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山陽バスの均一区間値上げ申請の真相は?

近畿運輸局公式サイトの「道路運送法施行規則等の規定による事案の公示の掲載について」のページに、2024/1/16付で管内の2バス事業者から申請された運賃の上限変更認可申請が公示されています( 近運自一公示第27号)。

https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000314989.pdf ※一定期間終了後削除されるはず

事案番号1は京阪京都交通で、2024/1/17付ブログ記事「京阪京都交通の亀岡・南丹市内一般路線は2024年初夏に値上げへ」で触れた通りです。

そして事案番号2は山陽バスで、神戸市垂水区内および明石市内の均一区間制運賃の上限を210円から240円に引き上げるものですが、このブログ記事を書いている時点の山陽バス公式サイトには本件に関する情報は見当たりません。それどころか、該当する路線を運行する同社の垂水営業所に問い合わせても「そんな情報は現場に下りてきていない」とのことでした・・・

この申請ですが、神戸市交通事業審議会が2023/11/21に答申した「神戸市交通事業の中長期的な経営基盤強化に向けた方向性について(答申)」と関係がある可能性があります。

神戸市交通局の運営する地下鉄・市バスはいずれも厳しい経営状況に置かれており、経営基盤強化のために今後展開すべき施策の方向性を提示しています。市バスに関しては、資料の20ページに以下の文言があります。

市バス事業において、2032(令和 14)年度時点の累積資金不足額は経営計画策定時から 128 億円程度悪化しており、単年度に換算すると約10 億円に相当することから、これを短期間で健全な状況に戻し、単年度収支黒字化を当面の間継続し安定的経営を見込むという観点とともに、他事業者の運賃改定後額との整合の観点等から、現状で想定される前提のもとで算定すると、少なくとも 30 円程度の改定を行うことが必要ではないか。

また、本審議会が運賃改定不可避と考える理由の一つとして神戸市交通局だけではなく、エリア全体の公共交通の維持可能性についても考慮に入れるものである。近隣の民間バス事業者は順次運賃改定を発表してきているが、神戸市域においては二重運賃がもたらす混乱も考慮し、神戸市バスの改定待ちとなっている事業者もいると仄聞している。こういった状況は公共交通の健全性確保の観点から疑問視せざるを得ない。

実際に、本ブログでこれまで取り上げたとおり、2023年後半に運賃値上げを行った阪急バス・阪神バス・神姫バスはいずれも神戸市内の市バス均一区間に相当する路線の値上げを行えておらず、少なからず減収につながっているわけです。そして、山陽バスのメイン事業である神戸市垂水区内<一部明石市に乗り入れ>の一般路線はほぼ全線が均一区間制運賃に該当し、さらにその半数以上(JR舞子駅発着路線は全線)が神戸市バスとの共同運行のため、同社単独での運賃値上げの実行は不可能です。

https://www.sanyo-bus.co.jp/route/pdf/tarumi_maiko2023-1.pdf

したがって、山陽バスは経営レベルで「まずは30円分の上限運賃引き上げの申請のみを先行して行い(実施運賃は据え置きのまま)、上記答申を踏まえて神戸市バスが値上げを申請した後、実施運賃を市バスに同調した運賃に同日付で引き上げるべく運輸局に届け出る」というシナリオを描いている可能性は十分ありますね。神戸市交通局ともども、今後の動きに注目です。

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