歴史とドラマをめぐる冒険

大河ドラマ・歴史小説・歴史の本などを中心に、色々書きます。
ただの歴史ファンです。

麒麟がくる・正親町帝の譲位問題は本能寺の変の「原因」となりうるか。

2021-01-31 | 麒麟がくる
ドラマ「麒麟がくる」、ここにきてドラマで提示された数ある要因の中でも「帝の譲位問題」が突出して「要因」となってきた感があります。
正親町帝の譲位問題は「本能寺の変の要因」となりうるでしょうか。

まず端的に結論から書きます。

ドラマ的には「かろうじてなり得る」
史実的には「なり得ない。」なぜなら「譲位を望む」という正親町帝自身の宸筆(自筆の手紙)が東山御文庫に残っているから。

ということになります。ドラマ的に「なりうる」のは当然で、ドラマだから基本的にはどう描いてもよいのです。でも上記の宸筆という「動かぬ証拠」があるので、「かろうじて」だと思います。譲位という重要問題で天皇がリップサービスをした、という小説的解釈をすればなりたつ。だからドラマ的には成り立つのかな、と思います。

とはいえ「手紙があるから」は実は決定的証拠にはなりません。天正2年ごろの気持ちに過ぎないからです。「譲位を迫った」という学者さんはいます。そしてその学者さんがこの手紙を知らないわけはありません。そこ(学会論争)は私の手に余るのでスルーさせてください。

さて

そもそも天皇が譲位して上皇になるのは「あるべき姿」でした。正親町帝が譲位できなかったのは「費用の問題」です。その費用を出すのは幕府ですが、義昭は出しませんでした。「出せなかった」のかも知れません。信長は義昭を追放して「天下人」になるや「費用は出すから譲位なさっては。」と申し入れるわけです。天皇は喜びました。これが天正元年1573年の「年末」です。本能寺の約8年前です。

しかしこれは実現しませんでした。その理由はよくわかりません。戦の状況がそれを許さなかったこと。戦に費用を回すのが先決となって信長にしても費用を出せなかったことなどが指摘されています。

正親町帝がどう喜んだかというとこうなります。帝自身の宸筆の要約です。
「譲位につき内々の申し入れがありました。譲位は(上皇になることは)御土御門院以来の望みでありましたが、実現できずにいました。そなたから申し入れがあったことは奇特(特に優れていること)であり、朝家再興の時がきたと頼もしく思っています」

天正元年から2年の譲位問題が流れてから、しばらく動きはなかったようですが、朝廷では「儀式用の衣装の虫干し」などをして「いつ譲位、即位があっても大丈夫」なような用意をしていました。

天正9年になって朝廷は、信長に官についてくれ、左大臣になってくれと申し入れます。これに対して信長は「譲位の件が片付いてから」と回答します。しかし陰陽道から見て譲位には不吉な年とされたようで、延期されます。信長の左大臣就任もなくなりました。次の年が本能寺の変です。

信長にとって譲位を実現することは朝廷を「あるべき姿に戻す」ことであったという指摘が存在します。「あるべき姿」ですから天皇も喜んだわけです。史実的には「強要」とか「不敬」とか「僭越」とかいうことはないと思われます。信長が莫大な費用を出すのです。信長から申し入れがなければ、朝廷としても動きようがありません。正親町帝が「やっと譲位できた」のは天正14年、1586年です。本能寺の変の4年後、秀吉の時代です。ただし本能寺の2年後にはすでに譲位は決定し、仙洞御所などの造営が始まっています。ここからも帝が譲位したかったのは明らかなような気もします。

私のこの文章の元ネタは金子拓氏の「織田信長、天下人の実像」です。上記のことにつき詳細に叙述されています。私のまとめは拙いので、あとはこの本をご覧ください。

「麒麟がくる」「光秀のスマホ」外伝・「信玄がやってくる」

2020-12-10 | 麒麟がくる
好き勝手な文章で、実際の「麒麟がくる」とは関係ありません。

1572年10月、信玄は本格的に西に向かう。徳川家康と衝突する「三方ヶ原の戦い」は目前であった。驚いた十兵衛は急遽岐阜にいる信長を訪ねるのであった。

十兵衛が部屋にはいると、信長はだらしなく口を開いて寝ている。十兵衛はその枕を蹴飛ばした。

信長「わっ、なんだ」
十兵衛「殿、寝相が悪いですな、枕が飛んでいきましたぞ」
信長「蹴っただろ」
十兵衛「蹴ってません。じっちゃんの名にかけて蹴ってません」
信長「誰だよ、明智のじっちゃんって。それより何だよ」
十兵衛「いや、信玄が西に向かったと聞いたので、殿が泣いているんじゃないかと」
信長「なんで泣くのだよ。西に向かったって、せいぜい三河だろ。それ以上は西に来ないよ」
十兵衛「まあそうでしょうな。兵站が続きませんしね」
信長「上洛するならもっと事前準備が必要なんだよ。俺が上洛した時は一年前から、伊勢をいじったり、六角を説得したり、そりゃ下準備が大変だったんだぜ」
十兵衛「でもなにが起きるか分からないのが乱世ですぞ」
信長「そりゃそうなんだけどね。あっ。三河くんが援軍よこせっていうから、佐久間たち3000人を派遣したよ」
十兵衛「3000人なんて、何の足しになるんです。人が悪いなー。自分は助けてもらうくせに徳川は助けない。極悪非道だな。」
信長「いいんだよ。三河決戦なんかする気はないから。万が一信玄が馬鹿で三河から織田領に入ったとするよね。その時に備えて織田兵は失えないわけよ。だから適当に逃げて来いと言っておいた。8000人の家康君が裏切らない程度に見張っていればいいのだよ。家康君は籠城すればいい。三方ヶ原に打ってでたりしないよう願っているよ」
十兵衛「家康君は本気で戦うと言ってましたよ。」
信長「それは三河くんの勝手だよ。織田とは関係ない話。三河くんと信玄の国境争いだから。籠城すればいいけど、あいついきなりキレるから平野決戦とかやりそうだな。そしたら織田3000人は逃げる。8000の徳川は2万5千の武田の前に鎧袖一触だろうな」
十兵衛「がいしゅういっしょく。言葉が難しいぞ。でも信長大包囲網がひかれたと言ってる人もいますよ」
信長「マジか。だったらどうして10月なんだよ。冬になるぜ。冬になったら朝倉は越前に引き上げるぜ。本気で包囲する気なら10月に動いたりしないでしょ」
十兵衛「でも三方ヶ原あたりで信玄が大勝利して、美濃尾張に迫ったらどうするんですか」
信長「来ないよ。でも来たら徹底的な防御戦だよ。籠城嫌いだから、柵の中からとか、徹底的に鉄砲を撃ちかける。で、逃げる。それを繰り返す。兵站は伸びているわ。兵は疲れているわ。和睦を申し出れば簡単に甲斐にもどるでしょ。兵が疲れ果て、食料も続かないのだよ。どうやって戦うのだ?」
十兵衛「そりゃそうですね。岐阜城に籠城したらコメは豊富で兵力は3万。それを2万5千の武田軍で一気に壊滅させるなんて、現実的にはありえませんしね。でも武田に寝返る国衆が増えたらちょっと問題ですね」
信長「それでも浅井包囲の秀吉軍は残せるよ。浅井くんは頑張るだろうけど、朝倉は越前に引き上げる。冬なんだから当然そうなる。信玄はポーズで怒るだろうけど、むしろほっとすると思うね。ほっとして帰るよ。」
十兵衛「そもそも包囲網と言っても、確固たる中心人物がいないのだからバラバラですしね」
信長「そうなんだよ。日本最強の武田軍とか言ってるけど、盛りすぎでしょ。それより不安なのは畿内の信玄祭りだよ」
十兵衛「信玄がやってくると騒いで、挙兵する」
信長「そうだよ。そういう人の代表が義昭くんだね。」
十兵衛「どうするんです」
信長「外聞があるから、最後の最後まで和睦を申し出るよ。信長は幕府を大切にしたという形だけ残せればいいんだ。でも義昭くんは受けないでしょ。そしたら叩くよ。追放するだけ。殺さないから安心してね」
十兵衛「松永さんも立つと思いますよ」
信長「あいつは何がしたいんだよ。でもね、あいつも一回目は許すよ。二回やったらアウトだよ。」


