大助が美代子の介助でやっと排尿を終わり、フーッと息を大きくはいて
「あぁ~ お陰様で、さっぱりしたわ。さっきは膀胱が破裂して、もう命の終わりかと思ったよ」
「イヤナコトをさせて済まなかったネ」
と、あっけらかんとした顔をして、お礼のつもりで照れ隠し気味に大袈裟に言うと、彼女は初めての体験からか興奮して、彼のオオジサマをジーット見つめて神経を一点に集中し、彼の言葉も耳に入らないのか答えることもなく、少し慌てて独り言を呟くように、小声で
「アレッ モウ オワッタノ」 「チョット マッテテ サキノホウヲ テエシュ デ フクカラ」
と言って、テエシュペーパを取り出そうとすると、彼は落ち着いた声で
「いいんだよ。男は2~3回サキッポを軽く振れば・・」
と教えると、彼女は不思議そうな顔をして
「アラ ソウナノ オトコノヒトハ ズイブン ケイザイテキニ デキテイルノネ」
と返事をしながら、彼のオオジサマを摘んで振ったが、強く振ったたために、彼が
「痛テテッ!、そんなに力を入れて振るなよ」 「水道のホースでないんだから・・」
と、悲鳴に似た声で注意すると、彼女はまたもや慌て気味に真剣な顔をして
「アラッ!ゴメンナサイネ」
と言いながら、オオジサマをパンテイに仕舞いながら
「わたしの顔にも一滴当たったみたいだヮ」
と苦笑し、タオルで拭うと
「ダイチャン オオジサマノトコロノ ケガフサフサト ハエテイテ モウ リッパナ オトナダワ 」
「イツゴロカラ ハエハジメタノ」
と恥ずかしそうに顔を見ることもなく小声で聞くと、彼は
「中学1年生になった頃からかなぁ~」「チョロチョロット ナ」
と苦笑いして答えると、彼女も
「ワタシモ ソノコロ ダワ」
と呟くように小声で答えていた。
二人は、無邪気で清らかな気持ちで、性に対する興味と探求心をまじえて、他愛もない会話を交わしていた。
美代子は、生まれて初めての作業を終えると、備え付けの濡れたタオルで顔と手を拭き、仰向けに寝た大助に顔を近ずけて、彼の唇に自分の唇を軽く当てたあと、耳元で囁く様に
「わたし、君から信頼されていることが判り、どんな言葉よりも心に強く響き、とっても嬉かったヮ」
「わたしが帰ったあと、看護師さんなら仕方ないが、ほかのオンナノコには絶対に触らせないでネ」
「君のオオジサマに触れたのは、わたしが最初の人になったのョ。なんだかトクをした様な妙な気持ちだヮ」
「この次は、きっと、ワタシガ キミノアカチャンヲ ウムトキダハ」 「フフッ ショウライガ タノシミダワ~」
「イイワネッ!、今日のこと決して忘れないでョ」「あぁ~ やっぱり来てよかったヮ」
と、青い瞳を輝かせて、本当に嬉しそうに感激した言葉を頭に閃くままに小声で言ったので、彼はビックリして
「オイオイ そんな先のこと等わかんないや」
「僕だってそうさ、難しい愛情やsexの問題を抜きにして、初めて僕のオチンチンに触れたのが、美代ちゃんだったとゆうことは、一生の爽やかな思い出になると思うんだ」
「お互いに大人になりかけているんだよ」 「精一杯に青春をたのしんで生きようよ」
と答えると、彼女は大助の胸の上に片手をソット置いて、彼の心の奥に強く印象が残ることを願い、優しい口調ながらも言葉を選びながら、彼と、そして自身にも言い聞かせるかの様に
「ソンナ ココロボソイ コトヲ イワナイデョ」
「私達のことは、マリア様が決めた通りになのよ」
「どんなことがあっても、二人で協力して私達の前に立ちはだかるゲートを乗り越える努力をして、必ず一緒になる夢を実現するのよ」
「イイワネ ガンバリマショウ」
