ROLEXの謎

腕時計にはまったく興味の無いわが家に、ひとつだけロレックスがあり
ます。今日は、このロレックスの話をします。

数年前、ある時、父が、

　「もう長年使っていないし、これからも使うつもりは
　　ないから、お前にこれをやる」

と腕時計をくれました。パッと見たらロレックスです。
ロレックスくらい、時計に興味の無い私でも分かります。

ただあまり興味も無く、一度も使わないままでした。


少し前、自分の持ち物の整理をしていて、久し振りにそのロレックスを
目にしました。

何気なく、時計の裏側を見ると、

　　 　　２５ Jahre
　　 １９６７－１９９２
Ｆ．Ｗ．Schrecker

と文字が刻んであります。

『シュレッカー』というのは父の長年のビジネスパートナーだった
スイス人です。そうだったんです。このロレックスは１９６７年に
父との付き合いが始まって、１９９２年に２５年目の記念として
シュレッカー氏が父にプレゼントしたてくれたものだったんですね。

だから、父は私に承継させたかった。


実は、私も、シュレッカー氏から腕時計をもらったことがあります。
私は、ロレックスではなく、Bucherer というブランドのものです。

　　　　　　　　

もらった当時、誰だったか忘れましたが、当時の映画の主人公がはめて
いるのと同じモデルだと言って、プレゼントされたことを憶えています。

そこでこの機会にBuchererなるブランドを調べてみると、日本では
ブッヘラーと呼ばれていて、スイスの超有名宝飾店です。スイス国内
最大のロレックスの代理店でもあり、ロレックス創業時からロレックス
とはとても親密な関係です。
その後、自社ブランドの腕時計も発表。本社はスイスのルツェルンとの
こと。

これで合点がいきました。ルツェルンとはシュレッカー氏の住まいがあり、
以前わが社の欧州の現地法人ＩＳＯＷＡ ＡＧがあった街です。

　「そうか、お父さんも、シュレッカーからもらったのか」

何だか歴史の謎がひとつ解けたような気分でした。


ところが父からもらったロレックスにはもうひとつ謎がありました。

時計の大きさがとても中途半端なんです。
男物にしては小さいし、女物にしては大きい・・・
おまけに時計が古いせいか、リューズが固まって、まったく巻けない
のです。
もちろん長年使っていないので、時計は動いていないので、電池を
交換しなきゃいけないのだろうけど、リューズが動かないってことは
壊れているんだろうか？

一度、時計屋さんに持っていって、見てもらわなきゃ・・・と思って
いました。


そんな折、先日岡山へ出張する時、普段はほとんど腕時計をしませんが、
その日、同行してくれることになっていた大阪営業所のＹ君は大の
腕時計好きで、いつも、

　「社長、いい時計してくださいよ」

と言われています。だからたまにはBuchererを付けていって、私だって
腕時計くらい持っているぞってところを見せ付けてやろうとしました。


岡山駅で合流したら、案の定、Ｙ君、

　「社長、今日は珍しく腕時計してますね」

って気付きます。まったく目ざといヤツです。

そこでBuchererブランドの説明をしてやりました。

そのついでに、

　「ひょっとしたらＹくんなら、父のロレックスの謎について
　　何か教えてくれるかもしれない」

と思って、

　「そういえば、顧問からもらったロレックスがあるんだ」

と、切り出した途端、

　「知ってます。ロレックスのボーイズ　コンビです。
　　ちょっと小ぶりで、金と銀の２色使いのモデルです」

　「何でそんなことまで知ってるの？」

　「だって昔顧問がその時計をしていたのを憶えていますから。
　　それを見た当時の名古屋営業所長のＮさんが、

　　　『アレいいな～』

　　と、顧問と同じモデルを買ったんですよ」

　「え～、それホント！？」

驚きました。息子の私より、父のことをを知ってるじゃないですか。

さらにＹくんから、

　「ロレックスにはメンズ、レディースの他にボーイズという
　　中間のサイズがあります。メンズだとサイズが大きいので、
　　目立ちすぎるのが嫌という人用にボーイズというサイズが
　　あるんです」

とか、

　「電池で動いてるんじゃありませんよ。
　　自動巻きですから、腕にはめていれば動きます。
　　リューズは固まってるんじゃなくって、ネジ式になって
　　いるので、まずリューズのネジを緩めて下さい。
　　そうすれば時間設定などできます」


帰宅して、早速確認したら、Ｙくんの言う通りでした。


それにしても、Ｙくんの腕時計観察眼には恐れ入りました。
私以上に、わが家の持ち物に詳しいなんて・・・

これからはこの観察眼を営業活動にもっと活用してね。


Ｙくんのおかげでロレックスの謎が解けました。
ご教授頂き、ありがとう。