信玄西上は「信玄の言っていること、手紙を簡単に信じていいのか」という難点があります。論理的に考えてもよくわからない点が多いので、こういう適当な文章を書いて、頭を整理してみようと思った次第です。

麒麟がくる・第三十三回・「比叡山に棲む魔物」・感想

2020-11-22 | 麒麟がくる
比叡山の焼き討ち

織田信長は無神論者ではなかったという人がいます。無神論者などと言っているのは一部の人だけで、それを「否定しても」、あまり意味はありません。比叡山の焼き討ち、長島一向一揆の徹底的な殲滅、高野山との抗争。明らかに中世的な意識からは離れて見えます。これが「信長個人の資質に由来」するのか、「時代の価値意識の表れ」なのか、「戦という現実がもたらす必然なのか」、まあ私はそんなことを考えています。

覚恕さんが随分悪者にされ、また得意のブラザーコンプレックスの塊として描かれています。実際は何度も参内するなど正親町帝との関係は良好です。「室町・戦国天皇列伝」

描き方としてはいつも通りですね。浅井朝倉をかばったから、幕府と組んで信長を圧迫したから焼き討ちした。正親町帝が描かれたのは新鮮ですが、実際は「浅井朝倉の方から講和を申し出た」とする人が増えているような気がします。そういう説からみれば旧説になります。朝廷が仲介したのは確かですが、ドラマのように「実際に講和させる実態権力があった」とすると、御所の屋根が壊れているわけはありません。仲介をしようと思った。振り上げたこぶしを下ろしたい。そこで朝廷を両者が利用した、というのが実態に近いでしょう。

光秀が「積極的に参加した」というはもはや定説に近い。しかし「女子供は逃がす」という設定にしました。これは「主人公なので」そうなるのか。私としては「積極的に参加せざるえない光秀」を描いてほしかったので、工夫が足りないように感じました。摂津に対しては「信長の戦いは続くのだ」と随分傲慢に語っていましたが、「女子供を殺すとはこんなはずじゃなかった」となるなら、十兵衛は相変わらず「先が読めない男」ということになるでしょう。

十兵衛は比叡山に対し敵意をむき出しにしています。美濃に帰るという信長を止めるほどです。にもかかわらず「こんなはずじゃなかった」となるなら、「天然すぎる」ことになります。

信長にしてからが、どうして女子供まで虐殺するに至ったかの描写がありません。たとえば高邁な理想があるとも描かれない。そうなるとただの「虐殺者」になります。覚恕や正親町を描くことで満足して、信長の行動原理を描かない。だから十兵衛も信長も「その時々の感情で行動している」ように見えてしまうのです。

麒麟がくる・第三十二回・「反撃の二百挺」・感想

2020-11-16 | 麒麟がくる
ドラマ上の「現在」は、姉川の戦いですから、元亀1年・1570年です。

重要な登場人物である筒井順慶はまだ旺盛に松永久秀と戦っている時です。順慶が信長につくのは、翌年の1971年です。まあその前年から「信長に通じていた」としても「完全な嘘」ではないでしょうが、どうも信用できない設定です。

でも違和感を一番感じるのは「そこ」ではありません。今井宗久の動きです。

そもそも信長はなぜ無理して上洛したのか。一番の実利としては「堺をおさえる=鉄砲の確保」のためだと思われます。姉川の年には松井夕閑を奉行にして直轄化を進めています。ドラマ上は「堺で商人でもしたい」とか言っていましたが、やはり鉄砲でしょう。鉄砲そのものの調達もありますが、なにより「なまり」が外国産で国内では調達できなかったのです。

信長がここまで無理をした上洛した、どの大名も上洛なんて考えもしなかったのに上洛した、その理由として一番合点がいくのが堺の制圧です。別に御所の壁を直したかったわけでもないし、まして幕府を再興したかったわけでもないでしょう。

今までの大河は「そこ」に着目して描かれてきました。特に「黄金の日々」では、はっきりと「それが信長の狙いだった」と描かれます。

そういうリアルな視点から見ると「麒麟がくる」の今井宗久の動きは実に変ですし、ファンタジー感を大きく感じます。「麒麟がくる」、前半は斎藤道三を主人公にすえて、原作であろう「国盗り物語」に「比較的忠実に」描いていました。しかし後半は意識的に「国盗り物語」から離れています。その途端にファンタジー感が増大し、多くの視聴者から「現実離れしすぎた」という批判を浴びています。司馬さんの本を原作にしながら、「新しさを出そう」として原作から大きく離れる。とたんに変な作品になっていく。よくある事態です。映画「関ヶ原」なども、原作を修正して変な設定にしたりするから大失敗に終わっています。「麒麟がくる」の場合、中途半端に「新信長像」を描こうとしたり、「旧権威に敬意を払う作品にしようと」したりするから、わけがわからなくなるのです。

信長は「自信満々に石仏を背負って僧兵を追い払う」、しかし十兵衛に対して「比叡山はなぜ戦いに参加するのだ」と弱音を吐く。人に二面性を描いているわけでもなさそうです。比叡山が戦う意図を分からないなら、なぜ自信満々に僧兵を追うのか、つじつまが合いません。

一体信長をどう描きたいのか。新説と従来の安定した説の「奇妙な混合物」になってしまっていると思います。「大河新時代」がいけなかったような気がします。「今まで違うように描こう」という意図が先行し、大切な「どう描くか」が「なおざり」になっていると思います。

1年前、私は「新説の信長を描いてもエンタメ作品とはならない、つまらなくなるだけだ」と書いた覚えがあるのですが、今のところその予言とおりになってしまっているように感じます。





麒麟がくる・第三十一回・「逃げよ信長」・感想

2020-11-08 | 麒麟がくる
家康と十兵衛が再会し、家康はなぜか昔の十兵衛(農民姿)の正体に気がついていました。菊丸から聞いたのか。菊丸はどこに行ったのか。家康と十兵衛が同じ価値観を持っていることが判明した回です。

1、松永久秀がいるのは定番ではない。

このシーンは繰り返し繰り返し描かれていますから、ほぼフォーマットは出来上がっています。

①金ヶ崎城を奪う
②そこで浅井長政の離反を知る
③「誰か」が「両面攻撃、越前になだれ込み、朝倉義景を葬り、返す刀で浅井を殲滅」と主張
④信長がそれを退け「逃げる」と宣言
⑤藤吉郎がしんがりを申し出る

「逃げる」と決めた軍議に十兵衛がいることはありません。徳川家康もいません。松永久秀もいません。十兵衛たちは前線に、松永は後ろの守り、朽木谷あたりにいることになっています。もっとも松永久秀がどこにいるか描かれたことは大河ではありません。大河的には松永久秀はまだ「新人」なのです。

例外として「徳川家康がいる」ことはありました。大河「徳川家康」です。そこで両面攻撃を主張するのは「信長」です。すると家康が「これは織田殿とも思えぬご短慮。ここで命を捨てては、天下太平という我々の目標が遠くなります」と「しんがり」を買ってでます。これは家康が主人公だからで、それ以外の大河では家康はいません。

