奥武蔵の風

11 わが庭の弱肉強食の衝撃

 散歩に出かける時は、小さなデジカメを持って何かしら目に留まった物を写すようにしているのですが、時には、わが家の狭い庭にもシャッター・チャンスの訪れる機会があります。

 弱肉強食というと、以前は、ライオンが草食動物を追いかけて食らい付き 肉を貪(むさぼ)るといった、実際には見たことのない映像上のアフリカの草原シーンが、ワンパターンのように思い浮かんだのですが、ある時、庭でセミがカマキリに捕食されるシーンを目撃した瞬間から、弱肉強食のイメージはぐっと身近になりました。

 それまで金木犀(キンモクセイ)の幹で普通に鳴いていたセミが、突然、ジジジッ、ジジジッと異常な声を出したので、何事かと近づくと、カマキリに捕(つか)まっていたのです。セミはバタバタと必死に羽ばたくのですが、カマキリの前脚はしっかりとセミを抑えつけています。

 一瞬、「かわいそうだな」という思いが頭をよぎりましたが、よく見ると、どこにいたのか、もう一匹の小さなカマキリがセミを抑えにかかりました。何という見事な連携(れんけい)プレー! 冷静に観察することにして急いでカメラを構えたのですが、セミはとうとう目の前で力尽きてしまいました。衝撃(しょうげき)でしたが、この時 思ったのは、「ああ、このセミの生命(いのち)はカマキリに引き継がれていくのだ」ということでした。

 二度目の衝撃は、トカゲがミミズを丸呑みするシーンを目撃した時です。ほんの数分のできごとでしたが、この時も「ああ、ミミズの生命がトカゲに引き継がれていく」という思いがしました。

 弱肉強食というと、つい「残酷(ざんこく)」というイメージが伴いがちですが、弱者の生命が強者の生命を支え紡(つむ)いでいく食物連鎖の別表現であり、「動物界の生命の無限の繋(つな)がり」にほかならない、という大切な真実を、実地に教えられました。

 蛇足を承知で言えば、動物は自分が食する以上には、けっして殺生(せっしょう)をしません。ひきかえ、人間は、食する以上に不必要な殺生を繰り返し、人間同士の間でも殺し合いをしています。人間の何と恐ろしく残酷なことでしょうか。

(以下の写真は、残酷、気持ち悪いとお感じの方がいるかもしれません。閲覧にご注意ください。)

 

(写真上)©緑の大きなカマキリがセミを捕らえました。セミはもがいて動き回りますが、カマキリは離しません。

(写真上)©どこにいたのか、もう一匹の灰色の小型カマキリが加勢します。

(写真上)©2匹の連携による上下からの攻撃。セミはもうなすすべがありません。合掌

(写真上)©トカゲがミミズを見つけました。ミミズは土の中に潜(もぐ)ろうとしますが、トカゲは食いついて引っ張り出します。

(写真上)©頭から丸呑み。ミミズは必死に逃げようとしますから、胴が棒状に伸びてしまいました。

(写真上)©ほとんど呑み込まれてしまいました。合掌

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