によって政府収入の4割とマカオGDPの4分の1がそのまま消失することになってしまうからだ。
また、カジノ、それも大金を落とす上顧客の受け入れができなくなれば、観光や交通など関連事業への影響も甚大である。
特に周CEO傘下の太陽城集団は前述したように貴賓庁ビジネスの半分を握っており、一説にはマカオ市民が手にする1万マカオ・パタカのうち3000パタカは太陽城が稼ぎ出したという言説も存在するくらいの存在感なのである(編注:カジノ税という潤沢な財源があるマカオでは、富の還元などを理由に、毎年マカオ市民に1万パタカを支給している。日本円換算で約14万円)。
カジノ事業を「悪」とみなす人たちは事件を笑って見ているが、真剣にマカオの未来を考える人たちは、経済不安、雇用不安を口にする。
マカオは「大学や大学院を出ても、マカオにはディーラーの仕事しかない」といわれるほどカジノ業界に頼り切りの社会であり、それが今回の事件で収縮していくとなると、多くの人たちが一挙に職を失うことになるからだ。
〇周CEO逮捕、中国政府の狙いはマカオのカジノつぶし?
今回の「新カジノ王」逮捕の本意は「中央政府による確固たるカジノつぶし」にあるという声もある。香港の一国二制度の形骸化とともにマカオの伝統を持った二制度も消えていくのか。その先にあるのは、中国政府が現在進めている「大湾区」計画なのかもしれない。

「大湾区」計画は、香港、マカオの特別行政区とともに、広東省内の経済的に豊かな深セン市や広州市など11都市を連携させ、大規模経済圏をつくるという大計画で、現在、急ピッチで進められている。
経済や人的往来の自由化のみではなく、将来的には法制度もすべて相互流通を目指すことをうたっている以上、マカオのカジノ経済は中国政府にとっては「余計なもの」であることは間違いないだろう。
香港やマカオというそれぞれ特色ある都市が今後間違いなく巻き込まれていくことになる「大湾区」計画については、今後また改めて紹介していこうと思う。
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