誰が「両面攻撃」を主張するのか。柴田とか信長の家臣です。それを退け「逃げる」と宣言することで「信長スゲー」と思わせる演出がとられてきました。今回は予告編段階で「信長が両面攻撃を主張する。十兵衛が止める。つまりかつて家康が止めたシーンと同じだが、家康の代わりに十兵衛が止める」と分かっていました。

その後信長が「うー」とか「ぐー」とか悩みます。これはたぶん「冬彦さん」だと思います。「冬彦さん」というキャラがいるのです。この信長はほぼ「あれ」です。冬彦さんもマザコンの塊です。もっともあれは「怒っているシーン」らしいのです。わたしは冬彦さんだと思いました。

ちなみに大河「信長」はエンタメ度が少ないので、さほど劇的なシーンはなく、しずしずと撤退します。再現フィルムみたいに地味な作風なのに、「神格化」を描いたために「見ていない人」から、大きく誤解されている作品です。実に地味なんです。

とはいえ、このシーンはもともと信長の見せ場です。「逃げる」の速さが勝負です。勝ってるのに逃げる。そこで周囲が驚く。信長スゲーとなるシーン。個人的にはそっちが見たかったと思います。

2,いくさのシーンで現れる人間性・藤吉郎

「麒麟がくる」はいくさのシーンが少ないのですね。コロナのせいもあると思います。私も、他の戦国ドラマファンも別に「戦争が好き」なわけはないのです。ただいくさのシーンになると、ギリギリの人間性が描かれることが多く、だから面白いのです。

藤吉郎がしんがりを申し出る。普通は信長に対してです。そして通常、柴田権六がこの時ばかりは「トウキチ、生きて戻れ」とか言います。

今回は十兵衛が「しんがりの総司令官」でしたので(なんと柴田にまで命令していた)、藤吉郎は十兵衛にしんがりを申し出ます。むろん史実ではありません。史実としては十兵衛は「しんがりには、いなかった」という人もいます。史料的には一色藤長の伝聞史料で十兵衛がいたことになっているだけだからです。まあともかく十兵衛が総司令で、藤吉郎が十兵衛に許可を得る。むろんこんなことは史上初です。こう書いていて気になったのですが、十兵衛は幕臣であって、織田家家来ではありません。史実は両属ですが、設定はそうです。十兵衛が総司令というのはその点からも変なのですが「勢いでそうなっていて」、特に変だとは感じませんでした。あと徳川実紀では家康も「しんがりだった」とされますが、今回は採用されなかったようです。

「ここが藤吉郎の運命の分かれ目であった」という点では、過去の大河は共通していて、その点は「麒麟がくる」も変わりませんでした。実にオーソドックスな「ほぼ定番通りの」越前撤退です。ただ藤吉郎が十兵衛に申し出るという点だけが違いました。藤吉郎の「しんがり」が嘘とされるという設定でもありました。本来は信長が認めるか否かだけなのですが、信長が「ふて寝」しているので、十兵衛が秀吉の武功を認めるという設定でした。ここも実は、ここで初めて「信長が藤吉郎の真の姿に気がつく」という鉄板のシーンなので、十兵衛と信長に向かって「しんがり」の許しを迫ってほしかったとは思います。

蛇足ですが、藤吉郎の告白。前段は妹の芋を食って、自分がみじめに思えたこと。後段が「飛べない虫」で終わりたくない。死んでも名を残せればいいこと。「つながっているようで、つながっていない」気がします。自分は死にゆく妹の芋を食ってしまったどうしようもない人間だ、だから名誉が欲しい、というのは少し変です。「だから」の部分がつながりません。
藤吉郎の「凄み」としてよく指摘されるのは「死んでもともと」という気迫で、「どうせ信長様に拾ってもらった命、どうせ炉端で死ぬ運命だった。いつ死んでもいい」という感じになることが多いのですね。この「拾ってもらった命だから、いつでも捨てられる」という「凄み」をもう少し描いてもいい気がしました。

3、浅井長政はなぜ裏切ったのか

説明的なセリフが多かったわですが、
どうも朝倉と内通しているらしいこと
内通しているのはオヤジの方とも言えるが、長政も同意していること
「弟を殺した信長だ、まして義理の弟を攻めても当然だ」という風に描きたかったこと

は分かりました。「弟を殺したから、義理の弟など」という描き方がされたのは初めてだと思います。これ以外は全く「定番通り」と言っていいと思います。今までは「お市が必要以上に活躍しすぎ」な面もありましたが、今回のお市さんは地味な感じです。

4、変貌する将軍義昭

信長や信長の価値観、義昭や義昭の価値観、それがまったく「等価」なものとして描かれたら面白いと思っていました。今の所そこそこ等価です。信長がありがたがる御所に対しても、義昭は「御所の修理も大切だろうが、貧困対策の方が先だろう」と言います。この足利将軍家の天皇への冷静な姿勢は史実通りです。ほとんど参内することもありません。なお、御所の塀が崩れていたというのは江戸時代に流行したデフォルメです。

殿中掟条らしきものについて摂津が言及していました。掟条そのもの(形式的には光秀宛)の解釈はいつも通りみたいです。今流行している「室町幕府を縛ろうとしたものではない」という解釈ではありませんでした。幕府は「相手にしない」という魂胆のようです。義昭も同じで、印は押したが従わないと、徐々に戦闘的になっています。でもどうして?数話前は信長の手を握っていた。どこで決定的な亀裂ができたのか、それは描かれていません。手を握りあう前は、信長は石仏をぺんぺん叩いていた、あのシーンです。そっからどう変化したのかが全く描かれてないような気がします。

義昭と信長は、今のところ等価なんですが、来週の予告編あたりを見ると、信長に対抗しようとするようです。そうなってくると「今までの義昭」になってしまい、私は別にいいのですが、新鮮さは減少するかも知れません。

来週はどこまで飛ぶのでしょう。鉄砲200丁が活躍するようです。普通は「姉川」ですが、いくさのシーンには見えませんでした。もとの「宮廷劇」に戻るのかも知れません。「いくさ」がないと、韓国史劇と同じように、どうしても権力者同士の「宮廷劇」になってしまうような気がします。

麒麟がくる・第三十回・「朝倉義景を討て」・感想

2020-11-01 | 麒麟がくる

1,お駒

すっかり大人になってもう十兵衛には興味がないようです。「報われない愛を献身的に一生捧げる設定」かと思っていましたが、違うようです。足利義昭と「大人の関係」であることが、「示唆」されていました。「源氏物語」あたりを連想させる蛍のシーンです。うん、どういう方向に行くのだろう、とちょっと読めなくなってきました。さらにこの関係がずっと続くのかは分かりません。ちなみに大河は「青少年のすこやかな成長」のため、ベッドシーンそのものはありません。そもそも最近はTVのベッドシーンなんてない。抱き合って倒れていく、ぐらいの描写です。この作品では「抱き合って」もなく、手を握るだけです。その代わり蛍を飛ばすことで、「王朝物語だよ。分かるよね。」と示唆していました。

駒が足利義尋を産むのかも知れませんが、その後の展開は読めません。

帰蝶もなんとなく十兵衛と距離がある感じでした。十兵衛には「妻」がいますから、大河は一切不倫禁止(心情的なものでも)になっていくのかも知れません。

2,正親町天皇は大天狗?

