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大学から年に4回、季節ごとに送られてくる広報誌『HQ』。
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毎回、大学の先生が推薦する本が紹介されるコーナーがありますが、
夏の号に、
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『法服の王国』という本が紹介されていました。
法学部の先生が、「戦後司法界の内側を描くお勧めの一冊」と、高く評価
しているし、そもそも『法服』って何っていうくらい、裁判官のという
まったく知らない世界に興味がそそられて、読んでみることにしました。
当たり前のことと言えばそうなんですが、最初に感じたのが、
「裁判官って公務員だったんだ」
ということです。だから裁判所も役所であり、すべてがとても保守的なん
ですね。
そして裁判官って、ものすごく、ものすごく忙しいんですね。
寝る間を惜しんで、訴状や資料を読み、判決文を書く。
だから裁判官の人事評価も、訴訟の処理件数が評価項目になるんです。
そして処理件数を増やすには、判決文を書かなくてもいい 和解 に
持ち込む技量が求められる。
また三権分立とは言うものの、最高裁長官は内閣が指名するし、それ以外の
すべての裁判官は実質的には最高裁長官を頂点とした組織によってポストが
決まるので、結果的に司法は時の内閣に支配されているんですね。
だから同じような構造の検察が起訴した事案にできるだけ『有罪』判決する
裁判官が「優秀」という評価になるんです。
純粋に判決を下そうとすればするほど、裁判官組織での評価は下がり、
地方のそのまた支部の離婚訴訟や詐欺事件などばかりを担当するように
なり、憲法判断を求められる、自衛隊や一票の格差、薬害訴訟などの
大型事案を担当できるのは、国家権力を支持するような判決を出している
裁判官ばかり。
こんな話を読んでいたら、
「裁判って実に不公正なんだな~」
と空恐ろしい気持ちになり、私の中での裁判の信頼性は大きく損なわれ
ました。
またこの小説の大きなテーマが原発の安全性でした。
全国各地で展開していた原発差止め訴訟で実際に原告住民側が訴えて、
それに対して各地の電力会社、地方自治体が反論していたことが、実際に
東日本大震災で起こってしまったということを知って、本当に驚きました。
福島第一原発の1号機が水素ガス爆発したところでこの小説は終わって
いるけど、それまでに「原発は絶対に安全」と運転差止め請求を棄却した
裁判官たちは、この事故の報に接し、一体何を思い、悔いたんだろう?
戦後の司法の闇の部分を、小説とはいえ、登場人物のモデルもいて、ノン
フィクションに限りなく近いフィクション。
日本の近代政治史の勉強になったし、勝手に「崇高な世界」と思い込んで
いた司法の世界の実態の一端を知ることもでき、とても興味深く、それで
いて面白い作品でした。
私は直接知りませんが、推薦してくれた 渡辺先生に感謝しています。
原発の技術的な部分はすっ飛ばしても、ぜひ読まれることを
お勧めします。
裁判官もサラリーマンだってことがよく分かりますよ。
読んでみたいと思った作品です。
まさか上下巻あるとは……うーむ、また
悩みそうです(笑)