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さて、トヨタの24時間耐久レースの前に、水素エンジン車と水素燃料電池車の
違いを知ったのは、この直前に、たまたま読んだ 私の大好きな楡周平さんの
『デッド・オア・アライブ』でした。
他の楡さんの作品同様、この作品も、そのまんま経営戦略のケーススタディの事例の
ような内容でした。
主な登場人物(組織)は4社。
①環境の変化に対応できず、業績不振を粉飾していたことがバレ、数少ない好業績
部門を海外メーカーに売却し、残ったのは非採算部門だけというこれまで日本を
代表していた総合電機メーカー
②車のEV化に着手できず、日本独自の軽自動車という市場にしがみついている
じり貧の軽自動車専門メーカー
③ハイブリッド車で先行し、世界に先駆け水素燃料電池車を世に出したものの、
一向に普及せず、その後のEV化という大きな波に飲み込まれそうになり、
水素の流れを作ろうと日本政府のサポートも受けたが、その裏で、「やっぱり
水素では・・・ EVしかない」と、水素から電気に戦略転換する大義名分を
模索している日本、そして世界最大の総合自動車メーカー
④EVスポーツカーを開発し、EVのプラットフォームメーカーを目指す
日本版テスラと目されるベンチャー企業
水素のインフラ整備がネックで、水素車の行く末を信じられなくなった③は、EVに
乗り換える機会をうかがっていた。その一策として、②に自社のEVのノウハウを
提供し、まず軽自動車でEV車の実績を作ると共に、燃料電池のコストダウンを図り、
気が熟したところで
「せっかく国にご支援いただきましたが、もう水素車はダメです。
やっぱりこれからはEVですね」
とこれまで水素につぎ込んでもらった国の支援を過去のものとして、さっさと電気
自動車に乗り換えようと秘かに画策を始めました。
時を同じく、瀕死の①が、従来の性能を大幅に上回るリチウム電池の開発に成功しました。
④に意見を求めたところ、太鼓判をもらい、まずは走行距離が短い軽自動車をターゲット
とするのがベスト(この点では③とまったくの同意見でしたが、そういうことはお互い
知らないまま、それぞれ別個に軽自動車のEV化戦略を進めることに。で①は①で、
③は③で、別のルートで軽自動車専門の②にアプローチを開始。
②でも同じく自社が生き残れる唯一のは国内の他社に先駆けたEV化と考えるメンバーが
いて、①からの提案は千載一遇のチャンス。
しかし、①、②、③とも変化を見て見ぬふりをして、問題を先送りしたい旧来の経営陣の
存在や、部門の高い壁などで、進みたくても前に進めない大企業ばかり。
どうです、このストーリー。
①と③はどこがモデルか、すぐ分かっちゃいますよね。(笑)
どこまでが真実で、どこからがフィクションか? 現実の世の中で現在進行している
ことにきわめて近いと思いません?
そんな本を読んだところに、トヨタの水素エンジン車での耐久レース完走のニュース。
水素エンジンはEVの給電インフラ以上にハードルの高い水素のインフラ(水素ステー
ション)という問題を克服して、かつ日本の産業構造、雇用を維持する救世主となるのか?
それともあえなくEVに飲み込まれちゃうのか?
電気自動車のあのキーン(シーン)というモーター音を聞くと悪い意味で鳥肌が立つ
ガソリンエンジン車好きの私にとっては歓迎できないことだけど、人類の持続的繁栄の
ために、脱炭素は目指さなきゃいけない。
でもそれを水素で!? EV化という潮流は正直結構強烈だからな~
さて、どうなる? 本では、そして現実の世界では?
Dead or alive. 食うか食われるか?
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