史実の信長は朝廷についてよくわかっていない面がありました。官位の「官と位の違い」にも頓着はなかったようです。最終的に官は全て辞退します。しかし位は辞退しません。最初は親和的ですが、明らかに信長は朝廷と距離をとるようになっていきます。でも位は保持するので、学説的には面倒なことになっています。
やがて史実の信長が天皇の判断について「恣意的だ」と批判することは、4つ前のブログで書きました。

ドラマの信長は「ほめてもらえばそれでいい」わけです。今日の描き方は「信長と朝廷が親和的だということを描いた」とも言えますが、東庵先生と正親町帝の会話などを見ると「位うち」的なものも感じます。史実の信長は「平家」が好きですから、きっと義経のことも知っていたでしょう。すると「位打ち」もわかっていたはずです。ドラマの信長は義経のように、治天の君に褒められてすっかり有頂天になっています。そしてなぜか十兵衛もそれを「温かく見て」、助言はしません。教養人設定の十兵衛が「義経の運命」「木曽義仲の運命」を知らないわけありません。なのに「勅命は天意であり」とか言って幕府に出兵を求めていました。位うちと言っても位はないので、ほめごろしという感じですが。まるでドラマ信長の承認欲求を見透かしているようでした。それにしても信長。36ぐらいでしょうか。もう承認欲求という年でもないでしょう。ガキじゃあるまいし。いい加減独立独歩、我が道を行かんかい!設定上ものね。と見てて思いました。別にあれが信長じゃなくても思うと思います。(ちなみに史実上も正親町帝は信長の美濃制覇の時、皇室領の回復を求めて、信長を大層ほめています。信長が死んだときは、朝廷は光秀をほめます)

幕府は田舎者の信長と違って「天皇慣れ」してその実態が分かっています。だから天意だろうと相手にしません。武藤征伐の勅命があろうと出兵しません。(という設定です。摂津が朝倉と組んでいることは義昭は知りません。義昭の思いは、自分は戦嫌いで中立を保って仲介したい。だから出兵しないというものです。)「戦があれば仲介するのが、わしの役割」と義昭は言います。そういえば殿中御掟は登場しません。ですが、信長の心が急速に幕府から離れている演出はあります。

私はこの正親町帝、結構な「大天狗設定」かも知れないと思っています。大天狗とは後白河法皇に関してよく言われることです。史実としての正親町帝は、信長から怒られて、詫びを入れるという感じで、まあ普通の人です。でもこの作品は、御所の塀がずっと崩れていたとか、そんな嘘もあるので、大天狗設定もありえると思っています。「美しくて高貴なバラ」には棘があるかも知れません。

3、越前攻め

「それぞれの立場」が描かれていました。帰蝶の立場は「尾張美濃の戦国大名」として立場です。摂津晴門の立場は「将軍の守備範囲は畿内」と考える幕府の公式的な姿勢(形式的姿勢?)を表しています(ドラマ上は摂津は、朝倉と組んでいます、史実としては組んでなかったという学者のほうが多いかな?)

十兵衛が「前のめり」なのはちょっと「引き」ます。史実はよく分かりません。ただドラマ上、それなりに世話になっており、特に朝倉義景にひどい扱いを受けていたわけではありません。「毛ほども恩を感じていない」「大義のためなら何してもいい」という十兵衛の「この設定」はどうなのでしょうか。「つながりがおかしい」気がします。人物批判じゃありません。演出批判です。狙いは分かります。今までの朝倉を巡って迷う光秀との差別化です。でもこれまでの流れが差異化する方向でないため、特に朝倉に「いじわる」されてもいないため(むしろ厚遇)、いかにも十兵衛が恩知らずとしか見えないのです。「その時その時でキャラが急に変わる。何言ってんだこの男」と感じてしまうわけです。主人公はそういう感じを抱かせてほしくない。

史実としては越前にいなかった可能性もあります。しかしドラマ設定としては、あの家を十年間、無料で提供されたはずです。京に行った時、妻子を保護もしてくれた。意図的に「恩知らず設定」であるならばいいのですが、そうではありません。ただナチュラルに恩知らずなのです。その演出は困ると思います。上洛とか天下静謐といった大義のために「朝倉義景が何をしたか」と十兵衛は言います。そりゃそうですが「あなたは、お世話になったはずだ。人として少しは悩めよ。原理主義者か!」ということです。演出がおかしいなと感じます。

4,織田信長は足利尊氏?

やがて正親町帝と信長の間にもすきま風が吹くという設定のようです。どう吹くのかは知りません。そこで信長は色々と思い悩むのでしょうか。すると同じ脚本家の「太平記」、足利尊氏と似てきます。弟は早めに毒殺してしまいました。足利直義に相当する人物はいません。どうするのでしょう。いるとすれば十兵衛ですね。さてどうなっていくのか。

「光秀のスマホ」「麒麟がくる」外伝・「どうせなら全員生かしてしまおうホトトギス」の巻

2020-10-31 | 麒麟がくる
ある程度歴史の事実に合わせて、光秀と信長を両方とも「長生きさせる」方法はあるかを考えてみました。無論「トンデモ設定」が必要です。可哀想ですが、ある程度の人々には史実通りに死んでいただかないといけません。このぐらいトンデモにしないと無理なようです。柴田勝家・織田三七信孝には悪者になってもらいます。ただしタイムスリップは使いません。それが使えるなら、現代にタイムスリップさせて、助けてしまえば簡単です。

帰蝶・信長・十兵衛・煕子・信忠が「現代で繰り広げるドタバタコメデイ」は、もう誰かが小説にしているかも知れませんし、それはそれで面白そうです。「俺って人気者なんだな。でも人気が出るとディスるやつも多いから、考えもんだね、帰蝶」「最近はどうも私の方が人気があるぞ。アンチ帰蝶はほぼ0だぞ。私の勝ちー」とか信長と帰蝶に言わせてみたいものです。しかし今回はタイムスリップは封印します。私は「女信長」の情報を知りませんが、もしかすると似ているかも知れません。

