例によって 長いです
1月10日木曜日、水道橋にある宝生能楽堂へ毎年定期的に行われている野村狂言座を観に行ってきました。
実はさまざまな事情で行く予定ではなかった狂言座、当然チケットも取っていなかったのですが
やはり狂言が好きで私よりずっと前から狂言観賞されていた日頃からお世話になっている知り合いの方が
予定が重なり行けなくなってしまったからとチケットを譲ってくださったのでした。
そんなわけで急遽うにまいすさんを誘って今年初めての狂言観賞、しかも最前列
年初めは地方公演が多いので東京での公演もこれが初めてということで、
演目もお正月に絡めた祝言性の濃い内容のものでした。
まずは狂言座では初めての解説を仰せつかった、と普段狂言を演じている姿からは想像できないくらい
緊張されていた深田さんの解説。
あれだけ場数を踏まれている方でも解説となると緊張されるんですねぇ(^^;
素囃子 「男 舞」
狂言
「鍋 八 撥」(なべやつばち)
■鍋 売 高野 和憲
■羯鼓売り 中村 修一
■目 代 竹山 悠樹
あらすじ
所の目代が新しく市場を立てるので、一番乗りした者を、その市場の代表(市司いちのつかさ)とする高札を出した。
市場の代表になると、当然商品を一番良い場所に置くことが出来るほか、万蔵公事(税金)が免除がされるという。
夜明け前、まず羯鼓売りが現れて一の店に着くがまだ朝までには時間があるのでそこで一眠りしていると、
一足遅れた浅鍋売りがやってくる。
浅鍋売りは 「ややっ!!先を越された!」と悔しがるが都合のいい事に相手は眠りこけている。
抜き足差し足忍び足で一番乗りのふりをして羯鼓売りの前に陣取って眠り始める。
一番乗りをした羯鼓売りは目を覚まして自分こそが一番である、と諍いになる。
そこで目代が現れ仲裁に入るも、お互い一歩も譲らない。
それでは、と目代は二人が勝負をして勝っている方に市司にしようと提案。
「では棒を振って見せましょう。」と羯鼓売りが羯鼓を括りつけていた棒を勇ましく振る
次は鍋売り。・・といわれても棒がない。
「棒を貸してくだされ」とお願いするも、「自分の持ち物でせい」と言われ已む無く「浅鍋」を振り回す。
次は羯鼓売りが羯鼓を打ちながら舞う。
撥のない鍋売りが、羯鼓を借りようとしてもやはり「自分の持ち物でせい」と言われ、
仕方なく「浅鍋」を胴に括りつけて舞おうとする。
そうしてわざと意地悪をする羯鼓売りに悔しさ隠せない鍋売りだが、スマートな羯鼓売りの芸を盗み見ながら
それを真似る浅鍋売のぎこちない動きに大笑い
最後は身軽な鞨鼓売りが囃子に合わせて身軽に水車返り(側転)をしながら舞い興じるが
負けじと鍋売りも真似をしてみるが、どうもイケてない。
そのうち胴に括りつけた浅鍋が自分の下敷きになってしまってとうとう割ってしまうが「数が増えてめでたい」と終わる。
高野さんの鍋売の動きがどうにもどんくさくて、でも愛嬌があって、ほんとに面白かった
羯鼓売りの中村君、本当に水車のようにくるんくるんと回りながら幕に入っていきました。お見事~
「素 袍 落」(すおうおとし)
■太郎冠者 石田 幸雄
■主 内藤 連
■伯 父 野村 万作
あらすじ
突然伊勢参宮を思い立った主人は、召使いの太郎冠者に、かねてからその約束をしていた伯父に知らせるように言い付けます。
急なことだったので、伯父はこの度は参宮を断ることにするが供をする太郎冠者を察して
好きな酒をたっぷり飲ませてやります。
次第にいい気分になっていく太郎冠者、自分に優しくしてくれる伯父を褒めちぎり、
