奥武蔵の風

50 清明上河図

 4月5日は、二十四節気の一つ「清明」。

 今から900年近く前の北宋の都「開封」( 現・河南省開封市)の、清明節の頃の情景を描いた壮大な細密絵巻が「清明上河図」です。

 若い頃、ハルピンにある黒龍江省博物館のミュージアムショップで、この「清明上河図」の一品物(いっぴんもの)の模写図を購入して以来、私は、この絵巻図の虜(とりこ)になってしまいました。

 本物の原画は、中国の国宝中の国宝として、北京の故宮博物院に収蔵されています。常設展示品ではありませんから、北京へ行ったからといって、いつでも見られる代物ではありません。(ちなみに、清明上河図と題する絵巻図は複数種類あるようで、たとえば台北の国立故宮博物院にも別の原画(本物)があるとのことですが、こちらも常設展示品ではないようです)。

 ですから、2012年の年初に、東京国立博物館の特別展「北京故宮博物院200選」の目玉として、門外不出だったこの絵巻図が出展された時には、4時間待ちの行列に耐えて、間近に目を凝らし、細部まで鑑賞して感動を味わいました。(この時、自分が大切にしている自慢の模写図が、本物に比べて余りにも稚拙で、がっかりしたのも事実です。本物は、想像をはるかに超えて写実的かつ細密でした)。

 しかし、その年の9月に政府が尖閣列島を国有化すると、日中関係は悪化の一途をたどるようになってしまいました。

 今後、パンダが日本へ来ることはあっても、「清明上河図」が日本へ来ることは、もう二度とないだろうな、という気がします。

 模写図を開くと、ハルピンの思い出と、東京で本物を見た時の感動が、懐かしくよみがえります。と同時に、戦争を繰り返さないためにも、両国間の友好を保つことが不可欠であると、強く思わざるを得ません。

 

(写真上)© 「清明上河図」絵巻。模写図ですが、特製の専用桐箱に保管しています。 

(写真上)© 絵巻図の始まり。模写図だけにある表紙で、原画にはありません。

(写真上)© 絵巻図の部分。細密な印象ですが、本物は息をのむほどです。

(写真上)© 同上。

(写真上)© 人物群の拡大。本物は、一人一人が、表情豊かに、もっと生き生きと描かれています。

(写真上)© 模写絵巻の最後の部分。こうした「書」(文章)も、模写図だけに付けられたもの。模写図は「書」の分だけ本物より長く、全長約8メートルあります。

(写真上)© 清明上河図を描いたガラス工芸作品の屏風。表側。

(写真上)© 同上、裏側。

(写真上)© 東京国立博物館「北京故宮博物院200選」(2012年開催)記念グッズ。図書、一筆箋と絵葉書。

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