天正10年、1582年5月、本能寺の変の年、十兵衛は信長に呼び出され、本能寺に向かいます。そこには帰蝶と織田家嫡男、織田信忠がいました。

信長「十兵衛、これを見ろ。この手紙を」
十兵衛「なんと、3男織田信孝殿、ご謀反!」
丹羽長秀「それだけではない、津田信澄殿も加担しておる。十兵衛殿の縁者であろう。」
信長「信澄ごときはいい。わしにとっても甥ぞ。問題は次の手紙だ」
十兵衛「信孝殿擁立には、柴田殿、滝川殿も加担!まさか」
信長「滝川も信孝も柴田に踊らされているらしい。首謀者は権六だ。しかしここまで裏切られれば、もう笑うしかなかろう」
十兵衛「手紙は、羽柴秀吉殿からですな」
信長「あやつは、中国にいながら、これだけの情報を送ってきよった。神か天狗じゃな。もう呼び寄せたがな。」
十兵衛「しかし本当でしょうか」
丹羽長秀「わしが証人じゃ。柴田勝家からはわしにも誘いがあった。3日前までわしは信孝様といた。四国遠征軍じゃ。」
帰蝶「十兵衛、そちは近畿管領であろう。この情報つかめなかったのか」
十兵衛「申し訳ありません」
信長「申し訳ないでは済むまい。帰蝶と話しあってな。この際、明智家は取り潰しとすることにした」
十兵衛「仕方、、、ありません。御意のままに」
帰蝶「それとな、十兵衛、この際、織田家も取り潰すことにした」
十兵衛「はあ」
帰蝶「十兵衛、織田家は私と十兵衛と信長様で作った。けれど大きくなり過ぎた。無理をし過ぎた。人を殺し過ぎた。そして人々の信を失ってしまった。織田家が天下人である限り、麒麟はこない。」
信長「だから織田は一代で店じまいじゃ。信忠もわかってくれている。わしにもまとめられぬ織田を、信忠に任せるのは酷であろう」
十兵衛「いやいや、変でしょ」
信長「変ではないわ!わしがいなくなれば、滝川についている関東の国衆は離れていく。滝川も生きては戻れまい。信孝の四国遠征軍も所詮は寄せ集めじゃ。この信長が死んだと聞けば、雲散霧消するであろう。残るは柴田のみだ」
十兵衛「死ぬなどと。切腹などもってのほか」
信長「おいおい、誰が本当に死ぬと言った。死んだことにすればいいだけだ。」
帰蝶「十兵衛、十兵衛には天下人織田信長を作った責任がある。その責を負ってもらう。汚名を着てもらいます。許してほしい。」
十兵衛「わたしが、、、、信長様を殺せばいいのですな(やだなー)」
信長「さすが、話が早いな」
十兵衛「しかし次の天下人は誰に、、、、あっ、、、羽柴殿ですな」
帰蝶「秀吉の知謀は底しれぬところがある。人々に支持される天下人。あの男しかできぬであろう」
十兵衛「しかし秀吉殿にはお子がおりませぬ。秀吉殿の天下、続きましょうか」
帰蝶「だからもう一人、生きてもらわないといけない人間がいます」
十兵衛「それは、、もう誰でもわかるけど、、、家康殿で、、、ございますな」
信長「家康は慎重すぎるところがある。秀吉ほど機敏でもないし、芝居もできぬ。が、ねばり強く信念を持っておる。藤吉郎が暴走しないためにも、家康を対抗馬として残しておくことにする」
十兵衛「で、信長様は」
帰蝶「京にいますよ。信忠は堺に行きます。信忠は商人になって、世界を相手に貿易をしたいと申しています。堺の今井宗久も、協力してくれることになっています。納屋の家に入るのでしょ。名前はもう決めたの、信忠」
信忠「はい、母上。助左衛門に決めました。納屋助左衛門。ルソンと貿易をするつもりですから、ルソン助左衛門を名乗ります」
十兵衛「で、柴田殿は。信孝様は」
信長「それは藤吉郎が考えよう。だが信孝は生かしてはおかぬ。秀吉が殺せないというなら、2男の信雄に殺させるまでだ」
ここで藤吉郎登場。
藤吉郎「殿、殿、勘弁してくだされ、十兵衛殿、十兵衛殿からも言ってくだされ。そんなトンデモないことしなくても、ただ柴田・滝川殿、信孝様を討てばいいだけの話ではありませんか」
帰蝶「トウキチ、織田家が天下人である限り、人々は織田を恐れ、謀反の種は尽きない。そちは世間では人を殺さぬ男と思われておる。下ってきたものは殺さず活かす」
藤吉郎「と言って、こんなトンデモない芝居をうたなくても。それに三七信孝殿は殺しはしませんぞ。信忠様、ルソンに落ち延びさせてくだされ」
信忠「心配するな。あやつは乗せられただけだ。きつく叱っておく。任せておけ」
十兵衛「藤吉郎殿、わしはそなたがさほど好きではないが、それでもこの世でこんなずる賢い、いや真に賢い男はいないと思っておった。しかも発想が人とは違う。たとえば検地、楽市楽座、そちが領内で行った政治をみて、わしは舌を巻いた。近頃は人を殺すことにも迷いを覚えるようになった。それが本来のそちなのだ。そちならできる。荘園をなくせ。世を救え。新しい世の扉は、羽柴秀吉が開くのだ!麒麟を呼ぶのだ!」
藤吉郎「そういわれると悪い気はしませんな。でも上様が堺の商人とは。」
信長「馬鹿か。誰が商人になどなるか。それは信忠じゃ。わしは朝廷に入る。近衛か二条に入り込んで、大納言にでもなり、お前を監視する。あとは蹴鞠でもして帰蝶と遊んでくらすわ」
藤吉郎「わしが征夷大将軍になるのでございますか」
帰蝶「将軍より上の位が良かろう。わたしたちが朝廷に入って工作します。関白にしてあげようぞ」
藤吉郎「関白、、、ははー、承ってございまする」
信長「十兵衛すまぬ。汚名を着てもらう。その代わり、そちには徳川に入って、トウキチを監視してもらうぞ」
十兵衛「はあ」
帰蝶「すぐにでも出家するのです。法名は天海です。顔は駒が、南蛮の魔術で、十兵衛とはわからぬほどには、変えてくれます。煕子殿や十兵衛のお子らは私たちが保護します。そちの重臣たちも、、一度は死んだことにしますが、藤吉郎が取りてるから大丈夫です」
藤吉郎「しかし信長様ならで、誰が天下をかくも鮮やかにまとめ上げることができたでしょう。この先、わしがいくら偉うなろうとも、織田信長の名こそ長くこの国の歴史に刻まれましょうぞ」
信長「トウキチ、もう一人の名を忘れておる。明智の名よ。しばらくは明智の名は汚名として語られるであろう。しかしある時、人はふと気がつくのじゃ。この信長という鬼を止めたのは誰であるかと。明智十兵衛という男が、一体何者で、何を望んでいたのだろうかと。わしの名が消えぬなら、明智十兵衛の名もこの国の歴史から消えることはない。」
十兵衛「信長様!」

ときは移って、1616年。京都。信長の邸宅。

信長「大阪の陣も終わり、世は太平になった。帰蝶、わしはいったいいくつになったのだ」
帰蝶「ボケたふりを。殿は82歳、私は81歳、十兵衛は87歳、煕子殿は83歳です」
十兵衛「この天海、まだまだ死ぬ気がいたしませぬ、駒殿の不思議な薬のおかげですな」
駒「そして私も81歳になりました。菊丸さんは90歳。東庵先生はとうに100を超えています。妖怪ですね。」
信長「秀吉が死んだ時は、どうなることかと思ったがの、大御所、よくぞやってくだされた、百万の死者の上に築いた平和じゃ、守っていかねばな」
家康「これも全て、十兵衛殿のおかげです。麒麟を呼べ麒麟を呼べと十兵衛殿にはうるさく言われましたわ」
十兵衛「信長様、お市様は?」
信長「また遊びに出かけおった。とうに70を超えて、元気なもんじゃ」
帰蝶「十兵衛殿、ガラシャ殿は」
十兵衛「関ヶ原のおり、大御所に助けていただいて、今は長崎で、祈りの毎日だと手紙を寄越しました」
家康「ガラシャ殿のお子たちも、孫たちも、時々長崎に出向くそうですぞ。しかし十兵衛殿、麒麟がくる道は遠かったのう。義昭様が生きておられたら。」
駒「でも義昭様。最後は藤吉郎さんと大坂に住んで、人々の尊敬も集め、見事な大往生でした」
十兵衛「大御所、まだ麒麟は首を見せただけですぞ。麒麟が本当にくる世は、まだまだ先ですぞ」
家康「わしはことし74になるがの。体が持ちませぬわ。もうここらで本当に隠居いたします。あとは十兵衛殿、秀忠を頼みます」
信長「それが良い。もう楽をいたせ」
家康「右府様、酔った勢いで文句を言わせてもらいますぞ。どれだけ辛い選択をしてきたか。太閤殿とわたしに足を向けて眠っては駄目ですぞ」
信長「で、あるか。しかし秀頼と淀殿はルソンで元気らしいぞ。信忠が、いや天下の豪商、ルソン助左衛門がついておるからな」
十兵衛「義輝様、義昭様、道三様、義龍、今川殿、浅井朝倉殿、秀吉殿、柴田殿、摂津晴門殿、本願寺門徒、叡山の僧たち、武田勝頼、死んでいった者たちの為にも、もうひと頑張りですな」
帰蝶「いったい十兵衛は何歳まで生きるつもりじゃ」
十兵衛「百歳超えてもまだまだ生きますぞ」
一同「アハハハハ」