と一気に言いきったあと、隣のベットに小父さんがいることに気ずき、慌てて気まり悪そうに
「長い時間、お恥ずかしいことをしていて済みませんでした」
「わたし、気が動転していて、小父さんがいらっしゃることをすっかり忘れてしまい、ゴメンナサイネ」
と丁寧に礼を言うと、小父さんは
「イヤイヤ 退屈な入院生活の中で思いがけず、美しい青春映画のワンシーンを見ている様で、ワシまでも楽しかったよ」
「君達、恋人どうしかね」 「今時、珍しい純情で陽気な、素晴らしいカップルで感心したよ」
「会話にユーモアもあって、相性も抜群のようで、将来、きっと君達の願いとおり希望に満ちた明るい未来が必ず訪れるよ」
と笑いながら機嫌よく返事をしてくれた。
美代子が、し尿瓶を持って平然とした顔で廊下に出て、皆に「さぁ~どうぞお入り下さい」と言ってトイレの方に歩いて行くと、廊下では業務を終えた孝子がキャサリンと話あっており、理恵子と珠子は離れて雑談していたが、美代子の様子を見て、皆が、唖然として言葉をかけるのを忘れてしまった。
同級生の和子も奈緒も、美代子の自信に満ちた様子を見て、大助が自分達から遠ざかって行くようなチョット寂しい気持ちになった。
彼女等が部屋に入るなり、珠子が
「大ちゃん、お見舞いにいらっしゃった美代ちゃんにオシッコの始末をさせるなんて・・」
と問いかけると、大助は平然と
「別に、たいしたことはしていないよ」「咄嗟のことで仕方なかったんだよ」
「嘘だと思うなら、隣のおじさんに聞いてごらん」
と、彼は澄ました顔つきで返事をして
「姉ちゃん、喉が渇いたので柿をむいてくれよ」
と言うと、珠子は大助の返事に呆れてしまい
「わたしより、美代ちゃんにしてもらったほうがいいんでないの」
と皮肉ぽく答えると、大助は
「チエッ! 姉ちゃん、いちいち僕達のことで、皮肉を言うのはやめてくれよ」
「僕は、入院患者なんだから、もっと親切にしてくれよ」
と反論すると、理恵子が
「そうなのよネ。わたしが、剥いてあげるヮ」
と言って柿を剥き始めたところに、美代子が帰ってきて様子を見ていて、四つ割りにした柿を楊枝で刺して大助の口に入れてやり、自分も口に入れて「この柿美味しいわネ」と言って微笑んだ。
キャサリンは、部屋の隅に立ってハラハラしながら娘を見つめていたが、美代子が機嫌よく大助君に気配りしながら、面倒を見ている仕草を眺めて娘の成長振りをまの当たりに目にし、内心、連れて来て良かったと思った。
皆が、大助を中心に話込んでいると、二羽の白い鳩が窓辺の淵に止まり、首をせわしげに傾げながらキョロキョロと辺りを見回していたので、美代子が
「ネェ~何か鳩にくれる餌がない?」
と大助に聞いたので、彼は「其処に塩豆があるよ」と教えると、彼女は手の掌に豆を乗せて差し出すや、一羽が素早く手の掌に飛びつき豆をくわえると揃って飛び立っていってしまったが、ご丁寧にも彼女の掌に白い糞のお土産を残していってしまった。
彼女は「アラッ 嫌だわ」と言うと、大助が茶目っ気たっぷりに
「それを顔に塗ると肌が白くなるらしいよ」
と冗談を言うと、彼女は
「それなら、大ちゃんの顔に塗ってあげましょうか」
と言い返しながら
「あの鳩、恋人のつがいかしら、仲がよいわネ」
と呟くと、理恵子さんが
「大ちゃんと美代ちゃんみたいだヮ」
と言って微笑んだ。 間髪をいれず珠子が
「私には、後を追いかけて行くのが大ちゃんみたいに見えたヮ」
と、美代子をかばって口添えすると、皆がクスッと笑ったので、大助は
「チエッ! またかぁ~、どっちでもいいさ」
と言ってタオルケットで顔を隠してしまった。