奥武蔵の風

37 海底火山の痕跡:摩利支天神社

(前回からの続きです)

 「埼玉県に火山はありませんが、海底火山の痕跡(こんせき)が日高市にはあるんです。」

 え? 地質学の専門家の説明に、おもわず耳を疑いました。

 「地質の宝庫」と言われる秩父が、太古は海底だったという知識はあります。だとすれば、たしかに、ここ奥武蔵も海底だったわけですが、それにしても、海底火山の痕跡が市内にあるとは、初耳です。

 「では、これから、そこへ向かいましょう。」

 ワクワクしながら、案内された二つ目の目的地は、何と「摩利支天(まりしてん)神社」でした。摩利支天神社は、巾着田より上流の高麗川の岸辺の絶壁の上に鎮座する小さな神社です。以前にも訪れたことがある場所ですが、この神社の下の断崖の岩盤が、海底火山の溶岩なのだとは。

 境内の脇の細い急な石段を下って、崖下の川原で、解説を聞きました。ここは、対岸から見下ろすと、高麗川の流れが岩盤にぶつかって大きく向きを変える絶景ポイントでもあります。

 目の前の岩盤は、「秩父帯の地層」に残された海底火山の噴火痕跡で、「枕状(まくらじょう)溶岩」と呼ばれる貴重な地形なのだとか。これだけ完全な形状で見られるのは珍しいということで、目下、天然記念物の指定を目指しているとのことでした。

 灯台下 暗し。新しい発見でした。あらためて摩利支天神社にお参りし帰路につきましたが、学ぶことの多い 実に有意義なイベントでした。

 

(写真上)© 断崖上の平地の突端に鎮座する摩利支天神社。境内は地区の子どもたちの遊び場にもなっているようです。

(写真上)© 神社縁起の説明版。小さくも 500年以上の歴史がある神社です。

(写真上)© ここは高麗川の絶景ポイントの一つ。左の岩盤が海底火山の噴火溶岩の露出部。川の流れは、右奥(上流)からいったん左の岩盤の奥へ向かい、岩盤を回りこむようにして手前に向かってきます。神社は、この岩盤の最上部の平地にあります。

(写真上)© 学名「枕状溶岩」。特に、左の放射状の裂け目ができた枕状溶岩は、きわめて貴重だそうです。

(写真上)© 溶岩の上に大小の噴石が落下して、そのまま埋まった痕跡もはっきり。

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