めでたし。めでたし

麒麟がくる外伝・「朝倉義景を討て」・勝手なあらすじ

2020-10-27 | 麒麟がくる

「光秀のスマホ」が許されるなら、私が「このぐらいふざけてもいいかな」と思ってます。

さて上洛後の信長です。「美濃は帰蝶のためにとった。京都は将軍のために占領した。帰蝶は喜んでくれた。将軍も天皇も喜んでくれた。京都の人々も歓迎してくれた。まずは嬉しい限りだ。」と考えています。十兵衛は史実上は両属ですが、ドラマ上は幕臣です。

帰蝶「まずは良かったですね。帝も将軍も殿を褒めていたのでしょう。」
信長「まあ、そうじゃがな。だが、この後どうすればいいのかな。」
帰蝶「美濃も伊勢も近江も、まだ落ち着いてはいません。ここからは内政ですよ」
信長「内政か、、、苦手だな。信長の野望なんかでも内政コツコツやるの苦手なんだよな」
十兵衛「なんの話をしてるんだ、おめーは」
帰蝶「指出検地じゃなくて、検地もしっかりやって。信長は内政面において遅れてるとか、そういう汚名返上ですよ。」
十兵衛「その通り!」
信長「あっ、十兵衛いたのか。おい、どさくさに紛れて、おめーとか言わなかったか」
十兵衛「何の話だか。それより幕府の腐敗ですよ。腐敗。どうにかしないと」
信長「摂津晴門だろ。めんどくさいな。歌舞伎役者みたいだし、からみたくない。おいしいとこ全部持っていくからな。鶴ちゃんは」
十兵衛「でもこのままだと、三好やユースケ義景をけしかけて、織田を攻撃すると思いますよ」
信長「なんでじゃ。おれは幕府の恩人だよ」
十兵衛「この間、怒鳴って摂津に扇子を投げつけたでしょ。恨んでますよ」
信長「そうか、知らない、ボク知らない。」
十兵衛「とにかく天下静謐のために、織田家は頑張らないと」
信長「てんがせいひつ?なんだそれ」
帰蝶「天皇の代行者である将軍が京都周辺の平和を実現する。その将軍の天下静謐作戦を信長様が軍事で支える、ということです」
信長「長いよ、わかりにくいし。要するに天皇と将軍を尊重して、京都あたりを平和にすればいいのだな。褒めてくれるか」
帰蝶「みな、口々に殿を褒め称えましょう」
信長「そうかー。夢のような話だな。よし、それで行こう。とりあえず朝倉さんに仲良くしようと言ってみるわ」
十兵衛「いや、それが、摂津さんは既に朝倉に手を回し、三好と朝倉で織田をハサミうちしようとしているのです」
信長「えー、それに乗ったの?馬鹿じゃないかユースケサンタマリア、サンタマリアのくせに。でも三好と組んだというのは怪しいな」
十兵衛「とにかく先手を打って、越前を攻めましょう」
信長「でもさー、天下って畿内だろ。越前関係ないじゃん。あれ、天上天下唯我独尊の天下も畿内なのか?お釈迦様は日本の畿内で唯我独尊なのか」
十兵衛「なに言ってんだ、てめーは。とにかく先手必勝ですよ。ユースケはへたれだから、すぐ白旗あげますよ」
信長「でもユースケ義景が、謝らずに、本気で攻撃してきたらどうするんだよ。結構強いぜ。ここは和平でしょ。静謐、静謐、静かにしていようよ」
帰蝶「いや、ここは摂津の計略を逆手にとって越前をやっちまいましょうよ、ユーやっちゃいな」
信長「うーん、そうかな。まあ考えてみると魅力的かも、十兵衛、帰蝶、おぬしらもワルよのう。越前とれば太平洋から日本海まで領土が拡がる。貿易の金も入る。みんなも褒めてくれる。うん、いいかも。戦大好きだー。で、浅井長政くんはどうするの」
十兵衛「伝えると、余計悩みますよ。攻め込んでしまえば、見てみぬふりでしょ。」

ということで信長は越前に攻め込みます。その前に光秀の助言で正親町帝から勅許ももらっています。が、浅井長政は「見ぬふりなどできるか、俺は、その他大勢キャラじゃないぞ」と怒り狂います。で朝倉側につきます。信長は挟撃され、ピーンチ。

信長「だから長政くんには伝えようと言ったじゃん。考えてみると十兵衛、ほぼ実践経験ないよな。大将首事件だけ。長良川でも本圀寺でも戦っていない。よく玄人みたいな口がきけるよな。このド素人が!詫びろ、聞こえなかったか、詫びろ詫びろ詫びろ!」
十兵衛「はい、ごめんなさいね。今は私の人格攻撃とかしてる場合じゃないでしょ。逃げないと」
信長「あと正親町さんに勅許もらったけど、役に立たないじゃん。長政くんやユースケは朝敵だろ。そんなこと全然気にしてないじゃん。」
十兵衛「まあそれはですね。これから天皇権威を高めていけばですね、、まあ天皇問題はデリケートだからやめましょうよ。とにかく逃げるのです」
信長「デリケートって、正親町帝登場させちゃったわけだし。難しいよな、描き方が。うるさい人多いから。それはそうと、逃げてもさー、途中で殺されたら恥じゃん。とにかく、まず失敗を認めろよ。お前時々わかったような大きな口きくけど、戦争経験値ほぼ0だろ。ユースケ義景にもべらべら戦争とはを語っていたけど、戦った経験ないくせに、よく言えるよな。間者から聞いたぞ。知ってるぞ」
十兵衛「ねちねちうるさいなー。天下静謐という大任を果たすため、織田信長は死んではならんのです!」
信長「大きな声だしても騙されないから。でもまあ逃げるのは正解だろな。なんか恥だが役に立つとも聞いたしな。よし、逃げる」
十兵衛「逃げるが勝ちですよ。すると後の大河が、、、信長はひた走りに走った。敦賀平野に舞い降りた速さもさることながら、勝ちいくさの収穫になんの未練もなく、戦場を離脱した異常な速さは、戦術の常識を打ち破った信長の天才を示している、、、と言ってくれますよ」
信長「褒めてくれるというわけか。逃げても褒められる。それが徳川慶喜くんとの違いか。慶喜くんが逃げたから戊辰戦争はあの程度だったんだけどな。まあいいか。よし、逃げる」
藤吉郎「あのー。本当に逃げないといけないんですか?」
信長「どういうこと?」
藤吉郎「いや具体的な兵力は完全には把握してないんですが、、、浅井の動員できる兵力から考えて両面作戦も可能だったんじゃないかと」
十兵衛「だった、ってどうして過去形?。まあね、やってやれないことはないかな。でもそういう賭けをやらないのが信長なんだな。勝てるまで調略やって、人数を整えて、勝つべくして勝つ。この戦いで信長が学んだのそれなんじゃないでしょうかね。木下殿。」
藤吉郎「十兵衛様、そうでしょうか、姉川だって結構危なかったんでしょ。それは信長の天才性を買いかぶり過ぎている意見だと思いますがね」
十兵衛「いや、この戦いだってここまでは勝っているわけよ。でもその収穫に未練なく、異常な速さで戦線を離脱しているわけ。天才かどうかはともかく、そこは評価しないと」
藤吉郎「本当に異常な速さだったのですか。そこからして怪しいな」
十兵衛「4月25日に金ヶ崎城を攻撃し、4月30日に逃げている。浅井裏切りの報をどの時点で知ったかによるでしょうな」
信長「てめーら。なぜ俺を置き去りにして信長の歴史的評価ごっこやってんだよ!いいんだよ。いろんな信長がいて。逃げるぞ。トウキチ、後はまかせた」
藤吉郎「うけたまわって、ござりまするーー」
信長「お前、時々そういう変な発声をするけど、狙いはなんなんだ?」
藤吉郎「てへっ」
信長「てへっ、じゃねえよ」

