李朝時代前期の粉引耳盃です。
胎土は鉄分の多い黒土で、上から全体に白土で化粧がけが施されています。その白は、柔らかく、優しく、器全体を包み込んでいるようです。
さらにその上に掛けられた透明釉は高麗青磁の系譜を引き、そのつやつやした釉は、ほんのりと淡い青色を帯びています。
器表面に散在する孔(あな)からは、酒が浸み込み、長い年月を経て美しい雨漏の世界を描き出しています。
この器のフォルムと、そこに広がる雨漏の景色は、鑑賞陶器の視点で見ても人を魅了します。
その景色を愛でながら、お酒を楽しまれてはいかがでしょうか。
■雨漏りとは、陶磁器を長く使用している間に、気泡穴や、窯キズ、貫入、石ハゼ等から、茶渋・水・酒等の水分が浸み込み、
あたかも雨漏りのような染みの出た現象を言います。茶の世界では、このシミを天井板に出る雨漏りのシミに見立てて「雨漏」と呼び、
そこに侘びた風情を感じ取り賞玩しました。
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