逆に主人の悪口を言って、意見をしてくれるように頼みます。
伯父は餞別に素袍をやろうとしますが、太郎冠者は主人から土産の心配をしなくてはならなくなるから、
餞別を貰わぬようにと言われていました。
伯父は、伊勢についてからそっと出して着て自分の名代として参詣してくれればいいのだと言い含め、
太郎冠者は喜んで、伯父やその家族に土産を約束し、素袍をもらって帰ります。
あまりに太郎冠者の帰りが遅いので様子を見に来た主人は、すっかり飲み過ぎて千鳥足で戻って来る太郎冠者を見つけます。
いいご機嫌で謡を謡っているうちに、素袍を落としてしまう太郎冠者。
拾った主人は懲らしめのため隠してしまいます。そうとは知らず、太郎冠者は必死になって素袍を探します。
何年か前に初めて私が観た狂言が素袍落だったのですが、今の方がより笑えて楽しめました~。
太郎冠者の酔っ払いっぷりが「あ~、こういう人居るいる!」と言いたくなる、
まぁ、いつの世も酔っぱらいは同じだったんだなぁ、ということですかね(^^;
さて最後の演目「業平餅」でいよいよ萬斎さま登場です。
「業平餅」(なりひらもち)
■在原 業平 萬斎さま
■傘持ち 万作さん
■餅 屋 深田 博治
■沓持ち 月崎 晴夫
その他大勢
あらすじ
在原業平が、和歌山にある玉津島詣に行く途中、休憩した餅屋でもちをすすめられる。
しかし業平は金の持ち合わせがない。というより浮世離れしているのでそもそもお金を払って
何かをするという意識がない。
餅屋に「餅を食べたければお足(代金)を・・・」と言われて自分の足を見せて
そうではなくて料足のことだと言われるとさらにさらに自分の両足をみせてしまったり
世間知らずを通り越してちょっとイタイ人なんですがこれを萬斎さまが演じるとお茶目でチャーミングに
なってしまうんですよ、これがまた
そんな業平様ですがそこはかの有名な平安の歌人、金の代わりに和歌を詠むと言い、
小野小町の雨乞いの和歌を読んで餅のいわれを語る。
しかし主はそれでは餅は食わせないと言う。
そこで今度は餅づくしの和歌をうたう。
(もう、餅が食べたくて食べたくて仕方ない(笑))
ところが亭主は男がかの在原業平だと知るや、娘を都で奉公させたいと言い出して、
娘をつれてくるといって引っ込む。その隙に餅を盗み食いした業平は餅を喉につまらせてしまう。
餅を喉につっかえて恥を晒した業平だが、若い娘がでてくると生来の女好きが顔を出して
妻にしようかなどと言い出す。
そこで餅屋も一応娘の顔を確認したほうがよいのでは(父親まで!
)、というが業平は「見ずともわかる
」と
女好きのお調子者全開。
ところが娘の顔を見てみるとかなり・・・いやとんでもなく残念なわけで。
その時の萬斎業平の表情がおかしくておかしくて、でも狂言だからおもしろいけど
現代ならかなりひどいセクハラですよ(^^;
そこであわてて傘持ちに「たしか嫁を探していただろう」と押し付けようとするが、傘持ちも顔を見てびっくり仰天。
「すでに知人に紹介された人がいて祝言の約束の盃も交わしたので無理!」と逃げ腰。
でも娘は「業平さまぁ~~~
。」と言いながら業平と傘持ちを追いかけ、二人は逃げる。
業平餅、前から観たかったんです。
舞台には業平様の他、大勢のお供が登場しますがお正月らしく萬斎さまの装束もお供の装束もとても煌びやか
美しい萬斎さまがより一層美しく輝いて見えました
今年初の狂言会
、「笑う門には福来たる」今年もたくさん萬斎さま見て
たくさん笑いがあるといいな~