とういうことで信長は金ケ崎からやっと脱出します。しんがりは、秀吉・十兵衛らがつとめました。十兵衛もいたという史料は一色藤長の伝聞史料だけみたいで、史実と違う可能性もあります。

信長「だから言ったろう、十兵衛、お前は考えが浅いのだよ」
十兵衛「いや、大したことなかったですよ。生きて帰ったわけだし。」
信長「そもそもさー、絶対裏切らないと思っているなら、どうして浅井に伝えないのだよ。もしかして、と思ってるから伝えないんだろ。本当に伝えなかったのか?」
十兵衛「済んだことをねちねちと。どうしたんですか、どっか痛いのですか」
信長「痛いよ。鉄砲の傷。かすり傷でも痛いんだよ。やっと京都にもどってさ、一息ついて岐阜に帰ろうとしたら、なんと「黄金の日々」でおなじみの杉谷善住坊に鉄砲で狙撃されたよ。千草越え。命いくつあっても足らんわ。黒幕は六角上等らしいぞ。上等じゃねえか、やってやるぞあいつ」
十兵衛「上等じゃありません。六角承禎(じょうてい)です。藤吉郎殿と同じぐらいまで生きますよ。しぶといんです。」
信長「どっちでもいいよ。しかも一色藤長は十兵衛がしんがりだという手紙残してるけど、違うよね、一緒に逃げたじゃん。幕臣びいきもいいけど、伝聞でいい加減なこと言うのはどうかなー」
光秀「申し訳ありませんね、細かいな」
信長「謝ってすむことと済まないことがあるぞ。あー腹立つわ、そのしたり顔。帰蝶、どうする。わび入れようよ。浅井と朝倉に」
帰蝶「もう無理みたいですよ。お市さんが手紙に書いてました。ユースケ義景はともかく朝倉家中はかんかんだそうです。それにあの信義を重んじる浅井長政さんが、怒り狂ってるそうで」
信長「そうだよなー。あいつ真面目だもの。そりゃそうだよなー。あーあ知らないよ。もう天下静謐は終わりかな」
十兵衛「いや、こうなれば、全て天下静謐で押し切るしかないと思いますよ。天皇と将軍が後ろ盾です。なんでもかんでも天下静謐で押し切りましょう。信長に逆らったら全部天下静謐の敵、これで押し切るしか生き残る道がありません」
信長「いやなんだよね、現実にはもっと柔軟に対応しないと。それじゃあ天下静謐原理主義者じゃん」
帰蝶「しかしこうなれば、仕方ないでしょ。十兵衛の言う通りですよ」
信長「いう通りじゃないって。浅井と朝倉に謝ればいいのだよ。誤解があったと。分かってくれるよ」
十兵衛「しかし摂津は裏ではどんどん浅井、朝倉、叡山をたきつけてますよ」
信長「だから将軍は何やってんだよ。信長のカイライじゃなくなったと思ったら、摂津のカイライじゃん。どっちにしろカイライ。がっかりだよ」
十兵衛「憎きは摂津。やられたらやり返す。近いうちに倍返しだ!」
信長「それはスルーするよ。まあとりあえず天下静謐で押し切るけど、どうも危険だな、あの将軍は。それに静謐って字読みにくいし。高校生だって読めないだろうし、日本史用語としてどーなの。畿内平定、畿内平和維持じゃ駄目なの。静謐の謐って字、普段絶対使わないでしょ。」
帰蝶「ぐちぐち言わない!当時の手紙にだってちゃんとある言葉です」
信長「そんなの関係ねえ!はい、オッパピー。だったら幕府だって公儀って書くべきじゃん。」
帰蝶「はいはい。分かりました。それより十兵衛、なにげなく言ったけど、比叡山?」
十兵衛「そうなんですよ。小朝がね。いや天台座主の覚恕が、まー悪いやつなんすよ。史実は違うと思いますけどね。でも、あれは焼いた方がいいですね。叡山焼き討ちですよ」
信長「怖いこと言うね。石仏壊すのとわけが違うよ。今度こそバチ当たるよ。そもそも叡山は700年の昔、最澄上人、伝教大師が顕密仏法を伝えるために勅命をもって開いた聖地であってね。国家鎮護、王法冥護のためにね、、」
十兵衛「信長、おめーは坊主か!仏像なんて木とカネ(金属)で作ったもの。坊主たちはみんな破戒坊主ですよ。何の験もない。そういう古き世の妖怪どもをすりつぶして新しい世を招きいれるのが、織田信長の大仕事なのです!」
信長「大きいんだよ声が、、びくっとするじゃん。それにどうしておれの仕事をお前が決めるわけ?この間は天下静謐が仕事だって言ってたよね?」
十兵衛「叡山はもはや天下静謐の敵なのです」
信長「論理的におかしいだろ。天下静謐は幕府の目標で、俺はそれを助けているだけでしょ。でも叡山を敵にしたのは幕府の摂津で、義昭さんは黙認。結局天下の静謐を乱しているのは幕臣とそれを咎めない将軍だろ。その将軍をおれが助けるわけ?」
十兵衛「ままならぬのがこの世なのです。とにかくやられたらやり返す。それしかありませんよ」
信長「やだなー。そもそも京都嫌いなんだよね。伏魔殿じゃん。絶対自宅作らねーぞ。伏魔殿である京都を焼いた方が早くないか。あっでも帝のお膝元の京都を焼いたら、天下が乱れるか」
十兵衛「それはまた後の話になります。上京焼き討ち。義昭幕府の最終段階の話になりますな。」
信長「ふーん。京都まで焼くのか。やだな、そういうの。でも幕府滅んでないだろ。鞆幕府って知らないのか?」
十兵衛「さあーどうなんでしょう。土地を給付することはできたのですか。」
信長「知らないよ。そんなこと。未来の話じゃん。それより今だよ。どうしたら人と人は争わず、傷つけ合わずに生きていけるのだ。教えてくれ十兵衛」
十兵衛「答えが出ないのです。答えが出ないままに、でも麒麟がくる世を求めて、迷いながら進むしかないのでしょうな」

「麒麟がくる」に「三条西実澄」が登場することの意味

2020-10-26 | 麒麟がくる
麒麟がくるに登場するお公家さんのうち、重要な役割を果たすのは3名です。近衛前久(さきひさ)、二条晴良(はるよし)、三条西実澄(さねずみ)の3人。三条西実澄はのちに三条西実枝(さねき)と名を変えます。大納言です。

近衛さんと二条さんは「ライバル」です。では三条西さんはというと、「歌の家」の人です。古今伝授という「秘法」を代々受け継ぎます。三条西さんが老齢になっても、息子がまだ若かったため、「中継ぎ」として三条西さんは「細川藤孝」に伝えます。藤孝はそれを三条西さんの子供に伝えます。でもその息子が早死。藤孝さんは三条西さんの「孫」に古今伝授を伝えます。

でも藤孝さんは麒麟がくるの主人公ではありません。おそらく古今伝授で三条西さんが登場する「わけではない」と考えられます。

じゃあ、なんでということになります。

NHKは「学問好きで変わり者の老公卿」と紹介しています。この「変わり者」「老公卿」に私は注目します。おそらくそんなに大きく出るわけではないでしょうが。

ときの天皇は正親町帝です。この人の「おばあちゃん」と「三条西さんのおばあちゃん」は姉妹です。親戚ですね。年齢は6つほど三条西さんが上です。正親町帝にとっては「親戚のお兄ちゃん」なわけです。

結論を急ぎますが、つまりは「朝廷のご意見番」かと思うのです。おそらく正親町帝にも「もの申す」ことがあるでしょう。

正親町帝は天皇ですが、無謬(むびゅう)の存在ではないと思います。美化は当然されるから等身大とはいかないものの、間違えることもある、と描かれるはずです。来週の予告編「朝倉義景を討て」で信長は「勅許をもらった。勅命をもらった」と喜んでいますが、この後、信長は天皇に対してその朝廷ガバナンスの弱さを指摘するようになります。それが「絹衣相論」と言われる出来事です。正親町という「王」が出てきて「麒麟がやってきた」となることはないのです。既に義輝・向井さんが「帝を信用していません。武士がいなけりゃなにもできない」とディスってます。あれは伏線でしょう。

ちなみに宣伝ビデオでは正親町帝は東庵先生と「碁を打って」いました。「信長とはどんな武将か」と問いかけています。(史実としては信長が美濃を制服した段階で、天皇領地の回復を信長に要請してますから、ある程度知っているはずです)

さて、三条西さん。史実として「正親町帝の朝廷運営に色々ともの申した人物」ではないかと考える学者さんがいます。「麒麟がくる」の影の時代考証家とも言える東大の金子拓さんです。歴史秘話ヒストリアが「世にもマジメな覇王、信長」を放映した時、メインで登場したのが金子さんです。この金子さんが「織田信長、天下人の実像」の中で、かなり大きく三条西さんを取り上げ、「蘭奢待問題の時、またその後も正親町帝の朝廷運営を鋭く批判した人」として三条西さんを取り上げています。朝廷の意思決定の方法に問題があり、それを天皇に内奏して批判したのが三条西さんということです。

ちなみに堀新さんは「現代思想」に載った文章で、三条西さんに関して、また別の意見を述べています。別といっても朝廷ガバナンスが弱かったという認識では一致しています。ということで意外とホットな人なんです。

詳しく書く力は私にはないので、あとは上記の本をご覧ください。

追記 「もの申す人物」ではないようです。十兵衛と天皇を取り持っています。すると「蘭奢待」の一件で活躍するのでしょうか。香木、蘭奢待切り取りで、正親町帝は信長に怒ったと言われています。史実としてはそんなに怒ってません。「聖武天皇も怒るぞ」と書いたのはどうやら、この三条西さんのようです。では三条西さんは信長に怒ったのか。ドラマではそうなるかも知れません。
でも実際は正親町帝に怒ったのです。「開封の手順が間違っている」というのです。では三条西さんは「朝廷の手順を重視する気骨ある重鎮」なのでしょうか。これまた奇々怪々で、そうでもないのです。要するに「なぜ自分を通さない」という怒りです。「聞いてないよー」ということらしいのです。そして結果としては三条西さんの息子が東大寺別当になって、その「小童」に開封(蔵を開くこと)の勅命が下っています。「小童」の補佐は三条西さんです。最後は自分の息子のお手盛り人事になっているのです。朝廷とは奇々怪々なところです。このことについては「蘭奢待(らんじゃたい)と信長と三条西実澄・信長と正親町天皇の関係は「対立」なのか「協調」なのか。」を参照ください。

麒麟がくる・第二十九回・「摂津晴門の計略」・感想・浅井長政がその扱い?

2020-10-26 | 麒麟がくる

まず大雑把な感想
・摂津晴門が「悪代官」みたいになっている。これでは悪役VS善玉になってしまうのじゃが。じゃが!ただ、鶴ちゃんの演技が素晴らしいので許せる。
・足利義昭は駒ちゃんと組んで、小石川療養所みたいな施薬院を作ろうとしている。悲田処か。初めて聞いた。東京近辺にあったらしい。
・光秀の横領は史実的には事実らしいが、取り上げる必要あったのか。ブーメランになってしまうぞ。
・浅井長政が「その他大勢」だった。えっという感じだった。
・なんか「帝」が急にクローズアップされてきたが、十兵衛を尊王の人として、帝のために信長をうつ、とか安易なことはしてほしくない。

1,光秀と横領

史実の明智光秀に寺領押領の「くせ」があったことは事実のようです。丹波でもやっているとのこと。ほら、調べると事実がブーメランになって十兵衛に戻ってきてしまう。いくら幕府の腐敗を描くためとはいえ、この話題はとりあげる必要がなかったと思います。

「明智光秀 残虐と謀略」によれば、元亀二年、光秀は二度にわたり、正親町帝から比叡山領の押領を訴えられているとのことです。綸旨まで出て、信長まで訴えは行ったとか。
文が引用されているので、史料的裏付けもあるようですが、まあ調べないと分かりません。

2,足利義昭の小石川療養所?

足利義昭が悲田処のような無料治療施設を作ったなどという話は聞いたことがありません。私の知識不足かも知れないので、調べてみます。ドラマ的には別にそうしても構わないと思います。ただ、足利義昭の現実逃避の場所になっているようで気になりました。リアルの政治に関わらず、施薬院を目指すということか。大して多くの人を救えるわけではない。「麒麟がくる世」に比べると、スケールが小さい。モデルは東山文化に逃避の場を求めた足利義政なのかなとか考えました。慈善は行為としては立派でも、もっと立派なことが将軍ならできるはずです。

とはいえ「全て設定」なので、これもまた「信長と義昭の距離が開いていく」または「光秀と義昭の距離が開いていく」ことへの伏線かも知れません。でもこのドラマ、「伏線かと思ったら、特に伏線でもなかった」なんてことが多いのです(笑)

下層民対策や撫民という考えは、江戸も四代の徳川家綱ごろからやっと始まるとされています。もちろん戦国大名だって多少のことはしたかも知れません。施薬院全宗がいましたね。義昭と繋がりがあるのか。調べないと私には分かりません。なお療養所である小石川療養所ができたのは徳川八代の吉宗からです。

3、帝のクローズアップ
一体十兵衛はどういう人物として設定されているのかと思います。教養人設定のはずなのに、帝のことを「あまり知らない」という風に描かれていました。イロハさんに言われて、初めて帝のことを考えたという風に描かれます。帝の問題については、道三とも話していたのですが。

光秀を「尊王の人」に仕立て上げ、譲位を迫る信長をうつ。うーん、嫌ですね、その展開は。私の見立てでは「そうはならない」のですが。おそらく光秀にとって正親町帝もまた「麒麟が呼べる人ではない」とされると予想しています。

さて正親町帝は信長の美濃攻略時にすぐ「信長と連絡」をとっています。その内容は「皇室領を保証して欲しい」というものです。誠仁親王のことも言及しています。

行事を行うためには金が入ります。天皇は食うに困るということはありませんでしたが、大きな行事を行うためにはあまりに困窮していました。この時代の帝のリアルな姿はこのようなものです。ただし奥野さんという学者さんによると収入は銭だけで年間7千5百万円。その他もあるので1億円ぐらい。ただし困窮する前はその10倍以上。昔に比べて困窮というだけです。築地塀が崩れているとか、あれは江戸期に流行った作り話です。朝廷式微論といって、すでに否定されています。

イロハさんが正親町帝に優しくしてもらって、美しいと感じていました。「太平記」の場合、足利尊氏は片岡孝夫さんの後醍醐帝を見た瞬間「最高に美しい」と感じます。あれは理由がよく分かりません。あれに比べればイロハさんの実感は経験に基づいていました。正親町帝はたぶん今53歳なので、イロハさんは45歳ぐらいでしょうか。

私は正親町帝についても一通りのことしか知りません。これも宿題です。大河は原則として天皇を描かないし、その方がいいと思いますけれども。

4,えっ浅井長政がその扱い?

長政が信長を裏切る理由、描かれるのか描かれないのか?私はその解釈がどうなるのかとワクワクしていたので、あの浅井長政の軽い扱いに、驚きました。

とりあえず以上です。文句ばっかり書いている。要求水準が高いというか、私の要求水準がおかしい、のかも知れません。